<魔王城周辺>

勇者「あれが魔王城か……」

勇者(ついにここまでたどり着いた……)

勇者(あとは、魔王城に乗り込み、この手で魔王を倒し、姫を取り戻せば──)

勇者(世界に平和が戻る!)

勇者(世界が平和になったら、もしかしたら俺は不要とされるかもしれない)

勇者(だけど、そんなことはどうでもいい!)

勇者(俺は絶対に魔王を倒す!)

勇者(行くぞ、魔王!)ダダダッ

<魔王城城門>

勇者(む……門番が二匹いる!)

勇者(おそらく、どちらも上級魔族……あなどれない相手だ)

勇者(だが、たかが門番に苦戦していては、打倒魔王など夢のまた夢だ!)

勇者(魔法や必殺技、それに貴重な消耗品は温存して戦うことにしよう!)

勇者「オイ、お前たち!この門を通してもらおうか!」

門番A「あァ?なんだテメェは!?」

門番B「ケケケ、ここはニンゲンがくる場所じゃないぜェ〜?」

勇者「俺は勇者だ!」

門番A&B「!」

門番A「だったら、なおさら通すワケにはいかねえな!本気できやがれ!」

門番B「ケケケ、ズタボロにしてやるぜェ〜」

勇者「悪いが……お前たち相手に本気を出すつもりも、ズタボロにされるつもりもない」

勇者「魔法やアイテムなど、使うまでもない!」

勇者「剣だけで十分だ!」

門番A「ンだと、コラァッ!」

門番B「オイラたちをナメんなよォ〜?」

勇者「来いッ!」チャキッ

ザシュッ!

ゆうしゃはズタボロになった!

勇者(魔法や……アイテムを……使うヒマもなかった……)ガクッ

<魔王城城門>

門番A「しりとりでもやらねえか」

門番B「いいぜェ〜?」

門番A「しりとり」

門番B「リール」

門番A「ループ」

門番B「プール」

門番A「ルンバ」

門番B「バール」

門番A「ルーペ」

門番B「ペンシル」

門番A「ルアー」

門番B「アヒル」

門番A「テメェ、いい加減にしろや!」

門番B「ハイ、お前の負けェ〜」

門番A「ンだと!?」

門番B「だって『アヒル』で『る』なのに、『テメェ』っていったじゃんか」

門番A「テメェ……!」

門番B「あ、またいった」

勇者「オイ!お前たち!」

門番A「あァ?……なんだ勇者か」

門番B「ケケケ、またやられに来たのかァ〜?」

勇者「この間は技や魔法を温存しすぎて、敗れた……」

勇者「今日は全力でいかせてもらう!」キッ

門番B「おもしれェ〜」

門番A「フン、城の中にゃ入れさせねーよ!」

門番B「ケケケ、血みどろにしてやるぜェ〜」

勇者(温存していた薬品系の道具を飲んで、身体能力をアップ!)グビグビ…

勇者「はああああっ!」シャキンッ

勇者「さらに、魔法を剣にまとわせ──」ボワァァッ

勇者「いくぞ!」ダッ

ズバシュッ!

ゆうしゃはちみどろになった!

勇者(ど、どういうこと、やねん……)ガクッ

<魔王城城門>

門番A「なぁなぁ」

門番A「面白いジョーク仕入れたから、聞かせてやるよ」

門番B「お、聞かせて」

門番A「あるゴーレムが、ダイエットしたいと思ったんだってよ」

門番B「うん」

門番A「でもゴーレムって石でできてるから、痩せられないだろ?」

門番B「うんうん」

門番A「だからさ──」

門番A「『軽石で作り直してくれ』って、自分を作った魔術師に頼んだんだってよ!」

門番B「ケ〜ッケッケッケッケ!」

門番A「な、面白いだろ!」

門番B「ケッケッケッケッケッケッケッケッケッケ……!」パンパンッ

門番B「いやァ〜久々に大笑いしたよ」

門番A「こんな仕事じゃ、なかなか笑うことなんてねえもんな」

勇者「オイ、お前たち!」

門番A「ん、勇者か。また来やがったのか」

門番B「ケケケ、懲りないヤロウだァ〜」

勇者「悪いが、お前たちは笑えなくなる」

勇者「二度とな!」チャキッ

門番A「お、剣や防具が少し変わってるな」

門番B「ケケケ、イメチェンかァ〜?」

勇者「俺は二度の敗北を経て、自分の戦い方を反省した……」

勇者「これまでの俺は強い装備品や技、魔法に頼るという」

勇者「攻撃力や防御力だけを重視した、力押しの戦法にこだわっていた……」

勇者「そして、それでここまでは勝ち抜いてこれた……」

勇者「だが、それでは魔王やお前たちには通用しないと分かった……」

勇者「だから、戦略や戦術というものを一から学び直してきた!」

勇者「この装備は俺が考え抜いた、お前たちと戦う上で最適な装備だ!」

勇者「さらに、お前たちが天敵とする戦法をもって、挑む!」チャキッ

門番A「フン……今までとは目つきがちがうな」

門番B「ケケケ、そうこなくっちゃなァ」

勇者(この門番二匹がなぜここまで厄介なのか──)

勇者(それはコンビネーションにある!)

勇者(阿吽の呼吸から生み出されるコンビネーションこそが)

勇者(コイツらの強さの秘密!)

勇者(だから、コイツらが協力技や合体技を使えないような位置取りで戦えば)

勇者(勝率はぐんと上がる!)

勇者「勝負!」チャキッ

ズバッ!

ゆうしゃのからだがそらにまいあがった!

勇者「ぐげえっ……!?」ドサッ

勇者「な、なんで……!?」ピクピク…

勇者「俺の装備も戦略も……完璧だったはずなのに……」ピクピク…

門番A「だってさ──」

門番A「オメェ、弱いんだもん」

勇者「!」

門番B「ケケケ、コイツのいうとおり」

門番B「たしかに装備とか戦略とかはいいセンいってたと思うぜェ〜?」

門番B「必殺技や魔法だって、いいモン持ってる」

門番B「でも、肝心のお前自身が弱くっちゃ、な」

勇者「そうか……そういうことだったのか……」

勇者「決めたよ……二人とも」

勇者「俺、一から鍛え直してくるよ」

勇者「もし、俺が技や装備に頼らなくてもいいぐらい、真に強くなれたら──」

勇者「また相手してくれるか?」

門番A「おう、もちろんだ!」

門番B「ケケケ、さっさと行けや」

門番B「勇者とだべってるとこなんて見られたら、減給されちまうもんな」

勇者「……ありがとう」

勇者「俺、必ず強くなって戻ってくるよ!」

門番A「じゃあな〜!」

門番B「頑張れェ〜!」

勇者(一から……いや!)

勇者(ゼロから──鍛え直すんだ!)

<剣豪の家>

剣豪「どうした!?おめえ、魔王討伐に出かけたんじゃ──」

勇者「師匠、俺を鍛え直してくれ!」

勇者「基本からやり直したいんだ!たとえ遠回りになっても!」

<魔術師の館>

魔術師「ふむ……魔法の修業をやり直したい、というのだね?」

勇者「ああ……このままでは魔王には通用しないと分かった!」

勇者「俺は呪文に使われるのでなく、呪文を使う戦士になる!」

<田舎の村>

村人「勇者様に野良仕事を手伝ってもらうなんて、悪いべよ〜」

勇者「いや、いいんです」ドスンッ

勇者「体を鍛えるには、こういう仕事をこなすのが一番ですから!」

<怪物谷>

ザンッ!ザシュッ!ズシャッ!ザンッ!ズバッ!

勇者「ハァ……ハァ……ついにやったぞ」

旅人「あの怪物は無限に湧き出るものと思っていたのに、まさか有限だったとは!」

<雪山>

勇者(雪山を半裸で踏破し、体力と精神を極限まで鍛え抜く!)

勇者「心頭滅却すれば、氷もまた熱しッ!」ザクッザクッ

登山家「すげぇ……。あの人の周辺だけ……あまりの熱気で雪が溶けてる……」ゴクッ…

ついに──

<地獄>

ザシュッ!

地獄王「ぐわあああっ……!」

地獄王「まったく、恐ろしいヤツよ」

地獄王「我が宿敵である魔王が死なない限り解けぬ結界を、強引に解き──」

地獄王「地獄に侵入し、余に挑みかかり、しかも余を打ち負かすとはな……」

勇者「どうだ?俺は強いか?」

地獄王「勝利した相手にそれを問うとは……おぬしこそ真の求道者よ」

地獄王「おぬしは強い」

地獄王「今のおぬしであれば、まちがいなく魔王にも勝てるであろう」

勇者「ありがとう、地獄の王」

勇者(あの三度の敗北から、色々なことがあった……)

勇者(修業をやり直し、心身を鍛え上げ──)

勇者(立ち寄っていなかった場所に巣食っていた魔物も倒してきた)

勇者(そしてついに、魔王と同格ともいわれる地獄王に負けを認めさせた)

勇者(しかし、心は決して満たされることはない)

勇者(それどころか、進めば進むほど目的地が遠ざかるような……そんな感覚だ)

勇者(だれに勝った、だれに負けた、などというのは些細なことに過ぎない)

勇者(きっと“真の強さ”とは、こういう境地のことを指すのだろう)

勇者(さぁ、行こう)

勇者(今こそ魔王を倒しに!)ザンッ

<魔王城城門>

門番A「ピザって十回いってみろ」

門番B「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」

門番A「じゃあ、ここは?」スッ

門番B「ヒジ」

門番A「くっそ、なんで引っかからねえんだよ!」

門番B「甘いぜェ〜」

門番B「しかもオイラ、ピザって九回しかいってねえしさ。ちゃんと聞いとけよな?」

門番A「あっ、マジかよ!インチキしやがって!」

門番B「ケケケ、ざまあねえなァ〜」

勇者「オイ、お前たち!」

門番A「!」

勇者「久しぶりだな」

門番A「テメェはたしか──」

門番B「勇者、か?ずいぶん雰囲気が変わったなァ……一瞬分かんなかった」

勇者「あれから鍛え直したからな……」

勇者「さあ、今度こそ門を通してもらうぞ!」

門番A「そうはいくかってんだ!」

門番B「ケケケ、門番ってのは門を守るのが仕事だからなァ〜」

門番A「かかってきやがれ!」

門番B「ケケケ、楽しませてくれよォ〜?」

勇者(勝ち負けは考えない)

勇者(この先に控える魔王や、捕らわれの姫のことも、今は忘れよう)

勇者(ただ、己の剣を全力で振るうことだけ考えろ)

勇者(まっすぐに──前進あるのみ!)ダダダッ

ズバシュッ!

ゆうしゃのからだがまっすぐふっとんだ!

勇者「…………」ピクピク…

勇者「な……」

勇者「なんでだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

勇者「なんで……ねぇ、なんで!?」

勇者「俺は剣の修業をやり直して、魔法の勉強もやり直して」

勇者「野良仕事で体を鍛えて、怪物谷の無限モンスター地帯も制覇して」

勇者「極寒の雪山に負けない熱い心を身につけて」

勇者「地獄への道をこの手で開いて、魔王と同格である地獄王をも屈服させた!」

勇者「なのに、なんで勝てないんだよぉぉぉぉぉっ!!!」

勇者「なんでお前ら、そんなに強いんだよぉぉぉぉぉっ!!!」

門番A「…………」

門番B「…………」

門番A「……なんでっていわれてもなぁ」

門番B「ねぇ?」

門番A「まぁ、俺たちは二人とも上級魔族だし、生まれつき強いしな」

門番B「そだなァ」

勇者「いや、それだけじゃないはずだ!」

勇者「上級魔族ならお前たちに初めて挑む段階で、すでに何体も倒していた!」

勇者「魔王軍幹部である、お前たちより格上の最上級魔族でさえ倒してきた!」

勇者「上級魔族だからってのは一因にはなりえるが、主因にはならない!」

門番A「……だとよ」

門番B「う〜ん」

門番B「あと心当たりがあるとするなら、魔王城の門番ってすげぇ倍率高くてさ」

門番B「募集二名に対して千名近く集まって」

門番B「その中でやっと勝ち抜いて選ばれたから、それで強くなれたのかもな?」

勇者「募集……?勝ち抜く……?」

門番A「懐かしいな……」

門番A「たしか一次試験が、二百名になるまで殺し合え、だったよな?」

門番B「そうそう」

門番A「で、二次試験がなぜか筆記」

門番A「これで百名まで絞られた」

門番A「三次試験が──なんだっけか?」

門番B「溶岩を泳げ、みたいなヤツだっただろ」

門番A「ああ、そうそう!」

門番B「そんでもって四次が身体能力テストで、最終試験は面接」

門番A「よく覚えてんな……何百年前のハナシだよ」

門番B「こんくらい覚えとけよなァ〜」

勇者「…………」

勇者「たしかに……門番になるための道は過酷だったかもしれない」

勇者「だけど、それだけでここまでの強さになるってのは絶対におかしい!」

勇者「俺だって、今までに倒してきた魔族や魔物の数を数えれば──」

勇者「おそらく軽く千を超えるだろうし」

勇者「溶岩の海を自在に泳ぎ回る竜を仕留めたことだってある!」

勇者「こんなんじゃ、納得できない!」

門番A「テメェもなかなか粘るな。さすがは勇者」ニッ

勇者「そんな褒め方されても、全然嬉しくない」

門番B「だとすると──」

門番B「オイラたちは門番の業務そのもので強くなったってことかねェ?」

門番B「あんま実感はないけどさ」

勇者「門番の業務で強くなった……?」

勇者「ずっと突っ立ってるだけなのに、どうして強くなれるんだ!」

門番A「オイオイ勇者、テメェ門番って仕事をちぃっと甘く見すぎじゃねえか?」

勇者「なに?」

門番A「突っ立ってるだけってのは、結構辛いんだぜ?」

門番B「ケケケ、24時間ずっと立ってなきゃいけないからなァ〜」

門番A「一応、あっちに俺たち用の寝床は用意されてるけど」

門番A「忙しくて、ここ数年使ってねえもんな」

門番B「だなァ」

勇者「忙しいって……俺が来るたびヒマそうにしてるじゃないか、いつも」

門番B「ケケケ、そう見えるだろォ?」

門番B「魔王城にやってくるのは、なにもお前だけじゃないんだなァ〜」

門番B「たとえばこの魔王城周辺にいるモンスターの中には」

門番B「凶暴で、理性なんかまるでないヤツも多い」

門番B「そいつらがオイラたちに襲いかかってくるなんて日常茶飯事だしさ」

勇者「そうなのか……」

門番A「あと、魔王様に取って代わろうっていう魔族連中も多いんだ」

門番A「魔王様を狙う勢力の上級魔族連中が、しょっちゅうやってきやがる」

門番A「今のところ、全部返り討ちにしてるがよ」

門番A「さっきテメェがいってた地獄王が、刺客を放ってきたこともあったっけな」

勇者「戦いっぱなしじゃないか……」

門番A「それに──」

門番A「勇者の加護とやらで暗黒瘴気の影響を受けないテメェにゃ分からんだろうが」

門番A「魔王城周辺の環境ってのは非常に過酷だ」

門番A「暗黒瘴気のせいで、気温は最大で500℃近くまで上がるし」

門番A「冷える時はマイナス180℃まで下がる」

門番A「こんなとこで、ろくな装備もなしに突っ立ってるんだぜ、俺たち」

門番A「24時間ずぅ〜っと、な」

勇者「門番って大変なんだな……。そりゃ強くなるわけだ……」

勇者(なんてことだ……)

勇者(コイツらの門番人生に比べたら、俺の修業なんてママゴトも同然じゃないか!)

勇者(だけど……コイツらをどうにかしなきゃ、魔王にはたどり着けない!)

勇者(正直いって、二人を実力でどかすことは難しい……!)

勇者(だったら気は進まないが……これしかない!)

勇者「あのさ……」

勇者「ハッキリいうけど、二人は魔王より強いよ」

門番A「ハァ!?……さすがにそんなことねえだろ」

門番B「だよなァ〜、過大評価ってヤツさ」

勇者「いや……地獄王に勝利した俺がいうんだから間違いない」

勇者「二人なら、魔王を倒して下剋上することだって夢じゃない!」

勇者「どうだ!?いっそ魔王を倒して天下を狙ってみないか!?」

勇者(この二人が魔王を倒したところで、人間界をどうこうする欲はなさそうだし)

勇者(少なくとも、今よりは世界が平和になることはまちがいないだろう)

勇者(実力で敵わない以上、この二人をどうにかする方法はこれしかないんだ!)

勇者(もう手段を選んでなんかいられない!)

門番A「いや、いいよな。門番のままで」

門番B「うん」

門番B「キツイけど、嫌いじゃないしなァ……今の生活」

勇者(計算が違った!コイツら、欲がなさすぎる!)

門番A「まぁ、できればもっと給料欲しいけどな」

門番B「ケケケ、それはあるかもな」

勇者(ずっとここにいるのに、金なんか必要あるのかよ……)

勇者(でも、金か。ある意味、もっとも分かりやすい欲といえる)

勇者(金なら、コイツらを動かすこともできるかもしれない!)

勇者「ちなみに、今の給料はどのぐらいなんだ?」

門番A&B「日給100ゴールド」

勇者(安っ!!!)

勇者(たしか、どっかの町にいたろくに仕事してない兵士が月給10万ゴールドで)

勇者(給料安すぎとかぼやいてたよな……)

勇者(アイツが寝てたせいで町が奇襲を受けて……あ〜、思い出したら腹立ってきた)

勇者(一方、コイツらはたった月給3000ゴールド……)

勇者(しかも、どう考えてもあの兵士より働いてるってのに……)

勇者(人と魔族という差はあれど、なんという格差社会!)

勇者(なんだか、本当に気の毒になってきたぞ……)

勇者「オイ、お前たち!」

勇者「だったら……日給1000ゴールド出す!」

勇者「だから俺に協力してくれないか?」

門番A「1000ゴールドも!?じょ、冗談だろ!?」

門番B「ほ、本当かよォ〜?」

勇者(脈あり!)

勇者「本当だ」

勇者「この間までの修業で、モンスターや賞金のかかった悪人を倒しまくって」

勇者「俺もだいぶ貯金ができた」

勇者「俺自身、元々金にはそんなに執着がない人間だしさ」

勇者「日給1000ゴールドぐらいなら余裕で払える」

門番A「オイ、どうするよ!?」

門番B「う〜ん……悪い話じゃないよなァ〜。オイラ、勇者のことも嫌いじゃないし」

シ〜ン……

門番B「よし、分かった!提案を飲もうじゃんか!」

門番A「俺たちは門番をやめて、お前に協力してやるよ!」

勇者「ありがとう!」

勇者(よっしゃ!)グッ

勇者「なら、さっそく魔王のもとまで案内してもらえるか?」

門番A「魔王様のところに行くってんなら、裏門から行った方が早いな」

門番B「裏門なら、魔王様の部屋にほとんど直通だからねェ〜」

勇者「そんなのがあるのか!?」

門番A「そりゃそうだろ。魔王様だって出かけられる時はあるんだからな」

門番A「そのたびに、いちいち迷宮みたいな魔王城を歩いてらんねえだろ」

門番A「もちろん魔王様か、もしくは門番である俺らの承認がないと開かないけどな」

門番B「ケケケ、さっそく行くとしようか」

勇者(よし、これで労せずして魔王のところまで行ける!)

勇者(俺が魔王を倒すか、コイツらに倒させるかについては、流れで決めよう……!)

<魔王の部屋>

魔王「姫よ、いい加減にワシのものとなれ!」

魔王「この暗い部屋で、勇者を待つ日々にもそろそろ飽きたであろう」

魔王「もはや、勇者がおぬしを助けに来ることなどありえぬのだ!」

姫「いいえ、勇者様は必ず来て下さいます!私は信じてます!」

魔王(ぬう……どこまでも強情な姫よ)

魔王(しかし、力ではなく心にて屈服させねば)

魔王(姫を魔族に転生させ我が妃とすることはできぬ)

魔王(まぁよい……)

魔王(時間はいくらでもある。焦ることはあるまい……)

バァンッ!

魔王「なんだ!?」

勇者「そこまでだ、魔王!」

勇者「姫様、助けに来ました!」

姫「勇者様!」

魔王「な……勇者!?まだ城内には部下がいる気配がするというのに──」

魔王「キサマ、どうやってここまで来た!?」

門番A「すんません、魔王様」

門番B「オイラたちが裏門を開いて、来させちゃいましたァ〜」

魔王「キサマらは……たしか門番だな!?なぜワシを裏切った!」

門番B「日給1000ゴールド出すっていわれたもんで……ケケケ」

魔王「金で魔族の長であるワシを裏切るとは……見下げ果てたヤツらよ!」

魔王「断じて許せぬ!」

門番A&B「ひっ!」ビクッ

魔王「勇者の前に、まずキサマらから葬ってくれよう!」

魔王「カーッ!!!」ブオンッ

バリバリバリバリッ……!!!

姫「きゃあっ!」

勇者(この魔力……地獄王よりも上だ!でも──)

門番A「いだだ……す、すんません!」プスプス…

門番B「シビれちゃった……」プスプス…

魔王「え!?」

魔王(バカな……今のは全力で放った雷撃だったはず!)

勇者(やっぱりな……)

勇者(あれぐらいで二人を倒せるんなら、俺がすでに倒してるはずだ)

魔王(どういうことだ……!?)

魔王(コイツらは雷撃に対して抵抗力を持っていたということか!──ならば!)

魔王「ぬえいッ!!!」バッ

ボォアアアァァァッ……!

魔王「キエェッ!!!」ブワッ

ビュアアアァァァッ……!

門番A「う〜……ちょっと熱いし寒い!」

門番B「サウナの後、冷たいシャワーを浴びた気分?」

魔王「なんだとぉ……」

魔王(コイツら、まさか……ワシよりずっと強い!?)

魔王(い、いかん……!ならば再び雇い直さねば……!)

魔王「オイ、門番!」

魔王「さっきキサマらは、日給1000ゴールドで勇者の味方になったといったな?」

門番A「はい、そうっす」

魔王「ならワシは……1200ゴールド出そう!」ビシッ

魔王「さあ、ワシのもとに戻ってこい!」

門番A「えぇっ!?」

門番B「ホントですかァ、魔王様!」

勇者「な……!」

勇者「オイ魔王、お前には恥というものはないのか!?」

魔王「黙れ勇者!どうせキサマもコイツらを倒せずに金で買収したクチだろう?」

勇者「うっ!」ギクッ

魔王「さぁ、ワシのもとへ戻ってこい!」

門番A「そうだな……元々俺たち魔族だし……」

門番B「勇者から給料をもらったワケでもないしねェ〜」

勇者(むむむ……ここで再びコイツらが敵になったらマズイ!)

勇者(地獄王より強い魔王と、それ以上に強い二人を相手しなきゃならなくなる!)

勇者(……なんとしてもそれは避けねば!)

勇者「だ、だったら……!」

勇者「日給1500ゴールド出す!」バッ

門番A「ウソォッ!?」

門番B「1500!?破産しちまうぞォ!?無理すんなァ!」

勇者「いや、それぐらいの金はある……だから戻ってきてくれ……頼む!」

門番A「まぁ、さっき勇者に雇われたばかりでまた魔王様につくってのもなぁ」

門番B「やっぱり勇者側に──」

魔王(おのれぇ〜勇者めぇ〜……!)

魔王「ならば、ワシは1700ゴールド出す!」

勇者「ぬ!」

勇者「だったら……俺は1900ゴールドだ!」

魔王「ならばワシは1950ゴールド!」

勇者「1970ゴールド!」

魔王「2000ゴールド!」

勇者「2020ゴールド!」

魔王「2030!」

勇者「2035!」

門番A「オイオイ、どうするよ……二人とも一歩も引かないんだけど」

門番B「なんか、すごく悪いことした気分になってきたな……」

門番A「あ、とうとう1ゴールドずつ上がり出したぞ」

門番B「そのうち小数点以下になるんじゃないかァ〜?」

姫「…………」ピクピクッ…

姫「いい加減になさいッ!!!」

勇者「!?」ビクッ

魔王「!?」ドキッ

門番A「!?」ギクッ

門番B「!?」ブルッ

姫「ここはオークション会場ではないのですよ!?」

姫「しかも、自分の敵だったり部下だったりした者を対象に──」

姫「その上、金額の上がり方がみみっちいったらありゃしない!」

姫「勇者と魔王ともあろう者が、情けないと思わないのですか!?」

勇者&魔王「お、思います……」

姫「…………」ハァ…

姫「この人魔大戦の決着、とてもあなたがたに任せてはおけません!」

姫「ここからは私が仕切ります!」

姫「まず門番のお二人!今から私がお二人を日給1万ゴールドで雇います!」

門番A&B「えええええっ!?いちまんんんん!?」

勇者&魔王「なんだとぉぉぉぉぉ!?」

姫「ただいまより、あなたがたを私の親衛隊に任命します!」

姫「私を全力で守り、なおかつ私が命令したら即座に敵を撃滅なさい!」

姫「よろしいですね!?」

門番A「よろしいですねって……」

門番B「返事は一つしかないよなァ〜、なんたって1万だもん」

門番A&B「分かりましたッ!」ビシィッ

姫「それから勇者様!まずは助けに来てくれてありがとう!」

姫「あなたは私と結婚し、なおかつしばらくは王国のお城の門番をやってもらいます!」

姫「先ほどあんなみっともないオークションを演じた罰です!」

勇者「はっ、はいっ!」

姫「あと、魔王!」

姫「あなたは即座に魔王軍を人間界から撤退させなさい!」

姫「ついでに門番は二人必要ですから、あなたにもお城の門番をやってもらいます!」

姫「なので、魔王軍の指揮権は今日中に誰かに譲渡すること!」

魔王「ふざけるな!なんでワシが──」

姫「私の親衛隊になった二人をけしかけますよ?」ギロッ

魔王「わ、分かった……」

姫「ん?」

魔王「わ……分かりました……」

姫「よろしい」ニコッ

門番A「なんかよく分からねえが──」

門番A「俺たち二人とも、高給の仕事にありつけたな!」

門番A「日給1万ゴールドだってよ!やっべえだろ、これ!」

門番B「ケケケ、まったくだ」

門番B「これぞ、棚からぼた餅ってやつだねェ〜」

門番A「ま、これからはあの姫……いや姫様を守っていこうぜ!」

門番B「ケケケ、そうだなァ」

門番B「門番より、面白いかもしれないしなァ〜。めでたしめでたし、だな!」

門番A「そういうこった!」

こうして、門番の二人は姫の親衛隊となり、勇者と魔王の二人は門番となった。

そして──

<王国城城門>

勇者「ヒマだなぁ〜」

魔王「ヒマだ」

勇者「今頃、姫は元門番の二人を連れて国中をパトロールでもしてるのかな」

魔王「あの二人がいれば、どんな悪党でもイチコロであろう」

勇者「…………」

魔王「…………」

勇者「俺たち、なんでこんなことになっちゃったんだろうな」

魔王「さあな。そんなことはワシが聞きたい」

魔王「だがキサマはよかったではないか。姫と結婚できたんだからな」

勇者「すっかり尻に敷かれてるけどな……ハハ」

勇者「ま、幸せっちゃ幸せだよ」

勇者「世界が平和になっても、こうして必要とされてるわけだしさ」

勇者「そっちこそ、撤退した魔王軍は、後任がうまく仕切ってるみたいじゃないか」

魔王「うむ、あれならもう資源を求めて人間界に攻め入る必要はあるまい」

魔王「キサマが地獄王に負けを認めさせたことも手伝ってか」

魔王「魔族同士の勢力争いもだいぶ落ち着いたようだしな……」

魔王「いずれ門番を辞めていいことになったら、静かに魔界で暮らそうと思う」

勇者「ふぁ〜……夜の交代時間まで、やることもないし……しりとりでもやる?」

魔王「よかろう」

勇者「じゃあ、しりとり」

魔王「リストラ」

勇者「落第」

魔王「引退」

勇者「隠居」

………

……


─  完  ─ 

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この記事のコメント一覧
1 . 見ない  ID:5J6j6Egg0編集削除
絶対に
2 . 名無しさん  ID:pS6sgAC40編集削除
引用元リンクでも貼ればいいのにな、ここより読みやすいだろうし。
3 . SEXマシーン  ID:X6k7IM.50編集削除
あー、SEXしたい。
グラビアアイドルの西田麻衣とSEXしたい。
顔射したい!
4 . 名無しさん  ID:qoxzgbeb0編集削除
あれ?今回意外と短い
5 . 名無しさん  ID:nQ7ob6T00編集削除
適度な長さで読みやすかった、おもしろかったw
6 . 名無しさん  ID:ZuJSQG9V0編集削除
うんこ

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