老勇者(60)「魔王城は目の前なんだが・・・、もう死にたい・・・」

老勇者(60)「もう死にたい。魔王城が目の前だというのに敵がスライムすら出てこない・・・」

−時は45年前にさかのぼる−

王様「おお、新たなる選ばれしものよ、魔王を討伐して何としても世界に光を取り戻すのだ。先代勇者が四天王を討ち果

たし、魔王との壮絶な戦いの末敗れてしまった今、その一粒種であるお前に世界の命運がかかっているのだ。未だ13歳で



あるお前に世界の未来を託さねばならないのは心苦しいのだが・・・」

勇者「心配には及びません。父上の仇を見事に果たし、世界に平和をもたらして見せます。」

王様「実に頼もしい言葉だ。幸いなことに今魔王軍は表立った動きをしていない。今のうちに経験を積んで、鍛えてから

魔王城へ乗り込むのだ!お前には王家の剣と鎧兜を授けるので持って行きなさい。」

〜街〜

商人「いたた、やられてしまった」

勇者「どうしたのですか?」

商人「これは、勇者様、先ほど次の街へ商売へ行こうとしたら、スライムの群れに襲われまして、護衛もろともやられて

この有様です。兵士たちも出動してスライムから街道は守っているのですが、魔王から発せられる暗黒の魔翌力に雨などの

水が反応して、あとからあとから湧いてくるのでとても敵わないのです。勇者様ほど強ければどうにでもなるのでしょう

が・・・」

勇者「それは大変ですね。この間の雨でもスライムが大量発生したと聞きますし、商売も大事ですがあまり無理をなさら

ないように。私は次の町へ行きますので」

商人「お気をつけて。餞別代りの薬草です。」

勇者「ありがとう。一刻も早く魔王を倒して魔物のいない世界にして見せます。」

〜草原〜

勇者「レベルが上がったぞ!この剣があればスライムも真っ二つだ。王様もいいものをくれたな。市販品最強クラスだも

んなぁ。」

−1か月後−

勇者「もうレベルも10だ。そろそろつぎの街へ進む洞窟へ入ってみよう。」

〜洞窟〜

勇者「ぐわっ殴られた。敵か!えいっ」ザシュッ

勇者「経験値2!なんだ、スライムか。これがゴブリンだったらやられてたかも。あぶなかった。」

〜街その2〜

勇者「結局洞窟ではスライムしか出てこなかった。そのうえ、宝箱はすべて開封済だった。幸い王様が大金と特例状を持

たせてくれたので各地の役所が便宜を図ってくれるのはありがたいが・・・。城で次の街の情報を聞いてくるか。」

−城−
領主「勇者よ、よくぞ参った。次の街について知りたいのだなこの町を出て西へ進むと、ドラゴンの居た山がある。そ

こを超えていくと大陸西部最大の港町にたどり着く。そこから船に乗って北の大陸へ行きなさい。そこにはフロストジャ

イアントと言う非常に強い魔物が守っている伝説の剣『アイスソード』があると聞いたぞ」

〜山頂の茶屋〜

店主「スライムがたくさんいてお疲れでしょう。お茶とお団子は如何ですか?」

勇者「貰おうかな。ところで、この山にはドラゴンが居るといいたのだが・・・」

店主「あぁ、それでしたら7年ほど前にあなたのお父上様が退治していかれました。おかげで私も安心してここで店を開

くことが出来たのです。他の魔物も居なくなって、いまはスライムが出るだけなので。」

勇者「・・・」

〜港町の船屋〜

勇者「これから北の大陸へ行くんだが、水棲モンスターに襲われても大丈夫な大きくて頑丈なやつがほしい。」

店主「大きくて頑丈なやつですか」

勇者「そうだ。サーペントやセイレーン等に襲われるかもしれないからな。」

店主「あいにく冒険用の大型船はもう扱っていないんですよ。先代の勇者様がことごとく退治していったおかげで今はス

ライムくらいしか出ないもんですから、商業用の貨物船か小型の冒険用の船くらいしか置いてないんです。」

勇者「・・・。小型のでいいです」

〜北の大陸の港町〜

勇者(本当にスライムしか出なかった。城でフロストジャイアントの居場所を聞いてこよう)

〜北の城〜

兵士1「フロストジャイアント?ああ、そいつならここから北へ向かった林の中に・・・」

勇者「さっそく行ってきます。それでは。」

兵士2「あ、おい!」

兵士3「行っちまったな。」

兵士1「ああ。あんなに急いでいくこともないのにな。」

兵士2「あそこにはフロストジャイアント記念博物館があるだけなんだがな。」

兵士3「入場料結構高いよな。あそこ。」

兵士2「最近温暖化で雪が解けたせいで道中にはスライムいっぱいいるしな。」

兵士1「・・・」

兵士2「・・・」

兵士1「ま、いいか」

−フロストジャイアント記念博物館−

館長「ようこそいらっしゃいました。スライムが一杯で大変だったでしょう?フロストジャイアント記念博物館です。入

場料は3000Gになります。」

勇者「フロストジャイアントは?それと、伝説の剣、『アイスソード』があると聞いたのだが。」

館長「詳しい話は中でどうぞ。ついでに案内させていただきます。」

勇者 スッ−3000G

館長「ではこちらへ。こちらの模型ですが、フロストジャイアントの原寸大の足となっております。そして、こちらがフ

ロストジャイアントの・・・」

勇者「フロストジャイアントの解説は良い。そいつの弱点とか居場所とか、剣の在り処とかとにかく役立つ情報を教えて

くれ。」

館長「何をおっしゃっているのですか先代の勇者様が退治なさって剣もお持ちになりましたよ。そして、その残された

住処の跡地に私がこの博物館を建てたのです。あ、アイスソードのレプリカならミュージアムショップで販売しています

よ。レプリカなので当然刃は潰れているものですが。」

勇者「・・・。はぁ、もう行く。」

−北の城−

兵士1「あ、勇者様。博物館どうでした?」

勇者「ぼったくられた・・・。あと、スライムいっぱい居た。」

兵士2「そうでしょう?止める間もなく行ってしまうのですから。」

勇者「次はどうしたらいいのだろうか・・・」

兵士1「それだったら、うんと南の方へ行くと火山島があって、そこで伝説の兜があると聞いたような・・・」

勇者「それは本当か」

兵士2「あれ、1、知らなかったのか?そいつなら先代勇者がボスを倒して持ち帰ったって話だぜ?」

兵士1「あ、そうなんだ?じゃぁ、勇者様、そこには防具はありませんね。このまま海を西へ行くと魔王城のある果ての

大陸へ行くことが出来ますよ。そこの港町で何か聞けるかもしれません。」

勇者「仕方ない、色々巡りながら行ってみるか・・・」

−果ての大陸の港町−

領主「お、勇者様・・・ですよね?王様から城を出たと伺ってからずいぶんお時間がかかりましたね。それになんだか弱

そうだし、装備も前に来た先代よりみすぼらしいなぁ。本当に大丈夫なんですか?」

勇者「私にもわかりません。父、先代はここに来たときレベルいくつくらいだったのですか?」

領主「たしかレベル62くらいで、アイスソード、フェニックスの兜、光の鎧、炎のブーツとかをお持ちでしたよ。勇者

様は今レベルいくつなんですか?」

勇者「・・・20」ボソッ

領主「えっ?」

勇者「・・・20」ボソッ

領主「えぇっ?」

勇者「20!!」

領主「20?!今まで何やってたんですか!出発したと知らせがあってから5年も経っているんですよ?先代は3年でここ

まで来たのに・・・」

勇者「スライムシカイナカッタンダヨ」ボソッ

領主「はぁっ?」

勇者「スライムしかいなかったんだよおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

領主「えっ・・・」

勇者「世界中の大陸や海を5年かけて巡ってきたんだ!でも、敵はスライムしかいないし、宝箱は全て開封済だし・・・

。もうスライムは1万は軽く倒したのに・・・」グスン

領主「・・・」

勇者「・・・」ナミダポロポロ

領主「まぁ、魔王城へ行けば強くて経験値がたくさんの魔物も」

勇者「本当だろうな!嘘だったら承知しないぞ!!行ってくる!」ナミダボロボロ

領主「・・・」目線ソラシー

〜魔王城周辺〜

勇者「領主の奴、やっぱり騙しやがった。この辺りもスライムしかいない・・・とにかく、魔王に会ってみるか。唯一拾

う事の出来た貴重な脱出の羽も一つだけ持っているしな。」

〜魔王城玉座の間〜

魔王「勇者よ!よくぞ来た。だが、私を倒せると思うな!ましてや先代より弱そうに見えるが・・・」

勇者「魔王よ、戦いの前に私に教えろ。魔王城だと言うのになぜスライムしかいないのだ!」

魔王「いまいましいことよ。貴様の父が私の側近であった四天王を倒したせいで魔物を生み出すものが居なくなってしま

ったのだ。私自身も先代との決闘で手傷を負い、魔物を生み出す力を失ってしまったのだ!」

勇者「なんだと!それではゴーレムやガーディアン、それどころかゴブリンやスケルトンすら出てこないと言うのか!私

は一体どうしたら・・・」

魔王「心配しなくても貴様はここで死ぬのだ!」

勇者「やられるか!」脱出の羽使用!

〜果ての大陸の港街〜

勇者(18才)「仕方ない。スライムを倒して経験値を稼ぐしかない・・・」

−そこから10年後−

勇者(28)「ついに年齢がレベルを上回ってしまった・・・。こんな調子で魔王を倒せる時が来るのだろうか・・・」

−さらに14年後−

勇者(42)「いつでも魔王と戦える様に厄払いもきちんと済ませたぞ。でも、レベルはまだ36だ・・・」

−またまた10年後−

勇者(52)「レベルはなんとか40になった。しかし、最近スライムすらも少し減ったような気がする・・・」

−そして、現在−

勇者(60)「もう死にたい。魔王城が目の前だというのに敵がスライムすら出てこない・・・」

勇者(60)「スライムすら出てこないとはどうなっているんだ。魔王に合って確かめたいが、脱出の羽もないし、今のレベ

ルでは瞬殺されるだろう。」

勇者(60)「そして最近、老化のせいで経験値が毎日減るようになった。スライムすら出てこないせいで、日々の減少分を

稼ぐことすら困難だ。」

勇者(60)「今では魔王城の前に小屋を建てて、日々の食料を狩ってはいるが、スライムを探すことすら諦めてしまってい

る。もうすべてがどうでもいい。本当にもう死んでしまって、全てを忘れてしまいたい・・・」

〜そのころ、魔王城玉座の間〜

魔王「・・・・・・」シーーーーン

魔王は老衰で既に亡くなり、そこには白骨化した魔王の死体が転がるのみであった。
 
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嘘松
2 . 名無しさん  ID:b.h..45M0編集削除
ムダ松

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