魔王「これで良し」

側近「陛下、何をなさっているのですか?」

魔王「攻略本を作っているんだよ。この城の」

側近「何故でしょうか?」

魔王「最近、勇者を名乗る人間がなかなか来なくてね。難易度を下げてあげようかと思って」

側近「左様でございますか」

魔王「あれ? 止めないんだ」

側近「私の仕事は陛下が望んだことを叶えることにございます」

魔王「ふーん……ところで、君は誰?」

側近「本日より陛下の身の回りのお世話をすることとなりました。側近と申します」

魔王「先王様の依頼かな?」

側近「左様でございます」

魔王「過保護なんだよね、お父様」

側近「若年にして魔王の座に着いた陛下を慮ってのご配慮かと」

魔王「むう、やっぱりボクの歳じゃ信用を得られないか」

側近「まだ二歳ですからね」

魔王「記憶はお父様から受け継いでるし、政治能力に問題はないんだけどね」

魔王「ねえ、側近」

側近「何でございましょうか?」

魔王「君は何歳なのかな?」

側近「覚えておりません」

魔王「相当な年月を生きてきたのかな?」

側近「はい。私は原初の海と時を同じくして生まれました」

魔王「これは予想以上にお年寄りだね。もっと敬意を持って接しようか」

側近「生きた年月などに意味はありません。もしも頂けるのでしたら、敬意よりも命令を頂きとうございます」

魔王「じゃ、最初の命令。ボクのおやつ持ってきて」

側近「かしこまりました」

魔王「もうちょっと、増やした方が良いかもね」

側近「何を増やすのでしょうか」

魔王「この城に設置する宝箱」

側近「しかし、あまり増やしすぎると通行の妨げになるとの苦情が届いております」

魔王「……じゃあ、使っていない倉庫に設置」

側近「その倉庫ですが、衛兵達が仕事をサボる際に良く利用しております」

魔王「……新しい仕事が出来た。ちょっと、お仕置きをしてくるよ」

側近「お供いたします」

側近「陛下は何故、そのようなお姿をとられているのですか?」

魔王「この姿……人間の雌の姿?」

側近「はい」

魔王「自慰が出来るから」

側近「左様でございますか」

魔王「うん。雌の姿なのは、雄よりも気持ち良いから」

側近「陛下の性別はどちらなのですか?」

魔王「どっちなんだろうね? どちらの姿も取れるから良くわからないよ」

魔王「そう言う君は雌雄どちらなのかな?」

側近「性別はありません。無性生殖で殖えますので」

魔王「ふーん……じゃ、何で人間の姿を?」

側近「この世で一番恐ろしい生き物の姿を借りているだけでございます」

魔王「なるほど」

魔王「人間は凄いね」

側近「いかが致しましたか?」

魔王「こんなに美味しいケーキを作れるんだもん。尊敬するよ」

側近「確かに、食の楽しみをここまで追求した種は他にありません」

魔王「ボクや君みたいに人型を取れる魔物は人間のようなものも食べるけど、多くの同胞は未だ生肉だもんね」

側近「一部の例外を除いてですが」

魔王「草とか人の夢とか食べるやつらのこと? あれもやっぱり生じゃないか」

側近「確かに、その通りでございます」

魔王「ん、やっぱり美味しい。君も食べる? 共に人間に感謝しながらね」

魔王「今日のおやつはホットチョコレート」

側近「お持ちいたしました」

魔王「ありがとう。……んー……甘いー」

側近「幸せそうですね」

魔王「君も飲んでみなよ」

側近「では、恐れながら頂きます」

魔王「……あ、これ間接キス?」

側近「そうとも言えます」

魔王「ふーん。少し照れるね」

側近「左様でございますか」

魔王「君は冷静だね。少し悲しいよ」

魔王「パンケーキ、クッキー、クレープ」

魔王「キャンディ、ビスケット、マカロン」

魔王「後は……」

側近「何を呟いてらっしゃるのですか?」

魔王「今後のおやつ予定表」

側近「左様でございますか」

魔王「幸せな気分になるんだよ?」

魔王「次の村の襲撃だけど、畑に被害を出さないように注意してね」

魔王「ああ、食べていい村人は三十人きっかり。なるべく老人を狙って、子供には手を出しちゃ駄目だよ?」

魔王「北の町だけど、多分生贄の受け渡しに妨害が入るよ。大人しく奪われてやって」

魔王「疲れた」

側近「会議、お疲れ様です」

魔王「バランスを取るのは難しいよ。殺しすぎちゃ駄目だし、増えすぎてもだめ」

側近「さらには適度な刺激を与え、文化や文明の発達を促す……ですか」

魔王「ああ、いつか魔物が要らない世界になるまで、この仕事は続けていかなくちゃいけない」

側近「……虚しくなることはございませんか」

魔王「自分たちで天敵に進歩を促すことがかい?」

側近「人間は私たちの目的など理解しようともしません」

魔王「理解しなくて良いんだよ。理解したら、今の良好な関係が崩れるじゃないか」

魔王「互いに殺しあう、今の関係が」

側近「……愚かな質問、お許し下さい」

魔王「いいさ。君は優しいねぇ」

側近「……」

魔王「君が照れているところを初めて見たよ」

魔王「ま、時折寂しくなることはあるけどね」

魔王「誰だって、自分のことを好きな者には理解して欲しいからね」

魔王「特に、ボクたちは人間のことが食べてしまいたいくらい大好きだから」

魔王「だからこそ、人類には平和な世を望む。危険分子たる自分たちは人類を発展させ、どこかに消えれば良い」

側近「その時は、お供いたします」

魔王「頼むよ? ボクは、本当に寂しいのが嫌いなんだ」

魔王「ん……目が覚めたね」

側近「陛下は夜行性なのですから、昼間はしっかりと寝なければお体に差支えます」

魔王「そう言ってもね。たまに有るだろう? 不意に目が覚めて、眠れなくなる時が」

側近「私は睡眠を必要としません」

魔王「便利だね」

側近「……ホットミルクでも作ってきましょうか?」

魔王「ありがとう。ふふっ、愛してるよ側近」

側近「愛しているのはミルクの方でございましょう?」

魔王「ひどいな。半分本気なのに」

側近「もう半分は冗談でございましょうに」

魔王「バレたか。でも、半分愛してるのは本当なんだよ?」

側近「陛下。勇者御一行様がいらっしゃいました」

魔王「ふーん。今は何処に居るの?」

側近「正面門にて、門番と戦闘中でございます」

魔王「ここまで来るかな? 来るといいな」

側近「滅多なことを仰らないで下さい」

魔王「だって、せっかく攻略本とか配布したんだから。役立てて欲しいよ」

側近「報告します。勇者御一行様は門番に敗北、死亡致しました」

魔王「残念」

側近「所持品の中に、陛下がお作りになられた攻略本が見つかりました」

魔王「結構丁寧に書いたんだけどね。そもそもレベルが足りないんじゃ意味が無い」

側近「死体はいかが致しましょうか?」

魔王「んー……まだ弱いみたいだし、蘇生させて近くの街に転移。お金は半分奪い取ってね?」

側近「承りました」

側近「今日のおやつはアイスクリームです」

魔王「暑い時期には嬉しいね」

側近「どうぞ、お召し上がり下さい」

魔王「いただきま――」

 つるっ……べちゃ!

魔王「あ……」

側近「……」

魔王「アイス……」

側近「今、代わりをお持ちします」

魔王「……いいの? おやつは一日一個って……」

側近「今回は特別です。今度からはお気をつけ下さい」

魔王「……うん、ありがとう」

側近「それと、このくらいで泣かないで下さい。威厳を保つのも、陛下のお仕事です」

魔王「泣いてない。うん、泣いてないよ?」

側近「左様でございますか。とりあえず、これで顔をお拭き下さい」

魔王「……うん」

魔王「これで終わりかな?」

側近「はい。お疲れ様でした」

魔王「いや、近頃は忙しいね」

側近「各地で勇者が発生していますからね」

魔王「適当なクエストを準備する身にもなってほしいよ」

側近「しかし、試練を与えねば強くなってくれません」

魔王「何もしなくてもそれなりに戦えるボク達とは違うからね」

側近「その通りです。装備を買うために金銭も必要になりますしね」

魔王「でも、野生の魔物にまでお金を持たせる作業は大変なんだよ?

魔王「側近。君は魔法をつかえる?」

側近「多少でしたら」

魔王「そう。じゃあ、手伝って欲しいことがあるんだ。ボク一人で作るには骨でね」

側近「かしこまりました。私は何をすればよろしいのでしょうか?」

魔王「うん、まずはね――」

魔王「完成。ありがとう、側近。助かったよ」

側近「この魔法陣は一体なんでしょうか?」

魔王「異界とここを繋げる門だよ」

側近「何にご使用するのですか?」

魔王「いや、別の世界にはボクが知りもしない楽しいものがあるんじゃないかと思ってね」

側近「……まさか、娯楽のためだけに」

魔王「そうだよ?」

魔王「異界の人間は凄いね……」

側近「如何なさいましたか?」

魔王「この間作った魔法陣から色々と取り寄せたんだけどね。ま、これを見てよ」

側近「……絵が動いている?」

魔王「この変な機械の中に色々なのがあったよ」

側近「この機械は一体?」

魔王「ぱそこんって言うらしい。弱い雷で動くみたいだ」

側近「使い方が良く分かりませんね」

魔王「分からないことは誰かに聞こう」

魔王「というわけで、この機械の持ち主を召喚してみようか」

 にょきにょきにょき

側近「人間が生えてきました」

男 「ここ何処ー!?」

魔王「ここはボクの城。まあ、質問に答えたら家に帰してあげるから、落ち着いて?」

魔王「いやはや、異界の人間は本当に凄いね」

側近「科学を極めれば、様々なことが出来るのですね」

魔王「アニメって言ったっけ? この技術、こっちでも出来ないかな」

側近「気に入りましたか?」

魔王「うん、あとゲームと漫画とラノベ。面白い」

側近「あの雄、嬉々として知識を教えてくれましたね」

魔王「異界の人間は親切だね。LANまで引いてくれたし」

側近「陛下。楽しむのは構いませんが……」

魔王「大丈夫、ちゃんと働くよ。使うのは休憩時間だけ」

側近「ならば結構です」

魔王「それにしても、あの人間の職業は何だっけ」

側近「たしか、ニートと仰っていましたが」

魔王「こんな技術を使いこなす人間だ。その職業はさぞかし立派なのだろうね」

側近「きっと、社会に貢献する素晴らしき職業なのでしょう」

魔王「良いこと思いついた」

側近「何をなさるおつもりですか?」

魔王「このゲームや漫画を参考にして魔法を開発しよう」

側近「なるほど。確かにこれらに登場する魔法は便利で強力なものばかりです」

魔王「手始めに、このゲームから……」

側近「では、私はこちらを……」

勇者「追い詰めたぞ、魔王! 今日こそお前の息のn」

魔王「メラゾーマ! バギクロス! イオナズン!」

側近「メテオ、ホーリー、アルテマ」

勇者「ちょっ――――!?」

側近「お見事です。陛下」

魔王「やっぱり便利だね、これ。今度から部下にも習得させようか」

魔王「少し困ったことになったなー」

側近「何か問題が?」

魔王「部下に異界の魔法を覚えさせたら、勇者の撃墜率が上がってしまったんだよ」

側近「なるほど」

魔王「勇者が簡単にやられると、人間が絶望しちゃうよ。適度な希望は必要なのに……」

側近「私に策があります」

魔王「何かな? 期待するよ?」

側近「はい。私個人で、独自に流体金属のスライムを動かせます」

側近「勇者様の死亡率が高い地域にて、これらを放てば効率的にレベルを上げさせることが出来ます」

魔王「勇者が強くなれば、バランスは取れるか……その策、準備にどれくらいかかる?」

側近「五分あれば実行可能です」

魔王「君は有能だね。ボクより魔王に向いているんじゃないかい?」

側近「滅相もございません」

部下「うぅ、どうしよう」

側近「どうなさいましたか?」

部下「! よかった、道に迷っていたんです」

側近「この城は侵入者に備えて、複雑な構造になっていますからね。新人ですか?」

部下「はい。今日から城内勤務になった部下と申します」

側近「私は側近と申します」

部下「これはご丁寧にどうも。あの、謁見の間までの道を教えて貰えませんか?」

側近「陛下に御用ですか?」

部下「ええ、就任の挨拶に伺うよう言われてまして」

側近「……今の時間なら、謁見の間ではなく自室におられるはずですね。案内いたします」

部下「あ、ありがとうございます」

部下「でも、魔王様の部屋までいってはご迷惑じゃ……」

側近「そのようなことを気にする方ではありませんよ」

側近「陛下。失礼します」

部下「し、失礼します」

魔王「んー?」

側近「陛下。漫画を読みながらおやつを食べないで下さい」

部下「こ、この方が……」

魔王「ん? 君は誰かな?」

側近「今日から城内勤務になった部下さんです。就任の挨拶に参られました」

部下「き、今日から勤めさせていただきます、部下と申します!」

魔王「ああ、よろしく。まあ、気楽にやってよ」

部下「(良かった、優しそうな方だ……)」

魔王「そうだ、側近。君が教育を担当してくれないか?」

側近「かしこまりました」

部下「側近さんって、魔王様直属だったんですね……」

側近「大したことではありません」

部下「でも、その若さで直属……はぁ」

側近「私は見た目通りの年齢ではありませんよ?」

部下「え!?」

側近「貴女は外見年齢どおりなのですか」

部下「はい、妖精種ですので。一定年齢までは普通に成長します」

側近「まだ成体になっていないのに、城内に配属される方が凄いことですよ」

部下「でも、それを言ったら魔王様も成体じゃないんでしょう?」

側近「あの方は規格外です。記憶を親子間で受け継ぐことの出来る血統なのです」

部下「やっぱり、皆すごいなぁ……」

側近「何か悩みでもお有りですか?」

部下「大したことじゃないんですけど……」

部下「私なんて、本当に大した能力持ってないんですよ」

部下「なのにこんな立派な仕事に就けて、力不足もいいとこで……」

部下「今でも、何かの間違いで城内勤務になったんじゃないかと思ってるくらいなんです」

部下「すいません、こんな情けない悩みをお聞かせして……」

側近「一つ聞きます」

部下「はい」

側近「悩むことは、悪いことですか?」

部下「!?」

側近「初めから使える人材など、滅多に居ません。それこそ、陛下くらいのものです」

部下「側近さん……」

側近「教育係は私です。……嫌でも、使える人材になってもらいます」

部下「……はい! よろしくお願いします!」

側近「部下の人事異動の資料……これですか」

側近「……おや?」

側近「……本当に、何かの間違いで配属されたようですね」

側近「以上で、部下さんに関する報告を終わります」

魔王「……人事部のミスだね、完全に」

側近「如何致しましょうか」

魔王「難しいところだね。普通はさっさと適正な配属先へ移ってもらうべきなんだけど」

魔王「ちょっとそれは可哀相かなという気も……ん?」

側近「?」

魔王「何か、君から美味しそうな匂いがするのだけど?」

側近「先ほど、部下さんからクッキーを頂きました。相談に乗ってくれたお礼、と仰って――」

魔王「(じー)」

側近「……」

魔王「(じー……)」

側近「お召しになりますか?」

魔王「い、いいのかな?」

側近「どうぞ」

魔王「ありがとう」

 もきゅもきゅ

魔王「! な、これ美味し……! え? ええ!?」

側近「落ち着いてください」

魔王「……済まない。取り乱した」

魔王「これは何処で売っているんだい? 買い占める。店ごと。全軍をもってしても」

側近「(まだ動揺してらっしゃる……)」

側近「そのクッキーは部下さんの手作りだそうです。なんでも、お菓子作りが得意だそうで」

魔王「……側近」

側近「はい」

魔王「部下をボク専属のおやつ係にする」

側近「かしこまりました」

魔王「あ、役職名は当たり障りないようなの付けといて?」

魔物1「おい、あれは部下さんじゃないか?」

魔物2「部下さんて……魔王様直属の!?」

魔物3「そうだ。あの側近さんと並ぶ地位にいる御方だ」

魔物4「まだ成体じゃないんだろ? いったいどれだけ有能なんだ……」

魔物5「ま、俺達が百匹いても太刀打ちできないだろうな」

魔物6「魔王様が直々に、直属へ任命したって話だしな」

魔物7「自室とは別に、研究室と呼ばれる部屋を魔王様から賜ったそうだぞ」

魔物8「すげぇ……憧れるな」

部下「(うわーん! 何か物凄く大げさな噂になってるー!?)」

魔王「いや、部下をおやつ係りにして正解だった」

側近「左様でございますか」

魔王「ああ、店で買うよりも美味しい。彼女には感謝しなければ」

側近「呼びましょうか?」

魔王「いや、後でこちらから出向くよ」

側近「きっと驚きます」

魔王「感謝の意は、態度で示さないと」

魔王が部下の部屋に出向いたという噂が後日、領土中に広まった

側近「勇者御一行様がいらっしゃいました」

魔王「久しぶりに来たね。状況は?」

側近「正面門を突破。現在、一階のフロアA2にてトラップを解除しております」

魔王「侵入されたか」

側近「今回の勇者様はかなりの手練れと思われます」

魔王「ここまで来るかな?」

側近「恐らく、到達するでしょう」

魔王「側近。ボクの部屋から台本を持ってきてくれないかい?」

側近「台本ですか?」

魔王「うん。台詞のおさらいをしとかなくちゃ」

側近「かしこまりました」

魔王「そうだ、君の台詞も割り振ろうか?」

側近「謹んで辞退します」

側近「勇者御一行様、到達まで3、2、1」

魔王「っ! まだカンペの準備が――」

 ばん!

勇者「ついにたどり着いたぞ!」

僧侶「魔王、覚悟……!」

賢者「ふぅ……」

魔王「(変なのが混ざってる……)良く来たね。歓迎するよ」

勇者「歓迎だと? ふざけるな!」

魔王「激しやすいねぇ。流石は正義の勇者様」

勇者「この……バカにして……!」

魔王「(まずい、このパターンの台詞が思い出せない。ええと……)」

 ちらっ

側近「(この視線は、支援の要請……)」

 ぺらっ

魔王「(! ありがとう、側近)まあ、落ち着きなよ、君は何故――」

僧侶「(暇……勇者ばっかり喋って、なんかズルイ……)」

賢者「ふぅ」

側近「よろしければ、お茶をどうぞ」

僧侶「あ、ありがとう」

賢者「ふぅ」

側近「恐らく、会話はあと五分二六秒続きます。それまでおくつろぎ下さいませ」

魔王「何を言っても、無駄なようだね」

勇者「ならば、残された道はあと一つ」

勇者「お前を倒す!」

魔王「貴様を殺す!」

側近「戦闘が開始いたしました」

僧侶「え? 賢者がトイレから戻ってきてないんだけど!」

側近「呼んでまいります」

僧侶「大急ぎでね」

賢者「ふぅ」

只今、戦闘中

魔王「どうした、その程度かい?」

勇者「まだまだぁー!」

魔王「ぬるい。ラダルト」

側近「賢者様をお連れしました」

賢者「ふぅ」

僧侶「どうも。……それにしても、頑張ってるなー勇者」

側近「加勢なされないのですか?」

僧侶「ペースが早くて、ついていけない」

側近「左様でございますか」

僧侶「ま、どうせ負けてもお金半分取られるくらいだし」

側近「おや、決着がついたようです」

魔王「惜しかったね」

側近「陛下の勝利ですか。おめでとうございます」

魔王「ありがとう。ところで、そっちの二人はかかって来ないのかな?」

僧侶「まあ、勇者なしで勝てるとは思わないんで」

賢者「ふぅ」

魔王「でも、勝てなければ死んでしまうよ?」

僧侶「でも、街に送り返してくれるんでしょ?」

魔王「ううん。本当に強い人たちはここでゲームオーバー」

僧侶「……え?」

魔王「人々に希望を与えるため、勇者は必要」

魔王「でも、簡単に希望がボクに勝つのは駄目だ。魔王は何年も君臨する必要がある」

魔王「簡単に希望が勝ってしまったら、ボク達と人間の関係が変わってしまう」

魔王「だから、ボクを倒しかねない人は死んで貰わなくちゃいけない。悲しいけどね」

僧侶「そ、そんな……」

魔王「死体は残さないよ? 蘇生されちゃ堪らない」

魔王「大丈夫。君達の武勇は全世界に伝えてあげる。魔王を倒す寸前までいったって」

魔王「だから、安心してボクの晩御飯になると良いよ」

魔王「ああ、久しぶりに人間を食べたな」

側近「左様でございますか」

魔王「……あの勇者、本当に強かった。三人がかりなら負けていたかも」

側近「僧侶様と賢者様の抵抗も、凄まじいものでしたしね」

魔王「君は、人間を食べたことあるかい?」

側近「はい。ございます」

魔王「どんな、気分だった?」

側近「特に感慨はございませんでした。水も人間も、身体に入れば同じです」

魔王「ボクは少し悲しかった。それでいて、美味しいとも感じてしまった」

側近「……陛下、どうか泣き止んで下さい。陛下が泣いておられると、私も何故か苦しいのです」

魔王「……ボクは泣いていないよ。ボクの中で、食べられた勇者達が泣いているんだよ」

部下「あの……側近さん、少しよろしいでしょうか?」

側近「はい。何でしょうか?」

部下「昨日から魔王様の様子がおかしいようなのですが……。落ち込んでいる、とでもいいますか……」

側近「ああ、勇者様を食べた件でしょう。陛下は、お優しい方ですから」

部下「正直、ちょっとだけ意外です。魔王様はいつも飄々としてらっしゃるイメージがありますから」

側近「いくら記憶を受け継ごうと、強い力を持とうと、まだ子供なのに変わりはありません」

側近「故に、支える必要があるのです。……他ならぬ、私達が」

部下「側近さん……。ええ、その通りですね」

側近「さしあたっては、美味しいおやつを作って下さい。陛下にはどんな薬よりも効きます」

部下「はい。全力を込めて、作らせて頂きます!」

部下「お待たせしました。今日のおやつはミルクレープです」

魔王「相変わらず、君の作るお菓子は美味しそうだね」

部下「ありがとうございます!」

側近「(陛下、元に戻られたようですね)」

部下「では、失礼します」

魔王「ああ。……ねえ、側近」

側近「何でございましょうか」

魔王「気を揉ませたようで、済まなかったね」

側近「……何のことでしょうか?」

魔王「ふふ、何のことだろうね? ……本当に、ありがとう。愛しているよ、側近」

魔王「勇者というシステムは二代目の魔王様が作ったらしいよ」

側近「そうなのですか」

魔王「二代目は魔王の存在が人間同士での争いを止める効果を発揮することに気が付いたんだ」

側近「共通の強敵がいれば、同じ種族で争う余裕は無くなりますからね」

魔王「かといって、強敵に絶望しては文明が停滞する。諦めは何も生まないからね」

側近「そこで、勇者が必要になるという訳ですか」

魔王「そう。勇者は希望の象徴。彼らが居れば、いつか救いがもたらされると人々は信じる」

側近「事実、歴代の魔王陛下の中には勇者に倒された方もおります」

魔王「……ああ、いつになったらボク達は不要になるんだろうね」

側近「諦めなければ、いつか必ず」

魔王「……ありがとう、側近」

側近「いえ」

魔王「……そういえば、二代目以降は人間のために存在する魔王だったけど、初代は違ったみたい」

側近「と、いいますと?」

魔王「ただの破壊者」

側近「……」

魔王「敵も味方も関係なく、食べたいものは食べる、気に入らないものは壊すって魔王だったらしいよ」

側近「それは、はた迷惑ですね」

魔王「でも、そのおかげで魔王は絶対的な恐怖として君臨することが出来るようになったんだよ」

側近「何が功を奏するか、分かりませんね」

魔王「だね」

魔王「迂闊だった。コレはわが身の未熟を嘆くしかないね」

魔王「特に、人間の姿は筋力の制御が難しい。精密な動作を行える代償だね」

魔王「あとは、ボクの注意不足か……不覚」

側近「陛下。言い訳は結構ですのでベッドから降りてください。シーツを洗濯しなければなりません」

魔王「……うん」

側近「おねしょ位で落ち込まないで下さい。人間の子供なら、誰でもやることです」

魔王「……ボク人間じゃないもん。魔王だもん」

魔王「今更なんだけどさ、側近の種族って何なのかな?」

側近「スライムです」

魔王「……スライム?」

側近「はい、スライムです」

魔王「あのプニプニしてる魔物?」

側近「私はどちらかというと、でろでろした魔物ですが」

魔王「……よく、人間の姿がとれるね」

側近「形はどうとでもなりますし、色は光魔法の応用です。質感の再現には苦労しましたが」

魔王「……(とんでもなく高度な変化の仕方をしてないかい?)」

魔王「スライムか……スライムにも色々な種類がいるよね」

側近「はい。亜種の多い魔物ですし」

魔王「君は何ていうスライムなんだい?」

側近「……特に呼び名は無いのですが、あえて言えばオリジナルでしょうか」

魔王「オリジナル?」

側近「はい。現存する全てのスライムは、元は私から分裂いたしましたが故」

魔王「……それ、かなり凄い魔物なんじゃ……」

側近「いいえ、私など古いだけの骨董品でございます」

魔王「古いものでも、良い物は良い物だよ」

側近「ありがとうございます」

魔王「これを入れた後に、これを入れるのか」

側近「それは何ですか?」

魔王「異界から取り寄せたお菓子」

側近「左様でございますか」

魔王「パソコンのことを教えてもらった人間から貰ったんだよ。あと、使い方も教えてもらった」

側近「お菓子なのに、使う、のですか」

魔王「ボクにも意味が良く分からないんだけどね」

魔王「この固体を肛門に入れた後、この黒い液体を入れるんだって」

側近「肛門にですか?」

魔王「お尻の穴と言い換えても構わないよ?」

側近「……実行なさるのですか?」

魔王「うーん……少し怖いような」

部下「魔王様ー」

魔王「あ、丁度良い所に」

部下「はい?」

魔王「ボクはね、何事も前もって実験することが大事だと思っていたんだ」

部下「はぁ……」

魔王「分かって貰えて嬉しいよ。ところで、ちょっと四つん這いになってくれないかな?」

部下「うう……もうお嫁にいけません」

魔王「凄い威力だったね」

側近「お疲れさまです」

部下「何なんですか、あれ」

側近「異界のお菓子だそうです」

部下「異界の人間はお尻からお菓子を食べるんですか……」

魔王「食べるというか、逆に噴出していたよね」

部下「酷いですよ魔王様……」

魔王「魔王は酷いものなんだよ?」

側近「おや? なにやらメモが」

メモ「肛門じゃなく、口から飲み込むのもアリ」

魔王「……」

側近「……」

部下「……」

魔王「側近」

側近「はい」

魔王「ボクが手ずから食べさせてあげよう。はい、あーん」

ぶくぶくしゅわしゅわぶくぶくしゅわしゅわ

魔王「……側近。君の皮膚が物凄い勢いで泡だっているよ?」

側近「スライムですから。すぐに体内へ取り込んでしまうのです」

部下「(うわー……正直、ちょっと怖い)」

側近「(ぎろっ!)」

部下「ひっ! すみません、睨まないで下さい……」

側近「何の話でしょうか」

魔王「あ、収まってきた」

側近「酷い目に遭いました」

魔王「だから、魔王は酷いものなんだって」

側近「……」

部下「(心中お察し致します)」

魔王「しかし、異界には変なものがあるんだねぇ」

側近「満足しましたか?」

魔王「うん、楽しかったし」

側近「左様でございますか。では……」

魔王「ん?」

側近「実験が終わった所で、本番と参りましょうか」

魔王「……え?」

部下「そうですね。王たるもの、臣下の気持ちを身をもって体験なさるのも宜しいかと」

魔王「ふ、二人とも? 何か目が怖いよ……?」

側近「私は口に」

部下「では、私はお尻の方へ」

魔王「ぎみゃー!?」

魔王「うう……もうお嫁に行けない」

側近「では、お婿に行かれては如何でしょうか」

魔王「貰ってくれる?」

側近「喜んで。挙式はいつに致しましょうか?」

魔王「やっぱりヤダ。お婿さんよりお嫁さんの方が良い」

側近「左様でございますか」

部下「魔王様って、性別なかったんじゃ……」

魔王「ずっと雌の姿をとっていたせいかな? 最近、精神が雌寄りなんだよ」

魔王「ああ、それにしても酷い目に遭った」

側近「陛下も遭わせたでしょうに」

魔王「ま、そうなんだけど……あれ?」

側近「如何なさいましたか?」

魔王「今、諸悪の根源に気が付いた」

側近「諸悪の根源? ……ああ、なるほど」

部下「そういえば、これは異界の……」

三匹「…………」

 にょきにょきにょき

男「腹筋ふっk……あれ?」

魔王「天光満る所に我はあり」

側近「お久しぶりです。男様」

魔王「黄泉の門開く所に汝あり」

部下「初めまして。早速ですが、少しばかり死んで下さい」

魔王「出でよ、神の雷」

魔王「インデグニション!」

部下「殺劇武荒拳!」

側近「死ぬかぁ!? 消えるかぁ!? 土下座してでも生き延びるのかぁ!?」

男「えええええええ!?」

側近「蘇生完了。男様を異界へ送還いたします」

魔王「ご苦労さま」

部下「なんか、一気に疲れが……」

魔王「ああ、部下もお疲れ。今日はもう仕事無いから、ゆっくり休むといいよ」

部下「では、失礼致します」

魔王「そうだ、側近」

側近「何でしょうか?」

魔王「さっきお嫁さんだのお婿さんだのと言ってただろう?」

側近「お嫁さん発言は陛下だと思いますが」

魔王「冗談でああいうことは言わない方が良い。魔物によっては、本気にするよ?」

側近「私は常に本気です」

魔王「……え」

側近「そして、陛下は素晴らしき人格を持った方だとも思っております」

側近「陛下と婚約なさる方は、幸いだとも」

魔王「ふふ、褒められるのは嬉しいけれど。褒めても何も出ないよ」

側近「陛下」

魔王「何?」

側近「口調と表情がまるで一致しておりません。あと、顔色も」

魔王「っ! 七鍵守護神(ハーロ・イーン)」

側近「褒めたらビームが出ました。痛うございます」

側近「私は常に本気です。例え冗談を言う時も」

魔王「君の冗談は極めて分かり難い!」

侍女1「最近、魔王様が明るくなられた気がする」

侍女2「側近さんが来てから、だんだん変わってきたような……」

侍女1「側近さんも、最初はどこかよそよそしかったけどねー。最近は表情が明るいみたいだし」

侍女2「魔王様、なんだか可愛くなってきてる気が……」

侍女1「確かに、女の子っぽくなってきてるかも」

侍女2「これはこれは」

侍女1「もしかすると……」

魔王 「君達」

侍女1「ひゃ!」

侍女2「は、はい!」

魔王 「お喋りもいいけど程ほどにね」

魔王 「……あんまりサボっていると、食べてしまうよ?」

侍女1&2「ガクガクブルブル」

魔王「食べるというのは、もちろん性的な意味でだけどね」

魔王「側近、質問があるんだけど」

側近「私に答えられることでしたら、何なりと」

魔王「君、スライムなんだよね?」

側近「はい」

魔王「分裂とか出来る?」

側近「可能です」

 ぶるん

魔王「あ、二匹になった。大きさは変わらないんだね」

側近「この身体は、数京匹のスライムが融合した群体のようなものなのです」

側近「個々の体積は圧縮しています。元に戻せば、この城が水没するかと」

魔王「埋め尽くさないまでも、君があと百匹位いたら便利だろうね」

側近「分裂しましょうか?」

魔王「いや、いいよ。君は一匹だから良いんだ。……あ、元に戻って良いよ?」

側近「左様でございますか」

側近「……実は、この身体も端末の一つに過ぎないのですが」

側近「陛下。勇者御一行様が以下略」

魔王「様子は」

側近「あと三秒でここに付きます」

 勇者Aが現れた!

魔王「やあ、ようこそ」

 勇者Aは仲間を呼んだ。勇者B、C、D、E、F、G、Hが現れた。

魔王「はい?」

 勇者達は合体してゆく

魔王「ええっと……」

 勇者達は合体して勇者王になった

勇者王「待ってたぜ! この瞬間を――――!」

魔王「という夢を見た」

側近「左様でございますか」

魔王「側近、起きているかい?」

側近「私は睡眠を必要としません」

魔王「そういえば、そうだったね」

側近「何か御用でしょうか?」

魔王「ちょっと、怖い夢を見てね。悪いけれど、一緒に寝てくれないかい?」

側近「かしこまりました」

魔王「……全く動揺しないね、君は」

側近「ええ。その方が、陛下の反応が楽しいですからね」

魔王「……前から薄々思ってたんだけどさ。君、実は結構性格悪かったりしない?」

魔王「君は冷たくて気持ちが良いね」

側近「変温動物ですから」

魔王「スライムって、変温動物と言っていいのかな?」

側近「おそらく」

魔王「ま、気持ち良いから何でもいいか」

側近「そうですね。陛下も暖かく、心地よいです」

魔王「なら、もう少しくっつこうか」

魔王「……」

側近「……」

魔王「何というか、君が近くに居るとつい気が緩んでしまってね」

側近「陛下」

魔王「はい」

側近「とりあえずベッドから降りてください。シーツを交換してまいります」

魔王「……ごめんなさい」

↓オリジナルストーリー

完全攻略!魔王城っと・・・♪

登場人物

魔王・・・・生まれて2年の新米魔王サマ。外見はキュートなおにゃのこ。中身はまだまだ子供。適度な悪を演じる日々に少々お疲れ?
      生まれて間もないせいか、優しい側近にちょっと惹かれて・・・
側近・・・・スライムの原種。ヒト型をしている。かなりの長い年月を生きていて、性格はいたって落ち着いている。結構ニヒルな奴。
      どこまで本気かわからないが、可愛い魔王サマをおちょくるのが趣味。
部下・・・・配属の手違いで魔王サマのお菓子係りに任命。側近と二人で魔王サマに振り回される。
男・・・・・・異界の扉より魔王サマに呼び出される。恐らくニート。VIPPER。魔王サマにいらない事も含めて色々教える。結果涙目。
勇者・・・・色んな勇者が魔王城にやってくる。でもやられる。魔王サマとのフラグは今の所たちそうにない。
僧侶・・・・涙目
賢者・・・・ふぅ

魔王「……どういうことかな?」

側近「何か問題でも?」

魔王「ボクの知らない間に、一つの村が滅ぼされてる」

側近「小さな村のようですが」

魔王「でも、人間の住んでいた村だ」

側近「……情報を集めてきます」

魔王「頼んだ。なるべく急いでね」

側近「報告します。村を壊滅させたのは人狼の一団。陛下のやり方を批判し、野に下った者達です」

魔王「目的は?」

側近「不確かな情報ですが、魔物が人間のために存在しているのが気に食わないようです」

側近「最終的な目的は、人間の存在を無視した魔物社会の立憲でしょう」

魔王「ああ、なるほど」

側近「一団の数は、小さな街の住民ほどでしょうか」

魔王「……軍勢を差し向ければ一瞬だけど、目立ってしまうね」

側近「人間に無用な警戒心を抱かせてはならない、ですか」

魔王「そういうこと」

側近「如何なされますか?」

魔王「……ボクが出る」

側近「かしこまりました。すでに準備は整っております」

魔王「予想していたなら、最初から選択肢を提示してよ」

魔王「ねぇ、側近」

側近「何でしょうか?」

魔王「いや、君まで着いてくるとは思わなかった」

側近「ご迷惑でしたか?」

魔王「全然」

側近「ならば先へ参りましょう」

魔王「そうだね」

魔王「あ、野生の魔物だ」

側近「そのようですね」

魔物「!?」

魔王「あれ? 逃げた?」

側近「本能的に危険を察知しましたか」

魔王「酷いな。ボクが危険人物みたいじゃないか」

側近「世界的な危険人物を魔王と呼ぶのです」

魔王「そういえば、誰にも何も言わず出てきたけど、魔王の仕事は大丈夫かな?」

側近「手紙を残してまいりました」

魔王「手紙?」

側近「はい。『探さないで下さい』と書き記してあります」

魔王「……ま、何とかなるか」

魔王「さて、例の村から程近い街に着いたけれど」

側近「これから如何なさいましょうか?」

魔王「……側近、敬語禁止。年下の雌に敬語を使っていたら不自然だろう?」

側近「そうか。では、そうさせて貰う」

魔王「何か、急に偉そうになった……」

側近「本来はこちらの話し方が地でな」

魔王「そうだったんだ」

側近「まぁ、陛下への敬意を忘れたわけではないから安心しろ」

魔王「呼び方も変えなくちゃね。呼び捨てでいいか」

側近「魔王」

魔王「全く躊躇がないね。……少し嬉しいし、いいけどさ」

側近「私達の間柄も考える必要があるな」

魔王「どういう設定にしようか? 兄妹とか?」

側近「そこら辺が妥当か」

魔王「いっそ、ご主人様とか呼んであげようかい?」

側近「街中でスレイブアンドマスタープレイは目立つだろう?」

魔王「そうか。じゃあ、やっぱり兄さんでいこうか」

魔王「人間の街は物に溢れているね」

側近「活気があるのは良いことだな」

魔王「そうだね。この街はまだ平和そうだし……あ」

側近「どうかしたのか?」

魔王「ワッフル……」

側近「ああ、露店か。そういえば、今日はおやつを食べていなかったな」

魔王「ワッフル……」

側近「分かった、買ってくるから大人しくしていろ」

魔王「ワッフル……」

側近「(聞いていらっしゃるのでしょうか……?)」

側近「ほら、買ってき――」

憲兵「お嬢ちゃん、こんなところでどうしたの?」

魔王「ワッフル……」

憲兵「ワッフル?」

側近「魔王、待たせたな」

憲兵「あ、お連れさんがいらっしゃったんですか。てっきり迷子かと」

魔王「兄さん、ワッフル」

側近「ほらよ、ワッフル」

魔王「ワッフル! 兄さん愛しているよ」

側近「はいはい。それじゃ、とりあえず宿でも探しに行くか」

憲兵「……」

憲兵「無視しないで!」

魔王「人間は親切だね。宿屋の場所を丁寧に教えてくれたよ」

側近「まぁ、それも憲兵の仕事の内なのだがな」

魔王「そういえば、兄さん。お金は大丈夫なのかな?」

側近「二週間くらいなら、ほどほど豪勢に過ごせる程度の資金はもってきてある」

魔王「さすがに、抜かりが無いね」

側近「むしろ魔王が抜けているのだ」

魔王「に、兄さん? 何か城にいるときよりも厳しいというか、怖い気が……」

側近「ああ、済まない。久しぶりに人間の多い所に来て、少し浮かれていたようだ。つい本性が出る」

魔王「(な、なんか今日の側近怖い)」

魔王「兄さん」

側近「なんだ?」

魔王「その、自分で言い出したことなのにアレなのだけれど、話し方を元の戻してもらえないかい?」

側近「かしこまりました」

魔王「(ほっ)済まないね。ボクが言い出したことなのに」

側近「いえ、こちらとしても助かりました」

魔王「そうなのかい?」

側近「はい。あの口調は昔を思い出してしまいます」

魔王「……ま、詳しくは聞かないけどね」

側近「ありがとうございます」

魔王「……でも、怖い君もそんなに嫌いではないよ」

側近「何か仰いましたか?」

魔王「いいや? 何も」

魔王「なにやら騒がしいね」

側近「これは……人狼の鳴き声ですね」

魔王「いくよ、兄さん」

側近「かしこまりました。魔王」

人狼「殺せ。誰も逃すな。殺せ」

配下「応!」

住民「うわぁぁぁ!」

魔王「さて、どうしたものかね」

側近「今出て行くと、人狼は殺せても住民に不審がられます」

魔王「かといって、このまま見過ごすわけには……」

勇者「待て! 人狼ども!」

僧侶「殺戮を止めないなら、こちらも命の保障はしません!」

人狼「面倒なのが湧いてきたな。……引き上げるぞ!」

魔王「ナイスタイミング。流石は勇者」

側近「これは、利用できますね」

魔王「勇者がいるなら、人狼が全滅しても怪む者がでないからね」

勇者「こんなところまで魔物が……」

僧侶「やはり、隣の村が滅んだというのは本当なのでしょうか」

魔王「本当だよ」

勇者「! 君達は誰だ」

側近「何処にでもいる訳ありの兄妹です」

僧侶「……訳ありの兄妹が何処にでもいるとは思えないんですけど」

勇者「それより、今の話は本当なのか? 本当なら、何故それを知ってるんだ?」

魔王「(どうしようか?)」

側近「(お任せを)それは私達が隣の村に住んでいたからです」

魔王「(なるほど)人狼達の襲撃に遭い、命からがらこの街へ逃げ出してきたんだ」

勇者「そうだったのか……疑って済まなかった。ごめん」

僧侶「兄妹二人きりで……大変だったでしょう」

魔王「兄さんが居たしね。辛くはなかったよ(騙されやすいね)」

側近「私達が頑張れたのは、勇者様が居ると聞いていたからです(猜疑心が無いから勇者になれたのです)」

側近「勇者様。貴方達はこれからどうなさるおつもりですか?」

勇者「決まっている。人狼を君達の村から排除する」

魔王「でも、あいつらの数は尋常ではないよ? 策はあるのかな?」

僧侶「一対一なら、勇者さんが負けることはまず無いでしょう。奇襲を繰り返し、数を減らします」

側近「しかしそれでは時間がかかりますし、勇者様も危険では?」

勇者「危険なことに自ら身を投げ出すから、俺達は勇者って呼ばれるんだよ」

僧侶「いざとなったら、私が蘇生させますし。大丈夫です」

魔王「(良い感じに焚きつけられたね)」

側近「(放っておいても大丈夫そうですが、確実性を上げましょう)」

魔王「(そうしようか)」

側近「お願いがあります」

魔王「ボクたちも、連れて行ってくれないかな?」

勇者「そんなの駄目だ! 気持ちは分かるけど、危険すぎる」

側近「そこを何とか、お願いします」

僧侶「でも、私達も他の人を守れるだけの余裕はありませんし……」

魔王「ああ、大丈夫。自分の身なら自分で守れるよ」

勇者「そんな事を言っても駄目だ。君はまだ子供なんだよ?」

魔王「(かちん)ちょっと、街の外を見てくれないかい?」

勇者「外?」

魔王「ああ、あの丘のあたり。……重霊子殻獄瞋焔覇(パー・イー・モーン)」

勇者「!? 地面が焼け焦げ……というか、溶解した……!?」

僧侶「(……もしかして、私たちより強い?)」

魔王「まだ証明には足りないかな?」

勇者「……分かった。連れて行く」

側近「子供扱いされたくらいで怒らないでください」

魔王「ごめん、つい」

側近「実際、まだ子供なのですから」

魔王「餓氣焔塵虐瀑旋渦(パズ・ズー)」

僧侶「(……あの爆発を受けて生きてるって、どういう人なの? 側近さん)」

勇者「まず、準備をするか」

側近「村までは結構距離がありますからね。一晩は野営をしなければならないでしょうし」

僧侶「私、食料とか買ってきます」

魔王「資金はこちらもだすよ。折半でいいね?」

勇者「治療薬に予備はあるな」

側近「魔王のおやつを買ってきます」

魔王「では、出発」

勇者「おー!」

側近「元気な方ですね、勇者様は」

僧侶「それだけが取り得ですからね」

勇者「酷いな、僧侶は」

僧侶「これでも優しい方ですよ?」

魔王「仲が良いね、君達」

勇者「ど、どこが!」

僧侶「そんなことないですよ!」

魔王「(からかい易いね、この二人は)」

側近「(陛下が、玩具を見つけた目をしていらっしゃる……)」

勇者「魔物が出ないな」

僧侶「例の人狼が現れたせいで、生態系が崩れたのでしょうか」

側近「(陛下がいるせいなのですけれどね)」

魔王「まぁ、安全なのだからそれで構わないだろう?」

勇者「魔物が出ないと、金が稼げないんだよ」

僧侶「出費の割りに、収入は少ないですからね。この職業」

勇者「街頭アンケートでは、子供にやらせたくない職業第一位だよ」

側近「大変なのですね」

僧侶「でも、魔王を倒せば税金で養ってもらえるようになりますから」

魔王「現役勇者の声は参考になるね。城に戻ったら補助金制度を検討しようか」

側近「そうなると、補助金を騙し取る自称勇者に対する対応も考えなければなりませんね」

勇者「魔物が出なかったおかげで、思ったより進めたな」

側近「もう日も暮れますし、ここら辺で野営をしますか?」

僧侶「そうですね。魔王さんもお疲れのようですし」

魔王「疲れてはいないけれど、昼に無理して起きていたから眠いんだよ」

勇者「はは、いつもは昼寝してるのか」

側近「(ただ夜行性なだけなのですけれどね)」

僧侶「では、あの木の陰で今日は眠ることにしましょう」

魔王「兄さん、一緒に寝よう?」

側近「分かりました」

勇者「なっ! お前ら!?」

僧侶「い、いくら兄妹でも年頃の男女が一緒に寝るのはどうかと」

魔王「大丈夫だよ。何か間違いが起こったら、責任を取ってもらうから」

勇者「責任……!?」

僧侶「落ち着いてください! 兄妹でそういうことは駄目なんですよ!?」

魔王「ボクたちは血が繋がっていないよ(そもそも、兄妹ですらないし)」

勇者「そ、それは倫理的にどうなんだ……?」

僧侶「知りません! 私に聞かないで下さい!」

魔王「それに、口とお尻にはもう注がれてしまったし(何が、とは言わないけどね)」

勇者「側近ー!」

僧侶「あ、貴方はなんて事を……!」

側近「(何で私が悪者になっているのでしょうか?)」

側近「陛下。お戯れが過ぎますよ」

魔王「いや、君がどんな反応を示すかと思ってね」

側近「どんな反応もしませんよ」

魔王「怒りもしないみたいだしね。それは無関心? それとも」

側近「実際に貴方が好きだからですよ?」

魔王「……そうかい。それは嬉しいね」

僧侶「あれ? 魔王さん、顔が赤いですけど……どこか具合でも?」

魔王「いや、大丈夫だから気にしないでくれ」

側近「結局、私は魔王から隔離された上で勇者様が監視につくのですか」

勇者「ま、安全のためにな」

側近「むしろ、貴方と僧侶様の間で間違いが起こらないことの方が私には不思議でならないのですが」

勇者「ま、間違いって!?」

側近「ストレートに言うなら繁殖行為」

勇者「そんなことするわけないだろ!」

側近「何故ですか? こんなに近しい間柄の異性がいるというのに」

勇者「それは、その……」

側近「嫌い合っているわけでは無いのでしょう?」

勇者「だからといって、そういう関係じゃ……」

側近「(この人、面白いですね)」

側近の勇者いじりは深夜まで続いた

魔王「離れ離れか。残念だね」

僧侶「貴方の身のためですよ……」

魔王「ボクは。襲われても構わないのだけどね?」

僧侶「何を言ってるんですか! そういう行為は愛し合う者同士がすることで――」

魔王「ボクは側近を愛しているよ」

僧侶「な――」

魔王「そういう君達はまだヤってないのかな?」

僧侶「私と勇者さんはそういう関係じゃありません!」

魔王「じゃ、どういう関係なのかな?」

僧侶「ただの主従関係です」

魔王「そのままでいいのかな?」

僧侶「え?」

魔王「そんなことでは、いずれ誰かに取られてしまうよ?」

僧侶「そ、そんな……ことは……」

魔王「もう一度聞くよ? このままで、いいの?」

僧侶「……」

深夜。魔王に唆された僧侶が勇者を襲った

側近「昨夜はお楽しみでしたね」

勇者「!? な、なんのことだ?」

側近「いいえ、深い意味はございませんよ」

勇者「(もしかして、バレてる?)」

側近「(バレていないはずが無いでしょうに)」

魔王「昨夜はお楽しみでしたね」

僧侶「ええ、貴方のお陰でやっと素直になれました」

魔王「それは結構。というか、君は意外と行動が早いね」

僧侶「けしかけた人が言うことじゃありませんよ」

魔王「それもそうか。あ、後で避妊の魔法を教えておくよ」

僧侶「ありがとうございます」

側近「手間のかかる人たちですね」

魔王「君も楽しんでいた癖に」

勇者「着いた。この村だ」

僧侶「酷い……」

魔王「死体の匂いがするね(お腹減ってきた)」

側近「人狼の姿は見えませんね」

勇者「とりあえず、村の中に入ってみるか」

人狼「ようこそ、勇者諸君」

配下「囲めー!」

僧侶「勇者さん、何か言うことは?」

勇者「俺が迂闊でした。ごめんなさい」

人狼「村を一つ潰したかいがあった。こうして勇者が来たのだからな」

勇者「お前の目的は何なんだ?」

人狼「人間は知らないだろう。俺達の存在意義を」

僧侶「存在意義?」

人狼「ああ、魔物は人間のために存在している。それから抜け出すには、力が必要だ」

人狼「魔王が何故強大な力を持っているか分かるか? 勇者を喰らっているからだ」

人狼「なら、俺も勇者を喰らえば……」

勇者「そんな事のために、村を滅ぼしたのか……!?」

人狼「お前達には分からんよ。魔物が存在する悲しさが」

僧侶「魔物の存在意義……詳しく話してもらえませんか」

人狼「いいだろう。冥土に土産に聞け。魔物は人類の争いの矛先を――」

魔王「そこまでだ。黙って貰おうかい?」

人狼「!? お前は……! 何故お前がここにいる!?」

側近「貴方が騒ぎを起こした結果でしょうに」

勇者「どういうことだ?」

僧侶「知り合い……?」

魔王「話は後で聞かせてあげる。そこの愚か者を食い殺した後でね。……ゲイルフラッシュ」

魔王「ああ、不味い。所詮は犬の肉か」

側近「食べきれないのであれば、私が処理しますが?」

魔王「頼んだ。でも、首は残してね? 倒した証として、持ち帰る必要がある」

側近「かしこまりました」

勇者「……お前は一体、何なんだ?」

僧侶「あの人狼の群れを一瞬で……まともな生き物ではありませんよね」

魔王「ボクは魔王。君達が倒すべき人類の敵」

勇者「!?」

僧侶「こ、こんな女の子が……?」

側近「(小さな子が、と言わなくて正解でしたね)」

魔王「で、どうしようか?」

側近「普通なら殺し合い開始なのですが、特殊なケースですからね」

勇者「一つ聞きたい」

魔王「何? 男性経験なら無いよ?」

勇者「そんな事は聞いてない! ……さっき人狼が言いかかったことを教えて欲しい」

魔王「それは駄目。ボク達も困るし、君達も困ったことになる」

側近「貴方達には、何も悩まず魔物退治をして頂きたいのです」

僧侶「……魔物の存在意義は、私達の存在意義にも関わるということですか」

魔王「そんなに気になるのなら、もしもボクを倒せたら教えてあげるよ」

勇者「その言葉、二言は無いな?」

魔王「ボクの貞操に誓ってね」

勇者「おらぁ!」

魔王「Q極Z対破壊」

僧侶「勇者さん、治療します!」

側近「始まりましたか。どうなるでしょうね? 人狼さん」

側近「生首が答えるはずもありませんか」

側近「……さて、一応保険を準備しておきますか」

魔王「あはは、まいったなぁ……」

僧侶「はぁ、はぁ……」

魔王「全力で戦って、ボクが負けるとは思わなかったよ」

勇者「ぜぇ……! はぁ……! 約、束を」

魔王「ああ、分かっているよ。けど、その前に」

側近「はい。皆様の治療を行います。陛下、もげた腕をこちらに」

勇者「そんな……それが勇者の意味……?」

僧侶「では、私達がやってきたことは……」

魔王「無駄なことではないよ。君達のお陰で救われた命は確かにある」

勇者「でも……」

魔王「だから言っただろう? ボクたちも君達も困るって」

僧侶「何とかならないのですか? 今の言葉が本当なら、魔物と私達は共存できるはずです」

側近「私達も、共存と平和な世を望んでいます」

魔王「人間が争いを止め、不当な差別を行わず、隣人に無償の愛を注げるそうになれば、すぐにでも」

勇者「それは……」

魔王「君達みたいな人ばかりなら、平和になるのだけれどね」

魔王「さて、倒されたわけだからボクは死ななくちゃいけないのかな?」

勇者「そんな!?」

僧侶「だめです! 絶対!」

魔王「ああ、死ぬというのは形式上だよ」

側近「陛下を死んだことにして、適切な期間の後、新たな魔王を登場させるのです」

魔王「というわけで、ボクは魔王廃業だね」

側近「勇者様は魔王を倒した勇者として、語り継がれます」

勇者「今聞いた話は……」

側近「当然、他言無用です」

僧侶「もしも、嫌だといったら?」

側近「この場で殺します」

ずずずずずずず

勇者「! 地面から水が」

側近「私の本体は水という形をとり、世界中に偏在しております」

側近「地下に水脈を巡らせました。回答によっては、この村ごと沈めます」

勇者「……分かった。条件を飲む」

魔王「ありがとう。ボクの葬式パーティーにでも来るといいよ」

僧侶「(葬式なのにパーティー?)」

魔王「んー……城に着いたね」

側近「随分と久しく感じます」

勇者「俺達、ついてきて良かったのか?」

僧侶「さあ……?」

魔王「まぁ、上がって上がって」

勇者「お邪魔しまーす」

僧侶「しまーす」

部下「魔王様!? お帰りなさいませ!」

魔王「やあ部下、ただいま」

側近「他の者にも知らせてきます」

魔王「頼んだよ。……部下、一つ仕事を頼みたい」

部下「何ですか?」

魔王「明日までに特大のケーキを作って貰いたいんだ。ウェディングケーキくらいの大きさのヤツ」

部下「分かりました。でも、何に使うのですか?」

魔王「ボクの葬式」

部下「はい?」

魔王「これより、魔王討伐とボクの死亡を祝い、パーティーを開始する」

城内『おー!!!!!!!』
側近「各自、グラスは行き渡りましたか? では乾杯の音頭を今回の功労者である勇者様にお願いします」

勇者「えーと、ゴホン。魔王討伐を祝い、乾杯!」

城内『かんぱーい!!!!』

部下「クッキーは出来てます! 早く配膳を!」

部下「違います! そのビスケットはアルコールの隣に配置!」

部下「時間が無い……! 私が替わります、あなたはホイップクリームを!」

魔王「生き生きとしているね」

側近「意外と人に指示を出すのが上手いようです」

部下「あーもう! 何でこのパーティーは料理よりもお菓子の方が多いんですか!?」

魔王「やあ、お二方。楽しんでいるかい?」

勇者「おかげさまで」

僧侶「というか、本当に私達が参加して良かったんですか?」

側近「歴代の魔王様を倒された勇者様は、皆このように招待されております」

魔王「というわけで、遠慮は無用だよ」

勇者「なら、思う存分に楽しませてもらおうか」

魔王「ちなみに二人の武勇を伝えるため、明日から宣伝を始めるよ」

側近「あそこでヤケクソになってお酒を召されているのが、宣伝部の方々です」

魔王「明日からは死ぬほど忙しくなるしね」

側近「アンデッドの方が過労死したことも過去にはございました」

僧侶「うわぁ……」

側近「陛下」

魔王「なんだい?」

側近「次期の魔王役は如何致しましょうか」

魔王「……どうしようか?」

側近「あと十年ほどなら不在で構いませんが……。それまでに陛下が子をお作りになるか……」

魔王「うーん……正直、君以外と子作りはしたくない」

側近「左様でございますか」

魔王「となると、誰か襲名するしか――」

部下「魔王様、ご注文のシュークリームをお持ちしました」

魔王「……」

側近「……」

部下「? どうかなさいましたか?」

魔王「君、次の魔王ね」

部下「はい? ……はい!?」

魔王「いい返事だ。快く引き受けてくれたようで嬉しいよ」

魔王「次期魔王も決まったね」

側近「詐欺のような決定の仕方でしたが」

魔王「ま、内政はしばらくボクが引き受けるし。時間をかけて教育すればいいよ」

側近「陛下の役職は如何致しましょうか?」

魔王「君と同じで、直属の部下あたりにしようか」

側近「かしこまりました」

魔王「ふふ、これで君と対等な立場だね?」

側近「嬉しそうですね」

魔王「自分でも意外なくらい、ね」

側近「陛下。先王様がいらっしゃいました」

魔王「お父様が?」

側近「忙しいところを、無理をしていらしたようです」

魔王「何処にいるのかな?」

側近「応接室にいらっしゃいます」

魔王「分かった。行こう」

先王「おお、久しぶりだな」

魔王「久しぶりですね。お父様」

先王「側近も良く仕えてくれたようだね」

側近「恐悦至極にございます」

魔王「貴方から受け継いだ座ですが、こんな短い期間で終わらせてしまい、申し訳ありません」

先王「気にすることは無い。お前は良くやった」

魔王「……ありがとうございます」

先王「時間だ。語りたいことはいくらでもあるのに、時間は有限だね」

魔王「ボクが退位した後、いくらでも話せますよ」

先王「ああ、そうだな。……では、私はこれで」

側近「お見送りいたします」

先王「あの子は、魔王の職務を全うできましたか?」

側近「ええ、政務能力にも秀でた立派な魔王でした」

先王「私はあの子に大したものを残してあげられませんでした」

側近「先王様の愛情は陛下に届いておりますよ」

先王「仕事にかまけ、短い時間しか一緒にいられなかったのにですか?」

側近「短い時間しか一緒にいられなかったからこそ、です」

先王「……貴方には敵いませんね」

側近「無駄に長く生きているだけですよ」

先王「貴方は、これからも?」

側近「はい。陛下のお傍に居たいと思います」

先王「あの子のことを、お願い致します。……初代魔王陛下」

魔王「これで、魔王討伐とボクの死亡記念パーティーを終了する。各自解散」

城内『かいさーん!』

魔王「静かになったね」

側近「祭りの後の静けさ、ですか」

魔王「ねぇ側近。ちょっとこちらに寄ってくれないかい?」

側近「こうですか?」

 ぎゅう

側近「急に抱きついて、どうしたのです?」

魔王「無性に寂しくなったんだよ」

側近「まぁ、構いませんが」

魔王「君、もうちょっと気の効いた台詞とか言えないのかい?」

側近「例えば?」

魔王「私はいつも傍に居てやる、とか」

側近「……魔王、私は何時も、何時までも傍に居てやる」

魔王「あ……」

側近「……自分で言わせておいて、固まらないで下さい」

魔王「予想以上に効いたんだよ」

側近「左様でございますか」

魔王「……今の言葉、本気にするよ?」

側近「私は常に本気です。そして、今の言葉は嘘でも冗談でもありません」

魔王「そうかい。なら、例えどんな困難が降りかかろうとも」

側近「例え、人の世が平和になろうとも」

二匹「「未来永劫、貴方と共に歩むと誓う」

――終わり――

魔王「……そういえば、二代目以降は人間のために存在する魔王だったけど、初代は違ったみたい」

側近「と、いいますと?」

魔王「ただの破壊者」

側近「……」

魔王「敵も味方も関係なく、食べたいものは食べる、気に入らないものは壊すって魔王だったらしいよ」

側近「それは、はた迷惑ですね」

魔王「でも、そのおかげで魔王は絶対的な恐怖として君臨することが出来るようになったんだよ」

側近「何が功を奏するか、分かりませんね」

魔王「だね」

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1 . 名無しさん  ID:RmTRGk040編集削除
やった、全部読み切った。
途中2回ほど寝たけど・・・・・

疲れた

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