傭兵登録受付「え?」

勇者「ですから、魔王を倒すためにすごく美人で有能な僧侶と魔法使いをお願いします」

受付「あの……魔王を倒すのにすごく美人なのは関係あるんですか?」

勇者「あります」

受付「どのような?」

勇者「僕のヤル気が上がりますよね?じゃあ、魔王を倒す可能性もあがります」

受付「……」

勇者「この際、すごく美人な僧侶と魔法使いでも構いません」

受付「ちょっと待っていてください」



勇者「はっ」

受付「えーと……」キョロキョロ

/\.0

―――魔道士の塔 四階

僧侶「勇者様!!」

勇者「なんですか?抱かせてくれるのですか?」

僧侶「怪我してませんよね?抱く必要はないかと」

勇者「え……」

僧侶「ここに扉があります」

魔法使い「怪しいわね」

エルフ「一応、中を確認しておくほうがいいと思う。監禁されている人もいるかもしれないし」

勇者「そうですね。肉奴隷化した少女が居たらお持ち帰りしないと」

魔法使い「……早く、開けて」

勇者「はい」グッ

ギィィィ……

僧侶「……!?」

エルフ「え……?!な、なに……あの……子……?!」

勇者「は、は、裸の少女が変な水槽にはいってるぅぅぅぅ!!!!」

魔法使い「なに……これ……?」

エルフ「……キラー……マジンガ……?」

勇者「なんだー!?これー?!すっげー!!!えー!!!裸だぁ!!!」

魔法使い「うるさい!!外に出てて!!」ゲシッ

勇者「あうっ?!そんな!!僕にだって目の保養を―――」

バタンッ

魔法使い「で、この子は?」

エルフ「感じからして……普通の人間じゃないと思うけど……」

僧侶「キラーマジンガって名前からするに、機械っぽいですよね」

魔法使い「そうね」

エルフ「もしかしてここのボスが作ったもの……?こんな技術をもっているなら……ボクたちに勝ち目は……」

魔法使い「エルフ族の精製技術より数段上ね……」

僧侶「とんでもない魔法具を身につけているのでは?」

エルフ「……」

魔法使い「トロルや魔人よりも強敵であることは間違いないわね」

ギィィ……

魔法使い「お待たせ、行きましょう」

勇者「で、あの水槽に入っていた少女は?」

エルフ「ここのボスが作った機械兵士だと思うけど」

勇者「なるほど。では、起動させましょう」

魔法使い「どうして?」

勇者「即!戦!力!じゃないですか。何言ってるんです?」

僧侶「そうですね。ここのボスさんもかなりの強敵なら、戦力は多いほうがいいですよね」

勇者「んだ!」

魔法使い「あんた―――」

エルフ「駄目」

勇者「どうしてですか?」

エルフ「もし製造した者の指示にしか従わないようになっていたら、恐ろしい難敵を目覚めさせることになる。起動させるにしてもちゃんと調べてからじゃないと危険すぎるよ」

勇者「む……。確かにそうですね。あのような可憐な少女とは刃を交えたくありませんし」

魔法使い「はぁ……。あんた……ちゃんと後先考えてよね……ホント……」

勇者「では、後ほど迎えにくるということで」

魔法使い「え?どうして?」

勇者「側室候補だからだよぉ!!いい加減、わかれよぉ!!」

魔法使い「ちょっと!!人間じゃないのよ?!」

勇者「それが何か?」

魔法使い「は……!?」

エルフ「見たところ生殖器とか実装されていなさそうだったけど……」

勇者「んなもんいらねえよ!!可愛ければいいじゃん!」

魔法使い「もう突っ込みきれないわ……」

僧侶「流石は勇者様です。差別も区別もしないなんて……」

勇者「はい。人間や魔族や機械兵士。皆、この星に生まれたのなら家族みたいなものです!!愛する者を細分するなんてできませんよぉ!!!」

エルフ「カッコいいのかどうかよくわからないけど……」

魔法使い「前半の本音が無ければカッコいいわね」

エルフ「ふーん」

勇者「僕の側室も多種多様になってきましたね!!いやぁ!!めでたいのぉ!!」

―――最上階

魔道士「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!次はぁ……お前にしようか!!!」グイッ

女性「んー?!?!?」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!さぁ!!!搾り取ってあげましょうかぁ!!!!」

女性「んぅぅぅううう!!!!!」

魔道士「―――ふふふ。中々じゃないですかぁ……くくく……」

魔物「キー!!!キー!!!!」

魔道士「え?勇者一行が?使えない部下ばかりで困るよ、全くぅ」

魔物「キー……」

魔道士「いいでしょう。この私が直々に相手をしてあげますよぉ!!!あっひゃっひゃっひゃ!!!」

魔物「キー!!!キー!!!!」

魔道士「ああ、そこのゴミはいつものようにニンゲンに売りますから、ゴミ箱にでも入れておいてくださいねえ」

魔物「キー!」グイッ

女性「ぁ……ぉ……」ピクッピクッ

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!行きましょうか!!!!」

―――最上階 大扉

勇者「階段はありましたか?」

魔法使い「こっちには無かったわ」

エルフ「ここが最上階じゃないかな?」

僧侶「そうだといいですね」

勇者「じゃあ、あとはこの扉の先だけですか」

魔法使い「早く行きましょう。また被害者が出る前にボスってやつを叩かないと」

勇者「そうですね。どうやら、僕たちのことを警戒しているようですし」

エルフ(本気で警戒しているなら魔法に対しての備えは万全と見るべきかな……)

勇者「開けますよ」

ギィィィ……

勇者「む……?」

魔道士「ついにきましたね。勇者ご一行様……」

勇者「貴方は?」

魔道士「この塔に住まうしがない魔道士ですよ。あっひゃっひゃっひゃ」

エルフ「魔道士……!?」

魔道士「おんやぁ?その人は……エルフ族ですかぁ?」

魔法使い「だったら、なによ?」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!これはいい!!!流石は勇者様ぁ!!!感謝の極みですよぉ!!!」

勇者「なに?まさか魔族に僕の魅力が分かる人がいるなんて」

魔道士「私に手土産を持ってきてくれるとはぁ!!あっひゃっひゃっひゃ!!!いやぁ!!!うれしいですよぉ!!!」

僧侶「手土産って……」

魔道士「私にエルフを譲ってくれるのですねぇ?」

勇者「……あ?」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃ!!素晴らしい!!最近はエルフの入荷が少なくて困っていたんですよぉ!!」

エルフ「貴方はエルフを使ってなに―――」

勇者「はははは。ご冗談が過ぎますよ?」

魔道士「なにがでしょうか?」

勇者「僕から側室候補を奪おうとするとはいい度胸ですね。―――五体満足では帰しませんよ?」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃ。なるほど!!エルフに手を出す人間がここにもいたのですねえ!!では、私のゴミ箱から好きなだけ持っていってくださいな!!」

僧侶「ゴミ箱ってなんですか?」

魔道士「そのエルフを譲ってくれるのなら!!今、余っている4人のエルフをあげます!!」

勇者「オンナ?!」

魔道士「もちろん」

勇者「むむむむ……!!!」

魔法使い「アンタねえ!?」

エルフ「ボクだから良いって言ってじゃないか?!」

勇者「そうですよ?」

エルフ「だったら、なんで悩むのさ!!」

勇者「いやぁ。こいつを倒せば一気に側室候補が増えるなあっと思って。増えると、ほら部屋割りとか悩んでしまうじゃないですか」

エルフ「そ、そういうこと……」

魔法使い「……」ジーッ

エルフ「え?あ……!!いや、今のは言葉の綾で!!!」アセアセ

僧侶「ふふ……」

エルフ「わ、笑うな!!」

魔道士「おやおや……。今、とんでもないことを言いましたねえ」

勇者「エルフだけで側室が5人も埋まっちゃうなんて、これは新手のハーレムですね。ええ」

魔法使い「会話になってないわよ?」

魔道士「私を……倒すといいました?」

勇者「はい。倒して、4人のエルフをゲッチュです」

魔道士「あひゃ……あひゃひゃ……」

僧侶「そ、それよりゴミ箱って……」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!」

魔法使い「な、なにこいつ……」

エルフ「魔道に生きる魔物は大体こうなの。研究のこと以外は毛ほども興味を持たない」

僧侶「頭がおかしいってことですか……?」

勇者「……」

魔道士「いやぁ、勇者様。エルフを譲ってくれるなら、生きたまま素体にしてあげようと思いましたが、戦うというのなら死体を素体にしましょう」

魔道士「まぁ、私としては意思を持たない死体のほうがいいんですけどねぇ!!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

勇者「僕の体でエッチな妄想をする奴を初めてみた!!不快だ!!!」

魔道士「研究の続きがしたいので!!一気に終わりにしますよぉぉぉ!!!!!」

エルフ「まずい!!下がって!!!」バッ

勇者「え―――」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」ゴォォォォ

エルフ「ふっ!!!」キュィィン

魔道士「おぉ!!!すごい!!!私の魔法を完璧に防ぐとはぁ!!!」

エルフ「……」

魔法使い「すごいじゃない……」

僧侶「これなら戦えますね」

勇者「あの」

エルフ「なに?」

勇者「何発まで防げそうですか?」

魔法使い「やっぱり……」

エルフ「あと5発……かな……」

僧侶「そ、そんな!?」

エルフ「あの桁違いの魔力を防ぐにはボクも魔力をフルに使うしかないから……」

僧侶「じゃあ、どうしたら?!」

勇者「接近すれば余裕で勝てるんですけどね」

魔法使い「扱う魔法は私たちと大して違わないわね」

勇者「では―――」

魔道士「さぁぁ!!!終わりにしまようかぁぁぁ!!!!」ゴォォォォ

エルフ「はぁぁぁ!!!」キュィィィン

魔道士「あひゃ?!いいですねえ!!!流石はエルフ!!!」

エルフ「でぁぁ!!」ダダダッ

勇者「続けー!!」ダダダッ

魔道士「ああ!!エルフを文字通り盾にして特攻ですかぁ!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

エルフ「……っ」ダダダッ

勇者「危険ですが、お願いしますね」

魔法使い「一発ぐらいなら……きっと……」

僧侶「わ、私もサポートします」ギュゥゥ

魔道士「さぁ!!いつまで耐えられますかぁ?!」ゴォォォォ

エルフ「ずぁ!!」キュィィン

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

勇者「いまだぁ!!!!」ダダッ

魔道士「おやぁ?!そこから攻撃ですかぁ?!」

勇者「はぁぁぁ!!!」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」ゴォォォォ

勇者「ふっ―――」

魔道士「貴方ならまる焦げでもいい素体に―――」

魔法使い「―――熱いわね!!」

魔道士「ほう!!なるほどぉ!!それが貴女の力!!!欠陥の特異体質ですかぁ!!!!」

勇者「―――誰が欠陥だ!!おらぁぁ!!!」ゴォッ

魔道士「ほほう!!」

勇者「俺の側室候補を愚弄するやつは許さん!!!」ザンッ

魔道士「ぎゃぁぁ―――!!!」

エルフ「やった……!!」

僧侶「あの……お怪我は?!」

魔法使い「大丈夫。あんたが抱きついてくれていたからもう治ったわ」

僧侶「よかった」

勇者「……」

魔道士「……」

エルフ「さあ、捕らえられた人を―――」

勇者「待ってください!!!」ガシッ

僧侶「え?!な、なんですか?!」

魔法使い「アンタ!!またセクハラを!?」

勇者「違う!!それを貸して!!!」

僧侶「え?え?」

魔道士「―――あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!!」

エルフ「な……?!」

魔道士「私には……そのような攻撃など通用しませんよぉぉ!!!」

勇者「これを奴に―――!!!」ダダダッ

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!」ゴォォォォ

勇者「うわっと!?」

魔道士「外しましたか」

勇者「遅かった……」

僧侶「どうして……今……確実に……」

魔道士「貴女たちの特異体質……おもしろいですよねぇ」

魔法使い「なんですって?」

魔道士「魔力が漏れているから常に魔法の効果を得られるなんて。早速真似をしてみましたよぉ」

エルフ「真似って……」

魔道士「そう!!傷つけばその場で即治癒!!中々どうして素晴らしい!!!」

魔法使い「よかったわね。褒められて」

僧侶「あまり嬉しくないです」

魔道士「貴女も。弱いニンゲンが最高出力で魔力を放つ方法は、貴女のような体質でなければ不可能でしょう!!神に感謝すべきでは?!」

魔法使い「それはどうも……」

魔道士「まぁ、私に物理的な攻撃は通じませんよぉ」

勇者「人間の能力を流用するなんて、プライドはもってないのか?!」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃ。面白い活用法があれば喜んで使用させていただきますよぉ。私は頭の固い魔族ではないのでぇ」

勇者「ちっ……」

魔道士「剣では魔法を破れない!!!これは自然の理ぃ!!!」

魔法使い「良いこというわ」

僧侶「勇者様も強いです……」

魔道士「さぁ!!!勇者様ぁ!!素体になっていただきましょうかぁ!!」

エルフ「素体って一体なに?」

魔道士「私の研究に使用する肉体のことですよ!!魔族ではどうしても成功しませんでしたが、最近、ニンゲンだとうまくいくことに気づきましてねえ」

勇者「え?」

エルフ「それって……もしかして……」

魔道士「無尽蔵のエネルギーを持ち!!!心まで有する機械兵士の開発ですよぉ!!!!」

勇者「あの水槽に入っていた少女か……」

魔法使い「人造人間じゃなくて……人間を改造しているってこと……?」

魔道士「あっひゃっひゃっひゃっひゃ。さあ、勇者様。私の研究の礎になってもらいましょうかぁ!!!」

勇者「断る!!僕には叶えたい夢があるから!!!」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」ゴォォォ

勇者「なっ―――」

エルフ「くっ!?」キュィィン

勇者「……」

エルフ「はぁ……はぁ……策は?」

勇者「これさえ……奴につけられたら……」

エルフ「魔封じの腕輪……」

勇者「……」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!!」

勇者(捨て身はもう通用しない。奴の魔法はもう防ぎきれない。どうしたら……)

僧侶「……せない……」

魔法使い「え?」

僧侶「わ、私は絶対に貴方を許しません!!!」

魔道士「はい?」

僧侶「命をなんだと思っているのですか!!!」

魔法使い「ちょっと……」

魔道士「命?!そんなものぉ!!ただの材料にすぎませんねえ!!!」

僧侶「ざい……?!」

魔道士「その通り。低脳なニンゲンは知らないでしょうが、命とは最も逞しいエネルギーのですよぉ」

魔道士「虫にも獣でもニンゲンでも、そのエネルギー量に違いはない!!どの種も平等な量を持っている!!素晴らしいエネルギーだ!!!」

勇者「何を言っているんだ……?」

僧侶「……っ」ギリッ

魔道士「ですが、そのエネルギーも有限。生きているだけで消費していってしまう。生きるためにそのエネルギーは無くなっていく!!回復もしない!!!」

魔道士「なら、そのエネルギーを無限にしてやろうじゃないですかぁ!!!この私がぁ!!!!」

エルフ「そんなことできるわけ……」

魔道士「できますねえ!!!ニンゲンのエネルギーを吸収し続ければいいだけの話ですし!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

魔法使い「無限のエネルギーって……」

魔道士「この世界にニンゲンは腐るほどいる!!その有り余るエネルギーを有効活用してやろうというのですよぉ!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

僧侶「なんて……ことを……!!!」

エルフ「それはエルフからも……?」

魔道士「エルフは特別ですよ。エルフ族は命の他にも魔力というエネルギーもあるのでね」

魔法使い「同じ魔族もそうやって材料として考えるのね」

魔道士「エルフは魔族にあって、魔族に非ず。ニンゲンに尻尾を振って生きてきた売春婦な種族!!!」

勇者「……」

魔道士「そのような種族を生かしておくことなど、魔族の恥です。でも、そのまま虐殺するのも勿体無い話。ならば―――」

エルフ「全てを吸い上げ……機械兵士の燃料にする……」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!貴方たちも本望でしょう?!魔族の役に立ってて!!!」

勇者「貴様も人間に媚売って、そのエネルギーを得ているんだろう?」

魔道士「媚を売ってくるのはニンゲンの方ですが?―――金さえあれば言う事を聞いてくれる有能なアリだ」

僧侶「……!」

魔道士「しかも、人形にも劣る抜け殻のニンゲンを大金出して欲しがる者までいる始末!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

魔法使い「人間を操る為に商売をしていたってわけね……」

魔道士「この国はぁ!!私にとって養鶏場そのもの!!!ニンゲンがニンゲンを産み、そして育み!!私がその命を喰らうサイクル!!!あっひゃっひゃ!!サイコー!!」

勇者「ゴミ箱というは……命を吸い上げた人間と入れておく場所のことか」

魔道士「ええ!!そうですとも!!」

僧侶「……っ」

魔道士「命のないニンゲンは金に替えるだけの道具。私からすればゴミです」

魔法使い「……」

エルフ「取り消せ!!」

魔道士「これはこれは卑しいエルフですね。やはりニンゲンが恋しいですか?」

エルフ「貴様と同族であることをボクは恥じる!!!」

魔道士「同意しますよ!!私もエルフと同じ魔族であることを恥ずかしく思います!!!」

エルフ「おのれ……!!」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃ!!!さあ!!!どうしますかぁ!?さぁ!!さぁ!!!!」

魔道士「勇者様には素体になってもらうとしてぇ……。エルフは勿論、他の二人も上質なエネルギーは採れそうですねえ!!!」

僧侶「やめ……ろ……」

勇者「え……?」

僧侶「だまれぇ!!!この外道!!!」

魔法使い「!?」

エルフ「ひっ」ビクッ

魔道士「なんですかな?大声を出して。貴重な命を磨耗させないでくださいよ」

僧侶「生きる者を道具といい……命を材料という……」

勇者「あの……?」

僧侶「貴方の行いは……神に代わり、私が断罪します!!」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!断罪?!どうやってやるんですかぁ?!ニンゲンの分際で!!!」

僧侶「……」

魔法使い「無茶よ!!やめて!!!」

勇者(そういえば……彼女……治癒魔法以外にも……)

魔道士「まずは貴女の命からぁ!!!!」ゴォォォ

僧侶「―――風よっ!!!!」

―――ゴォッ!!!

魔道士「ほほう!!!私の魔法が掻き消えた!!!すばらしい!!」

魔法使い「風の魔法……!!あんた!!そんな魔法使ったら!!!」

僧侶「はぁぁぁぁぁ……!!!!!」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!さあ!!!何発耐えられます―――」

―――ビッ!

魔道士「え……?」

エルフ「いっ!?―――え?な、なんかこっちまで風の攻撃が……」

勇者「まずい!!彼女は魔法を止められない!!」

魔法使い「退避!!退避ー!!!」

エルフ「説明してよ!!!」

―――ズバッ!!

魔道士「がっ?!―――あっひゃっひゃっひゃ!!!なるほどぉ!!!発動した魔法は止めることができない!!!なるほどぉ!!!」

僧侶「……」

魔道士「あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」ゴォォォォ

僧侶「……」パンッ

魔道士「私の魔法が消える!!駄目だ!!!すごい!!貴女はすごい!!!普通のニンゲンならそんな魔力を放出し続けることなど不可能!!」

魔道士「貴女の特異体質が生み出した奇跡!!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」

僧侶「消えなさい……」

魔道士「貴女のようなニンゲンを作れば!!!そうだ!!!新しいキラーマジンガは貴女のような体質に―――」

僧侶「消えろ!!外道ぉ!!!」ヒュン!

魔道士「おぉ―――あ……?ひゃひゃ……ゃ……ぎゃ……」

僧侶「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

魔法使い「お……収まった……?」

勇者「大丈夫ですか!!!」ダダダッ

僧侶「ぅ……ぁ……」ガクッ

勇者「おっと」

エルフ「すごい……壁やら床、天井まで傷だらけに……」

魔法使い「今まで治癒にしか魔力を使えなかったけど、あの腕輪のおかげで温存できるようになったから」

エルフ「普段、優しい人って溜め込むってきいたことあるけど……。その典型?」

魔法使い「私も彼女が本気で怒ったところ初めてみたわ……」

勇者「これは……怒りのツボを押さえておかないと……将来の側室勢力図が一変するかもしれませんね……」

僧侶「すぅ……すぅ……」

勇者「では、僕は拉致監禁されている人たちを助けにいきます!!!」

魔法使い「私を行くわ。アンタだけだと何をするかわからないし」

勇者「ですから、僕はちゃんと段階を踏んだ末にラブチュッチュするのであってですね―――」

魔法使い「わかったわよぉ!!」

エルフ「……」

僧侶「すぅ……ん……すぅ……」

エルフ「でも……どうしてあの魔道士に魔法が……?」

エルフ「魔法具を賊に配るぐらいなら、自分でも装備するはず……」

エルフ「うーん……」

エルフ「もしかして……魔法具では止められないほどの魔力を……?」

僧侶「ゆう……しゃ……さまぁ……」

エルフ「……!」ゾクッ

エルフ「人間も千差万別か……」

エルフ「敵に回したくないな……こんな人間……」

僧侶「うふふ……すぅ……すぅ……」

―――牢獄

勇者「誰かいますかぁ!!!」

魔法使い「見て!!」

勇者「裸?!」

女性「ぉ……ぉ……」

勇者「だ、大丈夫ですか!?」

女エルフ「……」

魔法使い「しっかりして!!」

男性「……」

勇者「息のない人もいますね。買い手がつかなかったのか……それとも衰弱しきってしまったのか」

魔法使い「とにかく助けないと」

勇者「そうですね」

「うぅ……ぐすっ……うぇ……」

勇者「ん?」

少女「うぅ……たすけて……だれかぁ……うぅぅ……」

―――広間

エルフ「ふぅー……」パァァァ

魔法使い「どう?」

エルフ「はぁ……みなさん命そのものを吸い上げられているから……手の施しようがないね」

魔法使い「治らないってこと?」

エルフ「端的に言えば、全く老化せずに老衰死するようなものだから」

魔法使い「そんな……」

エルフ「……」

勇者「君、大丈夫か?」

少女「うぅぅ……うぇぇぇん……ママぁ……パパぁ……!!」

勇者「困ったなぁ……。これは一緒にお風呂か……?」

魔法使い「何言ってるのよ?!」

勇者「しかし、裸の付き合いも必要ですよ」

魔法使い「その子は元気があるから後回し!!それよりもこっちの衰弱している人たちを助ける方法を考えて!!!」

勇者「そんなのキラーマジンガを起動させて、エネルギーをその人たちに返せばいいのでは?」

エルフ「そうか。エネルギーの在り処はそこしか考えられない」

魔法使い「でも……」

勇者「さぁー!!キラちゃんを僕のキッスで!!!」

魔法使い「なんか……敗北感が……」

エルフ「人を助けるためにはそれなりの犠牲も必要だから」

勇者「では、キラちゃんを救出に行きましょう!!!」

魔法使い「じゃあ、アンタは留守番ね。この子の傍に誰かいないと……あ、いや、結局、駄目か……それなら目の届くところに……」

エルフ「ボスがいなくなって、塔にいた魔物は逃げ出したみたいだし、ここは安全だと思う。それにできれば三人で行きたい」

魔法使い「どうして?」

エルフ「もしあの機械兵士が暴れたら、大事になるから」

魔法使い「そ、そうね……」

勇者「話は纏まりましたね。―――今行きますよ!!!眠り姫ー!!!!」

魔法使い「いい?すぐに戻ってくるから大人しくしててね?」

少女「う……うん……」

エルフ「急ごう」

少女「……」

僧侶「すぅ……すぅ……」

少女「ふん……あれだけ大口を叩いたわりにはあっさりと倒されたようだな……」

少女「……」スタスタ

魔道士「」

少女「魔法は通じないのではなかったのか?」

少女「ん……?なるほど……鎧が破壊されている……。これは勇者による一撃か……」

少女「鎧の不備に気づかなかったのか……。まあ、研究だけをしていた者に戦闘など期待するだけ無駄だったか」

少女「とはいえ……」

僧侶「すぅ……すぅ……むにゃ……」

少女「この広間の惨状……強大な魔法が発動したと考えるべきか……。これでは下手に手出しができないな……」

少女「魔王様が懸念していたことが起こったか」

少女「能力の秘匿……」

少女「では、作戦をプランBに移行するか」

少女「勇者たちの力……調べ尽くしてくれる……」

―――キラーマジンガの部屋

勇者「やぁ。お嬢さん」

キラーマジンガ「……」

魔法使い「出て行きなさい」

勇者「おや?いいのですか?僕を追い出し彼女が暴走したとき、困るのは誰か……頭の良い貴女なら分かりますよね?」

魔法使い「……っ」

エルフ「仮にも勇者。こんな少女の裸で変な気分になったりしないでしょ?」

勇者「もちろん!!でへへ」

魔法使い「……はやくしましょう」

エルフ「うん……。じゃあ、起動させてみる。まずは水を抜いて……」ピッピッ

魔法使い「暴走しないわよね……」

勇者「僕が抱きしめてあげなければ!!」

魔法使い「おい!!」

エルフ「起動」ピッ

キラーマジンガ「―――おはようございます」

勇者「おお?!」

魔法使い「暴走する……?」

キラーマジンガ「……」キョロキョロ

エルフ「おはよう。気分は?」

キラーマジンガ「良好です」

勇者「ねえ」

キラーマジンガ「はい」

勇者「僕のこと覚えている?」

キラーマジンガ「検索開始……検索中……申し訳ありません。メモリーには該当するデータが残っていません」

勇者「そうか」

キラーマジンガ「貴方は?」

勇者「……パパだよ」

魔法使い「ぶっ?!」

キラーマジンガ「パパ……?父親ということですか?」

勇者「そうだよ」

エルフ「とりあえずこの服をきて。ボクのだけど」

キラーマジンガ「ありがとうございます」

魔法使い「ちょっと!!なに言ってるのよ?!」

勇者「まあまあ。僕に任せてください」

魔法使い「任せてくださいって……」

勇者「娘よ」

キラーマジンガ「はい」

勇者「僕と一緒に来るかい?」

キラーマジンガ「お言葉ですが、自分の父親に当たる人物はこの塔の管理者です。貴方ではありません」

勇者「そう思いこまされているんだよ」

キラーマジンガ「どういうことですか?」

勇者「君は僕と……この人の間に生まれた人間の女の子だ!!!」

魔法使い「なぁぁ?!なんで私があ、あんたなんかとぉ!!!」

キラーマジンガ「証明する物の提示を要請します」

勇者「どうしてわかってくれないんだぁ!!!娘よぉぉ!!!」ギュゥゥ

キラーマジンガ「そういわれましても。私のメモリーにない人物ですので、警戒させていただきます」

勇者「証明する物は生憎とない」

キラーマジンガ「では貴方の命令に従うことはできません」

勇者「……」

エルフ「機械だから何言っても無駄だって」

魔法使い「側室じゃなくて娘にするってどういう了見なのよ?!」

勇者「じゃあ、君が父親だと思い込んでいる人物が既に亡くなっているとしたらどうする?」

キラーマジンガ「その場合は新たなマスターを選出しなければなりません」

エルフ「君はどういう目的で作られたか分かっている?」

キラーマジンガ「来るべき戦いのためです」

魔法使い「戦い?」

キラーマジンガ「はい」

エルフ「それって……誰と誰の?いや、どことどこのって言ったほうがいい?」

キラーマジンガ「そこまではデータとして残されておりません」

魔法使い「人間を滅ぼすためとか?」

エルフ「それはないと思う」

魔法使い「どうして?あの魔道士が作ったっていうなら」

勇者「彼女は人間の命をエネルギーにしているのですから、滅ぼしては本末転倒でしょう」

魔法使い「あ……」

エルフ「あの魔道士が目指していたのは無尽蔵のエネルギーを内臓し、心まで有する機械兵士の開発。ただそれだけ」

魔法使い「心ね」

キラーマジンガ「なにか?」

勇者「心を持たせるってところが中々興味深いですよね」

エルフ「あのマッドサイエンティストが心を作ろうとしていた……。来るべき戦い……」

勇者「あの」

キラーマジンガ「はい」

勇者「君のことはキラちゃんって呼んでもいい?」

キラーマジンガ「私の名はキラーマジンガ。その呼称は登録されていません」

勇者「ちっ」

エルフ「もう少し何かないか調べてみよう。このままじゃエネルギーの抽出方法も分からないし」

魔法使い「何かって言われても」ゴソゴソ

エルフ「取扱書とか手記とか……そういう類を……」ゴソゴソ

勇者「年齢は?」

キラーマジンガ「製造されてから六ヶ月になります」

勇者「生後六ヶ月か」

キラーマジンガ「ところで、貴方は私の父親なのですか?」

勇者「気になる?」

キラーマジンガ「データに無い以上、貴方は信頼に値する人物ではありません。ですが、肉親であるというのなら戦闘は回避したいので」

勇者「へえ……」

キラーマジンガ「彼女は私の母親なのですか?」

勇者「うんうん」

魔法使い「違うわよ!!!」

キラーマジンガ「否定されました」

勇者「照れ屋なんだ。はっはっはっはっは」

キラーマジンガ「親であることを告げることは羞恥心を煽ることに繋がるのですか?」

勇者「なるよ」

キラーマジンガ「分かりました」

勇者「え?」

キラーマジンガ「……インプット完了しました」

勇者「なにしたんだ?」

キラーマジンガ「私は人の感情、心の揺らぎを学んでいくように設定されています」

勇者「なるほど。今のも人間の感情として記憶したんだ」

キラーマジンガ「はい」

勇者「大変だね」

キラーマジンガ「それが私に与えられたことですので」

勇者「でも、感情ってさ十人十色だから同じ状況でも答えが違ってくるものだよ?」

キラーマジンガ「それは承知しております。なので同じ状況を何度か経験し、感情の平均化を常に図っています」

勇者「じゃあ、恋愛の感情って平均化されてるの?」

キラーマジンガ「恋愛……愛情に関する感情であればいくつかは」

勇者「ほう……。いいね。じゃあ、ちょっと試そうか」

魔法使い「何やってるのアイツは……」

エルフ「変に暴れないだけマシかな」

魔法使い「ん……?これは?」

勇者「―――まった?」

キラーマジンガ「今来たところです」

勇者「そっか、よかった」

キラーマジンガ「今日はどこにいくのですか?」

勇者「そうだな……実は今さ、両親が旅行で留守なんだ」

キラーマジンガ「本当ですか?それって……」

勇者「ああ。朝まで二人っきりになれるよ?」

キラーマジンガ「でも……私は……」

勇者「いいだろ?もう恋人になってから3ヶ月だ。そろそろ次の愛を確かめようぜ?」

キラーマジンガ「……優しく……してください……」

勇者「それはできない。だって、君が……美しいから」キリッ

キラーマジンガ「もう……めちゃくちゃにして……」ウットリ

エルフ「これは……あの魔道士の日記?」

魔法使い「読んでみましょう」

エルフ「うん」ペラッ

勇者「―――何か飲む?」

キラーマジンガ「何でもいいです」

勇者「そうか……じゃあ……」

キラーマジンガ「待ってください。それはまだ早いです」

勇者「どうして?なんでもいいって言ったじゃないか」

キラーマジンガ「だって……それは大人の飲み物……」

勇者「君は十分、大人だよ。ほら、口をあけて」

キラーマジンガ「や、やめてください」

勇者「ここには僕たち以外だれもいない。叫んだって無駄だ」

キラーマジンガ「や……やぁ……」

勇者「さあ……口を開けろぉ!!」ガバッ

キラーマジンガ「だ、だめです!!お酒は二十歳になってからぁ!」

勇者「関係あるかよぉ!!おらぁ!!!酒だ!!酒をだせ!!」

キラーマジンガ「あなた!もう家にはお酒を買うだけのお金はないです!!」

勇者「だまれ!!」バシッ

キラーマジンガ「あぁん!」

勇者「てめえは俺の言うことだけを聞いていればいいんだよ!!」

キラーマジンガ「そんな……昔のあなたに戻って……」ウルウル

勇者「酒!!いいから酒もってこいよ!!」

キラーマジンガ「―――もう我慢できません。私は実家に帰らせていただきます」

勇者「え……お、おい……嘘だろ……?はは……悪い冗談は……」

キラーマジンガ「さよなら……」タタタッ

勇者「まってくれ!!俺が悪かった!!!まってくれぇぇぇぇ!!!!!」

エルフ「―――なるほど。要は治癒魔法と同じようにしたら、生命エネルギーの還元ができるみたいだ」

魔法使い「魔法を使うようにって、あの子の協力が大前提なのね」

エルフ「そういうことになるかな。でも、元のマスターはもういないし、あの子がボクたちの中から誰か一人をマスターとして選んでくれたら」

魔法使い「はぁ……それしかないわね」

キラーマジンガ「どうでしたか?」

勇者「すごいな。すごすぎるよ」

キラーマジンガ「いえ」

勇者「でも、まだまだだ」

キラーマジンガ「どういうことでしょうか?」

勇者「最後の別れのシーンだけど、あれは酷いよ」

キラーマジンガ「そんなバカな……」

勇者「いいか?あそこは―――」

魔法使い「はい。御飯事はやめて」

勇者「何か分かりましたか?」

エルフ「うん。―――あの」

キラーマジンガ「なんでしょうか?」

エルフ「お願いしたいことがあるんだけど」

キラーマジンガ「マスター以外の命令を聞くことは許可されていません」

魔法使い「よく聞いて……貴女のマスターは、死んだわ。もういないの」

キラーマジンガ「そうなのですか?」

勇者「ああ。君のマスターは酷い奴だった」

キラーマジンガ「そうですか」

魔法使い「だから……」

キラーマジンガ「マスターのご遺体は?」

エルフ「上階にあるけど」

キラーマジンガ「案内してもらえますか?」

勇者「どうする気だ?」

キラーマジンガ「マスターが没した場合、ご遺体を埋葬するように言われております」

魔法使い「そうなの」

エルフ「結構、律儀なマスターだったんだ」

キラーマジンガ「行きましょう」

勇者「こっちだ」

魔法使い「いいの?もしかしたらマスターの死体を見たときに怒り狂って……」

勇者「大丈夫ですよ。僕を信じてください」

―――最上階

少女「……あ」

勇者「お待たせ。何かあったか?」

少女「ううん……」

キラーマジンガ「マスター……」スタスタ

エルフ「……」

キラーマジンガ「埋葬を開始します」

魔法使い「どうするの?」

キラーマジンガ「マスターの自室に棺桶があるはずです。それを持ってきます」

勇者「手伝おうか?」

キラーマジンガ「いいえ。私一人で大丈夫です」

勇者「そう」

キラーマジンガ「お心遣い、感謝いたします」

エルフ「衰弱した人の様子は?」

魔法使い「さっきより弱ってるみたいね。急がないと……」

キラーマジンガ「……」サッサッ

勇者「もしもし?」ペチペチ

僧侶「うぅん……」

勇者「やはり深い眠りについているようですね」

魔法使い「全魔力大放出だもの」

勇者「しばらく寝ていてもらうほうがいいですね」

エルフ「んー……」

魔法使い「なに?」

エルフ「貴女もかなりの魔力を放出できるのに、彼女のようにはできないの?」

魔法使い「あの子は魔法を止められない。私は魔法が飛ばせない。そういう違いがあるの」

勇者「でもドラゴンの炎も防いだんですよ」

エルフ「それはすごいね。人間でそんな芸当ができるのは大魔導士ぐらいだと思ってたのに」

魔法使い「でも、あれは向こうも本気じゃなかったでしょうし」

勇者「いえいえ。もうドラゴンの炎なんか余裕で霧散にしていたではないですか」

少女「……」

魔法使い「でも、何度も通用はしないわ。あれ一回でもかなりの魔力を消費したし」

エルフ「ドラゴン……。いつかは戦うときが来る……」

勇者「大丈夫ですよ。こちらには絶世の美女であり閨秀魔法使いと、容姿端麗・艶麗のエルフがいるのです」

魔法使い「はぁ……舌がよく回るわね」

エルフ「嬉しいくせに」

魔法使い「うるさいわね」

勇者「ドラゴンなんてちょちょいのちょいやで」

少女「……」

勇者「どうかした?」

少女「え!?」

勇者「怖い顔してたから。―――もう怯えてないみたいだね」

少女「そ、そんなこと……」

勇者「……」

キラーマジンガ「今から埋葬のために塔を降りたいのですが」

勇者「あ、少しまってください」

キラーマジンガ「なんでしょうか?」

勇者「マスターはどうする?」

キラーマジンガ「埋葬が終了したあとに行います。新たなマスターが埋葬の中止を命じる可能性もありますので」

勇者「なるほど」

エルフ「じゃあ、この人たちも運ばないと」

キラーマジンガ「どうしてですか?」

魔法使い「この人たちは貴女にエネルギーを分けて、衰弱しているの」

キラーマジンガ「なるほど。私からこの方々にエネルギーの供給を行えというのですね?」

勇者「そういうこと。やってくれる?」

キラーマジンガ「……そうですね。あなた方の中から新たなマスターを選出しなければならないようですし、エネルギーの供給ぐらいなら」

魔法使い「本当?!」

キラーマジンガ「はい」

勇者「よかった」

魔法使い「じゃあ、パパっとやってくれる?」

キラーマジンガ「了解しました」

―――魔道士の塔 入り口

キラーマジンガ「……」ザッザッ

「ありがとうございました」

魔法使い「いえいえ」

女性「なんとお礼を言っていいか」

勇者「僕の側室になってくれれば、それで」

女性「え……でも、私には……夫が……」

勇者「人妻でもオッケーです」

女性「そ、そんな……」

エルフ「いくらなんでもそれはダメでしょ?」

勇者「む。人妻の魅力を説くときがついに―――」

エルフ「来てないから」

女性「えっと……貴女は……?」

エルフ「ボクは……ただ彼と知り合い……」

勇者「未来の側室です」キリッ

女性「まぁ」

エルフ「いや……」

勇者「行くあて、あるんですかねぇ?」

エルフ「……」

キラーマジンガ「埋葬、完了しました」

魔法使い「終わったのね」

キラーマジンガ「早速、マスターの選出を行いたいのですが」

勇者「パパにしておきなさい」

魔法使い「ダメよ!!こいつだけは!!」

勇者「なんですと?どこがダメなのですかね?」

魔法使い「そもそもパパじゃないでしょ?!」

勇者「義父ですよ。そういう設定です」

魔法使い「いや……」

キラーマジンガ「―――そこの人物が我がマスターに相応しいと判断します」

少女「……え?わ、私……ですか?」

エルフ「ど、どうして?!」

キラーマジンガ「知力、体力、魔力。どれをとっても前マスターに引けを取らない、いえ、一部ステータスはそれを凌駕しています」

少女「そ、そんなこと……!」

魔法使い「こんな子どもが……?」

エルフ「ボクたちの中で一番優秀ということ?」

キラーマジンガ「はい」

勇者「君……」

少女「な、なんですか……!?」

勇者「すごいね」

少女「あ、いや……えへへ……」

エルフ「でも、そういう逸材を集めていたし、ありえなくもないか」

魔法使い「ねえ、えっと魔法とか使えたりするの?」

少女「少しだけ……」

勇者「それは大変だ。この歳で魔法が使えるというなら、きっと優秀な師がいるか、名家の出なのでしょう」

魔法使い「親が心配しているかもしれないわね」

勇者「そうでしょうね」

魔法使い「じゃあ、とりあえず街にいってこの子の親探しをしましょうか」

勇者「ええ。それがいいでしょう」

キラーマジンガ「私のマスターになっていただけますか?」

少女「いや……」

キラーマジンガ「そんな」

勇者「いきなり言われても困惑するでしょう」

エルフ「そっか」

少女「あの……私の代わりに……」

勇者「僕が?」

少女「うん」

勇者「じゃあ、側室になってくれる?」

少女「うん……なるから……」

魔法使い「ちょっと!見境なしなの?!」

勇者「下は6歳、上は49歳までオッケーですよ?」

魔法使い「幅広いわね」

勇者「勇者ですから」

キラーマジンガ「では、不本意ではありますが、貴方を代理マスターとして認証いたします」

勇者「くるしゅうない」

キラーマジンガ「では……」スッ

勇者「なんですか?」

キラーマジンガ「私の目を見てください」

勇者「はい」

キラーマジンガ「……」ジーッ

勇者「んー」

キラーマジンガ「あの……」

魔法使い「どうしてキスしようとしてるのよ?!」

エルフ「何も分からない女の子に手を出すのは勇者としてどうなの?」

勇者「おっと。そうですね。僕としたことが、あっはっはっは」

キラーマジンガ「マスター認証が終了いたしました。ただし、代理であることをお忘れなきようお願いいたします」

勇者「じゃあ、僕の命令には絶対服従ということでよろしいですね?」

キラーマジンガ「はい」

勇者「そうだなぁ。まずは服を脱いでくれる?」

キラーマジンガ「はい」スルッ

勇者「あ、やっぱりいいです」

キラーマジンガ「……?」

魔法使い「……命拾いしたわね」

エルフ「……」

勇者「と、とにかく街までもどりましょう。助けた人を安全な場所に連れて行かないと」

魔法使い「賛成ね。疲れたわ」

エルフ「うん」

勇者「起きてますか?」ペシペシ

僧侶「うぅん……ゆう、しゃ……さまぁ……」

勇者「ダメか」

キラーマジンガ「マスター。私が彼女を運搬いたします」

―――街 宿屋

魔法使い「はぁー!!」ドサッ

エルフ「長い1日だった……」

僧侶「すぅ……すぅ……」

勇者「全くですね」

魔法使い「なんでアンタがこっちの部屋にいるのよ」

勇者「いいではないですか」

魔法使い「よくないわよ。……で、あのキラーマジンガと女の子は?」

勇者「キラちゃんに女の子の両親、あるいは自宅の捜索をお願いしています」

エルフ「護衛も兼ねて?」

勇者「キラちゃんの正規マスターはあの子なので危害を加えることはないでしょうし、従順に付き添ってくれるはずです」

魔法使い「そうだろうけど」

勇者「僕たちは吉報を待つことにしましょう。―――さぁ、一緒に寝ましょうか?」ギュッ

エルフ「え?ボクと寝るの?」

魔法使い「おい……」

―――街 住宅街

キラーマジンガ「ここでもないようですね」

少女「……ちょっといいか?」

キラーマジンガ「はい?」

少女「正規のマスターは俺なのか?」

キラーマジンガ「飽く迄も貴女がマスターです。しかし、代理マスターの認証を行いましたので直接的な命令権は貴女にありません」

少女「つまり、俺の命令は聞けないと?」

キラーマジンガ「いえ。私本体、代理マスターに不都合が起きない程度のご命令であれば従います」

少女「なるほど。お前、全員の能力値を計測したんだよな?」

キラーマジンガ「はい」

少女「各人物の長所や短所も分かるのか?」

キラーマジンガ「はい」

少女「教えてくれ」

キラーマジンガ「それはできません。不利益が生じます」

少女「ちっ……これだから木偶人形は嫌いだ。見ているだけで吐き気がする」

キラーマジンガ「申し訳ありません」

少女「よし。マスター認証をする」

キラーマジンガ「よろしいのですか?」

少女「ああ」

キラーマジンガ「では……代理マスターコードを破棄。マスター認証を行います」

少女「ふふ……」

キラーマジンガ「―――認証、完了しました」

少女「勇者一行の身体情報を全て教えろ」

キラーマジンガ「了解しました」

少女「よし……これで……!!!」

キラーマジンガ「どなたからお聞きになりますか?」

少女「勇者だ。奴の弱点を教えろ」

キラーマジンガ「了解しました。―――彼の弱点は女性です」

少女「え?」

キラーマジンガ「彼は異性に近づくと緊張から体温を上昇させ、発汗しています。恐らく女性に免疫がない、あるいは何らかの精神的外傷があるものと判断します」

少女「本当か……?」

キラーマジンガ「間違いありません。私と代理マスター認証をする際、目の焦点も定かではありませんでした」

少女「あの魔法を使う女は?」

キラーマジンガ「彼女の弱点は魔力の制御ができないところにあります。彼女の先天性の障害があると思われます」

キラーマジンガ「彼女の体組織では魔法の発動が困難でしょう。発動し、対象に損傷を与えるためには相対距離を無くす必要があります」

少女「あの修道女は?」

キラーマジンガ「彼女もまた魔力を制御できないところにあります。先天性の異常により、一度流れ出した魔力を自分の意思では停止することができません」

少女「なるほど。では、あのエルフは?」

キラーマジンガ「平均的なエルフ族の能力であり、秀でたものも劣っているものもありません」

少女「どういうことだ?」

キラーマジンガ「長所も短所もありません」

少女「……」

キラーマジンガ「以上です」

少女「……そ、それだけか?もっとないのか?」

キラーマジンガ「ありません。各ステータスも平均的な人間と変わりがないため、弱点は言えません」

少女「バカな……それだけの弱点を抱えながら……どうやって数々の魔物を……」

キラーマジンガ「……」

少女「本当に目を見張るようなところはないんだな?」

キラーマジンガ「ありません」

少女「……」

キラーマジンガ「ありません」

少女「わかった。マスターを辞退する。もう一度、奴を代理マスターとして認証しろ」

キラーマジンガ「何故でしょうか?」

少女「お前が嫌いだからだ」

キラーマジンガ「マスターのことは私、大好きです」

少女「いいから言われた通りにしろ!!」

キラーマジンガ「しかし、次のマスター登録は現マスターが亡くならない限りはできません」

少女「……こっちにこい」

キラーマジンガ「はい」

少女「本当に手間がかかるな……!!こんな奴を部下になんて死んでも御免だ……!!」

―――郊外

少女「よくみておけ」

キラーマジンガ「はい」

少女「……っ」メリメリ

キラーマジンガ「……」ジーッ

ドラゴン「―――どうだ!!!」

キラーマジンガ「マスター……マスター……」オロオロ

ドラゴン「マスターは死んだ!!」

キラーマジンガ「マスター……埋葬を……」

ドラゴン「そういえば埋葬までしなければいけなかったか」

キラーマジンガ「マスターのご遺体がない……」オロオロ

ドラゴン(こいつには死んだふりも通用しないな。なら―――)

少女「―――ここだ」

キラーマジンガ「マスター!!!マスタァァ!!!生きていたのですね!!!」テテテッ

少女「……」

―――宿屋

勇者「遅いですね」

エルフ「はなれて」ググッ

勇者「まあまあ」

魔法使い「でも、本当にちょっと不安ね」ギュッ

勇者「あっつ!?火傷した!?―――応急処置!!!」ムニュ

僧侶「あぁん」

魔法使い「……」

キラーマジンガ「―――遅くなりました」

少女「ごめんなさい」

勇者「キラちゃん。首尾は?」

キラーマジンガ「残念ながら、彼女の自宅はありませんでした。マスター」

勇者「そうか……」

魔法使い「残念ね」

少女(どうやら演技ぐらいはできるようだな。そのままお前は勇者をマスターだとしておけ。付き纏われては敵わない)

僧侶「すぅ……すぅ……」

勇者「じゃあ……この子は……僕が保護するとして」

魔法使い「然るべき場所に預けるべきよ」

勇者「しかし!!この子はもう結婚できる!!!」

魔法使い「できないわよ!!」

勇者「まだ子どもの産める状態ではないと?そんな……そんな馬鹿な……」

少女「あの……」

エルフ「どうしたの?」

少女「わ、私のパパとママね……こことは違う街にいるの……」

勇者「本当に?」

少女「うん」

魔法使い「どこ?」

少女「海が見える街」

勇者「港町か」

エルフ「えっと……この辺で港町っていったら……」ペラッ

勇者「ここしかないでしょうね」

エルフ「そこまで遠くないし、ボクたちも船に乗って次の国を目指すっていうのもアリかな」

少女「……」

魔法使い「船旅かぁ」

キラーマジンガ「前マスターが言っていました。まだ海水は危ないと」

魔法使い「錆びるの?」

キラーマジンガ「はい」

勇者「……いいのですか?」

エルフ「え?」

勇者「船旅となれば多くの人間と鮨詰めに」

エルフ「な、なんで、そんなこと……ボクは別に……」

勇者「……」

魔法使い「とにかくこの子の自宅を探すのが最優先よね?がんばりましょう」

勇者「ええ。ご両親に挨拶はしておかないといけませんしね」

少女「ありがとう……」

―――夜 宿屋 屋上

エルフ「……」

勇者「ここにいましたか」

エルフ「どうかした?」

勇者「今なら里に戻れますよ?」

エルフ「……」

勇者「嫌なんですよね、人間が多い場所は」

エルフ「嫌というか……人間は醜い生き物だって聞かされて育ったから」

勇者「この街に来るときも、嫌そうでしたものね」

エルフ「よく見てるね」

勇者「だって僕は勇者ですから」キリッ

エルフ「人間は嫌い。だけど……魔王も好きじゃない」

勇者「え?」

エルフ「あの魔道士はエルフ族をもエサにしていた。なのに魔王は野放しにしていた。それって、ボクたちを魔族としてみてないってことになるよね?」

勇者「魔族間での確執、というには些か酷いですね」

エルフ「今回の一件で分かった。魔王はいつかボクたちを狙ってくる」

勇者「……」

エルフ「人間の次は……きっとエルフ……そう思う」

勇者「そうですか」

エルフ「だから、魔王は倒さないといけない」

勇者「人間と協力してでも?」

エルフ「死ぬのは嫌だから」

勇者「分かりました。では、僕にもそのお手伝いをさせてください」

エルフ「何言ってるの?貴方は元々、魔王を倒すために……」

勇者「僕の目的は飽く迄も多くの側室に囲まれて老衰死ですから。魔王討伐なんてその目的達成のための手段でしかありませんよ」

エルフ「そう……なんだ……」

勇者「はい。ですから、貴女が目指す魔王討伐とはまた志しが違います」

エルフ「……」

勇者「貴女を殺させはしない。貴女を守りましょう。我が命に代えても」

エルフ「臭い台詞。それ、みんなに言ってるでしょ?」

勇者「いえ。言ってません」

エルフ「嘘つき」

勇者「それに僕から頼み込んだという形にしておくことも大事かと思いまして」

エルフ「どうして?」

勇者「人間と協力したとなると角が立つでしょう。でも、勝手についてきたならまだ印象はそこまで悪くなりませんよ」

エルフ「そうかな」

勇者「間違いないです。僕のことは悪質な変質者だと思ってくれて構いません」

エルフ「実際、そうだし」

勇者「え!?そんなぁ!!どこがぁ?!」

エルフ「ボクを脅して同行させようとしたり、意味もなく肩を抱いてきたり……」

勇者「それは貴女が美しいからですよ。むしろ貴女が悪いと思います」

エルフ「……」

勇者「好きだ!」

エルフ「はいはい。おやすみ」スタスタ

勇者「好きだ!!!側室になってくれぇ!!」

―――宿屋 廊下

キラーマジンガ「マスター」

少女「やめろ」

キラーマジンガ「マスターの実力と私の力があれば、人間3人とエルフ1人程度なら問題ありません」

少女「奴らの能力が判明するまで直接的な戦闘はするなと魔王様に言われている」

キラーマジンガ「魔王という人はマスターの力を過小評価しているのではないでしょうか?」

少女「いいか?奴らよりも実力が上であった魔物が次々にやられている。もしこちらの想定を超えてくると怪我だけでは済まないだろう」

キラーマジンガ「しかし」

少女「いいから俺にはもう話しかけるな。お前のマスターは勇者。そうだったな?」

キラーマジンガ「はい。マスターにそのように言われています」

少女「絶対に俺が―――」

エルフ「何してるの?」

少女「……ううん。ちょっとトイレに……」

キラーマジンガ「はい」

エルフ「そう……。明日は早いから夜更かしはしないようにね」

―――翌日 街

僧侶「勇者様〜」タタタッ

勇者「すいません。病み上がりでおつかいを頼んでしまって」

僧侶「いえいえ。はい、どうぞ」

勇者「これです。ありがとうございます」

僧侶「いつでもなんでも仰ってくださいね?」

勇者「なんていう従順ぶり。ランクを側室奴隷に引き上げましょう」

僧侶「やったぁ」

魔法使い「下がってるわよね?ねえ、それって下がってるわよね?」

勇者「―――どうぞ」

エルフ「え?」

勇者「貴女の武器です。空手では何かと不便なときもあるでしょう?」

エルフ「まあ、相手があの魔道士ぐらい強ければ魔力もすぐに無くなるけど」

勇者「ですから、武器を。ボーガンなら扱えると思いまして」

エルフ「あ、ありがとう。でも、いらないと思うけど……」

キラーマジンガ「私がいますから」

勇者「おぉ。おはようございます」

キラーマジンガ「おはようございます。マスター」

少女「お、おはよう」

勇者「おはよう」キリッ

キラーマジンガ「マスター。朝は早かったようですがどちらに?」

勇者「え?ああ、色々です」

キラーマジンガ「私に言ってくだされば何でもご要望にお応えしたのですが」

勇者「なんという犬っぷり。君の側室ランクは犬だ」

キラーマジンガ「恐縮です」

僧侶「犬のほうが可愛い……」

魔法使い「馬鹿ばっかりね……」

エルフ「まあまあ」

勇者「では、行きましょうか。目指すは海の方角!!!魅惑の港町!!!」

少女「……」

―――フィールド

エルフ「でも、こうして並んで歩くと大所帯になったね」

魔法使い「少し前まで3人だったのにね」

僧侶「私は楽しくていいと思いますよ」

勇者「―――いいですか?男を振るのにも色々方法があるんですよ」

キラーマジンガ「ふむふむ」メモメモ

少女「……」

勇者「―――待ってくれ!!俺が悪かった!!考えなおしてくれ!!!」

勇者「―――いつも!いつもそう言ってるじゃない!!嘘つき!!もう知らない!!」

勇者「―――今度は本当だ!心を入れ替える!!だから見捨てないでくれぇ!!!」

勇者「―――じゃあ、昔の貴方に戻ったらまたここに帰ってくるわ。それまでは……さよなら……」

勇者「こうして、更生したら寄りを戻すと言っておけば、上手く逃げられるわけです」

キラーマジンガ「なるほど。男性を立ち直らせるきっかけにもなれば、別離もできる。その女性は男性にとって恋人以上の存在になるわけですね」

勇者「そう!!もう元に戻ることはない。だけど、あの女が人生において、ただ1人のオンナだった。まるで美談!!女性も色んなところで美化される。いいことばかりだ」

少女(人間とは面倒な生き物だな。そんな奴、喰えば終わりだろうに)

勇者「ここまでで質問は?」

キラーマジンガ「はい」

勇者「キラちゃん」

キラーマジンガ「本当に更生し、もう一度やりなおそうといってきた場合はどうするのですか?」

勇者「君ならどうする?」

キラーマジンガ「もう一度、恋人関係に戻ります」

勇者「どうして?」

キラーマジンガ「男性は約束を守りました。なら、私もその約束を守ります」

勇者「そのとき君に好きな人がいた場合はどうする?」

キラーマジンガ「え……」

勇者「男の更生を信じ、待ち続ける。いい話だが、待っている間にも愛を欲する。それが人間だ」

キラーマジンガ「で、では……そのときは……」オロオロ

勇者「―――それは君が決めることだ。人に聞くことじゃない。人間の感情とはそういうものだ。答えなんて……ない」キリッ

キラーマジンガ「なるほど。奥が深すぎてショートしそうです」メモメモ

少女(俺なら約束を守った奴に敬意を賞して縒りを戻すかな……)

魔法使い「ちょっとー、あんまり変なこと教えないでよ」

勇者「キラちゃんには必要なことですから」

魔法使い「本当に?」

キラーマジンガ「勉強になります」

僧侶「勇者様ならどうするんですか?」

勇者「え?」

僧侶「振った女性がもう一度、やり直してほしいって言ってきたら、やり直します?」

勇者「無論―――」

エルフ「側室にするとかは無しで」

勇者「それはつまり僕が勇者ではなく平凡な市民で人生を終えるという平行世界での話ですね?」

エルフ「え……うん、そんな感じだと思う」

勇者「ならば……戻しませんね」

魔法使い「へえ……どうして?」

勇者「勇者というステータスがなければ愛せる女性は1人が限界。ならば、今現在愛している女性を徹底的に嬲ります」

キラーマジンガ「流石はマスター」パチパチ

魔法使い「意外ね。浮気性な男かと思ってたけど」

勇者「僕はそれほど器用ではありません。勇者という肩書きがなければ一夫多妻なんて実現はしないでしょう」

僧侶「勇者様……」

勇者「でも、現実はいつも悲しい。僕は勇者に選ばれてしまったぁ!!つまり、選ばれた男!!」

勇者「女に不自由のない人生が約束されてしまったのです!!ああ!!!なんてこったぁ!!」

魔法使い「あの……」

勇者「故にみんなから愛されてしまう!!選ばれてしまったから!!そんなみんなの愛を無碍にはできない!!受け取るだけの資格が僕にはあるからぁ!!」

エルフ「どうして?」

勇者「勇者だから」キリッ

キラーマジンガ「マスター」

勇者「勿論、君は僕の娘としても側室としても―――」

キラーマジンガ「魔物です」

少女「え……」

魔物「ガルルル……!!!」

勇者「いつの間に。―――戦闘準備!!」

魔物「ガァァア!!!」

僧侶「きゃぁぁ!!」

魔法使い「なっ!」

勇者「せいやぁ!!!」ズバッ

魔物「ギャァァ……」

魔法使い「あ、ありがとう」

勇者「いえ」

エルフ「やぁ!!」バシュ

勇者「お。早速、使ってますね。ボーガン」

エルフ「試してみただけ」

キラーマジンガ「下がってください」

少女「う、うん」

キラーマジンガ「低級な魔物では私には勝てません」

魔物「ガァァァァ!!!!」バッ

キラーマジンガ「遅い」ザンッ

キラーマジンガ「お話になりません」

勇者「すごい。やはり戦闘力は並じゃない」

キラーマジンガ「マスターに迫る脅威を排除する。それが私の使命です」

エルフ「もう居ないみたい」

僧侶「よかったぁ。怪我はありませんか?」

魔法使い「ええ。大丈夫よ」

勇者「それにしてもいち早く魔物に反応したな」

キラーマジンガ「魔物を探知する機能が搭載されています。ある程度、魔物が接近してると察知できるようになっています」

勇者「なるほど。そんな便利機能が」

キラーマジンガ「はい」

エルフ「……」

勇者「知っていましたか?」

エルフ「う、うん……。でも……」

勇者「ですね……」

僧侶「どうかしました?」

魔法使い「ああ、そういえばこの子のエネルギーはどうするの?」

勇者「それも考えないといけないですね」

キラーマジンガ「私のエネルギーは無限だと聞いています」

エルフ「でも、人間の生命エネルギーや魔力を吸い取るんでしょ?」

キラーマジンガ「はい。ですが、ニンゲンに拘る必要はありません」

魔法使い「ど、どういうこと?」

勇者「まさか」

キラーマジンガ「前マスターはニンゲンからの摂取が最も効率が良いといっていましたが、生命エネルギーはどの生物からでも一定量得ることが可能です」

僧侶「先ほど倒した魔物からでもエネルギーを得ることができるってことですか?」

キラーマジンガ「その通りです」

少女「……」

勇者「そういえばあの魔道士、虫や獣からでも同じエネルギーを得られるって……」

エルフ「人間から得るとは言ってたけど、別に人間限定の話じゃなかったね」

魔法使い「生きていればなんでも良いってこと?」

キラーマジンガ「はい。生命体であることが第一です。あとは生命の鮮度で得られるエネルギーが増減することがあります」

少女「殺戮兵器……」

魔法使い「ちょっと」

少女「……」

勇者「他の命を吸い取りながらでないと活動できない……」

キラーマジンガ「はい。そのように私は作られています」

僧侶「それって……あの……」

エルフ「先のことは考えないようにしようよ。今は貴重な戦力であることには変わりないし」

勇者「ええ。そうですね」

キラーマジンガ「マスターのために尽力致します」

勇者「ありがとう。ところで、エネルギーの補充はどれくらいの頻度で行うんだ?」

キラーマジンガ「私が活動している限りは消費していきます。最小限の活動をしない場合でも、供給が途絶えてから七日で活動は停止します」

勇者「そうか」

キラーマジンガ「なので小まめな供給を推奨いたします」

エルフ「うん。まあ、嫌でも魔物とは戦うし、意識する必要はないってことだね」

少女「……」

―――港町

勇者「さて、じゃあこの子のご両親に挨拶しにいきましょうか」

魔法使い「なんのためによ」

勇者「側室にください。と一言言わないと怒られてしまうでしょう?」

魔法使い「いくら丁寧に言っても怒るわよ!」

キラーマジンガ「マスター。私が捜索に当たります」

勇者「いやいや。僕が」

キラーマジンガ「どうぞどうぞ」

エルフ「じゃあ、ボクは情報収集でも」

僧侶「わ、私も行きます」

魔法使い「待って、私も行くわ。アンタも」

勇者「えぇ?!だから!!ご両親にぃぃぃ!!!!」

魔法使い「ダメ!!!」

少女「……」

キラーマジンガ「行きましょう、マスター」

―――港

僧侶「あ、あの……船は出ていますか?」

船員「どこまで行きたいんだ?」

魔法使い「ここから北のほうに行きたいの」

船員「無理だな」

僧侶「どうしてですか?」

船員「旅の人みたいだけど、知らないのか?―――北の国はもう魔王の手に落ちたんだよ」

勇者「……いつの話ですか?」

船員「一、二ヶ月前だな。おかげで魔物が増えて漁船は言うに及ばず、客船だって何隻も沈んでる」

エルフ「魔王……」

船員「こんな海で自由に航海してるのは海賊ぐらいだな」

勇者「……海賊ですか。それって、この海域にいるっていう噂の海賊ですね?」

船員「よく知ってるな。色んな場所を冒険している荒くれ者の集団だ。海の魔物を退治してるから一部では英雄だが、海で商売している俺たちには害でしかない」

勇者「聞きました。それこそ魔物と同じように漁船や客船を襲っては金品を奪うとか」

船員「陸には盗賊や山賊もいるのに、海ぐらい平和でいきてえよ……」

僧侶「困りましたね」

魔法使い「今まで通り、陸伝いにいくしかないんじゃない?」

エルフ「そうだけど。それだと……」

勇者「魔王が力をつけ始めている。急がないと、手がつけられなくなるでしょう」

僧侶「勇者様……」

勇者「北にある国は世界でも有数の軍事国家でした。そこが陥落したとなると……」

魔法使い「でも、どうして。今まで拮抗を保っていたんじゃないの?」

勇者「キラーマジンガの技術を魔王が流用しているとしたら?」

エルフ「それって……生命エネルギーを?」

勇者「あの魔道士だって魔族。魔王と繋がりがないはずがない。技術提供もしていたと考えるほうがいい」

僧侶「では、魔王は今……無尽蔵の魔力を手に入れているのでしょうか?」

勇者「奴らにとって人間など視界の隅に移る塵に同じ。それが己が血肉になると分かれば喜んで手を出すでしょう」

エルフ「そんな……それならエルフも……」

勇者「急がないと……なんとしても海を渡る方法を……!!」

魔法使い「故郷に帰るならまだしも、進めないんじゃ……」

僧侶「勇者様、やはり……」

勇者「ええ。それしかないでしょう」

魔法使い「どうするの?」

勇者「海賊と接触します」

エルフ「海賊……」

魔法使い「待って。どこにいるかも分からないのに?」

僧侶「そ、それなら、ちゃんと調べてきました」

魔法使い「いつの間に?!」

勇者「人身売買組織の盗賊団。あの人たちにですよ。前の街で聞き込みをしてきました」

魔法使い「えー?」

勇者「あの人たちはこの国全域で活動をしていました。情報はたんまり持っていましたよ」

エルフ「なるほど。ああいう人たちだからこそ、様々な事を耳朶に残しておかないとダメだもんね」

勇者「その通りです」

魔法使い「海賊かぁ……嫌ねぇ……」

勇者「魔物ではないので話せば分かってくれる分、楽な相手だと思いますよ?」

魔法使い「それで、あの海賊は?」

勇者「ここから西に行った沿岸部にアジト……というか村があるそうです」

エルフ「海賊の村?」

勇者「海賊を支持する人たちが集まっている村でしょうね」

魔法使い「海賊を支持って、さっき言ってた英雄扱いにしている人たちのこと?」

僧侶「恐らく。助けられた人も少なくないと聞きました」

魔法使い「でも、やっていることは盗賊や山賊と変わらないんでしょ?」

勇者「関係ありませんよ。命を張って戦ってくれたのなら、どんな極悪人でも命の恩人になるわけですから」

魔法使い「そうだけど」

エルフ「じゃあ、そこに行くの?」

勇者「自由に航海できる人たちならきっと北の大地まで連れて行ってくれるはずです」

僧侶「そうですね。魔王を倒すって言えばきっと協力してくれます!」

勇者「そして……ふふふふ……ぬほほぉ……」

魔法使い「海賊のキャプテンって女?」

勇者「はい」キリッ

魔法使い「やけに真剣になっていたのはその所為ね……全く……」

勇者「さぁ!!では、このまま突入しましょう!!」

僧侶「おー!!」

エルフ「二人はどうするの?」

勇者「相手が相手ですし置いていきましょう」

魔法使い「そうね。それがいいわ。女の子は勿論、あのマーちゃんだって見世物小屋に売られるかもしれないし」

僧侶「マーちゃん?」

魔法使い「キラーマジンガだからマーちゃん」

エルフ「キラちゃんじゃなくて?」

魔法使い「キラちゃんってなんか可愛くないじゃない?」

僧侶「ラーちゃんじゃダメですか?」

エルフ「それならガーちゃんでもいいよね?」

勇者「キラちゃんはキラちゃんです」

魔法使い「マーちゃんよ」

僧侶「ジーちゃんでも可愛いですよね?」

―――広場

キラーマジンガ「マスター。あの雲、何かに似ていませんか?」

少女「……」

キラーマジンガ「検索中……検索中……。分かりました。猫です。あそこが耳で……あれがヒゲで……」

少女「黙れ」

キラーマジンガ「了解しました」

少女(海に出るなら数多くの部下がいる。そこで奴らの力を引き出して……)

勇者「キラちゃーん!!」

キラーマジンガ「……」

僧侶「ジーちゃん!」

キラーマジンガ「……」

魔法使い「マーちゃーん!!」

キラーマジンガ「……」

エルフ「ンちゃん!」

キラーマジンガ「呼称は一つでお願いします」

勇者「え?見つけられなかった?」

キラーマジンガ「申し訳ありません」

魔法使い「じゃあ、ここじゃないの?」

少女「うん……。ここじゃない……」

僧侶「もしかして北にある国から……?」

勇者「確かに魔王の領土から拉致されてきた可能性は高いですが」

エルフ「とりあえず二人は宿にいて。今から船を調達してくるから」

キラーマジンガ「お留守番ですか?」

僧侶「そういうことになります」

キラーマジンガ「……」

勇者「僕から離れたくないのは分かる。でも、君を危険に晒したくはないんだ。分かっておくれ、娘よ」

キラーマジンガ「パパ……私のこと……キライ?」

勇者「好きだよ。毎日一緒にお風呂に入って、体の隅々を舐め回すように観察したいぐらい大好きだ」

キラーマジンガ「そんなパパが好き……抱いて……」

魔法使い「ちょっと。いつのまにそんなの仕込んだのよ」

勇者「練習ですよ」

魔法使い「何の!?」

キラーマジンガ「マスター曰く、私は娘でありながら実父に恋心を持つという倒錯した人物らしいので」

魔法使い「はぁ?!」

キラーマジンガ「その感情の勉強のために、色々教わりました。―――マスター、今のはどうでしたか?」

勇者「70点だな」

キラーマジンガ「くそぉ」

エルフ「えっと……早く行こうよ」

勇者「そうですね。じゃあ、行ってきます」

キラーマジンガ「行ってらっしゃいませ」

少女「……」

キラーマジンガ「では、マスター。我々は宿に―――」

少女「尾行するぞ」

キラーマジンガ「了解しました」

少女(目を離すわけにはいかないからな……)

―――海賊の村

勇者「ここのようですね」

エルフ「じゃあ海賊のことを……」

魔法使い「そんな簡単に教えてくれるのかしら?」

僧侶「海賊さんの支持者だって言っておけば大丈夫ではないでしょうか?」

魔法使い「そうね……あまり気乗りはしないけど」

勇者「では二手に分かれて情報を集めましょう」

エルフ「どうして?」

勇者「固まっていて、もし敵だと認知された場合、一網打尽にされてしまうかもしれませんから」

魔法使い「そうね。相手は海賊の仲間だし……」

僧侶「わ、分かりました」

勇者「僕と一緒に行動したい人、挙手!!」

僧侶「はい!」ビシッ

エルフ「……」ビシッ

魔法使い「え!?―――じゃあ、私も!!」ビシッ

勇者「理由を聞こうか」

僧侶「私は勇者様のお傍にできるだけいたいので。あと、どんな些細なことでもお手伝いしたいです」

エルフ「ボクは二人が貴方の毒牙にかからないように」

魔法使い「み、右に同じよ!」

勇者「まいったな。みんな側室なんだから仲良くしてくれないと困りますよ。あっはっはっは」

エルフ「早く決めて」

勇者「じゃあ、行きましょうか」

エルフ「……うん」

僧侶「あー、残念です」

魔法使い「……まあ、あんたじゃないだけマシね」

僧侶「え?どうしてですか?」

魔法使い「あんた、アイツに何されても嫌がらないどころか嬉しがってるでしょ?」

僧侶「ダメですか?」

魔法使い「ダメよ」

僧侶「でも、勇者様は口に出すだけで何もしてきませんし……。私の胸を触るのも主に治癒のためですし……うーん……」

勇者「すいません」

村人「はい?旅のお方ですかな?」

勇者「ええ。実はどうしても僕たち、海を渡りたいのです」

村人「どうして」

エルフ「魔王を倒すために」

村人「魔王を……?」

勇者「はい」

村人「なら、安心しなさい」

勇者「え?」

村人「魔王なら海賊団が倒してくれるから」

エルフ「海賊といっても普通の人間のはず……。魔王に太刀打ちできるとは思えないけど」

村人「海賊たちの力を見縊ってはいかん。ここいらの魔物なんて海賊の敵ではないからな」

勇者「それほどまでに兵力が充実していると?」

村人「そうだ。巨船を10隻も有する大艦隊。魔王の一団など相手にもなりはせん」

勇者「そんなに大規模だったのか……」

村人「と言っても、その10隻は常に別行動を取っているけどね」

僧侶「なるほど。あえて別の場所で活動して、広い範囲で自衛に当たっていると?」

村人「そういうこと。魔物も、いや魔王すらも下手に手出しできないほどなんだから」

魔法使い「でも、人間も襲っているんでしょ?」

村人「それはちゃんと理由があるんだよ」

僧侶「理由、ですか?」

村人「民間船を襲うことで、危険な海に人を出さないようにしているのさ。ほら、魔物のほかにチョー強い海賊がいるとなれば、海に出ようとはしないだろ?」

僧侶「まあ、萎縮はしますよね。そんな大きな武力を持っているなら」

村人「そう。ちゃんと人々の安心安全も考えてるんだよ」

魔法使い「でも、それで命を落とした人もいるんじゃないの?」

村人「小さな犠牲は仕方ないだろ?」

魔法使い「そうだけど……。漁船すらも海に出さないってどういうことよ?あの人たちは、それで生計を立てているのよ?」

村人「死ぬよりはマシだろ」

魔法使い「口で言えば分かることなのに。やり方を間違えているとしか思えないわ」

僧侶「お、抑えてください!!言いたいことはわかりますが!!」

村人「てめえ……海賊のやり方にケチをつけるっていうのか?」

魔法使い「正義の味方みたいな顔をしないでって言ってるの」

村人「んだとぉ……!!」

僧侶「あ、あの!!ここで騒ぎはまずいですから!!」

魔法使い「でも……!!」

村人「お前ら……海賊を潰しにきた兵士か……?」

魔法使い「違うわよ。ただ、言い方が気に入らないだけよ」

村人「あぁ?」

魔法使い「海賊の所為で困窮している人もいることを自覚して」

村人「んなことは分かってるよ!!」

魔法使い「なら!!人の生活まで奪うなんてことできるわけないでしょ!!」

村人「やっぱりお前ら……!!」

僧侶「や、やめてくださーい!!!」

村人「みんなー!!であえー!!!国の兵隊が海賊団を潰しにきたぞー!!!」

魔法使い「ち、違うって言ってるでしょ!!」

勇者「―――え?」

エルフ「なんだろう……?」

勇者「嫌な予感がするので、こっそり行きましょう」

エルフ「う、うん……」

「捕まえろ!!」

魔法使い「やめて!!燃やすわよ!?」

僧侶「それはダメです!!」ギュッ

魔法使い「くっ……」

「悪いが牢屋に入ってもらうぜ」

魔法使い「どうしてよ」

「決まってるだろ。海賊団は世界を救う唯一の希望だ。それを何もできねえ国の兵士に潰されてたまるかよ」

魔法使い「だから、兵士じゃないってば」

僧侶「もう何を言っても無駄です……」

魔法使い「もう……」

「連れて行け!!」

勇者「むぅ……」

エルフ「捕まったね」

勇者「エルフの里とは立場が入れ替わりましたね」

エルフ「どうする?」

勇者「海賊と敵対したくはなかったですが……致し方ありませんね」

エルフ「今は警備の目が厳しいから、夜になるまで待とうか」

勇者「それがいいでしょう」

少女「……」

キラーマジンガ「お二人が拿捕されましたね」

少女「ふんっ……馬鹿な連中だな」

キラーマジンガ「救出いたしますか?」

少女「放っておけばいい。どう逃げ出すか。いや、あいつらなら簡単に逃げ出すはずだ」

キラーマジンガ「私も同意見です、マスター」

少女(こういう事態でこそ、能力を発揮するはず。見せてもらうぞ……)

キラーマジンガ「……潮風で錆びてしまいそうです、マスター」

―――宿屋 寝室

勇者「さて、夜まで待とうと思うのですが」

エルフ「うん」

勇者「しかしですね、考えたのですが」

エルフ「どうかした?」

勇者「助け出したあと、この村を離れないといけないですよね?」

エルフ「うん。みんな怒るだろうし」

勇者「となると海賊と接触できるチャンスがなくなりますよね」

エルフ「まあ、ここぐらいしか会える場所はないから」

勇者「そうなると海を渡れませんよね?」

エルフ「そうだね」

勇者「困りました」

エルフ「……」

勇者「素直に謝りますか?」

エルフ「許してくれるかな?」

勇者「あの」

店主「なんだい、お客さん?」

勇者「さきほど、騒ぎがありましたよね?」

店主「ああ。海賊たちの悪口を言った奴らな」

勇者「どうなるんですか?」

店主「恒例だが、海賊に引き渡すだろうね」

勇者「海賊に?」

店主「ああ。まあ、どんなことをしたのか海賊たちが聞いて、それで処分を下すと思うよ」

勇者「今まで捕まった人はどんなことに?」

店主「海に放り出されたり、魔物を誘き寄せるための餌にしたり、半年以上雑用で働かせたりだな」

勇者「なるほど」

店主「といっても、海賊たちが自分たちのしていることはどれだけ正しいことなのかを見せ付けてから、だけどな」

勇者「……」

店主「どうかしたかい?」

勇者「いえ。ありがとうございます」

エルフ「おかえり」

勇者「ただいま。行きましょう」

エルフ「どこに?」

勇者「こうなったら、僕たちも捕まりましょう」

エルフ「どうして?」

勇者「捕まれば海賊と直接話ができます」

エルフ「でも、心象最悪になるから協力してくれなくなるんじゃ」

勇者「二人が捕らえられた時点で心象なんて気にするだけ無駄でしょう」

エルフ「そうかもしれないけど」

勇者「それにこれは直感ですが、海賊たちは話が分かる人たちだと思います」

エルフ「え?」

勇者「勿論、下っ端の人たちではダメです。上、つまり船長クラスの人なら……」

エルフ「……信じていいの?」

勇者「未来の夫を信じられないかい?」

エルフ「……はいはい」

―――村 広場

勇者「海賊はー!!!わるーい!!!!」

エルフ「わるーい」

「なんだ!?なんだ?!」

勇者「海賊はー!!はんざいしゃー!!!」

エルフ「はんざいしゃー」

「おい!!てめえ!!なにいってんだ!!!こらぁ!!!」

「黙らせろ!!!」

勇者「海賊はー!!!人間の屑ー!!!」

エルフ「くずー」

勇者「海賊、はんたーい!!!」

エルフ「はんたーい」

「捕まえろ!!!!」

勇者「ええい!!無礼者!!はなせぇ!!!」

エルフ「つかまったー」

―――牢屋

村人「入ってろ」

勇者「おとと」

エルフ「……」

ガチャン

魔法使い「ちょっと」

勇者「これは奇遇ですね」

僧侶「勇者様!!申し訳ありません!!捕まってしまいました!!」

勇者「僕もです」

僧侶「お揃いですね」

勇者「相性バッチリじゃないですかね、これは」

僧侶「もう……勇者様ったら」

魔法使い「あの……助けに来てくれたんじゃないの……?」

エルフ「うん」

魔法使い「そう……仲間だってことがバレたのね……。ごめんなさい……」

勇者「しかし、どうして逮捕されてしまう事態に?」

魔法使い「ついカッとなって……」

エルフ「どういうこと?」

魔法使い「自分たちは正しいことをしているって……言うから……ちょっと腹が立って……」

勇者「なるほど。海賊の支持者が海賊の正義を主張してきたと?」

魔法使い「うん……。海賊の行為で苦しんでいる人もいるのに……全てを正当化して……それで……」

勇者「……」

魔法使い「ごめんなさい。反省しているわ」

勇者「いえいえ。それは僕が同じ立場なら、貴女と同じ事を言っていたでしょう」

魔法使い「え?」

勇者「こちらにも譲れないものはあります。一元論で語れることではありません」

魔法使い「でも……」

勇者「気にしないでください」

魔法使い「ごめんなさい……」

勇者「……次のことを考えましょう。これから海賊たちに身柄を引き渡されるわけですが……いいですか?そのとき―――」

―――海賊の村

キラーマジンガ「皆さんが捕らえられました」

少女「何やってんだ……あいつら……」

キラーマジンガ「何か作戦があると思われます」

少女「まあ、牢獄内で合流し、協力して脱獄する腹なんだろう」

キラーマジンガ「助力いたしますか?」

少女「静観でいい」

キラーマジンガ「了解しました」

少女「……」

キラーマジンガ「……マスター」

少女「……なんだ?」

キラーマジンガ「潮風は私にとって毒です」

少女「知るか」

キラーマジンガ「出来れば屋内に退避したいのですが」

少女「知らん。どうして俺がそこまで面倒をみなければいけないんだ」

―――数日後 牢屋

村人「―――出ろ」

勇者「来たか……!!運命のときが!!!」

村人「いいからでろ!!」

魔法使い「……」

僧侶「はぁ……ドキドキします……」

エルフ「街に置いて来た二人が心配だね」

僧侶「そうですね……心配してなければいいですけど……」

海賊「こいつらか?」

村人「ああ。騒ぎを起こした四人だ」

海賊「よし、こい」

勇者「優しくしてください」

海賊「それはできねえなぁ」

勇者「なんだと?!ゆ、ゆるさないぞ!!僕にエッチなことしたら!!許さないからなぁ!!するなら優しくしてぇ!!」

海賊「しねーよ!!!」

―――船着場

海賊「頭、こいつらです」

船長「ふーん」

勇者「あれぇ?!」

船長「なんだよ?」

勇者「船長は女性だってきいてますけどぉ?!」

船長「それはキャプテンのことだな。総括の」

勇者「じゃあ、キャプテンを出してください」

船長「キャプテンは大海原で魔物狩りをしてるよ」

勇者「なんてこったぁ!!!」

僧侶「落ち込まないでください」

エルフ「きっと会えるって」

魔法使い「……」

船長「俺たちも忙しいんでな。早く乗船しろ」

勇者「くぅぅ……!!!こんなことなら!!もっと別の策を考えるべきだったぁ!!!」

キラーマジンガ「マスター」

少女「分かっている」

キラーマジンガ「みなさんが出航します」

少女「見えている」

キラーマジンガ「どうされますか?」

少女「このまま海に出る気か……」

キラーマジンガ「私、カナヅチで」

少女「知らん」

キラーマジンガ「では、私はお留守番ですか?」

少女「そうだな」

キラーマジンガ「そんな、マスター」ギュッ

少女「はなせ!!急がないと奴らは海に出てしまうだろうが!!」

キラーマジンガ「置いていかないでください」ギュゥゥ

少女「黙れ!!ええい!!鬱陶しい!!!」

キラーマジンガ「私の目が届かないところで何かがあっては遅いのです、マスター」

―――船内 甲板

船長「―――罪状は把握した。つまり、我々の正義が理解できないというわけだな?」

勇者「……」

船長「ふん。解せないな」

勇者「何がですか?」

船長「お前はそんなつまらないことを言うような奴には到底見えない」

勇者「ならば貴方の目は節穴ということになります。実際に騒ぎを起こしたのは僕ですから」

魔法使い「……っ」

船長「後ろの女どもは関係ないと?」

勇者「僕の巻き添えを食らっただけです」

魔法使い「ちが―――」

エルフ「しっ」

魔法使い「……」

船長「まあいい。罪自体は大したことではないし、国の兵士でもない。なら、半年間の雑用で許してやる。後ろの女どももだ」

勇者「待ってください。彼女たちは関係ありません。やめてください」

船長「口答えか?」

勇者「貴方達は曲がりなりにも正義の味方だ。何の罪もない人も罰するのですか?」

船長「それがここのルールだ」

勇者「しかし、見たところここは男ばかりです」

船長「そういう世界だ」

勇者「ならば一つだけお願いを聞いてください」

船長「罪人の分際で……」

勇者「キャプテンのいる船までこの三人を護送してください!!!」

僧侶「勇者様……もしかして……」

船長「なに?」

勇者「そこでならキリキリ働かせてくれてもかまいません。でも、ここにだけは置いておけない!!」

船長「てめえ……」

勇者「男たちの慰めに使うというなら、僕はこの場で暴れる」

船長「武器も無しにこの人数を相手にするのか?」

勇者「……俺にも譲れないものはある」

魔法使い「……!」

エルフ「……」

僧侶「勇者様……」

船長「面白い。確かに俺たちは外道じゃない。海賊だ。お前の女に手を出すつもりはない」

勇者「話の分かる人でよかった」

船長「お前の女は誰だ?そいつだけは見逃してやろう」

勇者「全員です」

船長「ふざけんなよ」

勇者「全員、俺の女だぁ!!!文句あるかぁ!?あぁ!!!」

船長「そんなわけあるかぁ!!!出鱈目もいい加減にしやがれ!!」

勇者「お前ら、言ってやれよ!!俺の女だってなぁ!!!」

僧侶「は、はい!!私は勇者様の女です!!」

エルフ「ボ、ボクも……えっと……何度も体を……預けた……」モジモジ

魔法使い「私も……あの……夜はいつも……はだ、かの……付き合いを……」モジモジ

勇者「な?」ドヤッ

船長「俺たちの世界じゃあ、落とし前が大事なんだよ」

勇者「なら約束守れよ。俺の女には手を出さないんだろ?」

船長「……いいだろう。だがな、貴重な女だ。そう簡単には見逃せねえなぁ」

勇者「見逃せよ!!」

船長「お前の得物は?」

勇者「剣だ」

船長「ふん……。これか」ポイッ

勇者「返却感謝」

船長「抜け」

勇者「お前で?」

船長「意味が違う」

勇者「―――戦うのか」

船長「譲れないものがあるんだろ?なら、守ってみせろよ」

勇者「魔王の軍勢をも退ける力……見せてもらおうか」

船長「お前が負けたら全員この船で雑用。勝てばお前だけが雑用だ。いいな?」

勇者「いいよ」

船長「ふん……後悔するなよ?」

勇者「航海中だけどな」ドヤッ

「頭ぁ!!やっちまえ!!!」

「かてるわけねーだろ!!ばぁーか!!!」

「やったぁ!!女の雑用だぁ!!!ひゃっほぉ!!!」

僧侶「勇者様……」

エルフ「相手は人間……でも……」

魔法使い「……」

船長「いくぞ?」

勇者「こいやぁ」

船長「―――はぁぁぁ!!!!」ダダダッ

勇者「おぉ!?」ギィィン

船長「訓練で鍛えた動きだな……。やっぱり兵士か?」

勇者「くぅ……!!元兵士だ……よ!!」ギィィン

船長「元?」

勇者「今は勇者だ」

船長「勇者……?馬鹿な。勇者は魔王によってほぼ全員が殺され、生き残った奴も逃げ出したって聞いたが……」

勇者「せぇぇい!!!」ブンッ

船長「そうか!!お前……あの国の勇者か!!」ギィィン

勇者「え……」

船長「俺たちは海の支配者。他国の情報も色々積んでるぜ?」

勇者「なんだと?」

船長「はっ!!!」ブンッ

勇者「くっ?!」

船長「弱小国から生まれた勇者。魔法はおろか剣術すらも他国の兵士に劣るって話だ」

エルフ「え……」

勇者「……」

船長「他国の勇者は勇者として育てられる。だが、てめえの国では勇者が育たなかったんだよな?」

勇者「ああ。だから、王による任命で勇者が決まる。そんなこと国のことを調べればすぐに分かるだろ」

船長「その任命制の弊害で、お前みたいな屑でも勇者になれるんだよなぁ。いいよなぁ」

勇者「だまれぇ!!」ブンッ

船長「おっと」ギィィン

勇者「何が言いたい……!!!」

船長「あの国から排出された勇者は数十人に上る。だが、誰一人として帰ってはこなかった」

勇者「それがなんだ?!」

船長「全員、敵前逃亡したからだろ?」

勇者「……!?」

僧侶「敵前逃亡?」

エルフ「勇者なのに……?」

船長「しかたねえわな。正統なる勇者様でも逃げ出すぐらいだ。一兵士じゃ無理もない」

勇者「黙れ……!!」

船長「お前も逃げ出したいんじゃねえの?王から任命時にたんまり貰ってるはずだろ?金をよ」

勇者「黙れと言っている!!―――覚悟もないまま、ここまで来るわけないだろう!!!」

船長「どうかなぁ?本当は隠居できる土地を探していただけじゃねえのか?」

勇者「……っ」

船長「でぁ!!!」ズバッ

勇者「ぐっ!?」

僧侶「勇者様!?」

魔法使い「あ……」

船長「おーおー。剣が鈍ったな。図星か?」

勇者「違う。俺は勇者だ……魔王を倒すために旅をしている」

船長「ふん。どうだか。その女たちも黙ってついてきてくれる奴を選んだんじゃねえのか?」

勇者「そんなわけ……!!」

船長「逃げ出すときでもお前の背中についてきてくれる女を探してたんだろ?寂しいもんなぁ、独り身は!!!」

勇者「違う!!!」

船長「俺たちも勇者って名乗る奴は数人見てきた。全員、お前みたいな考えだったぜ?」

エルフ「そうなの……?」

船長「ああ。どいつもコイツも女をはべらせて、逃げる場所を求めてやがった。勇者もただの人間。そんな奴らに希望を抱けってほうが、無理だ」

魔法使い「それは……」

船長「お前だって人間の敵う相手じゃないことぐらい理解してんだろ?」

勇者「……!」

エルフ「……」

僧侶「勇者様……」

船長「だから俺たちは生まれた。勇者はアテにならねえ!!自分たちの手で魔王を倒すことにしたんだ!!!」

勇者「俺は……」

船長「大人しく雑用をしていろ。俺たちは近く魔王の城に攻め込む。それで魔王を討ち取る」

勇者「できるわけ……」

船長「できるさ。アレさえ見つかればな」

僧侶「アレ?」

船長「魔王を打ち滅ぼすための武器だ。それさえ見つかれば勝てる。兵力は十分、足りないのは魔王に止めを刺すだけの武力」

魔法使い「そんなものが……」

船長「ここで雑用として生きろ。一応、魔王を討ち取ったことになるぜ?」

勇者「俺に逃げろというのか?」

船長「死にたくねえだろ?」

勇者「あははははは!!!!!」

船長「な……なんだよ」

勇者「いいか。よく聞けよ、糞野郎」

船長「くそ……?!」

勇者「俺はトロルも倒した!!黄金の国で魔人も倒した!!ついでにいうとドラゴンだって退けた!!!」

魔法使い「それ……私……」

僧侶「静かに」

船長「ドラゴン……?出鱈目抜かすな。ドラゴンなんて居るわけないだろうが」

勇者「いるっつーの!!!最近だと多くの人を拉致していた魔道士も倒した!!!この俺が!!!」

エルフ「……それは……違うような……」

勇者「俺はちょー強いぜ!?」

船長「ふん、だから逃げないと?」

勇者「逃げない。逃げたら、誰がこの人たちを側室にするって言うんだ?」

船長「強がりだな」

勇者「そう思うなら、かかってこい。祖国の兵士たちを侮辱したこと後悔させてやるからなぁ!!!」

船長「腰抜けの連中を腰抜けと言ってなにが悪い!!!」ブゥン

勇者「腰抜けだぁ?!―――てめえは知ってるのかよ!!!」ギィィン

船長「何をだ……!!」

勇者「俺たちは市民を守る為に休むことなく毎日毎日訓練をしてきた!!!」

船長「んなこと当然だろうが!!」

勇者「ああ!!そうだ!!当たり前だ!!自慢することじゃない!!」

船長「じゃあなんだよぉ!!」

勇者「―――どんな想いで敵に背を向けたか考えたことはあるのか?」

船長「なっ!?」

勇者「力のない人々を守るためだけに強くなったのに、その人々を見捨てる。どれだけの覚悟がいると思う?」

船長「臆病風に吹かれて逃げただけだろうが!!偉そうなことぬかすなぁ!!!」

勇者「お前は逃げたことまでしか耳にしないようだけど。俺たち祖国の人間は違う」

船長「あぁ?!」

勇者「数十人の勇者は皆、逃げ出したことを恥じて自決している」

船長「おいおい!!だからなんだよ!!死んだからって美談にしようってか?!」

勇者「違う!!」

船長「……っ!?」

勇者「自分の力では及ばなかった。だから、自分よりも力のある者を勇者にしてください」

船長「はぁ?」

勇者「彼らの死にはそんな想いがある」

船長「体よく逃げたんだろ?」

勇者「そうかもしれない。戦いの中で死んだ者もいるからな」

船長「その想いだってお前らの妄想だろ?」

勇者「……」

船長「勇者なんてただの人間だ。何が選ばれた者だよ。俺らと変わらない。群れて初めて力が発揮できる弱い人間だ」

勇者「それでも……」

船長「あ?」

勇者「それでも―――俺たちは守るために強くなり戦った!!それだけは嘘じゃない!!!愚弄するなぁ!!!」

船長「大声だして勝てると思うなよぉ……」

勇者「自分の命惜しさに逃げ出した者なんていない!!!勇者たちは守るべきもののために戦ったんだ!!!!」

船長「うるせえよ!!」ギィィン

勇者「くっ!―――だから、俺も戦うぞ。守る者がいるからなぁ」

船長「それが後ろの女か?」

勇者「俺の我侭に付き合ってくれた人がいる」

エルフ「負けるな……」

勇者「俺のどんな要求にも笑顔で応えてくれる人がいる」

僧侶「勇者様!!」

勇者「俺を信じ、いつも背中を守ってくれる人がいる」

魔法使い「やれぇぇ!!!」

勇者「その人たちを守る!!それが俺の使命だ!!!」

船長「このやろうぉ!!!」ブンッ

勇者「はぁぁぁぁ!!!!」ギィィィン

船長「なっ?!」

勇者「大事な人も守れない勇者なんて俺は知らない……だから俺は負けるわけにはいかない。相手が海賊でもドラゴンでも魔王でもだ!!」

船長「……でも、負けるよな?お前程度の力じゃ……」

僧侶「まだ言いますか?!」

エルフ「負け惜しみだ」

魔法使い「そうね」

船長「事実だろうが。たった4人で魔王に勝てるとでも思ってんのか?」

勇者「……約束は果たしてもらいますよ?」

船長「分かったよ。―――おい」

海賊「はい」

船長「キャプテンと連絡を取れ」

海賊「アイアイサー」

勇者「はぁ……疲れた……」

僧侶「勇者様、今治癒を」ギュッ

エルフ「……」

魔法使い「……」

勇者「なんですか?黙って見つめられると興奮するんですが……」

魔法使い「いや……なんていうか……」

エルフ「あの……さ……」

勇者「はい?」

エルフ「色々訊きたいことができたんだけど」

勇者「……なんですか?」

エルフ「貴方は一体、何の為に旅をしているの?」

魔法使い「……」

勇者「そんなのずっと言ってきているではないですか」

エルフ「……」

勇者「……側室をいっぱい作って老後を面白おかしく過ごすことですが、何か?」

魔法使い「アレだけの啖呵をきっておいてそれを言うの?」

勇者「それ以外にありませんから」

エルフ「嘘つき……」

僧侶「勇者様、もう大丈夫ですか?」

勇者「はい。もう全快です。いつもありがとうございます」

海賊「頭ぁ!キャプテンと連絡がつきました!!明日の昼過ぎには合流できるそうです!!」

船長「よし!!わかった!!」

勇者「では、この人たちには手出し無用ですよ」

船長「分かってる。―――それよりお前」

勇者「なんですか?」

船長「なんとなく分かったぜ。お前がどうして三人も女をはべらせているのかをな」

勇者「は?」

船長「悪かったな、色々きついこといって。そういう戦い方なんだな、お前は」

勇者「何を仰っているのかよくわかりません」

船長「まあ、いい。しっかりやれよ」

勇者「毎晩、ハッスルハッスルですよ」クイックイッ

船長「おい!!こいつらは今から客人だ!!!丁重にもてなせ!!!」

勇者「え?僕は雑用では?」

船長「バカ野郎。勇者様にそんな無礼なことができるかよ。しっかり接待させてもらうぜ」

勇者「ふっ……」

船長「わらうんじゃねえよ。気持ち悪い」

―――船内 食堂

船長「てめえら!!!客人にはくれぐれも失礼のないようにな!!!」

海賊「「うーっす」」

勇者「いやぁ、罪人から客人にグレードアップとは驚きましたね」

エルフ「うん」

僧侶「勇者様のおかげですね」

魔法使い「そうね」

勇者「で、どういう意図があるのですか?」

船長「キャプテンと合流してから詳しいことは話すが、お前ら俺たちの仲間になれ」

勇者「え?」

僧侶「海賊になれというのですか?」

船長「目的は一緒だろ?」

勇者「確かにそうですが」

魔法使い「私たちとはやり方が違うわ」

船長「まあ、すぐに答えが欲しいわけじゃない。ゆっくり考えてくれ。キャプテンもお前たちのことならきっと気に入ってくれるだろうしな」

―――夜 甲板

勇者「海賊か……さて……どうしたものか……」

魔法使い「ここにいたのね」

勇者「どうしました?」

魔法使い「……」

勇者「どうにも眠れなくて。興奮しっぱなしです」

魔法使い「……」

勇者「これはここで貴女をオカズに……」

魔法使い「ごめんなさい」

勇者「え?」

魔法使い「私が騒ぎを起こさなかったら……こんなことにはならなかったのに……」

勇者「結果オーライですよ。何事も最後が良ければいいのです」

魔法使い「……ごめんなさい」

勇者「あの……僕に叱られたいのですか?」

魔法使い「そ、そういうわけじゃ……あ、いや……そうかも知れないわね……」

勇者「なるほど……」

魔法使い「な、なによ……」

勇者「では、叱らせて頂きましょう」

魔法使い「……」

勇者「いつもいつも貴女は直情的に行動しすぎです。僕と別れる際、ドラゴンに独りで立ち向かうといいだしたときはぶん殴ってやろうかと思いますた」

魔法使い「ご、ごめんなさい……」

勇者「貴女は確かに高威力の魔法が使える。だけど、限りなく接近しなければダメ。猪突猛進で勝てるのは下級の魔物ぐらいです」

魔法使い「はい……」

勇者「ドラゴンになんてとてもじゃないですが、数秒で轢死でしょうね。貴女はポンコツだということを自覚してください」

魔法使い「そうですね……はい……アンタに褒められるたびに勘違いしてたのかもしれないわ……」

勇者「もう少し周囲を見て、考えて行動してもらわないと僕が困ります」

魔法使い「ごめんなさい」

勇者「あと、僕にはもう少し優しくしてください。一緒にお風呂入るとか、口移しで飲み物をくれるとか、夜はベッドで運動会するとか」

魔法使い「はい……え!?いや!!それとこれとは……違う……わよね……?」

勇者「てめえ!!反省してねえな!!!」

魔法使い「だ、だって!!エ、エッチなこととは関係ないじゃない!!」

勇者「側室のくせに偉そうだな!!あぁ!?」

魔法使い「側室じゃないって言ってるでしょ!?」

勇者「いいや!!もうおめえは立派な側室だ!!いいか?側室レベルでいうなら、軽く50だぜ?」

魔法使い「レベルの上限はいくつなのよ?」

勇者「30」

魔法使い「突き抜けてるじゃないの!!側室を超えた側室なの!?」

勇者「ああ。もう肉便器だな」

魔法使い「人権侵害でしょ!?」

勇者「トイレに人権なんてあるわけねーだろ。バァーカ」

魔法使い「なんですってぇぇ……!!!」

勇者「悔しかったらなぁ、俺の前で裸になって「抱いてください」って恥ずかしそうに言え」

魔法使い「できるわけないでしょうがぁ!!」

勇者「え?ドMだろ!?やれよ!」

魔法使い「ちが……!!ちがう!!マゾじゃないわよ!!」

勇者「えー?Sなのー?イメージとちがーう」

魔法使い「あー!!もう!!真面目に話したいだけなのにぃ!!!」

勇者「それは無理な相談でござる」

魔法使い「もういいわよ!!」プイッ

勇者「おやすみなさい」

魔法使い「おやすみ!!!」スタスタ

勇者「ふぅー……」

勇者「さて……明日はどうするか……」

勇者「海賊に協力し、強大な戦力を得るか……」

勇者「それとも6人の力を……信じるか……」

勇者「あ、いや、5人か……」

勇者「はぁ……」

勇者「感付かれたのかな」

勇者「軽蔑されるだろうか……?」

勇者「君たちをただの言い訳にしているなんて言ったら……」

―――翌日

海賊「キャプテンがきたぞー!!!」

勇者「なんだってぇ!!!」

魔法使い「ちょっと!なんでアンタがいち早く反応するのよ?!」

勇者「祭りだぁ!!飯食ってる場合じゃねえ!!!」

船長「よくわかってんじゃねえか!!―――おめえら!!キャプテンを出迎えろ!!」

海賊「「アイアイサー!!」」

僧侶「あいあいさー!」

エルフ「大規模な組織を纏めるリーダー……一体どんな人物なんだろう」

魔法使い「女性みたいだけど、ゴリラみたいな体格なんじゃないの?」

エルフ「ゴリラ……」

僧侶「女性でそういう体型になるのは体質的に無理じゃないでしょうか?」

エルフ「魔族だったりすれば、あるいは」

勇者「ごちゃごちゃ言うな!!いくぜぇ!!!」

魔法使い「はいはい」

―――甲板

キャプテン「久しぶりだなぁ!!野郎どもぉ!!!」

海賊「はいっ!!!」

船長「キャプテン!ご無沙汰しております!!」

キャプテン「一ヶ月ぶりぐらいか。元気だったか?」

船長「そうりゃあもう!!」

キャプテン「で、話に出てきた勇者っていうのは?」

船長「あいつらです」

キャプテン「……」

勇者「ヘロー、アイアムユウシャ」

僧侶「ど、どうも……」

魔法使い「……」

エルフ「……」

キャプテン「ふーん……」

勇者「美しい……年上の女……ふふふふ……!!!!ぬふふふふ!!!」

キャプテン「あたしが大艦隊の総轄を務める者だ。よろしく」

勇者「こちらこそ、側室を前提としたお付き合いを」

キャプテン「話はこの船頭から大体聞いたよ。魔王を倒すために旅をしてるんだって?」

勇者「いえ。違います」

キャプテン「え?」

勇者「綺麗なお嫁さんと10人の側室を得る為に魔王を倒そうとしています」

キャプテン「あ、あっそ……」

勇者「貴女は記念すべき7人目の側室候補になりました」

キャプテン「……本当に魔王に勝てるって思ってるのかい?」

勇者「まず無理でしょう」

魔法使い「そうなの?」

エルフ「多分」

キャプテン「へえ……自分の力を弁えているみたいだね」

勇者「でも、貴女と共に戦うのなら!!17割の確率で勝てますねぇ!!!!」

僧侶「いつもの勇者様です」

キャプテン「ああ、そう」

船長「お前!!悩んでたんじゃねーのかよ?!」

勇者「だまれぇ!!美人と戦えるなら俺は何もいらねえ!!!」

船長「このやろう!!」

勇者「にしても、船長さんは僕のことを知っていましたが、貴女は知らないのですか?」

キャプテン「あたしは勇者に興味はないからねえ。まあ、噂ぐらいは耳にしたけど」

勇者「どのような?!」

キャプテン「トロルを倒して国一つを救ったってことは知ってるよ」

勇者「さっすが」

キャプテン「でも、国一つを救った勇者なんて過去に何人もいるし、別段珍しいことじゃないだろ?」

勇者「確かに」

キャプテン「船頭にガチンコで勝ったみたいだし、実力は認めてやるよ」

勇者「え?ということは側室になってくれると?」

キャプテン「話がある、きな。仲間も一緒にね」

勇者「ふっ。子どもは5人ぐらいでいいですよ?女女男女女が理想です」

―――会議室

キャプテン「話っていってももう勇者は快諾したみたいだが……あたしたちと共に戦う気はあるかい?」

勇者「ありますっ!!!」

キャプテン「お前はいいんだよ。後ろの女どもはどうだい?」

僧侶「わ、私は勇者様の決定に従います」

エルフ「ボクは魔王が倒せるならどんな方法でも構わないよ」

魔法使い「……」

キャプテン「あんたは?」

魔法使い「私は……反対なんてしないわ。いつだってコイツの選択は正しかったから」

勇者「側室ポイントが9アップしましたね」

魔法使い「そんなにいらないわよ!!!」

僧侶「いいなぁ」

キャプテン「そうかい。満場一致ってわけだ」

勇者「はいっ!!罵ってください!!!」

キャプテン「でも、あたしはまだ認めてないけどね、あんたらのことなんてさ」

勇者「えー!?そんなぁ!!お姉様ぁ!!!」

キャプテン「当然だろう。とくにお前」

勇者「ご指名ありがとうございます」

キャプテン「あたしは男をすぐに信用はしない。きちんと見定めてからじゃないとね」

勇者「では、夜の営みで僕がどれだけ男なのかを見せ付けてあげましょう」キリッ

キャプテン「魔王と戦うためには兵力と武力がいる。あたしたちの兵力は十分にある」

キャプテン「あとは武力が欲しいのさ」

僧侶「そういえば船長さんもそのようなことを……」

キャプテン「数百年前、まだ人間とエルフが仲良く手を繋いでいた時代だ。あるとき人間は魔王に喧嘩を売った」

エルフ「……」

キャプテン「そのときエルフは人間にあるものを託した。なんだが知ってるかい?」

魔法使い「聞いたことないわね」

僧侶「はい」

エルフ「……魔法銃」

キャプテン「正解。よく知ってるね。才能がない人間でも魔法を扱えるようになる強力な武器があったのさ。それが魔法銃だ」

魔法使い「へえ……そんなものがあったなんて……」

キャプテン「それを手に入れた人間たちは魔王を倒す一歩手前までいった。でも、結果は歴史の教科書にも載ってるだろ?」

僧侶「確か疲弊した魔王軍は孤島に逃げ、その周辺海域に近づけないようにしたとか」

キャプテン「今でもその海域はどんな船でも通るとこはできない。一瞬で海の藻屑になっちまう」

エルフ「でも、魔王はもうその孤島にはいないと」

キャプテン「あそこは最後の砦ではあるけど、あそこから世界を手中に収めることはできないからねえ」

勇者「魔王の居場所を知っているのですか?」

キャプテン「勿論さ。奴は今、かつての軍事大国に城を築き、ふんぞり返ってる」

勇者「……」

僧侶「魔王は自ら少しずつ動いているということですか」

キャプテン「そういうこったね。最近は力も増してきているし、早く戦争をしなきゃならない」

エルフ「そうだね。今のままでも十分に強いだろうけど」

キャプテン「だからこそ、魔法銃が欲しいのさ!!―――そこで、あんたたちをテストしたい」

勇者「腰の強度テストですか?」

キャプテン「魔法銃の探索だ」

僧侶「そ、それはどこに?」

キャプテン「殆どの魔法銃は海の底にある。けど、最近ある船団が過去の遺産を見つけた」

エルフ「それって」

キャプテン「数百年前、魔王の孤島に挑んだ勇者の船」

魔法使い「数百年前って?!それ船なの!?」

キャプテン「まあ、あれだよ、幽霊船ってやつだねぇ」

僧侶「幽霊船……怨念が形となって海を彷徨うという……あれですね」

エルフ「海って色々あるんだ」

勇者「ゴーストシップですかぁ。美人幽霊を側室ってどうですかね?」

魔法使い「幽霊と一緒なんて私は嫌よ」

キャプテン「魔法銃を見つけてきたら仲間として迎えてやろう。どうだい、悪い話じゃないだろ?」

勇者「でも、どうして僕たちに探索をさせるのですか?部下にやらせれば……」

キャプテン「昔から海の世界では幽霊船には乗るなって言われてるんだよ」

僧侶「乗船した者を永遠の航海に連れて行くといいますね」

魔法使い「そ、それ……危険じゃない?」

勇者「つまり誰も乗りたがらないと?」

キャプテン「とんだ腑抜けどもだよ。全く。海の男が聞いて呆れるね」

勇者「貴女も?」

キャプテン「いや。あたしは別に怖くないけど。何かあったらまずいだろ?」

勇者「……」ニヤァ

魔法使い「悪い顔になってるわよ」

勇者「おっと。自重」

キャプテン「で、どうするんだい?やるかい?」

勇者「ふっ。貴女のためならたとえ火の中、水の中。幽霊船の中にも行ってみせましょう」

キャプテン「ふふ。たくましいじゃないか。気に入ったよ」

勇者「ですがその前に、海賊の村に戻って欲しいのです」

キャプテン「どうしてだい?」

勇者「港街のほうに大事な仲間を置いてきているので」

キャプテン「ふーん……強いのかい?」

勇者「恐らく、人間では歯が立たないほどに」

―――海賊の村

キャプテン「ここに帰ってくるのもいつ以来だろうねぇ」

「キャプテンだぁ!!」

「キャー!!!キャプテン!!おかえりなさーい!!」

キャプテン「お前ら!!元気にしてたかぁ!!!」

僧侶「人気者なのですね」

魔法使い「カリスマはあるものね、あの人。なんていうか信頼できるって一瞬で思わせてくれるなにかがあるわ」

エルフ「早く港町に行こうよ。猶予は1日だけだし」

勇者「そうですね。急ぎましょう」

村人「おい、あんたら」

勇者「なんですか?」

村人「宿に小さな女の子と可愛い女の子がいるんだが、知り合いか?その二人、勇者を探してるって言ってたけど」

僧侶「ジーちゃんでしょうか?」

エルフ「心配になって探しにきたのかな?」

勇者「案内してください」

―――宿屋

魔王『どうだ?勇者のことは何か掴めたか?』

少女「それがまだ……。中々尻尾を出さないので」

魔王『あまり余裕はないぞ。最近、ニンゲン共に不穏な動きもあるからな』

少女「はい」

魔王『頼むぞ。世界を我が手にするために、些細な障害も捨て置けない』

少女「承知しております」

魔王『隙があればお前の判断で殺しても構わんが、絶対に無理はするな?お前を失いたくはない』

少女「心得ております」

魔王『吉報を期待している」

少女「はい」

キラーマジンガ「……」

少女「はぁ……やはり海に出るか……」

キラーマジンガ「マスター、海は危険です。やめましょう」

少女「お前にとってはだろうが!!!」

キラーマジンガ「ほら、サメとか出ますし」

少女「黙れ!!」

勇者「―――しつれい!!」ガチャ

少女「うわぁあぁ!?」

勇者「おや。やはり貴女たちでしたか」

魔法使い「だからノックしなさいっていってるでしょうが!!」

勇者「ノックしては裸が拝めません」

エルフ「ごめんね。心配かけたみたいで」

少女「う、うん……遅いから……」

僧侶「申し訳ありません。でも、船は確保できましたから」

キラーマジンガ「それは重畳です」

勇者「ただ君の自宅探しは少し後回しになるけど、いいかな?」

少女「う、うん……いいよ。気にしないでね」

勇者「いい子だ。僕の側室にはこういう素直な子も必要ですね」

魔法使い「ロリコンめ……」

―――船着場

キラーマジンガ「私も……ふ……船に乗るのですか……?」

僧侶「勿論ですよ」

キラーマジンガ「……」

魔法使い「マーちゃん?どうかしたの?」

キラーマジンガ「沈む確率を計算しています」

エルフ「沈まないって」

キラーマジンガ「75.56%の確率で轟沈します。乗船を拒否させていただきます」

魔法使い「ダメよ。マーちゃんのマスターだって乗るんだし」

勇者「乗りますよ。まあ、夜は僕の上に乗っていただきますけどね。なんちゃって」

キャプテン「早くしな!!時間がないんだよ!!」

エルフ「ほら!乗るよ!」ググッ

キラーマジンガ「やめてください。乗船を拒否します。自爆プログラムも発動させますよ?いいんですか?」

僧侶「そんなのないですよね?」

エルフ「うん」

魔法使い「ほら……!!」ググッ

キラーマジンガ「いやぁ……!!」

僧侶「我侭言わないでください……!!」ググッ

キラーマジンガ「人殺し……!!貴方達は人殺しです……!!」

勇者「オーエス!オーエス!」ググッ

キラーマジンガ「やめろ!人間の醜い部分が露呈しているぞ!!お前ら!!」

エルフ「それは君だ……!!」ググッ

キラーマジンガ「マスター!!お許しを!!海だけはダメなのです!!」

少女「……」プイッ

キラーマジンガ「あぁぁ……!!!」

キャプテン「おいおい、これが本当に頼れる仲間なのかい?あたしにはただの臆病者にしか見えないけどねえ」

勇者「やれば出来る子なんですよ!!キラちゃんは!!」ググッ

エルフ「そうそう!!」ググッ

キラーマジンガ「てめえらは悪魔だ!!!」

僧侶「ジーちゃんが壊れちゃいました……」

―――甲板

キャプテン「出航!!!目指すは幽霊船の出る魔の海域!!!」

海賊「「アイサイサー!!!」」

キラーマジンガ「おぉぉ……揺れる……揺れています……」ガクガク

魔法使い「この子、本当に機械兵士なの?」

エルフ「改造人間だから、根っこの部分は人間だと思うけど」

僧侶「でも可愛いじゃないですか、弱点があるなんて」

勇者「キラちゃんは僕が守ってあげるから。ほら、おいで」

キラーマジンガ「パパぁ……パパぁ……こわいよぉ……」ヨロヨロ

勇者「ほーら、ここまでおいでー」

キラーマジンガ「うぅぅ……パパぁ……いじわるしないでぇ……」

勇者「もうちょっとだ……がんばれっ」

キラーマジンガ「パ……パ……」ヨロヨロ

勇者「よし……よくがんばったな、娘よ」ギュッ

キラーマジンガ「パパ……大好き……抱いて……」ギュッ

魔法使い「なにやってのよ……」

少女「……」

僧侶「ごめんなさい。寄り道することになってしまっていて」

少女「ううん。いいよ。―――私、部屋で休んでるね」

エルフ「うん。わかったよ」

勇者「……」

キラーマジンガ「パパぁ」ギュゥゥ

勇者「よし。終了」

キラーマジンガ「今のはどうでしたでしょうか?自己採点では過去最高得点なのですが」

勇者「『パパぁ』の言い方が素晴らしい。だが、最後の抱いてはいただけない」

キラーマジンガ「なんですって?」

勇者「いいか?最後の『抱いて』は処女を散らす前の娘っぽさがない。あれでは売女の惚気だ」

キラーマジンガ「む……違いが理解できません」

キャプテン「おまえらー!!魔の海域に着くまでは一日以上かかる!!それまで自由にしてな!!!」

勇者「はい!!」

僧侶「勇者様っ」

勇者「なんですか?」

僧侶「船の中を探索しませんか?」

勇者「いいですね。船内ランデブーとしゃれ込みますか」

僧侶「わーい」

魔法使い「私は部屋に行くわ。船旅って疲れるし……」

エルフ「ボクは……」

キラーマジンガ「私はマスターのところへ」

エルフ「ねえ」

キラーマジンガ「なんですか?」

エルフ「君のことなんだけど」

キラーマジンガ「私の知っていることは既に皆様にお伝えしましたが」

エルフ「これ」スッ

キラーマジンガ「これは?」

エルフ「貴女の開発者の日記。あの塔で手に入れてちょっとずつ読んでたんだ。それで分かったよ、君がなんの目的で作られたのかを」

キラーマジンガ「来るべき戦いのために私は作られました」

エルフ「誰と戦うため?」

キラーマジンガ「分かりません」

エルフ「貴女の開発者はこう書いている。―――魔王を倒すためにもこの機械兵士キラーマンジガの開発を急がないといけない」

キラーマジンガ「魔王……」

エルフ「君は魔王を倒すために作られた」

キラーマジンガ「……」

エルフ「ボクが少し変だって気がついたのは君に魔物を探知する機能が搭載されていると知ったとき」

エルフ「それってつまり、魔物に狙われることを前提にしていることになるから」

キラーマジンガ「……」

エルフ「あの魔道士がどういうつもりで魔王と戦おうと思ったのかはどこにも書かれていないけど、君は魔王と戦うために生まれた」

キラーマジンガ「そうですか。でも、どうしてそのことを私に打ち明けたのですか?」

エルフ「ほら、心を持っているみたいだし、魔物と戦うことに迷いがあったら辛いかなって……思って……」

キラーマジンガ「前マスターが魔族だったから、ですか。お心遣い感謝いたします。ですが、私の使命はマスターをお守りすることが第一ですので」

エルフ「そう。ならいいんだ。ごめん、余計なこと言ったみたいで」

キラーマジンガ「ですが、魔王と敵対する者たちがマスターを狙った場合はどうしたらいいのでしょうか」

エルフ「え?」

キラーマジンガ「開発者の意思を汲み、魔王と戦うべきなのか。それともマスターを守護するべきなのか」

エルフ「難しいね。でも、そうなったら君の信じたほうでいいんじゃないかな?」

キラーマジンガ「信じたほうですか?」

エルフ「そう」

キラーマジンガ「信じたほう……」

エルフ「えっと……」

キラーマジンガ「なんですか?」

エルフ「足、震えてるけど大丈夫なの?」

キラーマジンガ「まさか。私が震えるなんて……本当ですね。私、震えています」ガクガク

エルフ「部屋に戻っていたほうがいいんじゃない?」

キラーマジンガ「私も同意見です。ですが、問題が発生しました」

エルフ「どうしたの?」

キラーマジンガ「足が動きません。助けてください」

―――客室

少女(海か……。ならば……ここは奴らを呼び出すか……)

少女「……」

トントン

少女「はい?」

エルフ「よっと」

少女「ど、どうしたの?」

キラーマジンガ「申し訳ありません。ここで休憩させてください」

少女「別にいいけど」

エルフ「船だめなんだって」

少女「機械兵士のくせに?」

キラーマジンガ「面目ありません」

エルフ「君と一緒がいいみたいだから。それじゃあ」

少女「うん」

キラーマジンガ「……」

―――船内 食堂

勇者「色々メニューがあるんですねえ」

僧侶「ですね。あ、このカレーって美味しそうです」

キャプテン「―――この船のカレーは絶品だよ」

勇者「おお。別嬪さんがキター」

キャプテン「二人は恋人か何かかい?」

僧侶「そ、そんな大それた関係では……」モジモジ

勇者「未来の側室なんですよね?」

僧侶「はいっ」

キャプテン「側室側室って、お前さん何言ってんだい?」

勇者「英雄、色を好むといいますよね?」

キャプテン「まあ、何人も女を転がせるだけの器量があるなら問題はないけどねえ」

勇者「ありますよ」キリッ

キャプテン「あたしには見えないけどねえ」

僧侶「勇者様はすごい人なんですっ」

キャプテン「ははっ。まあ、それは幽霊船での活躍に期待させてもらうさ」

勇者「そうだ。その件でお話があるのですが」

キャプテン「なんだい?今更泣き言はききたくないねえ」

勇者「その幽霊船探索なんですけど、僕たちでやるんですよね?」

キャプテン「ああ、そうさ」

勇者「それってどうなんですか?」

キャプテン「何がいいたんだ?」

勇者「いや。僕たちのことは……ああ、いや、僕のことは信頼できないんですよね?」

キャプテン「ああ」

勇者「なら魔法銃の捜索を見張りもつけないで任してもいいんですかぁ?」

キャプテン「海の上じゃあ逃げられないだろう」

勇者「あははは。これはこれは。大艦隊を率いる貴女がいう台詞とは思えません」

キャプテン「なんだって!?」

勇者「魔法銃は魔王をも追い込んだ伝説の武器。なら、それを手にした僕がこの海賊団を脅してしまうとは考えないのですか?んー?」

キャプテン「そ、それは……」

僧侶「勇者様はそのようなことしないですけどね」

勇者「でも、これだけの大艦隊です。力で屈服させ、我が手に収めたいという欲望に駆られてもおかしくない」

僧侶「ですね」

キャプテン「お前……本気で言っているのかい?」

勇者「可能性の話ですよ」

キャプテン「……」

勇者「ここは探索に貴女もついて来るべきだと思うのですが」

キャプテン「ふ、ふざけんな!!どうして……!!」

勇者「おや?何故?ついて来るだけなのに?」

キャプテン「だから……幽霊船には乗るなって海の世界では決まってんだよ」

勇者「迷信でしょう?」

キャプテン「バッカ!!幽霊船をなめるんじゃないよ!!」

勇者「……まさかとは思いますが、幽霊が怖いとか?」

キャプテン「そんなわけないだろうがよ!!」

勇者「なら、一緒に行きましょう。共に行動していれば魔法銃を見つけたとき貴女が真っ先に手にできるわけですし」

キャプテン「そんなことしなくてもあたしたちが……」ガッ

僧侶「きゃ?!」

キャプテン「あんたの女を人質にすればいいだけの話だろ?」

勇者「魔法銃と引き換えにというわけですか?」

キャプテン「ああ、そうだ」

勇者「そんなことしたら僕は魔法銃を貴女の大事な船に突きつけて人質にします」

キャプテン「卑怯だぞ!?」

勇者「なら一緒に行きましょう」

キャプテン「ふ、ふざ……」

勇者「ついてきてくれるのでしたら、人質は何人でも構いません。やってくれますか?」

僧侶「はい。人質になります」

キャプテン「くぅぅ……!!」

勇者「どうするんですかぁ?」

キャプテン「か、考える……ちょっと待ってな」

勇者「ごゆるりと」

―――客室

少女「……頼むぞ」

少女「これでよし」

キラーマジンガ「マスター。魔王との交信ですか?」

少女「いや」

キラーマジンガ「そうですか」

少女「……」

キラーマジンガ「マスターにとって魔王とはどのような存在なのですか?」

少女「それを知ってどうする?」

キラーマジンガ「いえ……」

少女「魔王様は我ら魔族の王。絶対的な存在。魔王様に疑問を抱いたことなどない」

キラーマジンガ「……」

少女「その王に楯突くニンゲンを駆逐する。当然のことだろう?」

キラーマジンガ「はい」

少女「ふん……」

―――魔王の城

側近「魔王様、兵が整いました」

魔王「ご苦労だったな」

側近「いえ」

魔王「では、遅延していた計画を進めるとしようか」

側近「はっ」

魔王「兵力は十分。時間も掛けた。これで負けることは無い」

側近「ドラゴンは呼び戻さなくてもよろしいのですか?」

魔王「奴は我の最後の憂いを取り除く為に行動している。まだ時期ではない」

側近「そうですか」

魔王「海に蠢く有象無象も挑発ばかりで攻めてくる様子はないな?」

側近「はい。兵の増強を行っているようではありますが、今のところ仕掛けてくる素振りは見せておりません」

魔王「よし。―――では、進軍開始は三日後とする。それまでに出来うる限りの準備をしておけ」

側近「了解いたしました」

魔王「トロルが攻め落とせなかったあの大地……今度こそ……」

―――翌日 魔の海域周辺

キャプテン「てめぇらぁ!!!男だろうが!!!股間についてるもんは飾りかぁ!!!?あぁぁ!?」

海賊「……」

船長「キャプテン、しかし幽霊船は俺たちにとっては禁忌で……」

キャプテン「んなことはわかってんだよぉ!!!ダボがぁ!!!」

勇者「揉めてますね」

僧侶「そうですね」

魔法使い「何があったの?」

エルフ「幽霊船に同行する人を募ってるみたいだね。誰も行く気なさそうだけど」

少女「……」

キラーマジンガ「海賊船の乗組員の方々は、幽霊船を極度に恐れています」

魔法使い「どうして同行させるのよ?」

僧侶「見張りがいないと私たちが魔法銃で脅してしまうかもしれないという話になりまして」

少女(魔法銃……?)

魔法使い「そんなことするわけないじゃない。まあ、信頼できないって言っていたし、仕方ないか……」

勇者「分かりました。ここはキャプテンが行くべきでしょう」

キャプテン「あぁ?!嫌ににきまってんだろ!?」

勇者「怖い?」

キャプテン「こ、こわくねえよ!!ざっけんな!!!」

船長「待て。それは流石に反対だ。キャプテンに何かあったらどうする」

キャプテン「おう!そうだ!もっといてやりな!!」

勇者「おやおや?キャプテンは幽霊を恐れるようなか弱い御人だと?」

船長「そんなわけねえだろ!!キャプテンはこの海で最も美しく!!気高く!!そして強いんだよ!!」

海賊「「そーだ!そーだ!!」」

勇者「なら、適任でしょう。僕らが魔法銃を見つけ、謀反を働こうとしたとき下っ端の人たちでは到底無理。一度負けた船長さんも無理」

船長「そ、それは……」

勇者「キャプテンしかつとまりませんなぁ」

キャプテン「ぐっ……いや……でも……しかし……」

勇者「威厳……見せるときじゃねえですか?仮にも大勢を纏める指揮官でしょう?そのカリスマを増大させるチャンスかと思いますけどねえ」

キャプテン「だ、だから……えっと……うん……」

勇者「ここで武勇伝をつくれば、士気も上がる。信頼度も跳ね上がる」

キャプテン「そ、そうかもしれないけど……」

勇者「貴女の英雄譚を聞きつけた有能な部下が増えるかもしれない」

キャプテン「そ、そうなのか?」

勇者「強い人の下に強いやつが集う。これ常識アル」

キャプテン「……」

勇者「さあ、魔王を倒し人類の英雄となるときですよ。海賊の存在を公に認めさせるチャンス」

キャプテン「確かに……」

勇者「何を迷うことがありますか!!―――何かあっても僕が必ず御身を守護いたします」

キャプテン「……」ピクッ

勇者「神に仕える者も僕の仲間にいます。彼女がいれば幽霊なんて怖くない」

僧侶「……」

キャプテン「そうだな……ふっ。そうだよ。あたしは大艦隊の海賊団総轄だ!!幽霊船ごときにびびってどうすんだい!!!」

勇者「と、言うことは……!!」

キャプテン「いってやらぁ!!!あたしに不可能はないんだよぉ!!!」

勇者「聞いたかお前らぁ!!!腰抜け共に代わってキャプテン自らが出撃する意思をかためたぁ!!!」

海賊「「おぉぉー!!!」」

船長「キャプテン……漢だ……!!俺……俺……一生ついてきます!!!」

キャプテン「あたしについて来る奴はいねえのかい?!」

「幽霊船はなぁ?」

「うん……流石に……」

船長「生きて帰ってきてください!!!キャプテン!!!」

キャプテン「てめえら。戻ってきたら覚えてろよ」

勇者「では準備をしましょうか」

キャプテン「まちな。こっちも人質を取らせてもらうよ」

勇者「ああ、そういう約束でしたね。どなたを人質にしますか?」

キャプテン「そうだねぇ……」

魔法使い「人質ってどういうことよ?!」

勇者「信頼できない相手に何かを依頼するとき、担保は必要でしょう」

エルフ「なるほど……裏切らないように予防線を張っておくわけだ」

勇者「―――幽霊船に行くメンバーは、僕と」

僧侶「はいっ」

エルフ「はーい」

キャプテン「ふん……」

魔法使い「大丈夫?」

勇者「心配してくれるのですか?ふふ、側室としての意識が芽生えたのですね」

魔法使い「違うわよ」

キラーマジンガ「最もバランスの取れた陣営だと思われます」

魔法使い「はっきり言われるとなんか悔しいわね」

勇者「まぁ、凶悪な魔物がいる可能性もありますが、危なくなったら発炎筒で危険を知らせますので」

僧侶「悪霊の類なら魔法よりも私の力が役に立つと思います」

キラーマジンガ「気をつけてね、パパ」

勇者「行ってくるよ。我が娘たち」

少女「……それ私も?」

キャプテン「じゃあ、幽霊船が見つかり次第乗り込むよ」

―――数十分後

海賊「キャプテン!!三時の方角!!謎の船影を確認しましたぁ!!!!」

船長「き、きたか……!?」

キャプテン「本当に……あったんだねえ……」

勇者「ふっ。僕が幽霊を蹴散らしてやりますよ」

僧侶「お願いしますね」

エルフ「幽霊か……魔法が通じる相手ならいいけど」

魔法使い「実体がない相手には利かないと思うけど」

少女「……」

キラーマジンガ「あぁ……もしもあの幽霊船が砲撃してきたら私たちは海の底に沈む……そしたら錆びる……」ガクガク

少女「おい」

キラーマジンガ「はい?」

魔法使い「ん……?」

キャプテン「よ、よし……り、り、隣接……しな……」

海賊「「あ、あああ、アイアイ、アイサー!!」」ガクガク

船長「キャプテーン!!おげんきでー!!!」

「キャプテーン!!大好きでしたー!!!」

「俺!!カーチャンにキャプテンと付き合ってるって報告してました!!ごめんなさーい!!!」

「キャプテンのブラジャーを昔盗んだの俺でーす!!」

キャプテン「……」

勇者「あれ?お見送りに応えてあげないのですか?」

キャプテン「いくぞ」

勇者「はい」

僧侶「もしかして緊張されているとか?」

エルフ「そんな馬鹿な。魔物の軍勢とも何回か戦っているって言ってたのに?」

僧侶「ですよね」

キャプテン「あれ?!―――おい!!こら!!お前はあたしの前だろ!!なにやってんだい!!」

勇者「そうなんですか?」

キャプテン「勇者は先頭を歩くもんだろうが!!!そんな基本も知らないのかい!?えぇ?!あぁ!?」

勇者「分かりました。僕が先頭になります」

船長「ああ……言ってしまった」

海賊「寂しくなりますね」

船長「ああ、そうだ。人質役になった―――」

キラーマジンガ「やはり私たちも幽霊船に乗り込みます」

船長「なんだと?!」

少女「探さないでください」

船長「バカ野郎!!そういうわけにも―――」

海賊「頭ぁ!!大変だ!!!」

船長「どうしたぁ!?」

海賊「幽霊船の野郎がいきなり動き出して……うわぁ!?」

ゴゴゴゴ……

船長「なんだと?!帆だって破れてんのに波の影響でしか移動なんて……」

キラーマジンガ「急ぎましょう。海に落ちたくありませんので。―――しっかり捕まっていてください」

少女「うん」ギュッ

船長「てめえらも勝手なことすんじゃねえよ?!」

キラーマジンガ「海が怖いので私は目を閉じます。飛ぶタイミングが自分ではわかりません。なので踏み切る瞬間の合図をお願いします」

少女「わかった」

船長「やめろぉ!!」

キラーマジンガ「うおぉぉぉぉぉ!!!!!!」ダダダダダッ

少女「うっ……」ギュゥゥ

キラーマジンガ「おちたくなーい!!!!」ダダダダッ

少女「―――今だっ!!!」

キラーマジンガ「はっ!!」バッ

海賊「本当に飛び移りやがった……」

船長「あぁ!!キャプテンになんて言えばいいんだぁ!!」

海賊「頭ぁ!!大変だぁ!!」

船長「今度はなんだよぉ!!」

海賊「もう一人の姉さんがいなくなってやがるぅ!!人質が全員いねえ!!」

船長「ぎゃー!!キャプテンに怒られるじゃねえかぁ!!ええい!!幽霊船をおえ!!絶対に見失うなよ!!!」

海賊「「アイアイサー!!」」

―――幽霊船 甲板

勇者「至るところがボロボロですね」

キャプテン「……」ギュゥゥ

勇者「板が腐っています。足下には十分に気をつけてください」

僧侶「わかりました」

エルフ「うん」

勇者「ところで」

キャプテン「魔法銃は見つかったのか?」ギュゥゥ

勇者「僕にしがみ付いてくれるのはありがたいですが、せめて目ぐらいは開けていてもらわないと」

キャプテン「しっかりさがせ……こらぁ……」

僧侶「どうかしたんですか?元気が無いみたいですけど……」

キャプテン「無駄口叩く暇があった―――」

―――ドンッ!!!

キャプテン「きゃぁぁああああ!?!?!?」

勇者「なんだ?背後から音が……?」

僧侶「魔物でしょうか?」

エルフ「……」

キャプテン「おぉ……な、なんだよ……こらぁ……」ギュゥゥ

勇者「確かめに行きますか」

キャプテン「待てよ……魔法銃を探せ……よぉ……」

勇者「しかし、海には魔物も多くいます。乗り込まれたら厄介ですよ?」

エルフ「ボクが見てくるよ。三人は待ってて」

勇者「そんな危険です。全員で―――」

エルフ「キャプテンが動きそうにないし」

勇者「……わかりました。ですがすぐに戻ってきてください」

エルフ「うん。了解」タタタッ

僧侶「……」

勇者「キラちゃんを連れてきたほうが良かったかもしれませんね」

僧侶「魔物探知機能ありますもんね」

キャプテン「まだか……よぉ……」ギュゥゥ

勇者「―――遅い」

僧侶「見に行きましょう」

勇者「物音一つしないのが気になりますが……」

キャプテン「怨霊か!?悪霊か?!」

僧侶「禍々しい怨嗟の念が充満していることは確かですが」

キャプテン「やめろよ!!そういう脅しはよぉ!!」

勇者「どうしたんですかー!!!早く戻ってきてくださーい!!」

僧侶「船尾のほうで何かあったのでしょうか?」

勇者「急に視界も悪くなってきましたし、やはり行きましょうか」

僧侶「はい」

キャプテン「魔法銃はどうなったんだよぉ」

勇者「ちゃんと探しますから」

キャプテン「うぅ……」

勇者「何事もなければいいが……」

僧侶「……」

勇者「どうしたんですかー!!」

僧侶「返事をしてくださーい!!」

キャプテン「おう……」

勇者「貴女が返事をしてどうするのですか」

キャプテン「わ、悪いね……」

僧侶「いませんね」

勇者「下に向かうような場所もないですし」

僧侶「勇者様、ここ穴があります」

勇者「板が腐って抜け落ちた感じですね。まさか、この穴から落ちた……?」

僧侶「それなら私たちも」

勇者「いえ。どこに繋がっているかわからない以上、正規のルートを辿っていくほうが安全です」

僧侶「それもそうですね」

勇者「行きましょう」

僧侶「はい」

キャプテン「まてよ……ゆっくりあるけよ……」ギュゥゥ

―――幽霊船 Aフロア

勇者「ここは……」ガチャ

僧侶「お部屋ですね。無残な感じですけど」

勇者「ふむ……」

キャプテン「なんかあったか?」

勇者「いいものがありました」

キャプテン「なんだよ……」ソーッ

勇者「乗組員と思しき頭蓋骨が」

キャプテン「ぴゅっ!?」

勇者「手がかりになるようなものはありませんね」

僧侶「船尾のほうへ行きましょう」

勇者「ええ」

キャプテン「……」

勇者「どうしました?」

キャプテン「……こし……ぬけ……た……」

勇者「ガイコツぐらいで何をいっているのですか?」

キャプテン「ばかやろう!!こういうところで見るとまた一味ちがうだろうがぁ!!」

勇者「―――どうぞ」

キャプテン「なんの真似だ……」

勇者「おんぶしてあげます」

キャプテン「ざっけんなぁ!!」

勇者「では、ここで待っていてください」

キャプテン「え?」

僧侶「勇者様」

勇者「はい」

キャプテン「まてぇ!!おいてくなぁぁ!!!」ギュゥゥ

勇者「なんですか?」

キャプテン「見張りのあたしを置いていくとかありえねえなぁ!!!」

勇者「では、おんぶで」

キャプテン「ちくしょう……」

勇者「よっと」

キャプテン「……おもくないかい?」

勇者「いえ。いい感じに弾力があって空中に浮いてしまいそうです」

キャプテン「はぁ?」

僧侶「勇者様。こっちも同じような部屋だけです」

勇者「そうですか。では、下に向かう階段を探しましょう」

僧侶「わかりました」

勇者「それにしても不気味なほど静かですね」

キャプテン「たいまつの灯りは大丈夫だろうね?」

勇者「問題ありません」

キャプテン「……」

僧侶「勇者様!ありました!!こっちです!!」

勇者「わかりました」

キャプテン「はぁ……」

勇者「おふぅ……吐息が耳に……ぬほほぉ」

―――幽霊船 Bフロア

勇者「気配は感じますか?」

僧侶「いえ……。船全体から悪鬼の熱を感じるので」

勇者「幽霊の胃の中にいるようなものですか」

僧侶「そう思ってください」

キャプテン「あたしたち食べられたのかい?!」

勇者「食べられに行ったというべきでしょう」

キャプテン「帰りたい……」

ギシ……ギシ……

キャプテン「なに?!なになに!?」

僧侶「誰かがこの先にいるようです」

キャプテン「いるわけないだろう?!」

勇者「静かにお願いします」

キャプテン「う……」

ギシ……ギシ……ギィィ……バタンッ

勇者「この部屋ですね」

僧侶「恐らく」

キャプテン「ひぃぃ……」チャカ

勇者「耳元で銃は発射しないでくださいね。鼓膜が破れますから」

キャプテン「そんな軟弱な鼓膜なのかい……」ガクガク

勇者「鼓膜は鍛えられません」

僧侶「開けます」

勇者「お願いします」

キャプテン「おぉぉ……」

僧侶「……」ガチャ

キャプテン「ひっ」

勇者「……誰もいませんね」

僧侶「違う部屋だったのでしょうか?」

キャプテン「この部屋……見た感じ、船長かなんかの部屋っぽいね」

勇者「何か分かるかもしれません。調べてましょう」

―――船長の部屋

勇者「うーん……」ゴソゴソ

キャプテン「魔法銃はないねえ……」

僧侶「……」ペラッ

勇者「どうしました?」

僧侶「航海日誌を見つけました」

勇者「ほう」

キャプテン「いいね。他人の航海日誌ほど面白いものはないよ」

―――今日は快晴。絶好の航海日和だ。俺たちは王国の勇者を乗せ、魔王が住む孤島へ向けて出発する

先日の戦いで奴らは大きな痛手を負ったはずだ。魔物を駆逐する最大の好機が巡ってきたわけだ。

エルフ族が開発した魔法の銃さえあれば、俺たちは絶対に負けない。勇者もそう確信しているからこそ、俺たちは魔王の根城に乗り込む。

勇者は船出の際に皆に宣言した。必ず勝てる。すぐに人間たちだけの時代がくる。俺もそう信じている。

キャプテン「時代だねえ。今じゃ魔族のほうが強すぎて、人間じゃあ歯が立たないっていうのに……」

僧侶「そうですね。でも、魔法銃によって一度魔王を追い詰めているわけですし、自信があったのでしょう」

勇者「続きを見てみましょう」

―――今日は快晴。魔王がいる孤島まではおよそ五日の航海となる。

その長旅の間に士気が落ちてはいけないと、勇者一行は色々と考えてくれていた。

魔物は海にもでやがる。そこで勇者たちは海の魔物を捕らえて、魔法の銃の威力を見せてくれた。

引き金を引くと大きな音がして魔物の顔が吹っ飛びやがった。他に捕らえた魔物の驚いた顔は傑作だった。

写真機でも積んでおけばよかった。

僧侶「……」

キャプテン「ふーん。すごい威力かと思っていたけど、大したことはないのかねえ……」

勇者「分かりません。どんなモノでも破壊する力があったのかもしれません」

―――今日は曇天。三日目にして問題が起きた。空を見る限り、大時化になる。

それだけならよかったが、魔物の軍勢が攻めてくる様が肉眼ではっきりと見えた。

ここで戦力を消耗したくはない。なるべく遠方から攻撃するべきだと勇者たちは言う。

魔王との決戦を占う大一番になりそうだぜ。

勇者「―――うーん……大したことは載っていなさそうですね」

キャプテン「じゃあ、どうするのさ」

勇者「とにかく先を急ぎましょう。今頃、逸れてしまった彼女がワンワン泣いているかもしれませんし」

僧侶「勇者様」

勇者「どうしました?」

僧侶「もう少し、この日誌を読んでみたいのですが」

勇者「なにか気になることでも?」

僧侶「はい」

勇者「……わかりました。でも、絶対にここから動かないようにしてください」

僧侶「申し訳ありません」

キャプテン「じゃあ、あたしは……」

勇者「僕とデートしましょう」

キャプテン「こんな状況でよくそんなことが言えるね」

勇者「勇者たるもの、常に平常心を保っていないと」

キャプテン「……まあ、今は頼もしい限りだけどね」

勇者「では、行って来ます」

僧侶「はい」

キャプテン「はぁ……ここから出たくないねえ……」

僧侶「……」ペラッ

―――今日は快晴。酒が旨い。勇者の指示通りに動くだけで魔物はあっという間に退散した。ざまーみろ。

生き残りが居たので生け捕りにしてやった。こいつらで魔法の銃の試射をしようって話になったからだ。

明日が楽しみだ。

―――今日は濃霧。魔王の孤島が見えた。だが、たどり着けない。

引き返しても同じ場所に来てしまう。どうなってんだ、これは。勇者は近くに幻術使いがいると主張する。

勇者がそういうならそうするしかない。幻術使い探しは勇者たちに任せて、俺たちは昨日捕まえた魔物で魔法の銃の練習をした。

気持ちいいほどに魔物が死ぬ。今まで1匹倒すのも相当な労力だったのに、これはいい。最高だ。俺が独りで10匹殺したら他のやつに怒られた。

魔物なんだから何匹殺してもいいだろうが。

―――今日は濃霧。魔王の孤島はまだ見えている。しかし、たどり着けない。

幻術使いはまだ見つからないようだ。海で捕まえた魔物を魔法の銃で殺していると、勇者がそろそろやめろという。

魔法の銃も使いすぎるとダメになるらしい。孤島に着くまでおあずけだ。

―――今日は濃霧。魔王の孤島はまだ見えている。進展なし。勇者に疑問を持つ奴もチラホラ現れ出した。

食料も無限じゃない。早くなんとかしてほしいもんだ。

僧侶「……」ペラッ

―――今日も濃霧。魔王の孤島は見えている。今日はこの部屋から出ていない。

勇者は何をやっているのか。

―――今日も濃霧。魔王の孤島は見えている。進展なし。

腹が減ったと喚く奴が現れた。誰かの一喝で静かになったが。

―――今日も濃霧。魔王の孤島が小さくなる。他に陸は確認できない。

地図はあるので現在位置ぐらいは分かる。そろそろ食料が底を尽きる頃だ。

―――今日も濃霧。魔法の孤島は確認できなくなった。今、どこなのかも分からない。

食料はまだある。まだなんとなる。

―――今日も濃霧。魔王の孤島は見えない。食料はまだある。

―――今日も濃霧。食料はある。

―――今日も濃霧。食料が尽きたといって勇者が部屋に入ってくる。可笑しなことをいう。こんなにあるのに。

―――今日も濃霧。食料が増えた。それと同時に魔法の銃も解禁になった。今まで捌くのが大変だったから助かる。

―――今日も濃霧。肉ばかりで流石に飽きてきた。でも文句は言えない。

―――きょ うは お れがにく にな る。うで が うま そ うだ。

僧侶「……これで最後……これって……もしかして……」

僧侶「濃霧……まさか……!!」

ガチャ

僧侶「勇者さ―――」

少女「……」

僧侶「貴女は……」

キラーマジンガ「どうもお久しぶりです」

僧侶「船に残っていたのでは?」

少女「うん……でも、少し気になって……」

僧侶「気になる?」

少女「魔法銃のこと」

僧侶「ああ。でも、私たちがもって帰る予定だったので」

少女「それは困る」

僧侶「え?」

少女「あれはニンゲンの手に渡ってはいけないものだ」

僧侶「貴女……もしかして……」

―――幽霊船 Aフロア

魔法使い「ちょっと待って」

勇者「なんですか?」

魔法使い「アンタ、いきなり何を言い出すのよ。私は二人を追ってきて―――」

勇者「そんなのどうでもいい」

魔法使い「はぁ?」

勇者「僕、やっと気づいたんです。一番好きなのは貴女だって」

魔法使い「な……!?」

勇者「僕と結婚してください」

魔法使い「こ、こんなときになにいってるのよ?!バカじゃないの!?」

勇者「側室なんて要りません。貴女が傍にいるだけでいいのです」

魔法使い「え……」

勇者「僕の……僕だけのお嫁さんになってもらえますか?」

魔法使い「だ、だから……あの……」

勇者「貴女を愛している」

―――幽霊船 Cフロア

勇者「む……」

キャプテン「ど、どうしたんだい?」

勇者「目の前に裸の女性がいっぱいいるんですが」

キャプテン「な、なにいってんだい!?」

勇者「いや、ほら、目を開けてみてください」

キャプテン「ど、どうせまたガイコツを見せ付ける気だろ!?もう騙されないよ!!」

勇者「本当なのですが」

キャプテン「いいから魔法銃を探しな!!」ギュゥゥ

勇者「といっても、皆さんが側室にして欲しいと懇願してくるのですが」

キャプテン「あたしにはそんな声、一つも聞こえないよ!!」

勇者「なるほど。ということは……」

キャプテン「幽霊とかいわないでおくれよ!!!」

勇者「それ以上に厄介ですね」

キャプテン「早くすすみなぁ!!!」

―――幽霊船 船長室

僧侶「貴女は……貴女は……」ガクガク

少女「しばらく眠っていてもらおうか」

キラーマジンガ「申し訳ありません」

僧侶「勇者さまぁ!!!」ダダダッ

少女「え?」

僧侶「勇者様!!ありがとうございます!!私、嬉しいです!!」

少女「何を壁に向かって……」

僧侶「勇者さまぁ……」スリスリ

少女「そうか、これは……」

キラーマジンガ「マスター。恐らく、この幽霊船を包み込んでいる魔法の影響かと思われます」

少女「幻覚の魔法か。船そのものにそれを掛けてたと聞いたことはあったが……」

キラーマジンガ「外の濃霧は魔法の副次的な効果によるものです」

少女「最も恐れるモノを見えなくし、最も好むモノを見せる……。人間にしか効果はないようで助かるな」

キラーマジンガ「はい」

少女「この状態であれば殺すのも容易いな」

キラーマジンガ「マスター。私が殺害いたします」

少女「ほう?」

僧侶「勇者さまぁ……私を犬と扱ってくれても構いません……」スリスリ

キラーマジンガ「では……」シャキン

少女(これで……魔王様に朗報をお伝えできるな……)

僧侶「はふぅん……」スリスリ

キラーマジンガ「……」

少女「……」

キラーマジンガ「それでは―――マスター!!!魔物が!!」

少女「なに?!」

エルフ「―――そこまでにしてくれる?」

少女「な……」

エルフ「ガーちゃんも剣を降ろして。でないと、大事なマスターを撃つよ?」

キラーマジンガ「状況把握しました。無駄な抵抗はやめてください。貴女独りでは私には勝てません」

少女「お前……」

エルフ「君のことはずっと疑っていたよ」

少女「……」

エルフ「魔道士は捕らえた人は独り残らず生命力を吸い取っていたのに、君だけが元気だった」

エルフ「ボクたちの中で一番優れたポテンシャルを持っていたのにも関わらず。魔道士はエルフでさ垂涎していたのに、君を放置なんてありえない」

少女「木偶人形が余計な分析をしたからか」

エルフ「甲板で君たちを見て、きっと何かあると思った」

キラーマジンガ「いい読みです」

エルフ「君は誰?何の目的でボクたちについてきたの?」

少女「ふん……裏切り者の分際で……」

エルフ「え……?」

少女「俺がこうして正体を晒すリスクを負ってまでこの幽霊船に乗ったのは、お前の所為だ」

エルフ「なにを……」

少女「魔法銃。かつて、魔王様を追いつめた武具。それを作ったのはお前らだろうが」

エルフ「君は……魔族……なの?」

少女「ここでは俺の崇高なる姿を見せられないのが残念だ。船が沈むからなぁ」

エルフ「殺すつもりなら沈ませれば」

少女「併走する海賊船がある。あれを沈めるのは俺でも無傷では済まない。―――まあ、仲間が来たら、一気に決着をつけてやるさ」

エルフ「仲間?!」

少女「本来ならそいつらと勇者一行を戦わせるだけのつもりだったが、状況が変わったな。ここでお前たちを必ず消す」

エルフ「やめて……」

キラーマジンガ「無駄な抵抗です。やめてください」

エルフ「くっ……」

少女「抵抗しても構わん。今のニンゲンどもはどうせ戦えない」

僧侶「ゆうしゃさぁまぁ……」スリスリ

エルフ「……」

キラーマジンガ「大人しくしていれば苦しまずに死ねます」

エルフ「ボクは魔王を倒すって決めた。同胞を食い物にするような王なんて、ボクは許せない!!!」

少女「過去のことを棚に上げるのか!!?」

エルフ「ボクたちだってニンゲンがあんなことをするなんて思わなかった!!ご先祖様たちはみんな嘆いていたよ!!」

少女「黙れ!!」

エルフ「本当だ!!」

キラーマジンガ「マスター、どうされますか?」

少女「……まずはこの裏切りモノから始末しろ」

キラーマジンガ「了解しました」

エルフ「来るな!!撃つよ!?」

少女「撃てば分かる。無駄な行為だ」

エルフ「……っ」

キラーマジンガ「お覚悟を」

エルフ「きゃっ―――」

ギィィィン!!!

少女「な……」

キラーマジンガ「……!」

エルフ「……え?」

勇者「―――そんな乱暴な子に育てた覚えはないぞ!!!娘ぇ!!!」

少女「何……?!」

キラーマジンガ「パパ……これは……違うの……」オロオロ

勇者「母さんに手を上げるとは何事だぁ!!けしからん!!!喝っ!!!」

キラーマジンガ「ひっ」ビクッ

勇者「お前の小遣いを減らすからなぁ!!」

キラーマジンガ「やめてよぉ!来週は大好きな先輩とデートするから新しい洋服がいるっていったじゃん!!」

勇者「だまれ!!お前みたいな不良娘など家にはいらん!!でてけぇ!!!」

キラーマジンガ「ざけんなよ!!クソオヤジがぁ!!!」ダダダッ

勇者「ふんっ……」

キラーマジンガ「……パパ?」

勇者「……なんだ?」

キラーマジンガ「反省したから……抱いて?」

勇者「ふっ……淫乱娘が……」

キラーマジンガ「パパがそういう体にしたくせに……」

少女「おい、やめろ」

キラーマジンガ「今のは確実に90点でしょう?」

勇者「いや、87点だな」

キラーマジンガ「どこがですか?完璧だったはず」

勇者「最後の一言が余計だ。あれでは完全に娼婦だ。バカヤロウ」

キラーマジンガ「くっ……道のりは険しい……!!」

少女「いい加減にしろ」

勇者「そうですね。―――大丈夫ですか?」

エルフ「う……うん……」

キャプテン「おーい……どこだぁ……」オロオロ

キャプテン「―――てっ?!」ゴンッ

勇者「目を開けてあるかないと危ないですよー」

少女「貴様……幻覚が見えているはずでは……」

エルフ「そうだよ!!大丈夫なの?!」

勇者「問題はありません。僕は今、ヌーディストビーチの真っ只中にいるだけですから」

エルフ「……」

少女「どういうことだ……?」

勇者「僕が真に求めているのは側室。裸婦ではありません」

少女「意味が分からん」

キラーマジンガ「パパ。ここはお互いのために退きましょう」

勇者「君のマスターがそれを許さないんじゃない?」

少女「……」

キラーマジンガ「マスター……」

少女「ここで殺す。やれ」

キラーマジンガ「……了解しました」

勇者「いつかはこうなるんじゃないかと思っていましたよ」

キラーマジンガ「はぁぁぁ!!!」

―――バァァン!!

キラーマジンガ「つっ……!?」

キャプテン「馬鹿でかい声だねえ。目を閉じてても的が分かるよ」

勇者「今だっ!!」バッ

少女「貴様……!!」

勇者「こっちだ!!」グイッ

僧侶「あれ?勇者様がいっぱいいる?!」

勇者「逆ハーレムですね」

僧侶「はい……」ウットリ

少女「逃がすかぁ!!!」ゴォォォ

エルフ「させない!!」キュィィン

少女「おのれぇ!!!」

キラーマジンガ「逃がしません!!」

勇者「おねえさまぁ!!!」

キャプテン「はいよ!!」バァァン

少女「くっ……!こざかしい!!」

キラーマジンガ「ここは海の上、逃げ場はありません」

勇者「逃げるつもりなんてない。魔法銃の回収が済んでいないしね」

キャプテン「おい!はやくしてくれ!!こっちは不安でしょうがないんだよぉ!!」

エルフ「ボクが誘導します」ギュッ

キャプテン「あ、ありがとう」

僧侶「ここにも勇者様……ああ、天井にも……壁にも……ああ……どうしたらぁ……私の腕も勇者様!?」

少女「あれだけは渡すわけにはいかない……」

勇者「なら船を沈めればいいだけの話でしょう?」

少女「……」

キラーマジンガ「マ゛ズダァァ!!それだげはぁぁぁ!!」ギュゥゥ

少女「錆びるのが嫌なら早く魔法銃を見つけろ!!!」

キラーマジンガ「はい!!」

勇者「それなら他の三人と協力したほうが効率的だよ」

キラーマジンガ「流石です。そうさせて頂きます」ダダダッ

少女「馬鹿かきさ―――」

勇者「ここからは僕たちだけの時間にしましょうか?」

少女「勇者……」ギリッ

勇者「君には色々と聞きたいことがある」

少女「ふん……」

勇者「黄金の国で会ったことがあるよね?」

少女「……ああ」

勇者「やはりか」

少女「どこで分かった?」

勇者「匂いかな」

少女「ほう?ニンゲンの嗅覚でも俺の正体が分かると?」

勇者「馥郁たる花の香りが君の脇から匂ってきたよ」

少女「……え?」

勇者「あの鼻腔を通るときの甘酸っぱさ。一度嗅げば忘れたくとも忘れられないね」

少女「き、きさま……!!!どこで判断している?!」バッ

勇者「そんなに恥ずかしがらずともいいですよ。僕は女性が10日間風呂に入っていなくても抱ける派ですから」

少女「不潔なだけだろうが!!!」

勇者「君の垢なら喜んで舐めとりましょう」

少女「汚いんだよ!!」

―――幽霊船 Cフロア 宝物庫

エルフ「ここが怪しいけど……鍵が掛かってるね」ガチャガチャ

キラーマジンガ「どいてください」

エルフ「な、なにする気……?」

キラーマジンガ「はぁっ!!」バコンッ

キラーマジンガ「開錠しました」

エルフ「壊したっていうんじゃないの?」

キラーマジンガ「訂正いたします。壊錠しました」

エルフ「……君は味方なの?」

キラーマジンガ「私はマスターの味方です」

エルフ「じゃあ……敵だね」

キラーマジンガ「残念ですがそうなります」

キャプテン「どうでもいいじゃないか。早く探しな」

エルフ「貴女も目を開けて探してよ……」

キャプテン「無理だね!!」

僧侶「あ〜勇者様がこんなとところにも〜♪」テテテッ

キャプテン「まだ見つからないのかい?!こっちはさっきから首筋が寒くて仕方ないんだよ!!」

キラーマジンガ「現在の室温は24度。寒いと感じるような温度ではありません」

キャプテン「いいからはやくさがしておくれよぉ!!」

キラーマジンガ「了解しました」

エルフ「幽霊が怖くてよく魔物と戦えるね」

キャプテン「正体がよくわかんないとか怖いじゃないかい!!なにいってるのですか!?」

エルフ「ごめん。とりあえず黙ってて」

キャプテン「し、知らない間にどっかいかないでおくれよ……」

エルフ「行かないから」

キラーマジンガ「魔法銃……検索中……検索中……」ゴソゴソ

エルフ「探索中」

キラーマジンガ「訂正します。魔法銃……探索中……探索中……」ゴソゴソ

エルフ「……捜索中」

キラーマジンガ「訂正します。魔法銃……捜索中……捜索中……」ゴソゴソ

僧侶「勇者様……キス……ですか……?私は……構いませんが……んー……」

エルフ「ちょっと、いつまで……あ!」

キラーマジンガ「どうされましたか?」

エルフ「貴女が抱いてるの……魔法銃じゃあ……」

僧侶「勇者様ぁ……うふふふ……」

キャプテン「見つかったのかい?!」

エルフ「うん。見つけたよ」

キラーマジンガ「やりましたね」

エルフ「よし。ここにはもう用はない。出よう」

キャプテン「勇者様はどうするんだい?」

エルフ「早く甲板に出たほうがいい」

キャプテン「どうして?」

キラーマジンガ「マスターが増援を呼びました。間もなくこの海域にクラーケンがやってきます」

キャプテン「海の王者じゃないか!?なんでそんなことに!?」

エルフ「ここにいたら戦えない。とにかく外に出よう」

―――幽霊船 船長室

勇者「黄金の国ではお世話になりましたね。ドラゴンさん」

少女「ふん。あれはただの小手調べだ」

勇者「でも、今の姿のほうが何億倍も良いですよ。そのままで居るべきです。というかいなさい。これはお願いじゃない。命令だ」

少女「俺に命令できるのは魔王様だけだ」

勇者「なら、その魔王を僕が倒せば貴女を独占する権利が生まれるわけですね。ひゃっほーい!!」ピョーン

少女「……それはできないな」

勇者「何故ですか?」

少女「お前は、ここで―――死ぬからだ!!!」ゴォォォ

勇者「あぶないっ」バッ

少女「独りでは魔物一匹満足に倒せないことは知っている!!貴様だけの力でここまで来たわけじゃないんだろ?」

勇者「その通り。僕には将来の側室候補生がいる。あの子たちの身を削るほどの献身によって―――」

少女「しねえ!!!」ゴォォォ

勇者「熱っ!くそ!!燃え上がるのはベッドの上だけで十分だこらぁ!!―――丁度、そこにベッドがあるな、寝るかい?」

少女「俺はまだ眠くない!!」

勇者「あははは!!君はやはり処女か!?」

少女「ニンゲンの杓子定規で測るなぁ!!!」

勇者「でも、その反応は―――」

エルフ『みつけたよー!!!!』

勇者「おぉ!意外と早い。幻覚が効かないのはいいですね」

少女「しまった……!!」

勇者「ところで、僕の股間を見てください」

少女「は?―――おぉ!?なんでそんなに張っているんだ!?」

勇者「だって、僕の下半身に数十人の裸婦が群がっていて……欲しい欲しいと先ほどから……」

少女「汚らわしい……!!死ねぇぇぇ!!!!」ゴォォォ

勇者「ふっ―――」

少女「はぁ……はぁ……はっ?!」

少女「逃げたか……!!」

ゴゴゴゴゴ……!!!

少女「この揺れは……来たか……!!勇者ども……深海で眠ってもらうぞ……魔法銃と共にな……!!」

―――幽霊船 甲板

ゴゴゴゴ……!!!

僧侶「きゃ?!」

エルフ「海に大きな影……あれがクラーケン……?」

キラーマジンガ「ゆれる……しずむ……錆びる……」ガクガク

キャプテン「外かい?!目は開けてもいい?!」

エルフ「ん?」

魔法使い「だめ……私たち……そんな関係じゃあ……」

エルフ「あっちもダメか……となると、戦えるのは……」

キャプテン「ねえ?!もう目をあけてもいいかい?!」

エルフ「まだだめ!!開けたらきっと気絶すると思う!!」

キャプテン「そうかい!!そうだと思ってたんだよ!!!」

僧侶「勇者様……助けてくださぃぃ……」ギュゥゥ

エルフ「戦えそうなのはボクと……ギリギリでキャプテンだけ……か……」

ゴゴゴゴ……!!

クラーケン「ぬぁっはっはっはっはっは!!!!!」ザパーン

エルフ「でかい……?!」

クラーケン「ドラゴン様に言われてきてみればぁぁ!!!矮小な生き物がたったすぅぅひきとはぁぁ!!!」

キャプテン「……なんか威圧感を感じるねえ」

クラーケン「このままぁぁ海の底へ船ごと引き摺りこんでくれるぅぅわぁぁぁぁ!!!!」シュルルル

メキ……メキメキ……!!

エルフ「うぁ……?!」

キラーマジンガ「船体に損傷発生。沈みます。エマージェンシー!!メーデー!!メーデー!!」オロオロ

エルフ「―――くらえぇ!!」ゴォォォ

クラーケン「ぬぅ?!」

エルフ「焼きイカになりたくなかったら、その汚い触手を船から離せ」

クラーケン「ぬぁっはっはっはっは!!!吼えるぁ吼えるなぁ!!!多少の魔法では私に傷などつけられぇぇぇん!!!」

―――バァァン!!

クラーケン「ぬぁった?!―――なんだ?!」

キャプテン「どうやらどこに撃ち込んでもど真ん中に当たるボーナスステージみたいだねえ!!それなら派手にやるよぉ!!!」

船長「てっー!!!」

ドォン!!ドォン!!

クラーケン「ぬぅ?!なんだぁ?!」

船長「キャプテーン!!!援護砲撃は任せてください!!!」

キャプテン「よくやったぁ!!おまえらぁ!!」

船長「援軍がくるまで絶対にここをもたせろぉ!!!」

「「アイアイサー!!!」」

エルフ「これなら……!!」

クラーケン「あまいわぁ!!ぬぅぅるいわぁぁぁぁ!!!!」ドォォン

エルフ「うわぁ!?」

キャプテン「うっ……なんだい?!」

僧侶「きゃぁ?!」

キラーマジンガ「船体の損傷が999パーセントを超えました。もうやめてください」

クラーケン「ニンゲンどもがぁぁぁぁ!!!!調子にのるなぁぁぁぁ!!!!」

エルフ「熱量が圧倒的に足りない……。独りじゃ……!!」

船長「よくねらえ!!お前らぁ!!!」

海賊「波が荒れて狙いが定まりません!!」

キャプテン「おらおらぁ!!!」ドォン!ドォン!

クラーケン「いてぇぇんだよ!!!」ベシンッ

キャプテン「ぐぁ?!―――しまった、目を瞑っているから攻撃をよけられないじゃないか」

エルフ「よく大艦隊を率いてるね」

キャプテン「目をあけたら気絶するんだろ?!」

エルフ「そうだけど……」

クラーケン「今、破壊させてやるぅぅぅ!!!!」メキメキメキ

エルフ「まずい!!」

キャプテン「やめないか!!このゲソやろう!!」ドォン!!

クラーケン「いてえつってんだろ!!!」ブゥン!!

エルフ「危ない!!」

キャプテン「え?!どっちから来るの?!」

勇者「―――今お助けしますよぉ!!お姉様ぁ!!!」ダダダッ

キャプテン「あ……」

勇者「大丈夫ですか?」

キャプテン「た、たすかったよ……」

勇者「ふっ。なんのこれしき」

クラーケン「なんだぁ……?」

勇者「目を開けても大丈夫ですよ」

キャプテン「ほ、本当だろね……」

勇者「今、一瞬あけたじゃないですか。何が見えましたか?」

キャプテン「……アンタの顔だね」

勇者「守ると言ったでしょう。―――どんな危険からでも」

キャプテン「あんた……」

クラーケン「ニンゲンがぁぁぁ!!!一匹増えたところでぇぇぇ!!!なぁぁになぁぁる!!!」

勇者「ちゃんと見ていて欲しい。僕が貴女だけのナイトになるところを」

キャプテン「……はい」

勇者「いくぞ!!!!イカ野郎ぉぉぉ!!!!」

クラーケン「ぬんっ!!!」ブゥン

勇者「せいやぁ!!!」ズバッ

クラーケン「いてぇぇんだよぉ!!!」ベシィ!!

勇者「ぐぁ?!」

エルフ「大丈夫?!」

キャプテン「よくも!!―――化け物がぁ!!!」ドォン!!ドォン!!

勇者「でかすぎる……。クラーケンってこんな手も足も出ないほど大きかったのですか……?」

エルフ「ううん。これは明らかに異常なでかさ。きっと……」

勇者「キラちゃんにも使われている生命エネルギーですか」

エルフ「うん」

勇者「とりあえず、回復を」

エルフ「ああ、ごめん」パァァ

勇者「……はぁ……情緒がないなぁ……抱きついてくれないと……」

エルフ「できないよ!!文句いうなぁ!!」

勇者「冗談ですよ、マイハニー」キリッ

魔法使い「やぁん……だめぇ……」

僧侶「勇者様……もっと抱きしめてください……」

勇者「全く。二人は空気と浮気ですか。なんて難易度の高いネトラレ」

エルフ「どうでもいいけど、早く手を打たないと船が……!!」

勇者「分かっていますが、こんな怪獣を相手にできるのはそれこそ怪獣だけですよ」

キャプテン「ちょっと、あんた!!大丈夫なのかい?!」

勇者「心配ありませんよ、マイディアー」

キャプテン「そ、それならいいんだよ……うん……」

勇者「キラちゃんは?」

エルフ「あそこ」

キラーマジンガ「マスター……たすけて……」ガタガタ

勇者「海の上ではただの可愛い女の子型ロボットですか」

クラーケン「おわりだぁぁぁぁ!!!」メキメキ

勇者「―――そうだ!魔法銃を使ってみましょうか」

少女「―――今、奴らの手には魔法銃がある。あれを使われては状況が一変するな。ここでなんとしても奴らを消しておかなくては!!」メキメキ

エルフ「確か……魔法銃は……」

ドラゴン「―――オォォォォォォ!!!!」バサッバサッ

勇者「なに……?!」

エルフ「ドラゴン?!」

キャプテン「おいおい!!今日の海は荒れてるねえ!!!」

キラーマジンガ「こわいこわい……」ガタガタ

クラーケン「ドラゴン様!!ここは私だけでも十分ですが?」

ドラゴン「魔王様がいつもいっているだろう。勝つまで油断はするな、とな」

クラーケン「分かりました」

勇者「万事休す」

エルフ「魔法銃……かえして……!!」ググッ

僧侶「やめろぉ!!私から勇者様をとるなぁぁ!!!」ギュゥゥ

エルフ「そんなこと言ってる場合じゃないって!!」

僧侶「ガルルル……!!!」

勇者「幻覚の作用が強すぎる……どうしたら……ああ、そうか……」

勇者「おらぁぁ!!!」バキィ!!

キャプテン「え?!」

エルフ「なにしてるの?!」

勇者「船を破壊してください!!今すぐ!!」

エルフ「ど、どうして!?」

キラーマジンガ「やめてください!!パパと雌雄を決することになりますよ!!!」ガタガタ

勇者「蹲っている君に言われても怖くないな。―――とにかく船を壊します」

キャプテン「それでどうにかなるんだね?」

勇者「もちろんだ」

キャプテン「ふっ。いいね。あんたのこと益々好きになったよ」

勇者「僕は出会ったときから運命を感じていましたけど」

キャプテン「よせやい」

エルフ「とにかく壊せばいいの?!」

勇者「一気に破壊だ!!船を沈めるぜぇ!!!」

キャプテン「―――おまえらぁぁ!!!よくきけぇ!!この幽霊船に集中砲火をかけなぁ!!!」

ドラゴン「ははははは!!!気でも触れたか?!」

クラーケン「これは面白い!!ニンゲンどもは肉体だけでなく精神も脆弱かぁぁ!!!ぬぁっはっはっはっはっは!!!」

勇者「いやっほーい!!!」バキィ

エルフ「はぁぁぁぁ!!!!」ゴォォォォ

キャプテン「おらおらおら!!!全弾撃ち尽くすよぉ!!!」ドォン!!ドォン!!!

船長「キャプテンを信じろ!!!俺たちはいつだってそうしてきた!!!―――幽霊船を沈めろぉ!!!」

海賊「「アイアイサー!!!」」

ドォン!!ドォン!!

キラーマジンガ「やめてください!!本当にやめてください!!なんでもしますからぁ!!!!」

勇者(まだか……?!)

ドラゴン「よーし、自害の手助けをしてやるか」

クラーケン「ぬぁっはっはっはっは!!!!」メキメキ

勇者「―――来た!!さよなら!!ヌーディストビーチ!!!」

僧侶「―――ぁえ?」

魔法使い「はっ?!え……?!あ、あれ……?」キョロキョロ

キラーマジンガ「だめです!!もう沈むぅぅ!!!」

ゴゴゴゴゴ……!!!!

ドラゴン「はははははは!!!!深海に眠れ!!!」

勇者「キャプテン!!」

キャプテン「それかしなぁ!!!」

僧侶「え?はい、どうぞ」

エルフ「そうか。船そのものに掛けられた魔法だから……」

勇者「船が全壊すれば魔法もとける。対象となるものがなくなりますから」

ドラゴン「しまっ―――」

キャプテン「終わりだよ……イカ魔人!!!」チャカ

クラーケン「はぁぁぁぁ?!そのような玩具でなぁぁぁにができるぅぅぅ?!」

キャプテン「はっしゃぁぁ!!!」グッ

―――パァン!!!

クラーケン「ごぉ……?!ぁ……?!」

エルフ「あの巨体の半身が消滅した……?!」

キャプテン「すさまじいねえ……」

ドラゴン「まずい!!今すぐに沈めなければ!!!」

キャプテン「おっと!!」チャカ

ドラゴン「ぐっ……!?」

勇者「うつな!!!」

キャプテン「え?ど、どうして!?」

ドラゴン「貴様……?!」

勇者「……」

クラーケン「ぉぉぉ……!!バ……か……なぁ……!!!」ズズズズ

僧侶「イカさんが沈んだ……」

魔法使い「なによ……これ……え……?」

キラーマジンガ「しずむーしずむー」オロオロ

勇者「このままでは皆、溺死です。なので、お願いしますね」ポンッ

魔法使い「凍らせるの?」

勇者「余裕でしょう?海ぐらい」

魔法使い「はぁぁぁ!!!」ピキピキピキ

勇者「やったぁ」

エルフ「すごい……こんなこと普通の魔法じゃ絶対にできない……」

キャプテン「あんたすごいじゃないかぁ!!」

魔法使い「はぁ……はぁ……似たようなことしたことあるから……」

僧侶「つめたいです」ブルブル

キラーマジンガ「大地があるのは素晴らしい」

船長「キャプテン!!ドラゴンが!!!」

キャプテン「おっと。そうだった!!」チャカ

ドラゴン「海を凍らせて足場を形成したのか……」バサッバサッ

勇者「……」

ドラゴン「撃てばいいだろう……逃げるぞ?」

勇者「逃げたければ逃げろ。可愛くないお前なんて殺す価値もないんだよ!!」

ドラゴン「きさまぁぁ……!!!」

キャプテン「やるなら撃つよ?」

勇者「それはもう仕舞ってください」

キャプテン「でも……」

勇者「俺の言うことが聞けないのか?」

キャプテン「ご、ごめん……」

魔法使い「随分、しおらしいわね」

ドラゴン「くっ……!!」バサッバサッ

キラーマジンガ「はっ?!マスターは?!マスターはどこに!?」キョロキョロ

勇者「あのドラゴンの背に乗っていたよ」

キラーマジンガ「やはり……魔王の下にいかれるのですね……マスター……」

僧侶「へっきゅしゅん?!―――あ、あの……温かいシチューが欲しいんですけど……」ブルブル

魔法使い「そ、そうね……これからのことは船で考えましょう」

キャプテン「そうさね。―――おーい!!乗船するから梯子を!!」

船長「はい!!」

エルフ「どうして……?」

勇者「……」

―――海賊船 会議室

船長「キャプテン!!まさかあの幽霊船から帰還するとは!!俺たちは信じていま―――」

キャプテン「お前ら、一週間飯抜きだ」

船長「えぇぇ?!」

キャプテン「それはさておき、ようやく手に入れられたね、念願の魔法銃」

エルフ「―――どうして?」

キャプテン「どうしてって、あたしたちが―――」

エルフ「どうしてあそこでドラゴンを見逃したの?」

勇者「……」

魔法使い「ちょっと」

エルフ「ドラゴンはボクたちのことを色々知っていた。逃がしたら魔王にボクたちのことが筒抜けになるよ?!」

勇者「連絡手段を持っていなかったとは考えられません。共に行動した時点で情報の漏洩はしているでしょう」

エルフ「でも、魔法銃があれば!」

勇者「……実は幽霊船の日誌に気になる記述を見まして」

僧侶「あの日誌ですか?」

勇者「貴女はじっくりと読んだみたいなので覚えているでしょう?」

僧侶「な、なにをですか?」

勇者「幽霊船の船長他多数の乗組員が魔法銃を使い魔物を虐殺している日の記述です」

僧侶「ああ……はい……」

勇者「魔法の銃も使いすぎるとダメになる。そう書かれていませんでしたか?」

僧侶「そういえば……」

魔法使い「ダメになるって、撃てなくなるってこと?」

勇者「恐らく」

僧侶「でも。一丁で十数匹の魔物を撃っていたみたいですし、まだ余裕はあるんじゃないでしょうか?」

勇者「それは何年前の銃だと思っているのですか?」

キャプテン「……」

勇者「それに当時の乗組員はストレス解消のため無駄に発砲しています。残り何発なのか分かりません」

エルフ「じゃあ……さっきのが最後の一発だった可能性もあるってこと……?」

勇者「二発目がなかった場合、あの場でドラゴンに食い殺されていたでしょうね」

魔法使い「そういうことだったの……」

キャプテン「じゃあ、意味なんてないねえ」

勇者「いや。ありますよ」

キラーマジンガ「はい。魔王はその武具を恐れていると見て間違いありません」

キャプテン「抑止力か」

勇者「その通りです。それを持っているだけでも僕たちにとってはプラスです」

魔法使い「問題はそのハッタリがどこまで通用するかね」

勇者「あの異形のクラーケンを一発で仕留められたのは大きいでしょう」

エルフ「でも、それだけじゃあ……」

勇者「魔王はただの人間を殺すのにも慎重に慎重を重ね、準備をし、勝利が磐石になったときに初めて動く」

勇者「絶対に負けない戦にしか乗ってこないとしたら、僕らが魔法銃という新兵器を手にしたことによって奴の進撃は必ず遅延するはずです」

キャプテン「更なる兵の強化が必要になるものね」

勇者「はい。ドラゴンの報告は魔王にとってこの上ない凶報になる」

僧侶「ということは……仕掛けるなら……」

勇者「今しかないでしょう。絶好のチャンスです」

キャプテン「ふふっ!!よし……!!者共!!!戦争の準備をおっぱじめなぁ!!!」

―――夜 海賊船 甲板

勇者「……」

キャプテン「こんなとこにいたのかい。会議が始まるよ」

魔法使い「アンタがいないとダメなんだって」

キャプテン「あ、たしは別にぃ!!」

勇者「僕たちが会議に参加する意味は殆どありません」

キャプテン「どうしてだい?」

勇者「僕たちは僕たちで魔王と戦います」

魔法使い「それって……」

キャプテン「あたしたちは陽動役かい?」

勇者「いいえ。違います。―――魔王は城から出てこないはずです」

キャプテン「そ、そりゃあ……大将だからそう簡単に……」

勇者「それだけじゃありません。ドラゴンという戦力が戻った今、魔王が前線に出てくるわけがない。きっとあの用心深さからして、高みの見物を図る」

魔法使い「まあ、そうでしょうね」

勇者「そして……危なくなったら、例の孤島に逃げ込む気でいるのでしょう」

キャプテン「それって……数百年前と一緒じゃないか」

勇者「そうなったら終わりです。なので、僕たちはその孤島に先回りしておきます。で、戻ってきたときにポカッと叩く。完璧です」

魔法使い「あそこはどんな船でも近づけないって話じゃなかった?」

勇者「魔法で海流を操っているのでしょうね」

キャプテン「わかった。また海を凍らせて……」

魔法使い「あれをするの?疲れるんだけど……」

勇者「いやいや。戦う前から貴重な戦力を削いでしまっては勝てるものも勝てなくなります」

キャプテン「じゃあ、どうするのさ」

勇者「空を飛べればいいんですけどねえ……」

魔法使い「馬鹿なこといってるわ」

勇者「ドラゴンの背なら5人ぐらい余裕だと思うんですけどねぇ……」

魔法使い「はぁ?」

キャプテン「あいつは帰っちまったじゃないか」

勇者「はぁ……そうなんですよね……」

魔法使い「結局、いい手がないってことでしょ?」

勇者「……ドラゴンを倒しましょうか」

魔法使い「え?」

キャプテン「ドラゴンをかい?!」

勇者「何気に彼女は言うこと聞いてくれそうなんですけど」

魔法使い「ほんの少しの間、一緒にいただけでしょ。情が移ってるとも思えないわ」

勇者「まあ、どっちにしても今のところ空を飛ぶ方法はそれしかありません」

キャプテン「奴が魔王のところに戻ったとするなら、ここから北にあるかつての軍事大国にいるだろうね」

魔法使い「どういう国なの?」

キャプテン「高い壁に囲まれて息が詰まりそうになる国さね。魔王の侵攻対策でそうしたみたいだけど、意味はなかったね」

勇者「国に入るもの中々厳しそうですね」

キャプテン「ああ。今は人間に代わって魔物が警備しているだろうし」

魔法使い「行くの?」

勇者「もちろん」

魔法使い「……ドラゴンに拘る理由は?」

勇者「あのドラゴンさん、可愛い女の子に変身できるんですよ?これは毎夜毎夜、僕を飽きさせない側室になること請け合いです」

魔法使い「もう……」

キャプテン「あっはっはっはっは!!いいね!!サイコーじゃないか!!」

勇者「それほどでも」

キャプテン「まあいいさ。とにかく細かい打ち合わせはしなきゃダメだ。会議室にきな」

勇者「了解」

魔法使い「……」

勇者「なんですか?」

魔法使い「勇者は誰かを何かを守る者、だ」

勇者「……」

魔法使い「ねえ……やっぱり……そういうことなの?」

勇者「何のことでしょうか?」

魔法使い「アンタがそこまで側室を……求める理由……」

勇者「それは老後の―――」

魔法使い「時々、貴方は空虚な顔をしているときがあるわ。さっきも夜の海を見ているときになってたわよ?」

勇者「これは僕としたことが……失礼しました。貴女たちの前では絶対に見せないよう努めていたのですが、やはり共にいる時間が長いとダメですね」

魔法使い「そろそろ話してくれてもいいんじゃない?」

勇者「……」

魔法使い「どうして貴方が戦うのか、聞きたい。勇者だから?それとも……」

勇者「―――俺の故郷は魔王によって滅ぼされた」

魔法使い「え……?」

勇者「数人の村民だけが生き残っただけだった。でも、途中で魔物に襲われ、ついには俺と友人の二人だけになった」

勇者「励まし合いながら俺たちは逃げた。そして行き着いた場所が、あの街」

勇者「程なくして俺たちは生きるために二人で一緒に兵士になった。でも、ちょっとした問題があったんだ」

魔法使い「なに?」

勇者「見知らぬ土地の人間たちを守るなんてこと……俺にはできなかった」

魔法使い「……」

勇者「兵士なのに市民を守る意識が全然沸いて来なかった。だから、いつまで経っても戦闘技術は上達しないし、よく兵士長にも怒鳴られたよ」

魔法使い「よく今まで続いたわね……」

勇者「あるとき友人が、自分を守るために強くなってほしいって言ってくれた。―――この国の民を守れないなら、同じ故郷の友人を守るために強くなれと」

勇者「俺はそいつのためだけに強くなることを決めた。だけど……そいつは、死んだ。勇者として」

魔法使い「勇者としてって……」

勇者「努力の糧だった友人が死んだ。俺はその瞬間、きっとどこかで無様に死ぬんだろうって思ったよ」

勇者「翌日、勇者に任命されても思ってた」

魔法使い「貴方は優秀だったんでしょ?剣術は……」

勇者「ええ。誰にも負けないほど強かった。でも、守るものがないとやっぱり行き急ぐから」

魔法使い「勇者として死ぬつもりだったの?」

勇者「さっさと旅立って死んでやろうって考えていたけど……でも、やっぱりアイツの仇は取ってやりたいって思うようになって」

勇者「それで……どうするか考えた結果……」

魔法使い「側室?」

勇者「そう。お嫁さんになってくれそうな人とは生憎出会えなかったし、そもそもお嫁さんだけでは強くなれないって感じた」

勇者「なら、守る候補を多くしてやればいいって結論になって……側室探しを始めた」

魔法使い「馬鹿じゃないの?一緒に旅をしたら意味ないでしょう」

勇者「死なせたく人が傍にいるから余計に自分を追い詰めることができる。後ろの人だけは絶対に死なせない。死なせないためには強くなるしかない」

魔法使い「……」

勇者「そして、そう思わせてくれる人だったんです。貴女たちは」

勇者「とはいえ、褒められたことではないけど」

魔法使い「そうね。結局は貴方も私たちを同じじゃない」

勇者「そう。仇を討つために強くなりたかった。それだけのために俺は貴女たちの心を弄んだ」

魔法使い「……」

勇者「側室だのなんだの言いましたが、根底では復讐の道具として扱ってきたのも事実です」

魔法使い「そう……」

勇者「別れるとき、貴女を怒らせるためにいった台詞は、自分に対してでもありました」

魔法使い「……」

勇者「もうしわけありません」

魔法使い「最低ね」

勇者「自分でもそう思います」

魔法使い「……」

勇者「でも、ここまで来たのですから最後まで側室候補して貴女とは接します」

魔法使い「その言い方……側室にする気なんてないってこと?」

勇者「ないというか、無理でしょう?」

魔法使い「……」

勇者「側室になってくれるのですか?」

魔法使い「な、ならないわよ」

勇者「ですよね」

魔法使い「……バカ」

勇者「言っているだけです。本気にしてる人なんていないと思います。―――ああ、でも一人だけいるみたいですけど」

魔法使い「そういえば、彼女となんかあったの?」

勇者「以前、側室でもいいと言われました。どこまで本気なのかはわかりませんが」

魔法使い「ふーん……」

勇者「まあ、擬似ハーレムを作りたいだけですし、もう少しみなさんには協力してもらいましょうか」

魔法使い「よくこんなこと話したわね」

勇者「大好きになってしまった人に隠し事はできないでしょう?」

魔法使い「なっ……!?」

勇者「それだけですよ。―――さ、そろそろ戻りましょうか。キャプテンも待っています」

魔法使い「ああ!ちょっと!!」

―――海賊船 会議室

キャプテン「―――では、以下の通り行動するってことでいいね?」

勇者「まずは僕たちがドラゴンとちんちんかもかもな関係になる。そして、その瞬間を見計らい、海賊船団が一気に攻撃を始める」

キャプテン「ここであたしたちが魔王の軍勢を叩き、魔王をあぶりだすってわけだ」

勇者「ドラゴンさえ居れば魔王がどこに移動しようとも、僕たちの勝利は揺るがない」

エルフ「裏返すと、ドラゴンが居なきゃ成功はしないってことだね」

勇者「そうなりますね」

僧侶「はぁ……ドキドキします……」

キラーマジンガ「あの……」

勇者「キラちゃんはどうする?」

キラーマジンガ「私が決めてもいいのですか?」

勇者「君には心がある。君自身が決めたほうがいい」

キラーマジンガ「……」

キャプテン「何はともあれ、まずはドラゴン懐柔作戦を成功させなきゃ始まらないんだ!!しっかりやりなよ、あんたたちぃ!!!」

僧侶「イエス、ボス!」

―――魔王の城

魔王「魔法銃……だと……」

ドラゴン「申し訳ありません」

魔王「まさか、そのような遺産が……」

ドラゴン「ここは我が身にかえましても……やつらを……」

魔王「よい。今は勇者のことよりも重大な作戦が控えている」

ドラゴン「トロルの領地だった場所へもう一度攻め込むのですか?」

魔王「イレギュラー因子がもういないことは確認済みだ。敗走はまずない」

ドラゴン「……」

魔王「あそこさえ落とせば、隣国は支援を一切受けられない孤立状態となる。そうなればニンゲンどもに残された道は絶望的な消耗戦だけ」

魔王「一気に我の領土を広げられる」

ドラゴン「では、私は……」

魔王「ここの守りを任せたい。お前の報告を聞く限り、恐らくすぐに攻めてくるはずだ」

ドラゴン「魔王様は?」

魔王「ここを離れ、機を待つ。魔法銃の対策を練る必要もあるしな」

―――数日後 海賊船

勇者「見えてきましたね」

僧侶「高い壁が見えますね」

エルフ「あそこがかつての軍事大国」

魔法使い「上陸は問題ないの?」

キャプテン「警備が薄いところは把握しているよ。まあ、そこから壁の向こうにいくのはちょっと骨だろうけど」

勇者「ここまでありがとうございました」

キャプテン「いいさ。―――生きて帰ってきなよ」

勇者「未亡人にはさせませんよ」キリッ

キャプテン「もう!冗談ばっかりだなぁ!!やめろよぉ!!テレるじゃないのさぁ!!」

勇者「あっはっはっはっはっは!!かわいいお姉さんもいいものですねえ!!」

キラーマジンガ「は、はやく……陸へ……大地が恋しい……」ガタガタ

エルフ「一緒に行くって、船にいたくないから?」

キラーマジンガ「違います。マスターが心配なだけです」

僧侶「あの子……戻ってきてくれるでしょうか……?」

―――軍事大国 陸地

勇者「―――行きましょう」

僧侶「なんか揺れてませんか?」ヨロヨロ

魔法使い「いや、あんたの足下が揺れてるのよ」

エルフ「ずっと船に乗ってたからなんか気持ち悪いね」

キラーマジンガ「そんなことはありません。今、生きていることに感謝しましょう。アーメン」

勇者「いい考えですね。ここまで生きてこれたのは、主に勝利の女神が微笑みっぱなしだったからでしょう」

僧侶「本当ですね」

キラーマジンガ「私たちの戦力ではいつ全滅してもおかしくありません」

魔法使い「今から敵の本陣に乗り込むんだから、そういうこと言わないでよ」

勇者「そうだぞ、娘よ。空気を読むんだ」

キラーマジンガ「空気を読む……?」

勇者「いいかい?人とのコミュニケーションでは気持ちを察することも大事なんだ」

キラーマジンガ「ふむふむ」メモメモ

エルフ「歩きながらでもできるでしょ?いくよー」

―――フィールド

魔法使い「マーちゃんは着いてきてるけど、マスター居ないのにいいのかしら?」

エルフ「誰かの命令は聞かないって言ってるよ。今、僕たちについてきているのは自分で決めたことだからいいって」

僧侶「勇者様が仰いましたもの。自分で決めなさいって」

魔法使い「そっか。あいつはマーちゃんが困らないように……」

エルフ「心があるのは機械にとっては邪魔でしかないと思ってたけど、そうでもないかもね」

勇者「―――なぁなぁ」

キラーマジンガ「どうしました?」

勇者「昨日さ、彼女ができたんだ」

キラーマジンガ「本当ですか?」

勇者「これ、写真」

キラーマジンガ「うわ。ブッサ」

勇者「なにをぉ!!!死刑!!!」

キラーマジンガ「バ、バカな?!」

勇者「―――な?空気を読んで「綺麗な彼女ですね」と言っていれば、死刑にならずに済んだわけだ。空気を読むことは大事だぞ」

キラーマジンガ「人間社会とか中々にスリリングですね」

勇者「気をつけたまえ」

キラーマジンガ「また一つ勉強になりました」

勇者「なんのなんの」

魔法使い「それはただのお世辞でしょ?」

エルフ「うん……別じゃないかな?」

勇者「一緒ですよ。僕が演じた男性は彼女を褒めてほしくて話を切り出したわけですから」

魔法使い「まぁ、そうね」

僧侶「でも、空気を読むって自分の気持ちを殺すことでもありますから、それができないこともあると思います」

キラーマジンガ「どういうことですか?」

僧侶「周囲の人があるモノに対して嫌悪し、悪口を言っているとします。でも、自分にとってはとても大切なモノだった」

キラーマジンガ「ふむふむ」メモメモ

僧侶「空気を読むという意味では自分もそのモノに対して罵詈雑言を並べるべきなのでしょう。でも、自分の気持ちを押し込んでまで大切なモノを貶めることは難しいはず」

キラーマジンガ「つまり……そういうことでしょうか?」

僧侶「そうですね……では、実演してみます」

魔法使い「あの勇者、マジでキモくね?」

エルフ「わかるわかる。なんかオタクっぽいよねー」

僧侶「うんうん。ほんとにねー」

キラーマジンガ「……」

勇者「や、やぁ……こんにちは……」

魔法使い「うわ、きたよ。かえれ」

エルフ「キンモー」

僧侶「ばい菌が移るので半径50メートル以内にこないでください」

勇者「うぅ……」

魔法使い「貴女もそう思うよねー?」

キラーマジンガ「わ、私は……」

エルフ「えー?なに?もしかして、あいつのこと好きなのー?」

僧侶「えんがちょ」

キラーマジンガ「ち、ちが……!!」

勇者「……」ウルウル

キラーマジンガ「―――わ、悪くいうなぁ!!!」

魔法使い「はぁ?」

キラーマジンガ「た、確かにちょっと暗いところもあるけど……この人は優しい人です!!」

エルフ「なにこいつ」

僧侶「空気読んでくださいよー」

勇者「あ……あの……」

キラーマジンガ「大丈夫です。私は貴方のいいところをいっぱい知っていますから……」

勇者「うぅ……ありがとう……ありがとう……」

キラーマジンガ「いいんですよ……私が……守ります……」ギュッ

勇者「素敵……抱いて……」ギュッ

僧侶「―――はい。終わりです」

魔法使い「最後の台詞、いらないわよね?」

エルフ「うん」

勇者「感謝の気持ちに股を開くって大事だろうがぁよぉ!!!」

魔法使い「本当にキモイわね!!アンタはぁ!!」

キラーマジンガ「なるほど……」

僧侶「どうでしたか?」

キラーマジンガ「少しだけ理解できました。譲れないモノに対して、空気を読む必要はないということですね」

僧侶「はい。心があるのなら」

キラーマジンガ「ありがとうございます」

僧侶「いえいえ」

魔法使い「早く行くわよ」

エルフ「キャプテンに貰った地図によれば、ここから北西に向かえば関所があるみたい」

勇者「関所?」

エルフ「門だね」

魔法使い「どうやって抜けるの?」

勇者「まずは行ってみないことにはわかりませんね」

キラーマジンガ「周辺に魔物はいないようです」

勇者「そうですか。まあ、無理はせずに命を大事にしていきましょう」

僧侶「はーい」

―――関所

勇者「誰か居ますか?」

キラーマジンガ「魔物の気配はありません」

エルフ「蛻の殻なの?」

キラーマジンガ「状況的にその表現はもっとも適切です」

魔法使い「通ってもいいのかしら?」

僧侶「罠では?」

キラーマジンガ「私のセンサーから逃れる術を有している魔物が大量にいることは考えにくいです」

勇者「いないなら通りましょう。好都合です」

エルフ「いいのかなぁ……?」

魔法使い「ほ、本当にいないでしょうね……」ドキドキ

僧侶「とおりまーす……」

勇者「……」

キラーマジンガ「私の索敵は信じられませんか?」

勇者「そんなことあるわけないよ。進もう」

―――フィールド

勇者「この街道を進めば、問題の城下町につけますね」

僧侶「魔王の城と化した……お城なんですね……」

勇者「貴女がいれば余裕です」

僧侶「勇者さまぁ……」

魔法使い「仲いいわね、相変わらず」

キラーマジンガ「うーん……」

エルフ「どうかした?」

キラーマジンガ「いえ……先ほどの授業で少し気になることが」

魔法使い「なになに?なんでも言って」

キラーマジンガ「空気を読まなかった結果、皆さんとの間に軋轢が生じました。これは敵対するということですよね?」

エルフ「うん。そうなるね。意見に沿わない相手を敵視するのは当然の流れだし」

魔法使い「対立したくない人とも対立しなきゃならなくなる。そういう決断はしなきゃだめね」

キラーマジンガ「なるほど……相当な覚悟がなければできないことですね」

魔法使い「それだけ自分にとって譲れないモノなら、時にはそういう決断もいるわね」

―――魔王城 城下町

勇者「静かですね」

僧侶「城下町なのにゴーストタウンです……」ギュッ

勇者「魔物は?」

キラーマジンガ「存在しません」

魔法使い「不気味すぎるわ……どういうことよ……」

エルフ「魔王かドラゴンが呼んでいる……ってことかな?」

勇者「僕も同じ事を考えていました。もしくはこの国はもう戦略的に不要な土地となったか……」

僧侶「人が生きている感じはないですね」

勇者「黄金の国と同じでしょう。人間なんて戦って殺されるか生き延びるために逃げるかしか選択肢はありません」

魔法使い「……」

勇者「罠の可能性も十分にあります。気を引き締めていきましょう」

エルフ「うん」

僧侶「はい」

キラーマジンガ「……」

―――魔王の城 城門前

勇者「ここが……」

魔法使い「あ、あけるの?」

勇者「ここまで誰もいないとなるとご招待されているとみて間違いないでしょう」

エルフ「そうだね」

僧侶「あぁ……勇者様……」

キラーマジンガ「センサーに反応」

魔法使い「え?!」

エルフ「どこ……?!」

僧侶「うぅぅ……!!」

キラーマジンガ「城内です。数は1」

勇者「……」

魔法使い「それって……」

エルフ「ドラゴンだね」

勇者「皆さん、装備品のチェックを。確実に総力戦になりますから」

―――魔王の城 謁見の間

勇者「……また、会いましたね」

ドラゴン「よく来たな」

エルフ「……」

僧侶「ド、ドラゴン……!!」

魔法使い「ついにここまで来たのね……」

キラーマジンガ「マスターはどこにいるのでしょうか?」

ドラゴン「木偶人形まで連れてきたか」

勇者「こちらには……これがある」チャカ

ドラゴン「……」

勇者「あのクラーケンですら半身を根こそぎ持っていかれた。お前にも有効なはずだ」

ドラゴン「魔法銃か……。ああ、確かに脅威だ。その所為で魔王様はまた俺にその力の分析を命じた」

勇者「相変わらずだな。鉄の橋ですら叩いて渡るのか、魔王は」

ドラゴン「そうだ。完璧な確証をもってして魔王様は橋を渡る。だが、その魔王様が何百年と魔族を率いて、そして勝利と繁栄をもたらせてきた!!!」

勇者「防戦になれば凶悪だな。負けない戦いかたを熟知しているから」

ドラゴン「さあ、撃ってみろ……その魔法銃を!!」

勇者「しかし、その輝かしい戦歴の影にどれほどの同胞が泥をかぶり、血を流したんだ?」

ドラゴン「……」

勇者「負けない戦いには必ず犠牲がいる。側近のお前なら嫌というほどみてきたはずだ」

ドラゴン「それがどうした?」

勇者「この戦いも魔王にとっては明日の勝利への布石にすぎないんだろ?」

ドラゴン「何がいいたい?」

勇者「お前は捨てられたわけだ。情報収集のために死ねといわれたんだろ?」

ドラゴン「違う!!!」

勇者「違わないだろう。大昔、魔法銃という未知の兵器によって魔王は敗戦した」

勇者「情報が一切なかったからだ。だからこそ、魔王は鉄壁の孤島に引き篭もり、魔法銃の対策を練ろうとした」

ドラゴン「……」

勇者「でも、人間の行動は早く、船で攻めてきた。そこで魔王は魔法銃を詰んだ船を永遠に彷徨わせることで戦いを回避した」

勇者「当時の勇者も海流を操られ、しかも船そのものを幻惑させるという二段構えには意表を突かれたんだろう。抵抗もできずに幻覚の中で溺れ死んだ」

ドラゴン「そうだ。そしてエルフを弾圧し、人間との交流も絶えた。魔法銃の精製は完全になくなったはずだった……!!」

勇者「魔王はきっと馬鹿じゃない。当時の魔法銃対策は完成しているはず」

ドラゴン「……」

勇者「しかし、こうして情報収集をするということは、あることを懸念しているからだろ?」

ドラゴン「お前がエルフを連れているから……」

勇者「新しい魔法銃の可能性がある。昔よりも強化されたものかもしれない」

勇者「それが魔王の憂いなんだろ?」

ドラゴン「魔王様には説明した。古代の船から見つかったモノ。故に威力に変わりはないと」

勇者「……」

ドラゴン「しかしな……魔王様に油断はできないと言われたら俺たちはそれに従うしかない。今までもそれでニンゲンたちに勝ってきたのだからな」

勇者「こんな下らないことのために死ぬのか?」

ドラゴン「黙れ。魔王様は絶対だ」

勇者「やめろ。それよりも俺たちと手を組んで魔王を倒そう」

ドラゴン「エルフ族のようにニンゲンに尾を振れというのか?馬鹿馬鹿しい」

勇者「君が尾を振るとこは見てみたいな。可愛いと思うぞ?」

ドラゴン「ざ、戯言を!!さぁ!!撃て!!でなければ貴様たちをこの場で……八つ裂きにしてやるぞ!!」

勇者「ここまで言ってもダメか」

エルフ「魔王信仰を覆せるわけないって」

魔法使い「説得は無理か……」

僧侶「た、戦うしかないのですね……」

キラーマジンガ「マスターはどこですかぁ!!!!」

ドラゴン「黙れ木偶人形風情がぁ!!!」

キラーマジンガ「……」

ドラゴン「貴様が主といい慕っていたニンゲンは初めから存在しない!!あれは俺の仮の姿だぁ!!!一度、見せただろうがぁ!!」

キラーマジンガ「確かに……そうでしたね……」

ドラゴン「ふん……使えぬ人形めが」

キラーマジンガ「では……ここは私の意志で決めます」

魔法使い「何をよ?」

キラーマジンガ「空気を読むのならば、ここは貴方たちとの共闘が望ましいのでしょう」

勇者「そう来ますか……」

キラーマジンガ「ですが、私の譲れないモノのために―――敵対させていただきます」シャキン

ドラゴン「なに……?」

キラーマジンガ「私の知っているマスターはいません。ですが、あのドラゴンがマスターだということも知っています」

エルフ「うん……そうだね……」

キラーマジンガ「―――私はキラーマジンガ。マスターを守護するために、勇者という脅威を一掃します」

僧侶「……」

勇者「いいでしょう。あの幽霊船での一件から、こうなることは想像していたし」

ドラゴン「どけ。人形の手などいらん!!!」

キラーマジンガ「命令は受け付けません」

ドラゴン「貴様……!!!」

キラーマジンガ「貴方はマスターであって、マスターではありませんので。私の独断で行動させて頂きます」

ドラゴン「勝手にしろ!!どうせ魔法銃で―――」

キラーマジンガ「魔法銃は使用不可です」

魔法使い「それ言うの?!」

ドラゴン「なんだと?」

キラーマジンガ「魔法銃は古いモノで次弾がない可能性もあるためです。もし次弾がない場合、勇者たちは最大の抑止力を失います。撃つ勇気はないでしょう」

勇者「大正解。魔法銃は撃てない。よく知ってるね」

キラーマジンガ「勉強しました」

勇者「大きくなったな……娘よ……」

キラーマジンガ「私、パパのことが大好きです。だから―――」

勇者「キラーマジンガは僕に任せてください!!ドラゴンは貴方達が!!!」

魔法使い「そ、そんなこと!?」

ドラゴン「―――消し炭にしてやろう!!!!」

僧侶「きゃぁぁ!!!」

エルフ「下がって!!―――くらえ!!」バシュッ

ドラゴン「柔な矢で俺の皮膚を貫けるとでも思っているのかぁ!!!」ゴォォォ

魔法使い「炎なら!!」コォォォ

ドラゴン「ふん……。炎は通じないか」

魔法使い「何回もしないでね」

ドラゴン「無理な相談だな!!!」ゴォォォ

魔法使い「意地悪!!!」コォォォ

エルフ「やぁぁ!!!」バッ

ドラゴン「ぬ?!」

エルフ「風よ!!」ヒュゥゥゥ

ドラゴン「下らない!!」バサッバサッ

エルフ「翼の風……?!」

僧侶「怪我したらすぐに私に抱きついてくださいねー」

魔法使い「風の魔法使ったら?」

僧侶「もし通じなかったら回復する手段が減ります」

魔法使い「そうだけど……これじゃあ……」

エルフ「凍れ!!」コォォォ

ドラゴン「無駄だぁ!!!」ゴォォォ

エルフ「うっ?!」

僧侶「大丈夫ですか?!」ギュゥゥ

エルフ「あ、ありがとう」

魔法使い「触れることができれば火傷ぐらい負わせられるのに……!!」

キラーマジンガ「はっ!!!」ギィィン

勇者「うっ?!」

キラーマジンガ「諦めてください。人間では私に勝てません」

勇者「それはどうかな……」

キラーマジンガ「何を根拠に……!!」

勇者「君はもう何日エネルギーの補給をしてないか覚えていないのか?」

キラーマジンガ「……っ!!」ギィィン

勇者「はぁ……はぁ……船の上にいた期間。君は一切のエネルギー補給は行っていない」

キラーマジンガ「こうなると分かった上で……貴方は……」

勇者「戦闘をすればそれだけ燃料切れが早まる」

キラーマジンガ「貴方を殺せばいいだけの話ですね」

勇者「どうかな?君は確かにすごい力だ。でも、だからこそ直線的な動きしかできない」

キラーマジンガ「貴方の戦闘データはインプットされています。勝てる可能性は40%です」

勇者「意外に高いな。エネルギー残量の所為か?」

キラーマジンガ「……行きます!!」ダダダッ

勇者「はぁ!!」ギィィィン

キラーマジンガ「ふっ!!」

勇者「まだ燃料は切れないのか……!!」

キラーマジンガ「貴方たちから学ばせてもらったことはとても有意義でした」ギィン

勇者「そうか」

キラーマジンガ「楽しかったです」

勇者「え……」

キラーマジンガ「とても……」

勇者「キラちゃん……」

キラーマジンガ「でも、私には使命があります!!!」

勇者「そうだな」

キラーマジンガ「貴方たちから貰った温情を反故にしてまでも、守りたいものがあるのです!!」

勇者「僕はそういう君が大好きだ」

キラーマジンガ「はぁぁぁぁ!!!」ブゥン

勇者「ぐっ!?」

ドラゴン「オォォォォォ!!!!!」バリバリバリ

エルフ「まずい!!二人とも距離をとって!!」

魔法使い「な、なにあれ……?!」

僧侶「雷ですか?!」

ドラゴン「消えうせろぉぉぉ!!!」バチバチバチ

エルフ「はっ!!」キュィィィン

ドラゴン「これも通さぬか。エルフ族め……!!」

エルフ「……」

魔法使い「倒せる見込みは?」

エルフ「ゼロじゃない。だけど……ボクたちじゃ無理かも」

僧侶「勇者様の手助けがいりますか?」

エルフ「武器が欲しいね……」

魔法使い「ええと……鞭と……ナイフはあるわ」

僧侶「盾と一度も抜いたことのない剣なら」

エルフ「あとはボクのボーガンか……うーん……」

エルフ「そうだ」

魔法使い「なになに?」

僧侶「なんでしょうか?」

ドラゴン「次で終わりにしてやろう!!!」

エルフ「―――じゃあ、それでやってみよう」

魔法使い「怖いけど……やるしかないわね」

僧侶「守ってるだけじゃ勝てません。―――どうぞ、大事に使ってください」

魔法使い「任せて!」

ドラゴン「なんのつもりだ?!」

魔法使い「この盾がある限り!!あんたの攻撃なんて通じないわよ!!」

エルフ「そーだ!!そーだ!!」

ドラゴン「貴様らぁ!!!舐めるのも大概にしろ!!!盾もろとも溶かしてくれるわぁ!!!」ゴォォォォ

僧侶「きたー!!!」

エルフ「盾に隠れて!!」

魔法使い「わ、わかってるわよ!!」

ドラゴン「オォォォォ!!!!」ゴォォォォ

僧侶「危ない!!」バッ

エルフ「くっ……!!」バッ

魔法使い「きゃぁぁぁぁあああああ!!!!!!」

僧侶「なっ?!」

エルフ「大丈夫?!」

ドラゴン「―――終わったな」

僧侶「あぁ……盾が……とけて……」

ドラゴン「ふんっ。跡形もなく消えたか」

エルフ「嘘……そんな……」

ドラゴン「次はお前だ!!!」

僧侶「そうは行きません……!!」シャキン

ドラゴン「はははははは!!!!そのような剣でなにができる!!お前の戦闘力のなさは承知しているぞ?!」

僧侶「わ、私だって……これぐらいのことは……」ガクガク

エルフ「―――今だ!!!」

ドラゴン「なに?!」

魔法使い「はっ!!」ダダダッ

ドラゴン「なんだと?!どこから―――」

エルフ「エルフ族の得意魔法を忘れてたの?」

ドラゴン「不可視化か!!」

魔法使い「よし!!懐に入ったぁ!!」

ドラゴン「何ができる!!」

魔法使い「私の全身全霊の冷気をくらえぇ!!!」ピトッ

ドラゴン「なっ!?」

魔法使い「はぁぁぁ!!!」コォォォ

ドラゴン「ぐっ……ぁ……」ピキピキ

魔法使い「まだまだぁ!!」

ドラゴン「―――オォォォォォォ!!!!」ドガァ!!

魔法使い「ぎ……ぃ……!?」

僧侶「きゃぁぁ!!」

勇者「な?!モロに?!」

キラーマジンガ「まずい!!」ダダダッ

勇者「君は……!!」ダダッ

ドラゴン「はぁ……はぁ……くそ……」

魔法使い「ぁ……ぁ……」ピクッピクッ

僧侶「今、治癒を!!!」タタタッ

ドラゴン「させ……るか……!!―――終わりだ!!」

エルフ「―――貴方がね」

ドラゴン「……?!」

エルフ「そのお腹、今とっても繊細でしょ?」

ドラゴン「まさか―――」

エルフ「魔法で強化した矢なら貫ける!!!」バシュッ

キラーマジンガ「マスター!!!」

ドラゴン「お前……!!」

―――ガギッ!!

エルフ「え……」

僧侶「あぁ……」

魔法使い「ぅ……ぁ……」

勇者「……」

キラーマジンガ「マ……タ……ダ、い……じょ……で……す……?」

ドラゴン「お前……手出しは無用だと……」

キラーマジンガ「ま……す、タ……ゴ……ぶじ……で……?」

ドラゴン「……」

勇者「ああ。無事だよ」

キラーマジンガ「よか……た……マ……す……」

キラーマジンガ「わ、たし……ま、すた……が……ガ、ガ……ダ、イ……す―――」ガクンッ

エルフ「そんな……ボクはそんなつもりは……」

僧侶「ジーちゃん……」

魔法使い「……」

ドラゴン「木偶人形め……最後まで無駄なことをしたな。全く使えなかったな」

勇者「本心か、それは?」

ドラゴン「魔法で強化した程度で俺は貫けない。そんなことも判断できずに敵の攻撃に当たりにいくとは……」

僧侶「……っ」

魔法使い「ダメ……魔法は使わないで……」

エルフ「ボクは……」

ドラゴン「出来の悪い人形はこれだからな」

勇者「―――そう自分に言い聞かせて、魔王の捨て駒にされた同胞を見捨ててきたのか?」

ドラゴン「きさまぁ!!!」

勇者「そうなんだろう?」

ドラゴン「違う!!魔王様は魔族の繁栄のために!!!」

勇者「繁栄のためにお前を慕った奴らをボロ雑巾のように扱う」

ドラゴン「黙れ!!!黙れぇぇぇぇ!!!!!!」

勇者「この木偶人形でも自分の譲れないモノのために戦った!!!お前にはそれがないのか!!!」

ドラゴン「俺は……俺は……魔王様の……ために……!!!」

勇者「お前は人形にも劣るな。自分をそうやって押し殺すことしかできないならな」

ドラゴン「いい加減にしろぉ……!!!殺す……!!殺す……!!!!」

勇者「……」チャカ

僧侶「勇者様!?」

エルフ「魔法銃……」

ドラゴン「ふぅー……ふぅ−……!!!」

勇者「確かに弾はないかもしれない。でも、あるかもしれない」

ドラゴン「俺は……俺はぁ……!!!」

勇者「お前が決めろよ」

ドラゴン「……っ?!」

勇者「キラーマジンガだってお前を守るって自分で決めたぞ?」

ドラゴン「俺は……!!」

勇者「魔王に疑問の一つぐらいあっただろ?」

ドラゴン「うぅぅぅ……!!!!!」

勇者「答えろ。お前の答え次第では引き金を引く。たとえ、弾が出なくても今のお前を倒す方法なんてごまんとある」

ドラゴン「オォォォォォォ!!!!!!」

魔王『―――そうか。では撤退だ』

ドラゴン『魔王様。私の部下がまだ敵地に』

魔王『捨て置け。我が死なぬ限り、負けではない。そう教えたはずだ』

ドラゴン『は……』

『ドラゴンさまぁ……!!お助けをぉ……!!!』

『いたい……いたい……いたい……』

ドラゴン『弱い奴らは必要ない』

『ドラゴンさ……ま……!!!』

『たす……け……!!』

ドラゴン『だまれぇ!!!』ゴォォォォ

『ギャァァァ……!!!』

ドラゴン『魔王様が捨て置けを言った。貴様たちは捨てられたのだ』

『アァァ……ァ……ァ……』

ドラゴン『役立たずはいらない……いらない……』

ドラゴン『役立たずは必要ない……必要ない……』

ドラゴン「―――いらない……いらない……」

勇者「崩れたか……」

僧侶「……」

魔法使い「ど、どうなったの……?」

エルフ「側近だからこそ、色々思っていたのかな?」

勇者「ずっと魔王のやり方には疑問だった。確かに勝利を揺るがないものにすることは大事です」

勇者「でも、有能な部下を次の勝利に繋げるために捨てるなんて俺にはできない」

魔法使い「……」

勇者「トロルも魔人も……先兵以上の役割はなかったのでしょう。全ては最終的な勝利のための布石にすぎない」

僧侶「勇者様……」

勇者「魔王……俺はお前を許さない……。人間だけじゃなく仲間をもずっと苦しめてきたんだからな……」

勇者「仇討ちをするのは俺たちで最後だ……!」

魔法使い「そうね。それが理想ね」

僧侶「仇討ち……」

ドラゴン「いらない……いらない……わけが……ない……」

エルフ「ガーちゃん……ごめんね……ボクの所為で……ごめん……」

キラーマジンガ「……」

僧侶「ジーちゃん……安らかにお眠りください……貴方の御心は神が愛してくれることでしょう……」

魔法使い「マーちゃん……楽しかったわ……今までありがとう……」

ドラゴン「俺をどうするつもりだ……?」

勇者「仲間になってください」

ドラゴン「……」

勇者「魔王を倒すためには手を貸せないと?」

ドラゴン「お前の言うとおり魔王様の考えについていけないときもあった。だが、恩義があることもまた確かだ」

ドラゴン「でなければ、自分を誤魔化すことなどせず謀反を起こしている」

勇者「でしょうね」

ドラゴン「ふん……どちらにせよ……俺はもう……立ち上がれない」

勇者「……では、こうしましょう」

ドラゴン「なんだ?」

勇者「これから人間として生きるというのはどうですか?」

ドラゴン「なにを馬鹿な……これでも俺は由緒正しきドラゴン族の末裔だぞ?」

勇者「人間として生きて、ドラゴンになるときはなんかそれっぽい呪文詠唱して変身することにしたら―――」

ドラゴン「できるかぁ!!!ふざけるなぁ!!!」

勇者「できるっ!!あんなに可憐な女の子になれるんだから!!!」

ドラゴン「あのなぁ……」

勇者「結構、疑問だったんですけど、どうしていつも女の子になってたんですか?」

ドラゴン「ニンゲンの殆どは女児に甘い顔をすると聞いていたからだ」

勇者「貴女はメス?オス?」

ドラゴン「性別などない。元々ドラゴン族は神の使いとして―――」

勇者「えぇ?!」

ドラゴン「なんだ?」

勇者「両性具有ってやつですか?」

ドラゴン「そうだ」

勇者「これは……ほうほう!!益々、気に入りました。ようこそ、側室ワールドへ」ニコッ

ドラゴン「気持ち悪いなお前」

勇者「とにかく、僕たちは魔王と戦うために貴女の力が必要なのです。そして側室へ」

ドラゴン「しかし……」

勇者「どうしてもダメですか?」

ドラゴン「……」

勇者「お願いします」

ドラゴン「……」プイッ

魔法使い「―――私からもお願い」

ドラゴン「……」プイッ

僧侶「あっちむいて、ほい」

ドラゴン「……」プイッ

僧侶「かったー」

ドラゴン「邪魔だ!!お前ら!!!今は独りにしてくれぇ!!!」

勇者「分かりました。では、後ほど」

僧侶「お願いします」

ドラゴン「ふん……」

―――夜 魔王の城

ドラゴン「……」

エルフ「……」カチャカチャ

ドラゴン「……」

エルフ「えっと……ここは……」カチャカチャ

ドラゴン「なにをしている?」

エルフ「え?」

ドラゴン「動かぬ人形で人形遊びか?」

エルフ「今は動かないだけで、動くよ」

ドラゴン「……」

エルフ「ガーちゃんは動くよ。まだ、生きてるから」カチャカチャ

ドラゴン「……そうなのか?」

エルフ「うん。エネルギーはなくなっちゃったし、動力部の損傷も激しいけど、きっと……動く」

ドラゴン「動くのか……」

キラーマジンガ「……」

エルフ「んと……」ガチャガチャ

ドラゴン「……」ソーッ

エルフ「これは……んー……」グイッ

ドラゴン「おい。そんなに乱暴にしたら壊れるんじゃないか?」

エルフ「もう壊れてるし」

ドラゴン「余計に壊れるだろう」

エルフ「うるさいなぁ。―――そこの部品とって」

ドラゴン「これか?」

エルフ「違うよ。右のやつ」

ドラゴン「これか」

エルフ「違うよ!!これだよ!!」

ドラゴン「分かりにくいな」

エルフ「つかえねー」

ドラゴン「き、きさま……!!誰に向かって……!!!」

エルフ「いいから黙っててよ」カチャカチャ

ドラゴン「……エルフ族は口が悪いな」

エルフ「一応、敬語は使えるけど」

ドラゴン「じゃあ、使えよ」

エルフ「……ドラゴン様」

ドラゴン「なんだ?」

エルフ「魔王のことはどう思っているのですか?」

ドラゴン「我々にとっての絶対的な王だ。それは変わらない」

エルフ「……」

ドラゴン「エルフ族でも魔王様に対する信仰は続いているはずだ」

エルフ「それは……」

ドラゴン「ニンゲンに手を貸さなければ……お前たちの立場は違っていたのだろうがな」

エルフ「だから、あれはニンゲンたちが……勝手にしたことなんです……」

ドラゴン「お前は若いようだが、過去の過ちについては聞いているのか?」

エルフ「勿論です。―――ニンゲンがボクらを裏切ったと、長老から話は聞きました」

ドラゴン「……話してみろ。ああ、作業はしながらでいいからな」

エルフ「かつて、魔族はニンゲンと関係を持たないように暮らしていたと聞きました」カチャカチャ

ドラゴン「そうだ。魔族は魔族の世界だけで生きてきた」

エルフ「故に争いは起こらず、互いに干渉もしない遠い隣人でいられた」

エルフ「ある日、一人のエルフがニンゲンに助けられ、そのお礼に簡易魔法を伝授したのが全ての始まり」

ドラゴン「火を指先から出すだけの魔法にニンゲンは群がったらしいな」

エルフ「はい」

ドラゴン「そうしていく内にニンゲンは欲を出し、様々な魔法を乞うようになったわけだ」

エルフ「そのうちにエルフ族とニンゲンは互いの不干渉だった境界を無くした。それによってニンゲンの文明は大きく進んだわけですけど」

ドラゴン「力を持ったニンゲンは世界の掌握に躍起なったがな。魔王様の話では随分と唐突な戦争だったらしい」

エルフ「……」

ドラゴン「当初はエルフが魔法を伝授したことは誰も知らなかったし、そもそも不文律を犯す同族がいることすら想像していなかったが」

エルフ「申し訳ありません」

ドラゴン「先祖の間違いを子孫が謝罪するか。ふん……100年ほど遅いな」

エルフ「魔法銃の開発もただニンゲンの文明発展の助力になればと提供したに過ぎません。それを魔王討伐の最終兵器にするなんて……」

ドラゴン「まあいいさ。もう過ぎたこと。既にどちらかが滅びるまで戦うことになった。悔やんでも怒りを露にしても手遅れだ」

ドラゴン「幽霊船ではそれを言おうとしたのだな?」

エルフ「はい」

ドラゴン「手が止まってるぞ」

エルフ「あぁ……すいません」カチャカチャ

ドラゴン「だが、どのような理由があろうともエルフに対する憎悪は消えないだろう」

エルフ「……」

ドラゴン「エルフさえいなければニンゲンが欲を出すこともなかったと言う者もいる」

エルフ「そうですね……ボクたちは……一生……恨まれて―――」

勇者「お茶いりますか?」

ドラゴン「おぉ?!」

エルフ「わぁ?!いつの間に?!」

勇者「ドラゴちゃんがキリッとして……勇者の側室になるしかねえな、と発言した辺りからいました」

ドラゴン「どこでそんなこといった?!言ってみろ?!」

勇者「照れちゃって、このこの」

ドラゴン「食べるぞ?足から食べるぞ?」

勇者「僕が君を食べようかな?―――足の指の間を丹念に舐めてあげる」

ドラゴン「いやらしい顔をするな!!!」

エルフ「もう、びっくりさせないでよ」

勇者「いやぁ、久々に貴女の丁寧な言葉遣いを聴きましてね、もう僕の股間がお祭り騒ぎに」

エルフ「どんな性癖なの?」

勇者「君が泣いてあきれるほどに」キリッ

エルフ「かっこよくないから」カチャカチャ

勇者「で、キラちゃんはどうですか?」

エルフ「時間はかかる。短時間ではまず無理かな」

勇者「じゃあ、今のうちにペロペロしておくか」

ドラゴン「やめろ、下衆が」

勇者「ところで今の話、本当ですか?」

ドラゴン「……エルフ族が言うなら本当なのだろう」

勇者「ニンゲンって悪いやつだなー。マジでさいてーじゃねーか」

ドラゴン「てめーだよ!!」

勇者「僕は勇者。紳士の中の紳士。キングオブジェントルメンである僕を捕まえて、変態とは失敬ですね」

ドラゴン「ふん……」

勇者「協力したくない理由の一つでもあると」

ドラゴン「その通りだな。とはいえ昔の話だ。魔族の中にはどうしてニンゲンと戦をしているのか理解できていないものもいる」

勇者「エルフ族が人間を嫌うのは根幹にそういう訳があったのですね?」

エルフ「ボク自身は生まれる前の話だから、ピンとこないこともあるよ。周りの大人からニンゲンは屑だって言われて育ってきたから、先入観で嫌ってるだけ」

勇者「僕以外の人間は好きになれないと?」

エルフ「人間は例外なく嫌いだよ」

勇者「僕がこんなに愛してるのに?!酷いなぁー!!!えー?!」

エルフ「嘘ばっかり」

勇者「じゃあ、向こうで裸になろうか」

エルフ「やだよ!!あっちいけ!!作業の邪魔!!」

勇者「ガードかてえ。ここまで一緒にやってきのに……」

ドラゴン「お前は不思議なニンゲンだな」

勇者「そうですか?割と一般人だと思いますけど……ああ!!そっか!!俺、勇者だった!!一般人とは一線を画しますね!!」キリッ

ドラゴン「ずっと不思議に思っていたことがある」

勇者「なんですか?ドーラゴちゃん」

ドラゴン「どうしてお前は俺を見て驚かなかった?」

勇者「へ?」

ドラゴン「洞窟で初めて出会ったときだ。俺を見ても驚いていなかっただろう?」

勇者「いや、めちゃくちゃ驚いてましたよ。なにせ、側室候補だっためんこい女の子がいきなり巨大なトカゲになったんですから」

ドラゴン「お前、結構失礼だな」

勇者「すいません」

ドラゴン「普通な俺の姿を見れば畏怖し、身を震わせるものだと思うが?」

勇者「まあ、でも、あれですよ。あれだけ可愛い女の子が元の姿だと考えれば、別にいいかなって思いまして」

ドラゴン「話がかみ合わないな」

勇者「貴女が女の子になればいいだけの話」

ドラゴン「……そんなに気に入ったのか?」

勇者「うんっ」

ドラゴン「……」

勇者「むしろ、あの女の子の姿のほうが威厳があったというか」

ドラゴン「見え透いた嘘を吐くな」

勇者「……正直言うと、貴方を見たときは怖かった」

ドラゴン「ほう……?」

エルフ「……」カチャカチャ

勇者「でも、僕が怖がると彼女たちが絶望しますからね」

ドラゴン「……」

エルフ「え……」

勇者「僕は勇者として二人を守ると宣言していたので。そんな勇者様がドラゴンをみて膝を笑わせていたら、どうです?」

ドラゴン「上に立つものの責任か」

勇者「最悪の事態が起こっても彼女たちが無事に離脱できる方法は用意していました」

ドラゴン「ふん。どうやってだ?あの時、俺がお前らを追っていれば今頃、ここには居ないだろうに」

勇者「簡単じゃないですか。―――僕が貴方と対峙すればいい」

ドラゴン「な……」

エルフ「そんなの瞬時に殺されるよ」

勇者「場所が場所だったので、防戦ならこっちに分がありましたよ。なにせ、この巨体ですからね。小回りは利かないでしょう」

ドラゴン「お前が囮になって時間を稼いだということか?」

勇者「万が一外に出ても追いかけてくるようなら、森の中で数日間戦う覚悟でいました。無論、彼女たちとは別れてですけど」

ドラゴン「お前……」

勇者「それが上に立つ者の振舞い方だと思います」

ドラゴン「だが、勇者のお前が死ねば魔王の討伐は終わっていたのだぞ?」

勇者「僕の意志は誰かに受け継がれるので大丈夫です」

ドラゴン「……」

勇者「最終目標は側室10人と綺麗なお嫁さんとの豪遊生活ですが、まあついでに魔王の討伐も目標です」

勇者「その目標なら僕の亡き後でも必ず達成される。そう信じています」

ドラゴン「次代にその責務を渡すというのか?だから、お前は危険を省みず、行き急ぐように戦うのか?」

勇者「違う。俺は死にたくないし、死んだらダメだって分かってる。でも、守りたい者に守られて死ぬのだけは御免だ」

ドラゴン「……」

エルフ「……」カチャカチャ

勇者「見捨てるなんてもってのほか。死ぬなら誰かを守って死ぬ。それが俺の死に方だ」

ドラゴン「ふん……俺との戦いのときは守れて居なかったくせに」

勇者「いや、あそこでキラちゃんと交戦していなかったら、それこそ全員ミンチですよ」

ドラゴン「ふっ……意志は受け継がれるか」

勇者「これも立派な『負けない戦い方』ですね」

ドラゴン「……!」

勇者「じゃあ、そろそろ寝ます。あの二人はもう疲れて寝てますので、間に挟まれるようにして添い寝をしようかと思います。止めないでください」

エルフ「おやすみ」

ドラゴン「……」

勇者「ああ、そうそう。ドラゴちゃん」

ドラゴン「その呼び方はどうにかならないのか?」

勇者「主が倒れても仲間は立ち上がりますよ」

ドラゴン「どういう意味だ?」

勇者「だからこそ、仲間を信じて主は壁に立ち向かえる。仲間を踏み台にして壁を越えても意味なんてないでしょう?」

ドラゴン「それは魔王様のことを言っているのか?」

勇者「おやすみなさい」

エルフ「ふーん……色々、考えてるんだ」

ドラゴン「魔王様とは違うな」

エルフ「それはニンゲンだから」

ドラゴン「……」

エルフ「……」カチャカチャ

ドラゴン「……なあ」

エルフ「んー?」

村娘「―――こっちのほうがいいか?」

エルフ「おぉ!?え?!なにが?!」

村娘「それとも……」

少女「こっちがいいのか?」

エルフ「だから何が?!」

少女「俺はニンゲンには協力しない。勇者に手を貸すことにした」

エルフ「一緒だと思うけど」

少女「奴に興味が出た。ニンゲンに仕えるのは無理だが、勇者になら仕えてもいいかもしれんな」

エルフ「ドラゴン様……」

少女「お前も無理はするな。明日も早いのだろう?」

エルフ「ありがとうございます」

少女「これでドラゴン族も裏切り者か……」

エルフ「でも、ドラゴンは元々神の使いでしたよね」

少女「言い伝えではな。ドラゴン族は地上を監視する目的で天から降りてきたといわれている」

エルフ「それロマンチックですね」

少女「そう……魔王様に仕えるのが全てではない。俺は神の使いとしてこの世界を見守る使命があったはずだ。うん、だからドラゴン族に泥をかけるわけじゃない」

エルフ「自分にそう言い訳しておくんですね」

少女「こういうのはなぁ!!心構えが大事なんだよ!!」

エルフ「わかりました。そこのやつとってください」

少女「え?これ?」

エルフ「違うよ!」

少女「怒るなよ?!すこし間違えただけだろ?!」

エルフ「もう!!もうちょっと勉強してください!!ガーちゃんのマスターなんですよね?!」

―――翌朝

僧侶「おはようございまーす」

魔法使い「んー……結構寝たわね」

勇者「二人とも寝相悪いですねー。首を絞めてくるとかありえませんよ、全く」

魔法使い「アンタが添い寝してこようとするからでしょ?!」

勇者「え?!あれわざと?!」

僧侶「ドラゴンさんはどこに……?」キョロキョロ

エルフ「だーかーら!!これはここの部品なんですってばぁ!!」

少女「えー?だが、形状的に言えばここだろう?」

勇者「おはようございます」

エルフ「あ、おはよう」

少女「よく眠れたか?」

勇者「な……?!なんで、その姿に!?まさか……まさか……!!!」プルプル

少女「か、勘違いするな!!お前のためではないからな!!!」

魔法使い「別にその姿になっておく必要はないでしょうに……」

少女「昨晩、勇者が言っていた。確かに巨体では小回りが利かないからな。この姿でのメリットもある」

勇者「人間が嫌いなくせにー、このこの」プニプニ

少女「う、うるさい!!頬を突くな!!!それにこれは一時的なものだ!!目的が達成されれば、元の姿に戻るわぁ!!」

僧侶「かわいいのに」プニプニ

少女「にゃめりょ!!しゃべりぇんだりょうがぁ!!!」

魔法使い「マーちゃんは?」

エルフ「とりあえずあとはエネルギーの補給をしたら動くようになると思う」

勇者「やったー!!じゃあ、んー……魔王を生け捕りにしてキラちゃんの血肉にするっていうのはどうですか?」

ドラゴン「魔王様を生け捕りとか無理に決まっているだろうが」

エルフ「でも、動かしたところで……」

魔法使い「どういうこと?」

エルフ「ボクたちのことを覚えているかどうかわからないよ。ボクの矢は色んなところを傷つけたから」

勇者「また僕に恋をするのは間違いないので大丈夫ですよ」キリッ

魔法使い「いつ恋をしてたのよ?!」

勇者「あーん?肉便器は黙ってろよ!!」

魔法使い「なっ……!?」

ドラゴン「人間とはやはり汚らわしいな」

エルフ「不潔」

勇者「ねー?」

魔法使い「名誉毀損よぉ……」

僧侶「あの!」

ドラゴン「なんだ?」

僧侶「どうしてドラゴンに変身するんですか?!」

ドラゴン「頬を突くからだろうがぁ!!」

僧侶「じゃあ、尻尾を突きます」

ドラゴン「そこならいいけど」

僧侶「……」ツンツン

勇者「じゃあ、キラちゃんはキャプテンの船に置いておくとして、僕たちは魔王のところに行きましょう」

魔法使い「いよいよね」

エルフ「うん」

―――船着場

キャプテン「へー、仲間になったのかい」

少女「一時的なものだ。誤解はするな」

勇者「キャンディーいる?」

少女「いらん!!!」

勇者「あーん」

少女「もがっ?!」

キャプテン「じゃあ、この子は責任持って預かるよ」

エルフ「ガーちゃんをお願い」

キャプテン「傷一つつけやしないよ」

魔法使い「それで、いつ仕掛けるの?」

キャプテン「ああ、そうだ。他の船から気になる情報があったんだけどさ」

僧侶「なんですか?」

キャプテン「魔王の軍勢が南下していくのを見たらしい。しかもかなりの規模だったみたいだ。魔王の姿はなかったみたいだけどね」

勇者「南下……?」

キャプテン「戦争を仕掛けるタイミング的には好都合なんだけどさ」

魔法使い「南というと……」

少女「もぐもぐ……ああ、以前トロルが陣取っていた国を攻め落とすつもりらしいな……もぐもぐ」

勇者「なに!?」

魔法使い「どうしてそれを先に言わないのよ?!」

少女「関係のないことだろう。俺たちは魔王様を倒しに行くのだから」

エルフ「まあ……そうだけど」

勇者「―――ふざけんなぁ!!!このトカゲ!!」

少女「今は違う!!」

僧侶「そうです!!あの国にも大勢の人がいるんです!!」

勇者「俺の側室だっている!!」

魔法使い「ああ、あのお姫様ね」

少女「あの国を救いに戻るのか?それでは魔王様に時間を与えてしまい、万全の態勢を整える手助けをすることになるぞ?」

勇者「しるか!!魔王と側室なんて比べるまでもねえだろうが!!!」

少女「お前は何をいっているんだ?それより、キャンディーはもっとないのか?」

キャプテン「どうすんだい?戻るのか進むのか」

勇者「もどろー!!!」

エルフ「本気?」

勇者「魔王が万全の態勢を整えたところで意味ねーし!!そもそも魔王のほうが圧倒的に有利だし!!」

少女「もっと有利になるかもしれないぞ?」

勇者「えーい!!姉さん!!」

キャプテン「なんだい、ダーリン?」

勇者「貴女は戦争を仕掛けてください」

キャプテン「魔王を追い詰めりゃあいいわけだね」

勇者「はい」

キャプテン「旦那の頼みとあっちゃあ!!やるしかないねえ!!!―――錨をあげろ!!帆をはりなぁ!!!」

勇者「僕たちは南に行き、姫様を助ける!!!」

魔法使い「ちょっと!!他の人は?!」

勇者「二の次だこらぁ!!!」

僧侶「いつもの勇者様です」

ドラゴン「―――乗れ!!」

勇者「俺の腰の上にはいつ乗ってくれますか?」

ドラゴン「やめろ!!変態がぁ!!!」

僧侶「落ちないように命綱とかは……?これ海に叩きつけられて内臓破裂のパターンでは……?」

魔法使い「怖い妄想しないの。しっかりしがみ付いていれば大丈夫よ」

エルフ「行くなら急ごうよ。犠牲者が増えちゃうよ」

勇者「その通りだ!!側室姫を失うわけにはいかねえ!!!」

魔法使い「側室姫って……まあ、いいわ」

ドラゴン「本当にいいのか?俺が行動を共にしていることこそ、お前にとっては最大の隠し玉だったはず。魔王様の意表を突くことはできなくなるぞ?」

勇者「言ったでしょう。死ぬなら誰かを守って死ぬと」

ドラゴン「お前のいう誰かとは……」

勇者「目に映る者、全てだ」

ドラゴン「……お前は絶対に死なせん」

勇者「簡単に死ぬつもりもないですけどね」

ドラゴン「ふっ。―――しっかり掴まっていろ!!最大速度で飛ぶぞ!!!」バサッバサッ

―――上空

僧侶「うわっ……うわっ……」

魔法使い「高所恐怖症?」

僧侶「いや……こんな乗り物初めてで……」

ドラゴン「乗り物扱いするなぁ!!振り落とすぞ!!」

勇者「やめい!!」ペチペチ

ドラゴン「頭を叩くなぁ!!!」

エルフ「それにしてもどうして南にある小さな国を狙ってるの?」

勇者「あの国が占領されてしまえば、隣国は意図も簡単に魔王の手に落ちるでしょう。立地的に戦略拠点に向いているのですよ」

エルフ「そうなんだ」

ドラゴン「お前は何でもできるのか?」

勇者「夜の四十八手は完璧です」

ドラゴン「なんだそれは?戦術か?」

勇者「今度じっくり教えてあげましょう……実演でなぁ!!」

魔法使い「馬鹿なこといってないの!本当に落ちるわよ?!」

―――城下町

兵士長「ここだけは死守するんだ!!!王も姫様もいるのだからな!!」

兵士「「はいっ!!」」

魔物「ギギギ」

キマイラ「小さき生き物でも束になれば、どうして中々厄介だな」

兵士長「怯むな!!指揮官を落とせば―――」

キマイラ「やれぇ!!!」

魔物「「ガァァァァ!!!」」ダダダダッ

兵士「「うおぉぉぉぉ!!!」」ダダダッ

キマイラ「無駄なことはやめろ。貴様らに勝ち目はない」

兵士長「王族が逃げるための時間を稼ぐぞ!!」

キマイラ「抵抗するな。痛いだけだぞ?―――それにニンゲンは皆殺しにしろと言われている」

兵士長「なんだと?!」

キマイラ「誰一人、生きてこの国から亡命できはしなぁい!!!なーっはっはっはっは!!!!」

兵士長「王……!!姫様……!!」

姫「はぁ……はぁ……!!」

王「大丈夫か?」

姫「はい……」

王「ここを抜ければ逃げられ―――」

魔物「グルルル……」

王「なに!?」

姫「ひっ……お、お父様!!」

王「向こうだ!!向こうに逃げろ!!」

姫「しかし!!」

王「生きろ!!生きて勇者様に会うんだ!!」

姫「お父様ぁ!!」

王「いけ!!」

姫「で、できません!!」

王「お前さえ生きていれば国はまた蘇る!!逃げろ!!」

姫「うぅ……!!」ダダダッ

―――上空

ドラゴン「見ろ。街は既に戦火に包まれているぞ」

勇者「急がないと。僕はこの辺りで降りる」

魔法使い「じゃあ、手筈通りに」

エルフ「行こう!」

僧侶「勇者様、お気をつけて」

勇者「心配は無用です。ドラゴちゃん!!君の使命は?」

ドラゴン「勇者に代わり、三人の術者を守護することだ」

勇者「君も無理だけはするな」

ドラゴン「分かっている」

勇者「では、僕は王族が使う逃走用の通路に向かいます」

魔法使い「生きて帰ってきてよ」

エルフ「死んだらダメだよ。ちゃんとボクたちを守ってくれないと、困るし」

僧侶「勇者さまー!!!フレーフレー!!」

勇者「声援ありがとう!!僕の可愛い側室レディたち!!」

―――城下町

キマイラ「お前で最後だな」

兵士長「くっ……」

キマイラ「では―――」

ドラゴン「そこまでだ」

キマイラ「!?」

兵士長「な……ド、ドラゴン……」

キマイラ「ドラゴン様。どうしてこちらに?!」

ドラゴン「何、魔王様からの新たな指令を届けにきただけだ」

キマイラ「そんな。ドラゴン様がわざわざ足を運ぶことでは」

ドラゴン「いや。俺が出向かないとダメなんだ」

キマイラ「ど、どういうことですか?」

ドラゴン「それはな―――俺はお前たちの敵だからだぁ!!!!」

キマイラ「ドラゴン様!?気は確かですか?!」

ドラゴン「殺しはしない。だが、反抗されると勢い余って致命傷を与えかねない。だから、何もするな」

魔法使い「怪我人の手当てを!!」

エルフ「分かってる!!」

僧侶「が、がんばります!!」

キマイラ「ニンゲン……ドラゴン様……裏切ったのですね……!!!」

ドラゴン「俺は元々神の使いだ。魔族だけに肩入れしているわけではない」

キマイラ「屁理屈を……!!!」

ドラゴン「ふん」

キマイラ「お前ら!!やつらを殺せ!!」

魔物「「オォォォォ!!!!」」

僧侶「ひっ?!」

魔法使い「来るなら来なさい!!」

ドラゴン「下がっていろ。―――こいつらに手を出すものは決して許さん!!焼かれる覚悟のある奴だけが前にでろぉ!!!」

魔物「「グルル……!!」」

魔法使い「容赦ないわね。元同僚でしょ?」

ドラゴン「俺には譲れないモノがある。それを奪うというなら同胞だろうと敵に回す。それが俺の戦い方だ」

姫「はぁ……はぁ……!!!」ダダダッ

姫「きゃっ―――」ドタッ

姫「い、た……」

魔物「ギギギギ!!!!」

姫「もう……ダメ……」

姫「生きて……もう一度……勇者……さま……に……あいたかった……」

魔物「ガァァァァァ!!!!」

勇者「―――俺の寵姫になにしてくれんとんじゃぁ!!!!」

姫「え……」

魔物「がぁ?!」

勇者「天誅!!!」ザンッ

魔物「ギギィ……!!!」

勇者「姫様。ご無沙汰しております。貴女が大好きな俺です」

姫「ゆ……しゃ……さまぁ……」ウルウル

勇者「怖かったでしょう。もう大丈夫です」ギュッ

姫「勇者様!!お父様が!!お父様が!!」

勇者「なんですって?」

姫「助けてください!!お父様を助けてください!!」

勇者「わかりました。姫様はここにいてください」

姫「は、はい……」

勇者「心配しないでください。貴女を悲しませるようなことはしません」

姫「おねがいします!!」

勇者「無事に王を助け出したら、きちんと告白します」

姫「な、なにをですか?」

勇者「姫様を側室にくださいと」

姫「はい……!嬉しいです!!」

勇者「え……。あ、はい」

姫「勇者さま!!お父様を!!」

勇者「分かりました!!」ダダダッ

姫「勇者さま……」

王「うぅ……ここで……終わるか……」

勇者「王!!」

王「な……なんと……いかんな……走馬灯か……」

勇者「いや。幻ではありません」

王「おぉぉ!!奇跡か……!!」

勇者「到着が遅くなり申し訳ありません。人民に多大なる被害が……」

王「いや……それよりも娘はどうした……?」

勇者「無事です。王もこの薬草を使ってください。応急処置ぐらいにはなるはずです」

王「ああ……すまない……。また助けてもらったな……」

勇者「それが自分の務めです」

王「勇者よ……娘を……たの……む……」

勇者「ちょっと!!しっかりしてください!!目を閉じるな!!!」

王「たの……む―――」

勇者「王!?王!!!」

勇者「くそっ!!」

―――城下町

ドラゴン「―――ぬんっ!!!」ドゴォ

魔物「ぐえ!?」

キマイラ「くっ……!?」

ドラゴン「次はどいつだ?」ポキポキ

キマイラ「くそ……」

魔物「ギギギギ!!!!」

キマイラ「―――なに?勇者だと?ふふ……分かった」

ドラゴン「ん?」

キマイラ「ここは潔く撤退しましょう。全滅するぐらいならば、退けと魔王様には常々言われている」

ドラゴン「相手にもそれなりの傷を与えてから、だろう?よく知っている。その命令の所為で部下を多く失ったかなら」

キマイラ「その通り。部下は捨て駒に過ぎない。―――そしてニンゲンは餌に食いつく」

ドラゴン「どういう意味だ?」

キマイラ「ドラゴン様。ニンゲンの弱さを間もなく目にするでしょう。楽しみにしていてくださいね」ダダッ

ドラゴン「ま、まて!!」

勇者「姫様」

姫「……お……父様は……」

勇者「申し訳ありません。出来る限りのことはしたのですが……出血が酷く……」

姫「あぁぁ……」ガクッ

勇者「姫様!!」

姫「お父様……お父様……」

勇者(俺が治癒の魔法を使えれば……こんなことには……!!)

姫「うぅぅ……!!うぅぅ……お父様ぁ……!!!」

勇者「姫様、逃げましょう。ここに居てはいずれ魔物に―――」

キマイラ「―――手遅れだな」

勇者「……?!」

姫「ひぃ?!」

キマイラ「ドラゴン様を誑かせたな……ニンゲンの分際で……」

勇者「大人しく尻尾を巻いて帰ればいいものを……!!」

キマイラ「手土産の一つもなく魔王様のところへは戻れないのでな」

キマイラ「こい!!」グイッ

姫「いやぁぁ!!!」

勇者「貴様!!!姫様に触れるな!!」

キマイラ「取引だ」

勇者「なに?」

キマイラ「ドラゴン様と貴様の命を差し出せ。そうすればこのニンゲンの命だけは助けてやろう」

勇者「……」

姫「ゆ、勇者さま……わ、わたしのことは……!!」

勇者「なら、さっさと俺を殺せ」

キマイラ「お前、このニンゲンのために死ぬのか?」

勇者「勿論だ。その人は俺にとって大事な人だからな」

姫「勇者さま!!!」

キマイラ「なーっはっはっはっはっは!!!いいだろう!!ならば、死ね!!」

勇者「……」

姫「やめてください!!勇者さまぁ!!!」

キマイラ「はぁー!!!」

姫「ゆうしゃさまぁぁぁぁ!!!!」

勇者「……っ」

ドラゴン「―――ドラゴンキック!!!」ドゴォ

キマイラ「ごほぉ!?」

勇者「ナイスタイミングだ!!」

ドラゴン「だろ?少し物陰から様子を伺っていたからな」

勇者「なんて勝手なやつだ。側室度を6ポイント下げておくか」

姫「ド、ドラゴンまで……もう……だめ―――」ガクッ

ドラゴン「どうした?おい」

勇者「気絶したようだ。……姫様は少し寝ていたほうがいいかもしれないな」

ドラゴン「怪我人の手当ては順調だ。侵攻してきた魔物たちは撤退を始めている」

勇者「じゃあ、あとは……そこの珍獣だけか」

キマイラ「くっ……ドラゴンさま……!!」

ドラゴン「敬称はよせ。俺はお前の敵だ」

キマイラ「魔王様の側近でもあるあなたが……」

ドラゴン「魔王様にとっては側近も足軽も同じ駒だ。捨てるときは捨てる。俺はそんな指揮官の下では戦えない」

キマイラ「世迷いごとを……魔王様の決断で一体どれだけの戦果があったか……わかっていないのか?!」

ドラゴン「なんとでも言うがいい。俺はもうお前たちと勝利の美酒に酔うことはない」

キマイラ「……」

勇者「魔王に伝えろ。お前の恐れる最悪の事態が起こったとな」

キマイラ「ニンゲンに味方する者は敵だ……!!」

ドラゴン「だから、そういっているだろう」

キマイラ「必ず……葬ってやる……!!」

勇者「帰る時は海上からの砲撃に気をつけろよ」

キマイラ「殺す!!殺してやる……!!ニンゲンがぁ!!!」

ドラゴン「早く行け」

キマイラ「ちっ―――」ダダダッ

ドラゴン「まさか、魔物も王族専用の避難路を知っていたとはな」

勇者「もっと早く到着できていれば……こんなことには……」

―――城内 医務室

兵士長「そうですか……王は……姫様を守る為に……」

勇者「はい。立派なお姿でした」

兵士長「勇者殿に看取られて、王も嬉しかったと思います」

勇者「……」

魔法使い「姫様は?」

僧侶「外傷は殆どありませんでした。ですが、姫様の心労のほうが不安です……」

勇者「弁明の余地などないですね。僕が……迅速にここへ着けていれば問題はなかったのに」

少女「あ、あれが全速力だったんだ。俺はがんばって空を飛んだぞ」

エルフ「誰の所為でもないよ……。いや……もしかしたら……」

勇者「人間にも問題はありますよ」

エルフ「そう……」

少女「ここでの用は済んだな。すぐに戻るか?」

勇者「いえ、休憩してから戻りましょう。皆さんも多くの怪我人を看て疲れているでしょう?」

僧侶「そ、そうですね……時間はあまりないですけど、できるだけ体調は整えたほうがいいですから」

―――夜

「生き残りは?」

「こちらの部隊は10名ほどしか」

「分かった。できるだけ守衛に回してくれ」

「了解」

僧侶「兵士さんたち忙しそうですね」

魔法使い「これだけ派手にやられたらね」

エルフ「でも国民の殆どは隣国に逃げられたって聞いたよ?」

僧侶「そうなのですか?」

エルフ「王様が巧くしたって。でも、王まで逃げると感付かれるかもしれないから残ったみたいだね」

僧侶「そうだったのですか」

魔法使い「もしかして姫様もなの?」

エルフ「だと思うよ」

僧侶「姫様……お辛いでしょうね……」

魔法使い「アイツも。変に自分を追い込んでなきゃいいけど……。前にも似た様なことあったし……」

―――姫の自室

勇者「失礼します」

姫「勇者さま……」

勇者「目が覚めたと聞きまして」

姫「ありがとうございます」

勇者「……」

姫「申し訳ありません」

勇者「え?」

姫「お父様を救おうとしていただいたのに、満足にお礼もできないで」

勇者「何を言いますか。貴女が無事なことが自分にとってなによりも―――」

姫「勇者さま……」

勇者「はい」

姫「お父様は民を守る為に最後まで城に残っていました」

勇者「はい。聞き及んでいます」

姫「……それは失策だと思いますか?」

勇者「いいえ。思いません。王の判断は的確でした」

姫「私は違うと思います」

勇者「姫様……」

姫「確かに民を守ることが王族としての責務だと思います。けれど、それは果たして命をかけるまでのことでしょうか?」

勇者「姫様、なんてことを……」

姫「私は最後まで城に残りたくはありませんでした。でも、お父様に残れと……言われて……」

勇者「……」

姫「私は……民のために……赤の他人のために命を差し出すことができませんでした……」

勇者「姫様、それは……当然のことです」

姫「違います!!」

勇者「……」

姫「私は王族……保身を第一に考えてしまうなんて……私は自分が恐ろしいです……」

勇者「……自分も同じです」

姫「え……?」

勇者「自分も勇者の身でありながら他人のために命を投げ出すことには躊躇しますよ?」

姫「そんなの嘘です!!だって、勇者さまは私のために命を―――」

勇者「それはそれだけ貴女のことが大切だからです」

姫「勇者さま……」

勇者「自分の命よりも大事なものが目の前で崩れそうになっているなら、なんとしても守ろうとします」

姫「あ……の……」

勇者「私の命で貴女が生き長らえることができるなら、安いものですよ」

姫「あ、ありがとうございます……」

勇者「無論、貴女だけが命よりも大事というわけではありませんが」

姫「……」

勇者「姫様?」

姫「勇者さま……」

勇者「なんですか?」

姫「こんな私でよければ……娶ってもらえませんか?」

勇者「え……いや……」

姫「今、分かりました……きっと勇者さまこそ、国を統べるお方なのだと……」

勇者「姫様……あの……」

姫「ダメですか?」

勇者「待ってください。結婚の約束は既に済ませているはず。何も今更……」

姫「本当に私と婚姻を?」

勇者「側室としてですけど」

姫「側室……」

勇者「はい」

姫「……」

勇者「私は残念ながら貴女を正妻に迎えるつもりは―――」

姫「わかりました」

勇者「え?」

姫「でも、政治的なことになりますが、私が側室であることは公表できません。よろしいですか?」

勇者「あの……え?」

姫「勇者さまと添い遂げることができるなら私は側室であろうと構いません。王族も抜けましょう」

勇者「まさか……姫様……僕に……」

姫「玉座に誰も座らないのは、国として終わりですから」

勇者「僕に王になれと!?」

姫「私ではお父様を継ぐ事はできません。だから、勇者さまに……」

勇者「ま、待ってください!!それは……!!」

姫「大役なのは分かっています。ですが、私を側室として迎えいれるのでしたら……」

勇者「まあ、あの……王族の方がいなくなりますものね」

姫「はい。側室の王になど、民はついてきませんから」

勇者「……」

姫「勇者さま……」

勇者「か、考えさせてください」

姫「分かりました」

勇者「確かに王からは貴女のことを頼むとも言われましたが……」

姫「不束者ですが、よろしくお願いします」

勇者「いや……」

姫「ところで側室とはどのようなことをすればよろしいのですか?何分、勉強不足でして……窓拭き?」

―――廊下

勇者「はぁ……」

少女「どうした?随分と陰鬱な顔で出てきたな」

勇者「姫様に王にならないかといわれのです」

少女「すごいな。お前が一国の主か。見てみたい気もする」

勇者「いや、側室をいっぱい作るなら王族になったほうが好都合といえば好都合ではあるけど」

少女「……」

勇者「んー」

少女「おい」

勇者「なんです?」

少女「ただ責任を感じて、あの姫に同情しているだけなら断ったほうがいい」

勇者「同情では……」

少女「お前に民を導く才能があるかどうかは俺にはわからない。だが、それだけの理由で王の座に着くと後悔するぞ?」

勇者「分かっています」

少女「気負うな。まだ、これからが本番なのだからな」

勇者「……」

少女「じゃあな」

勇者「待ってください」

少女「なんだ?」

勇者「ありがとうございます」

少女「か、勘違いするな。俺はお前がしゃきっとしないと……色々困るだけだ」

勇者「ちょっと付き合ってもらえませんか?」

少女「どこに連れ出す気だ?」

勇者「貴女とは二人きりで談話をしてみたいと思っていたところです」

少女「……」

勇者「ふふ……」ジリジリ

少女「よ、よるな……ケダモノが」ジリジリ

勇者「ドラゴンの貴女に言われたくないですね」

少女「それもそうか」

勇者「さあ、夜のデートと行きましょうか」

>>883
少女「どこに連れ出そう気だ?」
少女「どこに連れ出す気だ?」

―――中庭

少女「ここは……」

勇者「ここが無事でよかった」

少女「なんでこの場所に来た?」

勇者「ここ、いいところでしょう?」

少女「ま、まあな」

勇者「今ならドラゴンに戻っても騒ぎにはなりませんよ?この場所は大丈夫です」

少女「馬鹿言うな。この姿でなければパニックになるだろうが」

勇者「嫌なんでしょう?」

少女「お前……」

勇者「もう割り切ったみたいな態度でいますけど、本当は人間の姿になんかなりたくないんですよね?」

少女「余計なお世話だ」

勇者「僕らでいうなら足を骨折して不自由になったみたいな感じでしょう?」

少女「よくわからんが」

勇者「ほらほら、ここなら大丈夫ですって」

ドラゴン「―――ふぅ」

勇者「星が綺麗ですね。―――君が変身する女の子の姿が一番綺麗だけどね」

少女「……そうか」

勇者「ああ、嘘です。ドラゴンの姿も十二分に魅力的です」

ドラゴン「……」

勇者「この尻尾が特にかっこいいですよねー」モミモミ

ドラゴン「で、なんの話だ?」

勇者「魔王は今、どこに?」

ドラゴン「恐らく、孤島にある城にいるだろう。そこで魔法銃の対策、そして俺への対抗策を練っている」

勇者「ずっと疑問だったことがある」

ドラゴン「なんだ?」

勇者「魔王はどうしてそこまで用心深いのか……」

ドラゴン「……」

勇者「たかが人間に対して、前線にも出てこず、全ては部下任せ。何かあるのか?」

ドラゴン「……魔法銃が全ての原因だ」

勇者「魔法銃が?」

ドラゴン「魔法銃により魔王様は重症を負った」

勇者「みたいだな」

ドラゴン「魔法様はそれまでニンゲンという下等生物など害虫同然だと思っていた。なのに、その害虫に深手を負わされた」

勇者「もしかして……その一敗で魔王は慎重派に?」

ドラゴン「絶対の勝利に拘り始めたのは間違いなく、その敗戦が原因だろう」

勇者「数百年前の敗戦は魔王にとってよほどショックだったのか」

ドラゴン「そうでなくても魔王様の力は衰え始めていたからな。自身の老いを目の当たりにしてしまったのかもしれない」

勇者「なに……?」

ドラゴン「古代においては神と魔族の戦いもあり、常に次代の魔王様が用意されていたみたいだが……」

勇者「ここ何千年は住み分けがきちんとでき、不文律があった」

ドラゴン「ああ。故に魔王様の交代もなかった。急に起こった戦争のために次の魔王様はいなかった」

ドラゴン「平和ボケしていたと言われればそれまでだがな」

勇者「この数百年の間に次代を担う魔王は現れなかったのか?」

ドラゴン「候補はいた。だが、魔王になるまでには至らない者たちばかりだ。何千年も戦ってこなければ当然だな」

勇者「もしかして、貴女も候補?」

ドラゴン「どうだったかな。とにかく魔族は過去の力を取り戻しつつある」

勇者「それはキラちゃんのあれ?」

ドラゴン「その通りだ。あの魔道士が開発した生命エネルギーの抽出が役に立っている」

勇者「国民を皆殺しにするのは、そのエネルギーを手っ取り早く回収するためか」

ドラゴン「いや、あの人形は相手を殺すことでエネルギーを吸収していたが、俺たちにはそういうことはできない」

勇者「じゃあ、拉致か?」

ドラゴン「植民地化していた土地でニンゲンを生かしていた。今はもう崩壊してしまったが」

勇者「まさか!!あの魔道士!!」

ドラゴン「そう。あの魔道士の役目はニンゲンを集めることにある。集めたニンゲンの8割は魔王様の下に送られていた」

勇者「なら、どうして装置を持って攻めてこない?」

ドラゴン「エネルギーを吸い上げる装置は持ち運べず、また破壊されては事だ。それができるなら魔道士もやっていただろう」

勇者「一気に大人数を捕らえることはしなかったのか?」

ドラゴン「それは魔道士の仕事だった。魔王様はニンゲンと小競り合いを続けて、魔道士のことをニンゲンに気づかせないようにしていただけだからな」

勇者「戦争をやっていれば人身売買や拉致はあまり注目されないからな。戦争を魔族復古のためのカモフラージュにしていたのか」

ドラゴン「そういうことになる」

勇者「なるほど……。過去の勇者たちもそのことに気づいていれば……」

ドラゴン「もしかしたら、魔王様は倒されていたかもしれないな」

勇者「部下を簡単に切り捨て、自分だけが生き残る戦いをするのはそういう理由もあったわけだ」

ドラゴン「魔王様が前線に出てきたとき、それは全てが完了したということだろう」

勇者「だが、今は人間を集める術は……」

ドラゴン「魔道士がいなくなったことは報告済みだ。そろそろ代替案を実行してくる可能性もある」

勇者「代替案?」

ドラゴン「海には大勢のニンゲンが浮いている」

勇者「海賊艦隊を狙うのか」

ドラゴン「一人残らず生け捕りにすることはできなくても、あれだけの規模だ。2割も捕らえる事が出来れば相当な栄養素になる」

勇者「魔王が今まで海賊に手出ししなかったのは……」

ドラゴン「海賊が帰還せずとも海で散ったとしか思わないだろう。拉致して戦力に変えるなど想像すらしないはずだ」

勇者「なら、早く戻らないといけないか」

ドラゴン「焦る必要はない。あれだけの数を捌くのは、それなりの日数がかかる」

勇者「そうだな……。キャプテンたちも弱くないわけだし」

ドラゴン「お前が勝てなくても誰も責めはしない。心配するな」

勇者「負ければ誰も側室にできないだろう?それはちょっとなぁ」

ドラゴン「言っていろ」

勇者「……」

少女「―――そろそろ戻る。寝坊するなよ?」

勇者「分かりました。ありがとうございます。愛してますよー」

少女「黙れ。軟派者めが」

勇者「えへへ」

少女「褒めてないっ!!」

勇者「おやすみなさい」

少女「ふんっ」スタスタ

勇者「……ふぅ……」

勇者「力を取り戻しているとすれば……」

勇者「よし……」

―――姫の自室

勇者「よろしいですか?」

姫「どうぞ」

勇者「姫様。夜分遅くに申し訳ありません」

姫「いえ」

勇者「姫様。先ほどの問いに対する答えを出しにきました」

姫「なんでしょうか?」

勇者「約束はできません」

姫「……」

勇者「僕は貴女を側室にしたい。心からしたい。もう今すぐにでもしたいぐらいです」

姫「勇者さま……」

勇者「でも、王になる約束だけはできません」

姫「どうしてですか?」

勇者「僕はただの平民です。王の器ではありません。勇者というのも称号に過ぎません。だから、王にはなれないと思うのです」

姫「でも、私を側室にするというのなら……」

勇者「姫様を側室にしたい。でも、王にはなりたくない。―――それって身勝手ですか?」

姫「はい」

勇者「ふふ……ですよね」

姫「しかし、私に勇者さまを批判するだけの資格はありません。私もまた身勝手な姫だったのですから」

勇者「……」

姫「国民のために……国のために……そういう心構えができません」

姫「可愛い服を着たい。友人とお茶を飲みながら話したい。殿方と恋がしたい」

勇者「姫様……」

姫「そういう想いのほうが強いのです」

勇者「そうですか」

姫「最低な王族ですね……私は……」

勇者「嫌ならやめてしまいしょう」

姫「……へ?」

勇者「王族を捨てると言ったではないですか」

姫「そ、それは……勇者さまが王としてこの国を支えてくれるならという意味で……」オロオロ

勇者「僕は魔王を倒し、世界の英雄となります。そのときまでに決めておいてもらえますか?」

姫「な、なにをですか?」

勇者「僕の側室になるか。それとも王族として生きるか」

姫「……!」

勇者「でも、答えは分かりきっていますが」

姫「勇者さま……」

勇者「姫様。次に会うときは大英雄ですからね」

姫「あ……」

勇者「では、おやすみなさい」

姫「勇者さま!!」タタタッ

勇者「え―――」

姫「もう行ってしまうのですね……」ギュッ

勇者「姫様……」

姫「戻ってきてとはいいません。ですが……私は貴方のことを愛しています……それだけは覚えていてください……」

勇者「ありがとうございます……姫様……」

姫「勇者さま……今夜は……ここで……」

勇者「姫様」バッ

姫「そう……ですか……」

勇者「次に会うときまで生きていてください。姫様を必ず側室にしてみせます」

姫「……では、勇者さまが戻ってくるまで私はこの国と生きていきます」

勇者「ええ。それがいいでしょう。―――それでは」

姫「勇者さま!!」

勇者「……」

姫「……」

勇者「行ってまいります」

姫「旅の無事を祈っています」

勇者「この上ない誉れです」

姫「行って……らっしゃいませ……」

勇者「貴女は素晴らしい女性だ。誰が手放すものですか」ニヤッ

姫「……うそつき……」

―――廊下

勇者「……」

少女「あ、いたいた」

勇者「くそっ!!!」ガンッ

少女「ど、どうした?」

勇者「え?いや……ちょっとかっこつけすぎたと思いまして」

少女「ほう?断ったのか」

勇者「僕はあの王様のようにはなれないと思います」

少女「どうしてだ?」

勇者「王が国にいる全ての美女を側室にしちゃまずいでしょ?」

少女「ああ、そうだな」

勇者「というわけで、魅力的なお誘いでしたがやめておきます。―――で、貴女はこんなところでなにを?」

少女「寝室が分からない。案内してくれ」

勇者「……じゃあ、こっちです。楽しみましょう」グイッ

少女「やめろ!!貴様!!違う場所に連れ込む気だろうが?!」

―――翌朝

勇者「いててて……」

僧侶「もう朝から怪我なんて何があったんですか?」ギュッ

勇者「ぬほほぉ……いや、猛獣に殴られまして」

僧侶「猛獣?」

魔法使い「おはよう」

少女「……」

エルフ「どうしたの?機嫌悪そうだけど」

少女「なんでもない……」

勇者「まさか、あれほど暴れるとは思いませんでした」

少女「……ふんっ」

魔法使い「……ねえ?」

勇者「なんですか?」

魔法使い「何かあったの?」

勇者「え?別になにもありませんが?―――ちょっとした身体検査をしただけですよ、はい」

魔法使い「身体検査って―――」

兵士長「勇者殿!!」

勇者「どうしました?」

兵士長「これを」スッ

勇者「これは……手紙?」

兵士長「ご武運を」

勇者「はい」

僧侶「誰からですか?」

勇者「この匂いは……」クンクン

エルフ「犬みたいなことやめなよ」

勇者「姫様からの手紙ですね」キリッ

僧侶「きっとラブレターですよ!!」

勇者「ふっ。もしかしたら婚姻届かもしれませんね」

魔法使い「アンタねえ?!一国の姫様になにしてんのよ?!」

勇者「姫様は肉親を失った身。僕だけでも優しく包んであげないといけないでしょう?優しくしてどこに問題があると?いや、ないですよね?」

少女「早く出発したほうがいいぞ?」

勇者「ですね」

ドラゴン「―――乗れ」

魔法使い「……」

僧侶「勇者様!ラブレター読んでください」

勇者「乙女の秘密でしょうし、今は時間が惜しいです」ペラッ

エルフ「あ、読むんだ」

魔法使い「……」ソーッ

ドラゴン「飛ぶぞ!!」バサッバサッ

勇者「ふむふむ……なるほど……」

魔法使い「なんて書いてあるのよ?」

勇者「貴方のことを想うと股間が大洪水になります。早く、この火照った体を冷ましにきてーあっはーん―――と書いてますね」

エルフ「へー。顔に似合わず淫乱なんだ」

勇者「もうね、エロエロです」

魔法使い「嘘いうな!!!あの姫様がそんなこと書くわけないでしょうがぁ!!!」

勇者「僕の側室になる女性はエロくなくてはいけません」

僧侶「そ、そうなのですか?!」

勇者「オフコース」

僧侶「あぁ……そ、そんなぁ……」ガタガタ

ドラゴン「怖いならしっかり捉まっていろ」

魔法使い「またいい加減なことを……」

エルフ「いやらしい女じゃないとダメってこと?」

勇者「エッチな女性って……素敵やん?」

僧侶「あぁ……エッチな女性なんて……どうしたら……」オロオロ

魔法使い「馬鹿じゃないの?気持ち悪いこといわないで」

勇者「しかし、性に貪欲なほうがこっちも嬉しいですね」ニコッ

ドラゴン「ニンゲンのオスはそういうメスが好きなのか」

勇者「だーいすきです」

エルフ「性欲あるほうが面倒だと思うけどなぁ」

勇者「はぁぁぁぁ?!―――もう一度言います。はぁぁぁぁぁぁ!?」

エルフ「な、なに?」

勇者「いいですか?男女共に性欲があるとどれだけのメリットがあると思っていますか?!」

エルフ「そ、そんなの考えたことないけど」

勇者「バッカだなぁ!!毎日、エッチなことしか考えない恋人同士ならよぉ!!毎日がもうドキドキじゃん?」

魔法使い「意味がわからないわよ」

勇者「いいか?!性欲は二人の関係を冷めさせないための大事で重要で大切でしかも肝心なものなんだぜぇ?!それぐらいわかるだろう?!」

僧侶「好きだけじゃダメですか?」

勇者「ダメだな。エッチも好きじゃないとダメだな」

僧侶「うぐ……」

ドラゴン「交尾などただの作業だろうに」

勇者「そう!!作業だ!!だが、その作業がすっごく気持ちよくて楽しくて、毎日でもやっていたいと思うのは良いことです」

エルフ「どうして?」

勇者「子宝に恵まれる。そして僕が嬉しい」

僧侶「なるほど……エッチになれるようにがんばりますっ」

魔法使い「女に囲まれながら何を口走ってるのよ、馬鹿ね……もう……ホントに……」

勇者「貴女はもう体がスケベですけど……ぬふふ……」

僧侶「そ、そうですか……?」

勇者「もう……うひょー」

魔法使い「ちょっと、この変態どうにかしてよ。今から魔王と戦いにいくっていうのに、緊張感の欠片もないじゃない」

エルフ「緊張を解そうとしているんじゃないの?」

魔法使い「まさか……単なる私利私欲を放出しているだけよ」

エルフ「そうかなぁ」

魔法使い「それに緊張を解すために選ぶ話題じゃないでしょう?」

エルフ「それはそうかもね」

勇者「とくにこの二の腕とか……」モミモミ

僧侶「あんっ」

魔法使い「ほら、離れて!!」グイッ

勇者「なにすんだこらぁ!!!!青空の下で脱がないお前らが悪いんだろうがぁ!!」

魔法使い「真面目にやってよ!!」

ドラゴン「暴れて落下だけはするなよ。拾うのが面倒だからな」

―――海上 海賊船 甲板

キャプテン「うてぇー!!!」

ドン!!ドン!!ドン!!」

魔物「キキー!!!」

キャプテン「うるさいよ!!!」ドォン!!

魔物「ぎゃぁ?!」

キャプテン「怯むな!!うてー!!!」

海賊「アイアイサー!!!」

キャプテン「さあ!!魔王の糞野郎!!さっさと追い詰められなぁ!!」

ゴゴゴゴ……!!

キャプテン「ん?なんだい?」

海賊「キャプテン!!海から魔物がぁ!!!」

キャプテン「海中からか!!そんなの想定内さ!!―――魚雷発射よーい!!!」

メキメキメキ……!!

キャプテン「え―――」

船長「どうした?!」

海賊『報告します!!第8、9、15船団が轟沈しましたぁ!!』

船長「馬鹿な!?何があった?!」

海賊『そ、それが海底から―――うわぁぁぁっぁぁ!!!!!!』

船長「どうした?!応答しろ!!どうしたんだ?!」

船長「くそ……!!キャプテンの船は無事だろうな……!!」

ゴゴゴゴゴ……!!!

船長「な、なんだ……!?」

海賊「かしらぁ!!やべえよ!!前に出たクラーケン級がうじゃうじゃいやがる!!!」

船長「なんだと?!」

キャプテン『―――誰か!!応答しな!!』

船長「キャプテン!!」

キャプテン『全員撤退だ!!魔王のやつら、とんでもない兵力をもってやがった!!これじゃあ全滅になるよ!!』

船長「しかし!!」

キャプテン『ここはあたしが引き受ける!!逃げれる奴は全員にげなぁ!!!』

キャプテン「いいかい!!逃げて態勢を立て直すんだ!!」

船長『嫌です!!』

海賊『俺たちもキャプテンと戦います!!』

キャプテン「ばかいってんじゃないよぉ!!!死にたいのか!?」

船長『キャプテンを見捨てて何が海賊ですかぁ!!!』

海賊『キャプテン!!俺たちはいつも一緒ですからぁ!!』

キャプテン「……あんたらは生きろ。これは命令だよ」

船長『そ、そんな……』

キャプテン「生きて勇者に伝えな。奴らの戦力は異常だってね」

船長『キャプテン!!!』

キャプテン「はやくいきなぁ!!!」

船長『ア……アイアイサー……』

キャプテン「……」

メキメキ……!!!

キャプテン「どうやら……あたしもここまでみたいだねえ……。ごめんよ……いい女は黙って旦那の帰りを待つもんなのに……待てなくて……ごめんよ……」

海賊「キャプテン!!魚雷発射準備整いました!!」

キャプテン「よし。一斉発射だ。ただでは死なないよ!!」

海賊「「アイアイサー!!!」」

キャプテン「地獄の果てまでついてきなぁ!!!」

海賊「魚雷発射!!!」

ドォォォォン!!!

キャプテン「どうだい?!」

メキメキメキ……!!!

キャプテン「船が割れるよ!!!」

ボキィ……!!!

海賊「うわぁぁぁぁあ!!!!!キャプテェェェン!!!!」

キャプテン「くっ……!!意味がないとは……。これまでの苦労はなんだったのかねえ……」

ゴゴゴゴ……

キャプテン「情けない……結局は井の中の蛙に過ぎなかったわけだね」

キャプテン「……愛してるって……伝えたかったなぁ……」

ズズズズズ……!!

キャプテン「絶対にあたしの仇……とっておくれよ……」

―――守る!!

キャプテン「……え?」

ドラゴン「―――くらえぇ!!!」ゴォォォ

クラーケン「ガァァァァ!!!!」

キャプテン「あぁ……」

勇者「ふっ」バッ

キャプテン「あ……あぁ……」ウルウル

勇者「よっと」シュタ

キャプテン「あぁぁぁ……」ヨロヨロ

勇者「もう大丈夫です」

キャプテン「うぅぅ……」ギュッ

勇者「皆さんを他の船に運んでください!!」

ドラゴン「了解だ」バサッバサッ

勇者「怪我は?」

キャプテン「……っ」ゴシゴシ

勇者「泣いて―――」

キャプテン「泣いてない!!」

勇者「そうですよね」

キャプテン「わ、悪かったね……約束、守れなくて……追い詰められなかった……」

勇者「いえ。僕も魔王軍がこれほどまでの戦力を有していたのは驚きです。これでは人間が文字通り束になっても敵いません」

キャプテン「どうしたらいいんだい?」

勇者「一隻だけ船を囮に使ってもいいでしょうか?」

キャプテン「それは構わないけど……」

勇者「ありがとうございます」

ドラゴン「おい。生存者は皆、運べたぞ」

勇者「分かりました。次の仕事をお願いします」

ドラゴン「全く、人使いが荒いな」

勇者「まあまあ、がんばってください。君にしかできないことですから」

―――海賊船

勇者「面舵いっぱーい!!」

僧侶「アイアイサー」

魔法使い「ふぅ……」

エルフ「クラーケンは集まってきてる」

勇者「はっ。確かに船の弱点は船底だ。だが……弱点しか狙ってこないのは馬鹿のやること」

少女「二匹ほど張り付いた!!」

勇者「よぉーし!!」

魔法使い「……網に掛かったわ!!」

勇者「お願いします!!!」

ドラゴン「のれぇ!!」

僧侶「うわ!うわ!!」テテテッ

エルフ「もっと高く!!」

勇者「―――今です!!」

エルフ「燃えろぉぉぉ!!!」ゴォォォ

―――ドォォォォン!!!!

僧侶「きゃぁ?!」

魔法使い「あつっ……!」

勇者「どうだぁ!!一箇所にしか集まらないとこうなるんだよぉ!!あはっはー!!」

エルフ「大量の魚雷を同時に爆発させるなんて……馬鹿しか考えないよ」

勇者「最高の褒め言葉です」

ドラゴン「魔物は怯んでる。クラーケンも無事ではないだろう」

勇者「糞野郎どもぉぉぉ!!!!反撃の狼煙をあげろぉぉぉ!!!!」

海賊「「オォォォォ!!!!!」」

キャプテン「おまえらぁ!!!この好機をのがすんじゃないよぉ!!!」

勇者「では、行ってきます。くれぐれも無理はしないように。頃合を見て退却してください」

キャプテン「待っておくれ!!」

勇者「なんですか?」

キャプテン「あ……あ、あ……愛してるから!!!あたし、あんたが大好きだからぁ!!!」

魔法使い「ぶふっ?!」

海賊「「なんだとぉぉぉお!!?!?!」」

キャプテン「はぁ……はぁ……」

勇者「どうしてそれを今?」

キャプテン「だ、だって……言いたかったんだから……仕方ないだろ……」

勇者「そうですか」

魔法使い「今、言わなくてもいいでしょう?!」

僧侶「私も勇者様のこと大好きですよ?」ギュッ

勇者「まいったなぁ」

魔法使い「もうなんでみんな真面目にやらないのよぉ!!!」

エルフ「変に固くならないだけいいんじゃない?」

ドラゴン「いくぞ。これほどまでに力をつけているなら、魔王様も恐らく……」

勇者「ええ。行きましょう」

キャプテン「絶対にもどってきなよー!!ダーリーン!!!」

勇者「分かってるよ!!ハニー!!」

海賊「「アァァァアアアアア!!!!!!俺たちのキャプテンがぁぁぁぁ!!!!寝取られたぁぁぁぁ!!!!」」

勇者「魔物に動きを察知されないようにしてください」

ドラゴン「分かっている。俺を舐めるな」

勇者「え?舐めてもいいんですか?」

僧侶「ああいう告白って……いいですよねぇ……」

エルフ「そうかな?」

魔法使い「全然、そうは思わないわね。私だったら―――」

勇者「愛している」ボソッ

魔法使い「きゃぁあああ!?!」ビクッ

勇者「耳元で囁かれるほうがいいんですよね?」

魔法使い「ど、どうしてそのことを―――じゃなくて、気持ち悪いことしないで!!」

勇者「好きな人に愛してるって言われるのが嫌いなのですか?んー……変なの」

魔法使い「そういうことじゃないわよ!!馬鹿!!」

僧侶「勇者様、私にも言ってください」

勇者「……愛してるよ」

僧侶「はいっ。私もです」

―――魔王の城

キマイラ「魔王様!!!」

魔王「来たか」

キマイラ「海上に勇者が現れたと」

魔王「よし……好都合だ」

キマイラ「どうされますか?」

魔王「……手筈通りでいい」

キマイラ「ははっ」

魔王「くくく……ここまで我の邪魔をしてきた者は今回の勇者が始めてだな……」

魔王「我が側近のドラゴンすら手駒にするとは驚きだが、それもここまでにしてくれる」

キマイラ「勇者さえいなくなれば、魔王様に歯向かう愚かな人間がまた減りますね」

魔王「それだけではない」

キマイラ「え?」

魔王「魔族の完全なる復活を世に見せ付けてくれる……!!!未来永劫、この我に逆らう者が現れないようになぁ!!!」

魔王「ふふふふ……!!!!ふはははははははは!!!!!!」

―――上空

ドラゴン「見えてきたぞ」

勇者「あれが魔王の城か」

僧侶「このときが遂に来たのですね」

魔法使い「やっぱりここまで来ると……体が震えちゃうわね」

勇者「それは大変だ」ギュッ

魔法使い「……」ゴォッ

勇者「あつっ?!」

エルフ「このまま直接乗り込めるかな?」

ドラゴン「厳しいだろうな……」

僧侶「ど、どうしてですか?」

ドラゴン「城の周辺を見ろ」

魔物「―――グルルルル!!!」バサッバサッ

勇者「ドラゴちゃんの迎撃部隊か」

ドラゴン「お前たちを乗せながら戦えない。お前たちを城の近くで降ろし、俺は奴らを倒してから合流に向かう。いいな?」

―――魔王の孤島 陸地

ドラゴン「また後でな」

勇者「いってらっしゃい。マイディアー」

ドラゴン「はいはい」バサッバサッ

僧侶「ご武運をー!!」

魔法使い「じゃあ、私たちも急ぎましょう。ドラちゃんが魔王の前に着くときに私たちがいないと締まらないもの」

勇者「ですねー。ドラゴちゃんも泣いてしまうかもしれない」

エルフ「……」

勇者「大丈夫ですか?」

エルフ「うん。勿論」

勇者「迫害されていたとはいえ、貴女は王を戦うわけですから……」

エルフ「心配ないよ。大丈夫」

勇者「よし。行きましょう」

僧侶「はいっ!」

魔法使い「故郷の仇……絶対に……倒す……」ギリッ

―――魔王の城 城門前

勇者「……」

魔法使い「ドラちゃん……戦ってるわね」

エルフ「一人で平気かな……?」

僧侶「見た感じ、相手は10匹ほどいますね」

勇者「なら、余裕でしょう。あの子は強いですし」

魔法使い「……ええ、そうね」

勇者「開けます」

ギィィィィ……

魔法使い「……」

エルフ「空気が重たい」

僧侶「なんという禍々しさ……ここが魔王の根城……」

勇者「どんな罠があるかわかりません。みなさんは僕に密着してください!」

僧侶「は、はい!」ギュッ

勇者「ぬふっ」

魔法使い「こっちに階段があるわ」

エルフ「とりあえず上を目指そうか」

魔法使い「魔王も最上階で威張ってるのかしら?」

エルフ「そうかもね」

勇者「あと二名、僕に抱きついてないですな。これは命令違反だ。組織としては処罰するしかねえな」

魔法使い「くっついてたら襲われたとき対応できないでしょ?」

勇者「罰として上から脱いでくれます?」

エルフ「行こう」

魔法使い「ええ」

勇者「おぉぉい!!本当に危険なんで固まって行動をですねえ!!!」

僧侶「んしょ……」スルッ

勇者「貴女は脱がなくていいですよ?」

僧侶「え?」

勇者「さ、緊張感を持って進みましょう!!」

魔法使い「アンタが言うな」

―――魔王の孤島 上空

ドラゴン「オォォォォ!!!!!」ゴォォォ

魔物「ギャァァァ―――」

ドラゴン「ふんっ!!」バキッ

魔物「オォォ―――」

ドラゴン「ふん……こんなものか……」

ドラゴン「さぁ、勇者と合流を―――」

ドラゴン「……!!」ゾクッ

ドラゴン「な、なんだ……?!」

ドラゴン「はぁ……はぁ……」キョロキョロ

ドラゴン「まさか……!!」

魔王「―――久しいな」

ドラゴン「ま、魔王様……?!」

魔王「ふふふ……」

ドラゴン「そうですか……全ての準備が……整ったのですね……」

魔王「そうだ」

ドラゴン「……」

魔王「さあ、戻って来い」

ドラゴン「え……?」

魔王「一時の気の迷いというのは誰にでもある。そうだな?」

ドラゴン「魔王様……」

魔王「お前の力が必要なのだ」

ドラゴン「……」

魔王「弱いニンゲンの味方をしてどうする?―――感じでいるはずだ。我の中で渦巻く魔力の奔流を」

ドラゴン「今の魔王様が本来のお姿ということですね……」

魔王「そうだ。もう誰も我を止めることはできない。我はニンゲンを殲滅し、この世界を手に入れる」

ドラゴン「そうですか」

魔王「行くぞ。我と共に栄華を―――」

ドラゴン「魔王様……いや、魔王。俺はもう裏切り者だ。お前の傍で働く気はない。―――もう信じた人に捨てられるのは嫌だからな」

魔王「そうか……ふはははは……残念だ……。ならば……死ね」スッ

―――魔王の城 中層

勇者「はぁぁぁ!!!」ザンッ

魔物「グゥゥゥ……」

勇者「はぁ……はぁ……」

エルフ「こっちも倒したよ」

魔法使い「怪我はない?」

勇者「はい。なんともありません」

僧侶「もう少しですね」

勇者「ええ。いそぎ―――」

ドォォォォン……

勇者「ん?」

エルフ「なに?爆発?」

魔法使い「外からね。まさか……」

勇者「ドラゴちゃんを信じましょう。僕たちは魔王の下に」

エルフ「うん」

―――魔王の城 最上階

勇者「……」ググッ

ギィィィ……

魔法使い「……いる?」キョロキョロ

エルフ「……」キョロキョロ

僧侶「いませんね」

勇者「いない……?まだ別室が―――」

キマイラ「ここが終着点だ、ニンゲン」

勇者「お前は……!?」

キマイラ「よく来たな」

僧侶「あ、あなたが……魔王?!」

エルフ「違うよ。あれはキマイラ。魔王の側近だね」

魔法使い「側近?魔王はどこなの?!」

キマイラ「さあな。魔王様もお忙しい身だからなぁ」

勇者「なんだと……?」

キマイラ「まぁ、どうでもいいことだろう。お前らはここで死ぬんだからなぁ」

勇者「……」

エルフ「来る!」

僧侶「きゃぁー!!」

魔法使い「ここまで来て逃げるわけには―――」

勇者「出ましょう」

エルフ「え!?」

魔法使い「な、なにいってるの?!」

勇者「魔王はまだ魔法銃を警戒していたんです」

僧侶「ど、どういうことですか?」

勇者「魔王は僕たちと戦う気がないということですよ」

エルフ「じゃあ……逃げたの?」

勇者「でしょうね。先ほどの爆発音は恐らく、魔王によるもの」

僧侶「ゴンちゃんが危ないです!!」

キマイラ「貴様ら……逃げられるとでも思っているのか?」

勇者「あぁ?」

キマイラ「ここでお前らは臓物をぶちまけて死ぬんだよぉ!!!」

勇者「行きましょう」

エルフ「え?でも……」

勇者「いいから」

魔法使い「しょうがないわね」

僧侶「ゴンちゃんが大変です!!」

キマイラ「まてこらぁぁぁ!!!!」ダダダッ

勇者「逃げろ!!」ダダッ

エルフ「うわ!!」ダッ

僧侶「ま、まってください!!」タタッ

魔法使い「くっ……!!」タタタッ

キマイラ「おらぁぁぁぁ!!!!」

勇者「扉を閉めてください!!」

キマイラ「てめ―――!?」

エルフ「よいしょー!!!」グググッ

魔法使い「ふーん!!!」グググッ

バタンッ!!

キマイラ『ギャァァ―――』

ゴォォン!!!

勇者「よし」

僧侶「お間抜けさんで助かりましたね」

エルフ「うん」

魔法使い「と言ってもすぐに追いかけてくるわよ?」

勇者「どうでもいいです。一刻も早くドラゴちゃんの安否確認をしなくてはなりません」

僧侶「ですね!!」

勇者「それに僕らだけでは到底敵う相手ではありませんでしたし」

エルフ「そっか……」

勇者「とっとと城を出ます!!」

僧侶「おーっ」

―――魔王の城 城門

勇者「はぁ……はぁ……!!ドラゴちゃぁぁん!!!」

魔法使い「あそこ!!」

僧侶「あぁ!!」

少女「う……ぅぅ……」

勇者「どうしたんですかぁ?!」

少女「まお……う……さま……が……」

エルフ「今、治癒するから」パァァ

勇者「大丈夫か?」

少女「ああ……この姿になって身を隠した……からな……」

魔法使い「魔王はどこに向かったの?」

少女「恐らく海賊船団のところだろう。魔王様はきっと……最終段階に入っている……」

勇者「力を取り戻すのか」

少女「海賊たちの命を吸収するつもりなのだろうな」

僧侶「そんな……!!私たちの目の届く場所でそんなことをさせるわけには……!!」

少女「もうよい……十分だ」

エルフ「でも」

ドラゴン「―――乗れ。時間がないぞ」

魔法使い「よっと。ほら、早く乗って」

僧侶「は、はい」

エルフ「ほっ。―――いつでもいいよ!!」

ドラゴン「これが最終決戦になるだろう。心の準備はできているか?」

魔法使い「そんなのいつだって出来てたわ」

僧侶「す、少しこわ、こわいですけど……私も故郷のことがありますから……!!」

エルフ「エルフ族を喰うつもりなら、なんとしても止めたい。ボクらはただ平穏に暮らせればいいんだ」

勇者「とりあえず綺麗なお嫁さんと側室10人をはべらせるまでは死ねません。さくっと魔王を倒して報奨金をせしめて、風呂入って、歯を磨いて、寝る!!」

ドラゴン「急ごう」

勇者「いくぞぉ!!僕の可愛い側室ちゃんたちぃ!!!」

魔法使い・エルフ・僧侶「「おぉー!!」」

魔法使い「―――いや!!側室じゃないわよ?!」

―――海上 海賊船 甲板

キャプテン「ドンドン撃ちなぁ!!!弾が尽きてもぶっ放すんだよぉ!!!」

ドン!!ドン!!ドン!!!

海賊「キャプテン!!11時の方角からなんかくる!!!」

キャプテン「あぁ?!なんだい!?」

魔王「くっくっくっくっく……!!」

キャプテン「ありゃあ……魔王か……?」

海賊「ひぃぃぃ!?あれがぁ?!」

キャプテン「ひるむんじゃないよぉ!!!うてうてー!!!」

ドン!!ドン!!ドン!!

魔王「群小なる人間に我を止められるはずがないだろう……」

キャプテン「砲撃が効いてないのかい?!」

魔王「ハァァァァ!!!!」ゴォォォ

ドォォォォォン!!!!!

キャプテン「嘘だろ……船が……一撃で沈没……!?」

魔王「ふはははは……!!よし……勝てる……これなら……!!!」

海賊「やばい!!逃げる暇のないですよー!!!」

キャプテン「うろたえるな!!おい!!キラちゃんはどこにいるんだい?!」

海賊「後方の第19船に積んでます!!」

キャプテン「その船は真っ先に戦闘海域から離脱させな!!その後、順次離脱するよ!!」

海賊「アイアイサー!!!」

魔王「ほう……逃げ出すか。魔法銃が一丁しかないというのは本当らしいな」

キャプテン「あたしのダーリンは絶対にきてくれる!!!それまで耐えるんだ!!いいねぇ!?」

海賊「「あいあいさぁ……」」

キャプテン「やる気だしなぁ!!!このボンクラどもぉぉ!!!」

魔王「―――どうやら、貴様が指揮官のようだな」

キャプテン「なっ……?!」

魔王「まずは兵隊の士気と指揮系統を壊すとするか」

キャプテン「にゃろ……!!人間様を舐めるんじゃないよぉ!!」チャカ

魔王「遅い!!!」ザンッ!!

キャプテン「あ―――ぎゃぁぁああああああ!!!!!」

海賊「キャプテン!!!」

魔王「ふははははは!!!!やるなぁ!!!咄嗟に後ろに飛んだか!!!」

キャプテン「うぅぅ……ぁぁぁ……!!」

魔王「片目が潰れただけで済んだか……。だが、次は避けられまい」

キャプテン「あぁぁ……!!!おぉぉぅぅぅううぃぃ!!!!」

魔王「ふはははははは!!!!」

海賊「キャプテンを守れぇぇぇ!!!」ダダダッ

「ウオォォォ!!!」

魔王「劣弱な愚民が……霧散に消えろ!!」ゴォォォ

海賊「うあぁあああ!!!!!」

キャプテン「やめ……ろぉぉ……」

魔王「はーっはっはっはっはっはっ!!!!!安心するがいい!!全員が殺さん!!」

キャプテン「あ……?」

魔王「3割ほどは生かしておいてやろう……くっくっくっくっく……」

魔王「その他は殺せ」

魔物「「ギャギャギャギャギャ!!!!」」バサッバサッ

「た、戦え!!!」

「うぉぉぉぉ!!!」

魔王「はーっはっはっはっはっは!!!」

キャプテン「く……」チャカ

魔王「ん?」

キャプテン「くら……え……!!」バァァン

魔王「ふん」キュィィン

キャプテン「はぁ……ぁ……」

魔王「無駄だ。ニンゲンの火器では我が魔力の壁は突破できん」

キャプテン「へへ……ば……カ……だ、ねぇ……」

魔王「なに……?」

キャプテン「あたしのやることはね……旦那のお膳立て……なのさ……」

魔王「むっ?!―――後ろか?!」バッ

勇者「オォォォォォ!!!!」ダダダッ

魔王「勇者か!!」

勇者「はぁ!!!」ギィィン

魔王「ふん!!」ギィン

勇者「おうわぁ!?」

魔王「非力だな、ニンゲンの英雄にしては」

勇者「うわぁぁぁぁ」ゴロゴロゴロゴロ

勇者「―――酷いことに」

キャプテン「なぁに。目ん玉は……もう一個あるよ……。ダーリンの顔が見れるだけでも……あたしは嬉しいね……」

勇者「よく戦ってくれましたね、感謝しています」

キャプテン「また……強く抱いておくれよ……」

勇者「はい」ギュッ

キャプテン「あぁ……やっと……あん、し……ん……して……ねむ、れ……る……」

勇者「―――魔王、いい加減にしろよ」

魔王「何のことだ?」

勇者「俺の女に手を出したな……それも二度もぉぉ!!!」

魔王「知らんなぁ」

勇者「絶対に許さん……てめえだけは許さん……たとえ、お前の正体が超美少女だったとしても許さん!!!」

魔王「はっ。我の姿はこれ一つだ。申し訳ないな」

勇者「よーし。これで俺の憂いは消え去った。迷うことなくお前を斬れる」

魔王「出来るものなら―――」

ドラゴン「オォォォォォ!!!!」ゴォォォォ

魔王「ぬっ!!」バッ

魔法使い「くらえぇ!!!」シュバ

魔王「そのような鞭でぇ!!!」バシッ

エルフ「燃えろぉぉ!!!」ゴォォォ

魔王「無駄だぁ!!」キュィィン

ドラゴン「ドラゴニックキック!!!」

魔王「ふんっ!!!」ドゴォ

勇者「隙ありぃぃぃ!!!!」ダダダッ

魔王「うっとうしいわ!!!!」ゴォッ!!

勇者「うわっ?!」

エルフ「突風!?」

ドラゴン「俺の後ろに!!」

魔法使い「うっ……」

ドラゴン「はぁぁぁ!!」バサッバサッ!!

魔王「くくく……よくもう一度来れたな……」

ドラゴン「今の目的は魔王を倒すことだからな。死なない限りは何度でも戦う」

魔王「目を覚ますと思ったが……ダメだったか……。ならば、今度こそ殺してやるぞ」

勇者「そこの人」

「は、はい?」

勇者「キラちゃんはどこに?」

「そ、それなら後方の船だ……第19船……」

勇者「案内しろ!!」

「そ、そんな無茶な?!状況わかってんのか?!」

勇者「あの子がいないと勝てない!!」

「で、でも……どうやって……」

勇者「近くの船を寄せろ。それで俺が船伝いにキラちゃんを向かえにいく」

「ええ?!」

魔王「なにやら奇策珍策を練っているようだなぁ」

ドラゴン「……」

魔王「何の真似だ?」

ドラゴン「勇者の邪魔はさせない。まずは俺を倒してからにしてもらおう」

魔王「ふふふ……くくく……ふはははははは!!!!!」

魔法使い「……」

魔王「吼えたな!!!その驕り、万死に値するぞぉぉ!!」

ドラゴン「お前も勇者と共にいけ」

魔法使い「馬鹿ね。二人のほうが時間稼ぎできるでしょ?」

ドラゴン「ちゃんと役に立ってくれよ?」

魔法使い「分かってるわよ」

魔王「くたばれぇぇ!!!」ゴォォォォ

ドラゴン「あぁぁぁぁぁ!!!!」ゴォォォォ

魔王「ふんっ。灼熱の息吹は流石だな」

ドラゴン「……」

魔王「冷気はどうだぁぁ!!!」コォォォ

ドラゴン「くっ!」

魔法使い「もえろぉぉぉ!!!!」ゴォォォォ

魔王「な……」

魔法使い「はぁ……はぁ……ふ……ふふ……魔王の魔法も……た、大したこと……ないわね……」

魔王「随分と苦しそうだな」

魔法使い「はぁ……アンタの目……お、かしいんじゃない……?」

魔王「ニンゲンにしては中々の使い手だ。しかし、情報通りではなぁ……」バリバリバリ

魔法使い「電撃……!?」

ドラゴン「下がれ」

魔王「焦土と化せ!!!」バチバチバチ!!!

ドラゴン「グァァァァァ!!!!!」

魔法使い「……!!」

魔王「ふははははははは!!!!!!」

ドラゴン「……」

魔王「ニンゲンを庇い、深手を負うか」

魔法使い「……」

魔王「劣等種を救ってなんの意味がある?種から劣っている者など消えて当然だぁ!!!」

魔法使い「なんですって……」

魔王「力に溺れ、欲に塗れ、他人から奪うことでしかそれを満たせぬ愚かな存在!!それがニンゲンだぁ!!!」

魔王「そのような生物に価値などあるはずがない」

ドラゴン「お、とって……いれば……死んで……も……い、いと……?」

魔王「より優れた種族が繁栄したほうが世界のためだろう?」

ドラゴン「そして……お前は部下を何百、何千、何万と……切り捨ててきたのか……ゴミのように……」

魔王「何が悪い?」

ドラゴン「―――魔王ぉぉぉ!!!!」ダダダッ

魔王「馬鹿な……!!動けるはずが?!」

ドラゴン「オォォォォォォ!!!!」ドゴォ!!

魔王「うお?!」

僧侶「きゃぁ?!」

ドラゴン「ふー……ふー……そして俺も……同じように……!!」

魔王「お前は違う……。お前はただ、戦略的に仕方なかった」

ドラゴン「そんな陳腐な理由で、何の躊躇いもなく……俺を切り捨てたのか……」

魔王「我がニンゲンに勝利するためだ」

ドラゴン「……」

僧侶「ゴンちゃん……」ギュッ

ドラゴン「(しっかり背中につかまっていろ)」

僧侶「……はい」ギュゥゥ

魔王(にしても今の攻撃で……どうして動けた……?傷も殆ど治癒している……)

魔王(まるで傷ついた瞬間に癒えているような……)

ドラゴン「魔王。お前の考えにはやはりついていけない。盲目的に信じていた俺が馬鹿だったな」

魔王「……」

ドラゴン「こい。貴様は魔族にとって害でしかない」

魔王「今まで魔族が巧く繁栄してこれたのは誰のお陰だ?」

ドラゴン「……」

魔王「完璧な存在など居はしないぞ」

ドラゴン「そうだな」

魔王「多少の不満も飲み込めない下民がそうやってクーデターを起こすと、王は大変困る」

魔法使い「多少ですって?!」

魔王「戦に犠牲は付き物だ。無血で終わる戦争などない」

ドラゴン「……」

魔王「兵士は死ぬ。その死ぬ兵士たちを次の戦で役立てる。何が問題だ?」

ドラゴン「ああ、そうだ。お前はそうやって勝ち続けてきた……」

魔王「そして魔族も力をつけた」

ドラゴン「お前のやり方はきっと正しいんだろう……でも……」

ドラゴン「それを隠してこそ王だろうが!!開き直って自分の主張を臆面もなく翳すな!!!」

魔王「何も分かっていないな」

ドラゴン「なんだと?」

魔王「体裁を気にし、上辺の言葉で飾る。これこそ不満の種になろう」

魔法使い「……」

魔王「我の行動と偽りの慰めが矛盾したとき、積もる怏怏は計り知れない」

魔王「それならば初めからこうして曝け出しているほうがよかろう?」

ドラゴン「お前……」

魔王「貴様のような離反者もいる。だが、どうだ?お前に味方かいたか?」

ドラゴン「……っ」

魔王「我のやり方に異を唱える者は、我が魔王となったときに離れているか、遥か昔に暴動を起こしていることだろう」

魔王「しかし、それはなかった。誰も我のやり方に疑問は覚えなかったわけだ」

ドラゴン「違う……それはお前が……」

魔王「いい加減、気づけ。お前だけが異常ということにな」

魔法使い「―――バッカじゃないの?」

魔王「……ほう?」

魔法使い「旅をしてきて思ったけど、アンタに賛同していない魔族もいたわよ?」

魔王「……」

魔法使い「でも、革命を起こそうとはしない。魔王が怖いから」

ドラゴン「……」

僧侶「エルフ族ですか?」

魔法使い「単なる恐怖政治じゃない。まるで賢王みたいな言い草だけど、全然違うでしょ」

魔王「ニンゲン……我を侮辱するか?」

魔法使い「アンタは愚王よ。部下のことなんて何も考えない、自分の身が一番大好きなね」

魔王「おのれ……!!」

魔法使い「アンタなんかより立派な王は人間にいっぱいいるわ。戦争で勝ってこれたのも戦略が巧かったからじゃない」

魔王「……っ」

魔法使い「戦力が大きかったからに過ぎない。その証拠に、アンタはたった一人の勇者に翻弄されてきたんだから」

魔王「翻弄……?ふはははははは!!!!何を抜かすかぁ!!!我の手の平で踊るだけのニンゲンがぁ!!!」

魔法使い「私たちのリーダーはアンタの幼稚で愚昧で浅はかな考えなんてぜーんぶお見通しだったわよぉ?」

魔王「きさまぁぁ……!!」

ドラゴン「その辺にしておけ」

魔法使い「え?」

ドラゴン「船を壊されたらどうする?」

魔法使い「そうね……」

魔王「我を罵った罪は重いぞ……ニンゲン……!!」

魔法使い「やば」

ドラゴン「俺の後ろにつけ」

魔法使い「そうするわ」

魔王「いくぞぉぉぉぉ!!!!」ゴォォォ

ドラゴン「ぐっ?!」

魔王「ふん!!!」ザンッ

ドラゴン「―――はぁぁぁ!!!」ドゴォ

魔王「ぬぅ?!」

魔王(やはり……何かがおかしい。もしや……)

僧侶「(私がくっついていること……バレませんように……勇者様……早く戻ってきてください……)」ギュゥゥ

―――海賊船 甲板

勇者「早く!!」

エルフ「待って!!」

勇者「キラちゃんを目覚めさせないと……!!」

エルフ「でも、ガーちゃんを起動させるって急すぎるよ!!」

勇者「仕方ないじゃないですか!!僕だってまだ先だと思っていました!!」

エルフ「どういうこと?」

勇者「魔王が引き篭もっている限りはドラちゃんと貴女さえ居ればなんとかなる予定だったんです」

エルフ「ど、どうして?」

勇者「魔王が慎重だったのは、こちらの戦力を恐れていたから。それは対抗するだけの手段がなかったからでしょう」

エルフ「でも、出てきた……」

勇者「そう。つまり僕たちに勝てるだけの用意ができたということです」

エルフ「だけど、魔王は魔法銃を敬遠してこっちに来たんじゃ」

勇者「それなら僕が到着したときにどこかに行くはずです。魔王が先に海賊団を襲ったのは単にリスクの問題でしょう」

エルフ「リスクって、ニンゲンの反撃?」

勇者「そうです。今、表立って魔王と戦っているのは飽く迄も海賊船団。魔法銃を有する僕らよりも負けるリスクは少なく、また全人類の士気を大幅に削ぐことができる」

エルフ「じゃあ、合流したボクたちって……」

勇者「魔王にとっては手間が省けたというだけでしょうね」

エルフ「そんな」

勇者「だからこそ、魔王にとってのイレギュラーが必要なのです」

エルフ「それが、ガーちゃん」

勇者「その通り」

エルフ「ガーちゃん、ボクたちの記憶を持っているか怪しいよ?」

勇者「言ったでしょう?―――もう一度、ボクに恋をさせると」

エルフ「……うん」

勇者「さぁ!!急ぎましょう!!!」ダダダッ

エルフ「大丈夫かな……」ダダダッ

海賊「おーい!!こっちだぁ!!!」

勇者「え?」

海賊「キラーちゃん、運んできたぜー!!」

勇者「てめぇぇ!!!なにやってんだぁぁ!!!」

海賊「はぁ?!」

勇者「俺の娘にさわるんじゃねえ!!!」

海賊「わ、わりぃ……」

エルフ「今は非常時だよ!!お礼!!」

勇者「……ご協力感謝します」

海賊「……大事な仲間なんだな」

勇者「とうぜんだろぉ!!」

エルフ「エネルギー……どうしよう……」

勇者「魔力でなんとかなりませんか?」

エルフ「ボクの全魔力を注げば、起動ぐらいはするだろうけど、すぐに止まると思うよ?」

勇者「そんな!!」

エルフ「どうする?」

勇者「乳頭を押せば、恥らって目を覚ますとは?!」

エルフ「ないよ」

魔王「ふんっ!!!」ザンッ

ドラゴン「オォォォォォォ!!!!!!」

魔王「……」

ドラゴン「オォォォォォ!!!!!」ゴォォォ

魔王「……っ」バッ

魔法使い「やぁぁぁぁ!!!」ゴォォォ

魔王「なに!?」

魔法使い「マグマ……パーンチ!!!」ドゴォ

魔王「―――所詮は魔法か。少し魔力を流すだけで簡単に相殺できるな」

魔法使い「ウソ……」

ドラゴン「下がれ!!!」

魔王「逃がさん!!!」

魔法使い「ひっ……!?」

ドラゴン「―――ドラゴンテール!!!」パシンッ

魔王「ぬお!?」

僧侶「(その尻尾、武器にもなるんですね)」

ドラゴン「普通はしない」

魔王「……」

魔法使い「た、助かったわ」

ドラゴン「余計なことはするな」

魔法使い「できると思ったのよ……」

ドラゴン「考えなしに行動するところ、勇者に注意されたことはないのか?」

魔法使い「う……」

魔王「ハァァァァ!!!!」ゴォォォ

ドラゴン「ふんっ!!」

魔王「……どうやら、お前は無敵のようだな」

ドラゴン「……」

魔王「その背中に出来損ないの術士がいるな?」

ドラゴン「だったら、どうする?」

魔王「そやつから先に―――殺す!!」シュッ

ドラゴン「離れろ!!!」

僧侶「わぁ!!」バッ

魔王「―――やはり貴様かぁ!!!」

僧侶「うぁ―――」

ドラゴン「させるかぁぁぁぁ!!!!」ドゴォ

魔王「力比べか……!!完全復活を遂げた我に勝てるとでも……思っているのかぁ!!」ググッ

ドラゴン「そんなこと微塵も思わないな。貴方は……魔族の王……最強でなければならない……!!!」ググッ

魔王「分かっているようだな……ならば……」スッ

魔法使い「危ない!!」

僧侶「ゴンちゃぁん!!」

魔王「―――弾け飛べぇぇぇ!!!!」

ドラゴン「しまっ―――」

ドォォォォォン!!!!!

魔法使い「くっ……!!」

僧侶「きゃぁぁ!!!」

勇者「爆発……!!」

エルフ「でかい……」

勇者「急いで戻りましょう!!」

エルフ「うん!!」

勇者「にしてもキラちゃん、キスしたら目覚めませんか?」

エルフ「だから、そんな機能無いってば。一番いいのは一時的に起動させて、ガーちゃん本人に適当な生命体を殺させることなんだけど」

勇者「周囲には腐るほどいますが」

エルフ「弱ってないとダメだよ。戦っている最中にエネルギーが切れちゃったら洒落にならないし」

勇者「どっちにしても危機であることは間違いないですね」

エルフ「うん」

勇者「キラちゃん……俺の愛情で奇跡的な起動とか……」

キラーマジンガ「……」

勇者「ないかぁ!!」

エルフ「ガーちゃんは機械兵士なんだから、ちゃんとした手順を踏まないとどうやっても動かないってば」

勇者「くそぉ!!目覚めのキッスはいらんのかぁ?!」

エルフ「だからぁ」

勇者「……」ピタッ

エルフ「ど、どうしたの?」

勇者「……」

エルフ「え……?―――ドラゴン様!?」

魔王「ふふふふ……ふはははははは!!!!!」

僧侶「ゴンちゃん!!」ダッ

魔法使い「ダメ!!」ガシッ

魔王「―――砕けろぉ!!」

ドォォォン!!!

僧侶「きゃぁ?!」

魔法使い「危ないでしょう?!」

魔王「さぁ、どうする?お前たちの主力が倒れたぞ?」

僧侶「ゴンちゃん……ゴンちゃぁぁぁん!!!」

ドラゴン「ぅ……ぉ……」

勇者「キラーマジンガの起動、お願いします」

エルフ「でも……魔物が……」

勇者「……」

エルフ「待って。ドラゴン様を……?」

勇者「……」

エルフ「嘘だよね?」

勇者「時間がないのです」

エルフ「嫌だ!!」

勇者「しかし!!他に方法がない!!!」

エルフ「そんなの魔王と一緒だよ」

勇者「……っ」

エルフ「ボクは反対だよ、そんなの。―――そんなことするなら、軽蔑する。ボクの好きな勇者じゃないもん」

勇者「じゃあ、どうしたら……」

エルフ「それは……」

勇者「とにかく、ドラゴンをあのままにはできません。治癒をお願いします。僕がなんとか魔王の気を逸らしますから」

勇者「魔王!!!」

魔王「……来たか」

僧侶「勇者様!!ゴンちゃんが!!」

勇者「いい加減にしろよ……!!俺の女に何度手を出すつもりだぁぁぁぁぁ!!!!!」

魔法使い「もっと言ってやって!!」

魔王「ふん……我に歯向かうものは全て処刑だ」

勇者「貴様にそんな権利なんてないだろうがぁ!!!」

魔王「我は魔族の王!!!世界を統べる王だ!!!兎の毛ほどの小国で満足するようなニンゲンとは違う!!」

勇者「そんな人間相手に熱くなってる時点で器が知れるな」

魔王「……」

勇者「お前なんか足下が見えていない、独活の大木だぜ」

魔王「……ふふ……くくく……」

勇者「なんだ……」

魔王「安い挑発だな。―――何をしようとしているのか、手に取るようにわかるわぁ!!!」バッ

エルフ「なっ?!」

魔王「ドラゴンの治癒など……させるかぁぁぁ!!!!」ゴォォォォ

エルフ「壁よ!!」キュゥィィン

魔王「ふははははは!!!耐えられるのかぁ!!!」

エルフ「がっ……!?無理……かも……」

勇者「それ以上はぁぁぁぁ!!!!」ダダダッ

魔王「ふん」ブゥン

勇者「つっ!?」

魔王「貴様らでは我には勝てない。何故、それが分からん」

エルフ「うぐぐぐ……!!!」

魔法使い「助けなきゃ!!」

魔王「できるのか?」ゴォォォォ

魔法使い「まじぃ?!」コォォォ

魔王「我の炎すらも受け止めるか……実に面白いニンゲンだな……」

魔法使い「まりょ……く、がぁ……!!」

僧侶「……ここは……私が……」

勇者「やめろ!!!」

僧侶「……っ」ビクッ

魔王「……」

勇者「魔王……これがなにか分かるな……」チャカ

魔王「魔法銃か……」

エルフ「あっ……はぁ……はぁ……」

魔法使い「し、死ぬかと思ったわ……」

僧侶「ゴンちゃんの治癒を!!」

エルフ「分かってるよ!!」

勇者「これで終わりにしてやる」

魔王「ぬ……」

勇者「……」

魔王「……」

勇者「くらえぇぇぇ!!!!」グッ

魔王「今の我ならば受け止められる!!―――壁よ!!!」

カチンッ

勇者「……」

魔王「……」

勇者「……」カチッカチッ

魔王「……ほう?」

勇者(やっぱり弾切れだったか……)

魔王「どうやらこれで我の勝利はより確実なものとなったな」

勇者「みたいだな」

魔王「覚悟は……できたな?」

勇者「みなさん!!カバーを!!!」

僧侶「は、はい!!」

魔法使い「作戦は?!」

勇者「えーと……特にありません」

魔法使い「ちょっと……!?」

勇者「もう……勝機は殆どありませんから……」

僧侶「勇者様……」

魔法使い「……」

勇者「やはり……人間では魔王になど勝てなかったのです……」

魔法使い「殆どっていったわね?」

勇者「……」

魔法使い「まだあるんでしょ?勝つ方法が!!それを試しなさいよ!!」

僧侶「勇者様!!私たちはどんなに無茶なことでもやりますから!!」

勇者「キラちゃんが目覚めれば……あるいは……」

魔法使い「どうすればいいの?」

勇者「起動させるためには大量の魔力が必要です。その後で生命エネルギーもいります」

僧侶「魔力は?」

魔法使い「私のはもうスッカラカンよ?」

僧侶「私は抱きつけば魔力を送ることもできますが、少しずつなので時間がかかるかと……」

勇者「だから……絶望的なんです……」

魔法使い「ごめんなさい……最後まで役立たずで……」

勇者「とりあえず両名とも僕に抱きついてくれますか?」

僧侶「え?」

魔法使い「こんなときに何言ってるのよ!?」

勇者「最後のお願いです」

魔法使い「もう……」ギュッ

僧侶「勇者様……」ギュッ

勇者「ぬほほぉ……これが……最後に味わう抱擁……」

魔王「終わりだ……!!」

勇者「好きにしろ」

魔法使い「……っ」ギュゥゥ

僧侶「うぅぅ……」ギュゥゥ

勇者「む……そんなに胸を押し付けて、興奮するじゃないですか。貴女もお尻がたまりませんなぁ」ゴソゴソ

魔法使い「きゃぁ?!どこ触ってるのよ!!」

勇者「……大事にしてくれて、感謝します」

魔法使い「え?」

エルフ「まずい……治癒が追いつかない……」パァァ

ドラゴン「もういい」

エルフ「でも!!ドラゴン様!!」

ドラゴン「もう……俺は駄目だ……それよりも……人形をもってこい……」

エルフ「ドラゴン様……」

ドラゴン「俺の命だ……好きなようにさせろ……」

エルフ「……」

ドラゴン「あの人形は俺のために働いた……その褒美はいるだろう……」

エルフ「……わかりました」

ドラゴン「はやくしろ……勇者が……」

エルフ「ガーちゃん……いくよ……んっ……!!!」

ドラゴン「はぁ……はぁ……」

キラーマジンガ「―――おはようございます」

ドラゴン「おお……」

キラーマジンガ「マスター……代理ですね。どうしたのですか?酷い外傷です。早急な治療を推奨いたします」

エルフ「ガーちゃん……良く聞いて……」

キラーマジンガ「なんでしょうか?」ズイッ

エルフ「ちかい……」

ドラゴン「俺を殺せ。木偶人形」

キラーマジンガ「……殺す?何故ですか?理由がありません」

ドラゴン「後ろを見ろ」

キラーマジンガ「……状況、把握しました」

ドラゴン「俺を殺し、お前の力に変えろ。そして、勇者と共に魔王を……討て……」

キラーマジンガ「マスター代行とはいえ、私がマスターを手に掛けることは許されません」

ドラゴン「やれ……」

キラーマジンガ「できません」

エルフ「そ、そんな……でも、今のままじゃあ、ガーちゃんはすぐに機能停止になっちゃうよ?!」

キラーマジンガ「これは私の意志です。できません」

ドラゴン「―――俺はもう死ぬ……だがな……無駄死にだけはしたくない……。俺が死ぬことで勇者を守れるのなら……そう死なせてくれ……」

キラーマジンガ「……」

魔王「勇者ぁ!!!貴様が消えれば……我の天下となるのだぁぁぁぁぁ!!!!!」ブゥン

勇者「二人ともはなれて!!」ドンッ

僧侶「わっ?!」

魔法使い「ちょっと!!無茶よ!!!」

魔王「ハァァァァ!!!」

勇者「なんのぉ!!!」ギィィン

魔王「そのような鈍らで何ができる!!!」ボキィ

勇者「ふっ!!」バッ

魔王「燃え盛れ!!!」ゴォォォ

勇者「―――甘い!!」ズバッ

魔王「つっ!?」

勇者「剣はもう一本あるんだよ!!」

僧侶「あ、私の……いつのまに?!」

魔王「非力よな……ふんっ!!」ボキィ

勇者「よくも……!」

魔王「これで―――」

勇者「―――おわりだぁぁぁぁ!!!」ギラッ

魔王「貴様!?」

勇者「突き刺されぇぇぇぇぇ!!!!」

グサッ!!

魔王「ガァァァァァアアアアアァァァァァア!!!!!!」

勇者「キャプテンと同じ痛みを思い知れ!!!」

魔王「おの……れぇぇぇ……我の目を……そのような玩具でぇぇ……!!!」

魔法使い「あれは……私のナイフ……」

勇者「はぁ……はぁ……」

魔法使い「……」

僧侶「勇者様!!」

魔王「ぐ……ふふ……これが……精一杯なのだろう……!!!」

勇者「はぁ……はぁ……はぁ……まだ……立つのか……」

魔王「―――この程度で図に乗るなぁぁ!!!」ザンッ!!!

勇者「がぁ……」

魔王「ふふふ……ふはははは……!!」

僧侶「勇者様ぁ!!!」

魔法使い「いや……」

勇者「あ……ぁ……」ヨロッ

勇者(傷が……深すぎる……)

僧侶「勇者さ―――」

魔王「お前も……目障りだ!!!」ゴォォォォ

魔法使い「どいて!!」ドンッ

僧侶「え―――」

魔法使い「アァァァァァ―――!!!!!」

勇者「やめろぉぉ!!!」

僧侶「きゃぁぁぁ!!!!」

魔王「ふははは……ここまでやるとはな……驚いたぞ。だが……万策尽きな……」

勇者「かっ……ぁ……くそっ……」

魔王「ドラゴン……」

ドラゴン「……」

エルフ「はぁ……はぁ……」

魔王「ふん……治癒が間に合わなかったか……」

エルフ「……」

勇者(意識が……)

魔王「ここで終幕だな。楽しかったぞ……ふはははは……」

勇者「まて……」

僧侶「いやです!!私のせいで……こんな……こんなぁ……!!」ギュゥゥ

魔法使い「ぅ……」

魔王「仲良く海の底で戯れていろぉ!!!」

キラーマジンガ「―――錆びるのでお断りさせていただきます」

魔王「!?」

キラーマジンガ「最終目標補足。魔王……私は貴方を倒すために生まれた機械兵士」シャキン

魔王「貴様は……魔道士の……」

キラーマジンガ「はぁ!!!」ザンッ

魔王「ぐぉ!?」

キラーマジンガ「……」

魔王「あやつめ……我を暗殺し、魔王の座を狙っていたというのは本当だったか……」

キラーマジンガ「覚悟して頂きます」

魔王「それはできんな!!!」バッ

キラーマジンガ「あ……」

魔王「一先ず退くとしよう……!!」

勇者「それは……ぁ……!!」

エルフ「ここで逃げられたら……終わる……!!」

魔王「我は負けん……負けるわけにはいかぬ!!!」

キラーマジンガ「逃がしません」バッ

魔王「くるなぁ!!化け物めぇぇ!!」ゴォォォ

キラーマジンガ「―――はぁぁぁぁ!!!」ギラッ

魔王「なんだと―――!!」

キラーマジンガ「成敗」ザンッ

魔王「がはっ……?!」

勇者「……」

僧侶「ジーちゃん……」

エルフ「やった……?」

魔法使い「うぅ……っ……」

魔王「おのれぇ……オノレェェェ……!!!」

勇者「もう一撃だぁ……!」

キラーマジンガ「了解」

魔王「―――遅いわぁ!!!」スッ

キラーマジンガ「!?」

ドォォォォン!!!!

エルフ「ガーちゃぁん!!!」

魔王「機械兵士までいるとはな……ふふふふ……態勢を立て直すしかあるまい……」

勇者「まて……に、げるなぁ……」

魔王「ここまでの深手を負わされるとは……あやつの機械兵士……侮れぬ……な……」

エルフ「魔王……まて……」

勇者「くそ……」

魔王「ふふふ……また相手になってやろう……今度会うときは更なるエネルギーを蓄えて……」

勇者「まてぇ……!!」

ドラゴン「―――魔王」

魔王「なに……」

ドラゴン「往生際が悪いな……」

魔王「死にぞこないがぁぁ!!!!」

ドラゴン「逃がしはしない!!!」ガシッ

魔王「ぬぉ!?」

ドラゴン「勇者よ!!キラーマジンガはもう限界だ!!!お前が立ち上がらせろ!!」

勇者「俺も限界だけど……」

僧侶「勇者様!!手を!!」

勇者「あ……あぁ……」ギュッ

勇者「よし……これで少しは動ける……」グッ

僧侶「勇者様、急いでください!!」

勇者「ああ……わかってるよ」

勇者「キラーマジンガ!!」グイッ

キラーマジンガ「パパ……お腹が空きました」

勇者「あそこに飯があるぞ」

キラーマジンガ「……」

魔王「おのれぇぇ!!!」ガッ

ドラゴン「勇者よ!!早くしろ!!!」

キラーマジンガ「パパ……」

勇者「走れるか?」

キラーマジンガ「無理です」

勇者「じゃあ、早く乗れ!!」

キラーマジンガ「よっと。―――合体!!勇者マジンガ!!」

勇者「ネーミングセンスねえな!!―――いくぞぉぉ!!」ダダダッ

魔法使い「おぶって……つっこむき……?」

僧侶「いけー!!」

勇者「アァァァァァ!!!!」ダダダッ

キラーマジンガ「エネルギー値限界です」

勇者「気合で我慢だ!!!」

キラーマジンガ「スパルタパパ……好きじゃない……」

魔王「くぅぅぅ!!!!」

ドラゴン「最後だ……魔王……!!!」

魔王「なぜだぁぁ!!!何故ニンゲンに加担する!!!」

ドラゴン「俺はニンゲンに手を貸した覚えはない!!」

魔王「我が……我が死んでもぉぉぉ―――!!!」

勇者「やれぇぇ!!!」

キラーマジンガ「一刀両断っ」

魔王「オォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!」

―――ザンッ!!!

魔王「ガァ……ァァ……」

勇者「はぁ……はぁ……」

キラーマジンガ「……」

ドラゴン「魔王……様……」

魔王「死なぬ……我……は……しな―――」

僧侶「……」

魔法使い「……たお……したの……?」

エルフ「魔王……」

勇者「はぁ……はぁ……はぁ……」

キラーマジンガ「エネルギー補給完了しました」

エルフ「勝った……んだ……」

魔法使い「や、やった……のね……?」

僧侶「私たちが……魔王を……!!」

ドラゴン「ああ……魔王は倒れた……我々の手によってな……」

勇者「ふっ……ふふふ……はははは……やった……ついに……やったんだ……」ガクンッ

魔法使い「大丈夫?!」

勇者「腰が抜けました……」

ドラゴン「情けないな」

エルフ「そういうドラゴン様も足がガクガクしてますけど?」

ドラゴン「これはあれだ……8ビートを刻んでいるだけだ」

キラーマジンガ「全然8ビートではありません」

僧侶「勇者さまー!!!」ギュッ

勇者「おぉ?!」

僧侶「やったのですね!!私たち!!!」ギュゥゥゥ

勇者「はい……やりました。僕たちの勝ちです」

僧侶「勇者様……夢みたいです……私……私……!!」ギュゥゥ

勇者「ええ……まさか、本当にここまでこれるとは……っと、僕は初めからこうなることが分かっていましたけど」キリッ

魔法使い「腰が抜けた状態でいわれてもかっこよくないわよ。―――ほら、手」

勇者「ど、どうも……」ギュッ

魔法使い「お疲れ様……かっこよかったわよ?」

勇者「でも、殆どキラちゃんの活躍によるものですし」

ドラゴン「そうだな……。俺を殺していれば、もう少し楽に勝てたものを」

キラーマジンガ「最終的な決断は自分の意志で下してもいいと言ったのはマスターです。私はそれに従いました」

ドラゴン「まぁ……な……」

キラーマジンガ「私にも譲れないモノがありますから」

エルフ「まるでニンゲンみたいだね、ガーちゃんは」

キラーマジンガ「それは最高の褒め言葉です」

ドラゴン「周囲にいた魔物も撤退しているようだな」

キラーマジンガ「はい。魔物の反応が遠ざかっていきます」

僧侶「勇者様、これからどうされるのですか?」

勇者「まずはキャプテンの治療を行いましょう」

魔法使い「勝利の余韻に浸っている場合じゃないのね」

勇者「魔物が襲ってこないとも限りません。疲れているとは思いますが、お願いします」

僧侶「分かりました」

ドラゴン「この船も時期に沈む。移動しよう」

―――海賊船 医務室前

船長「キャプテンはどうなったんだよ?!」

エルフ「右目はもう……駄目だったよ」

勇者「どうにもならないと?」

僧侶「神経がやられていました。傷を癒すことはできても……そこまでは……」

船長「そんなぁぁ……!!!」

勇者「面会はできますか?」

僧侶「はい。まだ、意識は戻っていませんが」

勇者「では、失礼します」スタスタ

船長「俺も面会する!!!するぞぉぉぉぉ!!!」

エルフ「騒がしいから貴方はダメ」

船長「なんだとぉ!!」

僧侶「キャプテンさんの体に障りますから」

船長「キャプテェェェン!!!!」

エルフ「大人しくしててよ!!」ドガァ

―――医務室

勇者「……あ」

キャプテン「ダーリンじゃないか……」

勇者「気がついたのですね」

キャプテン「どうだい?眼帯つけて……海賊らしくなったろ?」

勇者「……」

キャプテン「こっちのほうが……かっこいい……ね……」

勇者「貴女の美しさは損なわれていませんよ」

キャプテン「……」

勇者「貴女は綺麗です」

キャプテン「ほ、本当だろうね……?」

勇者「勿論」

キャプテン「じゃ、じゃぁ……こんな……顔でも……あたしを……お、お、およめに……してくるの……?」モジモジ

勇者「拒む理由がどこにありますか。むしろ、こちらから頭を下げて懇願したいぐらいです」

キャプテン「も、もう……ダーリンの……そ、そういうところが……あ、あたしは……好きだ……ぞ……」

―――甲板

少女「……沈んでいく」

キラーマジンガ「……」

魔法使い「魔王の最後ね。船を一緒に海の底か……」

少女「これでよかった……これで……魔族も変わる……」

キラーマジンガ「私にはよくわかりませんが、マスターがそういうのでしたらきっと変わるのでしょう」

魔法使い「でも、新しい魔王がいないと魔族が混乱しちゃうんじゃないの?」

少女「だろうな」

魔法使い「どうするの?」

少女「まだ分からない」

キラーマジンガ「マスターが新魔王になるべきでは?」

魔法使い「あ、それいいわね。私も応援するわよ?」

少女「馬鹿いうな。俺は裏切り者だぞ。そんなことをすれば余計な混乱を生むだけだ」

魔法使い「そうかしら?」

少女「そうだ。それに……俺にはできないな……統治なんて……」

―――夜 甲板

勇者「……」

少女「勇者よ」

勇者「どうしました?」

少女「俺は何も感じないが、夜は冷えるのだろう?中に入ったらどうだ?」

勇者「……」

少女「……どうした?」

勇者「もうそろそろ来るかなと思っています」

少女「誰がだ?」

勇者「僕は魔王を殺してしまった」

少女「おい」

勇者「きっと僕は魔族に恨まれている」

少女「……」

勇者「このままじゃ……また、繰り返すだけ……」

少女「お前……まさか……」

勇者「……」

少女「まて……!!」

勇者「来たようです」

少女「?!」

キマイラ「―――ここに居たか」

勇者「船を直接狙ってこなかったのは、感謝するべきですね。紳士的な対応に感服する次第です」

キマイラ「……」

少女「おい……やめろ……!!」

勇者「俺も復讐から始めたようなものだった……」

少女「勇者!!考え直せ!!こいつ程度なら俺が―――」

勇者「俺にだって親友や最愛の人はいた……魔王はそれを全て奪った……」

勇者「だから、死んで当然だって思っていた」

少女「勇者よ!!目を覚ませ!!」

勇者「でも……それは……魔族だって同じだった……。ドラゴンのように……仲間のために苦心し、涙を流せるなら……」

勇者「魔王を倒せば俺は誰かに恨まれる……。終わらない……何も解決しない……」

キマイラ「では、どうする?」

勇者「俺一人の命で済むか?」

キマイラ「大人しく殺されるのなら」

少女「やめろ……!!」

キマイラ「ここで殺せばまた戦火は広がるな」

ドラゴン「―――やめろぉ!!!」

勇者「でも、俺を殺さないと気がすまないだろ?」

キマイラ「勿論だ」

勇者「ドラゴちゃん」

ドラゴン「勇者……」

勇者「これで復讐は終わりです」

ドラゴン「なぜだ……!!」

勇者「俺で終わりにする……そう決めたのです……ずっと前に」

ドラゴン「間違っている!!!」

勇者「俺は人知れず死ぬのです。何人もの女性を口説き、収集がつかなくなったから蒸発した。そういうシナリオです」

キマイラ「では、こい」グイッ

勇者「ああ」

ドラゴン「まて……!!」バサッバサッ

勇者「ドラゴちゃん」

ドラゴン「行かせはせんぞ……!!」

キマイラ「本調子ではないのでしょう、ドラゴン様?」

ドラゴン「ぐっ……」

勇者「ドラゴちゃん!!」

ドラゴン「な、なんだ!?」

勇者「僕は死なない」

ドラゴン「ふざけるなぁ!!!」

勇者「可愛い側室がいっぱいいるんだ。必ず帰ってくるよ」

ドラゴン「やめろぉぉ!!!」

勇者「おかしいなぁ、僕を信じられないの?」

ドラゴン「当然だ!!」

勇者「そもそも僕は女性陣の裸を見たことがないんですよ?それを見ないまま成仏は不可能」

ドラゴン「嘘をつくな!!」

勇者「あ、キラちゃんのはバッチリ見ちゃったな。確かに」

ドラゴン「そういうことじゃない……!!」

勇者「しかし、君の裸も見てないので、見るまで殺されても死ねないですよ、いや、本当に」

ドラゴン「いい加減に……!!」

キマイラ「今のドラゴン様では勝てませんよ」

ドラゴン「ふざける―――」

勇者「戦うな。君が戦い、傷ついたら、僕はまた剣を抜かなければいけない。そうなれば泥沼の消耗戦になる」

ドラゴン「残される者たちのことを考えろ!!!」

勇者「自分勝手な勇者で……本当に申し訳ありません」

ドラゴン「帰ってくるんだ!!!」

勇者「みなさんによろしく……貴女も牙を剥くことはもうしないください……僕からの最後のお願いです……」

キマイラ「失礼します」バッ

ドラゴン「ふざ……けるなぁぁぁぁ!!!!!!!」

魔法使い「―――どうしたの!?」

僧侶「え?え?敵襲ですか?!」

エルフ「何かあった?」

少女「……」

キラーマジンガ「マスター?」

キャプテン「なんだい、うるさいねえ……」

少女「魔王の残党が……来ただけだ」

魔法使い「そいつは?」

少女「俺が追い払った」

キャプテン「なんだ、それだけかい。―――あたたた」

僧侶「寝ていないとダメですよ」

キャプテン「そういうわけにもいかないだろう。ダーリンが大仕事をこなしてくれたんだ。あたしが休んでるわけにもいかないよ」

魔法使い「どうせ、港に帰るまでは何もできないでしょ?」

キラーマジンガ「休養は重要です」

キャプテン「はいはい……分かったよ……うるさいねえ……」

少女「……」

エルフ「ドラゴン様?」

少女「なんだ?」

エルフ「……何か……あったのですね?」

少女「……」

エルフ「あの……」

少女「勇者は去った」

エルフ「え……」

少女「もう帰ってはこないだろう」

エルフ「ど、どういうことですか?!」

少女「だが、必ず帰ってくるとも言った……」

エルフ「は……?」

少女「だから……俺は待つことにする……勇者の凱旋を……」

エルフ「どこに……行ったのですか……」

少女「奴の決意を無駄にはできない……」

―――翌日

魔法使い「あれ?あのタラシは?」

エルフ「……」

少女「奴ならこの船から降りた」

僧侶「えぇ?!」

キラーマジンガ「海に飛び込んだのですか?」

少女「色々な女性を口説きすぎて、故郷に帰ったあとのことが怖くなったと言っていた」

魔法使い「はぁぁぁぁぁ?!」

キラーマジンガ「パパの側室は私を含め7人いました」

僧侶「あの……」

キラーマジンガ「しかし、側室であれば別に問題はないように思えますが」

魔法使い「何が側室よ!!ふざけんじゃないわよ!!私はそんなの認めてないわ!!」

キラーマジンガ「そういうわれましても」

少女「とにかく奴は去った。探すなら探せばいい」

魔法使い「誰が探すのよ!!あんなやつ!!」

―――甲板

魔法使い「ボートは?」

キャプテン「んなもんでこの大海原に出る気かい?」

魔法使い「聞いただけよ」

キャプテン「ダーリン……どこいったのかねえ」

魔法使い「新しい側室でも探しにいったんでしょ」

キャプテン「本当にそう思ってる?」

魔法使い「……ふん」

キャプテン「何か一言ぐらいあってもよかったのにねえ」

魔法使い「ホントよ……。私物は全部置いていくとか……誰が管理すると思ってるのよ」

キャプテン「あたしがするよ?」

魔法使い「え?」

キャプテン「ダーリンの服とかあるんだろ?―――あー、毎晩匂いを嗅ぎながら……ふふ……」

魔法使い「だめよ!!何いってんのよ!!」

キャプテン「あたしに任せておけばオールオーケーさね」

―――客室

僧侶「勇者様……何か置手紙でも……」ゴソゴソ

エルフ「……無いと……思うけど……」

僧侶「どうしてですか?あの勇者様ならきっと何を残しているに違いありません」

キラーマジンガ「はい。パパはふざけた人でしたが、とても訳もなく失踪するとは考えにくいです」

エルフ「それはだから、女性関係が煩わしくなったから……」

キラーマジンガ「話は伺いました。誰もパパとは肉体関係がないとか」

エルフ「そ、そりゃないよ!!」

僧侶「残念ながら……ありません……」

キラーマジンガ「誰とも一線を越えてはいません。その程度で煩わしく思うような人物ならば、最初から手当たり次第に口説こうとはしないはずです」

エルフ「ガーちゃん……」

キラーマジンガ「と、恋愛マニュアルに書いてありました」

エルフ「誰の本?」

キラーマジンガ「パパのです」

エルフ「あぁ……そう……」

僧侶「あ……」

キラーマジンガ「便箋ですか?」

僧侶「これは……姫様のラブレター……」

エルフ「なんて書いてあるか見る?」

僧侶「でも……」

キラーマジンガ「何か手がかりがあるかもしれません」

僧侶「そ、そうですね……よ、よし……」

僧侶「えい!!」ペラッ

キラーマジンガ「なんと書かれていますか?」

僧侶「えっと……昨夜はご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした―――」

―――きっと約束を守ることはないでしょう。勇者様の言葉の奥、そして見つめる先には尋常ならざる覚悟があるようでした。

こう書くと失礼ではあるのですが、私には勇者様が生への執着を捨てたようにしか見えませんでした。

もしも、貴方が平和のために、他人のために命を捨てるつもりなのであれば、思いとどめて欲しいです。

私は貴方を愛しています。貴方自身の犠牲で紡がれる未来など私はいりません。

死なないで。絶対に。

―――甲板

少女(目に映るもの全てを守るとは……こういうことだったのか……?)

少女「お前は愚かだ……これから先……誰が守ってくれるというのだ……」

魔法使い「ねえ」

少女「どうした?」

魔法使い「他に何か言ってなかったの?」

少女「気になるのか?」

魔法使い「野垂れ死にされたら……夢見が悪いでしょ……」

少女「ふん……少なくとも野垂れ死にはしないだろう……」

魔法使い「そうなの?」

僧侶「―――大変です!!!」

魔法使い「どうしたのよ?」

僧侶「ゆ、ゆ、勇者様は……!!!」

魔法使い「なに?」

僧侶「し、し、死ぬつもりだったんですよ!!!」

魔法使い「は?」

僧侶「こ、これを!!」

魔法使い「これ……姫様の手紙じゃない……」

少女「……」

魔法使い「え……」

僧侶「きっと、姫様には最後の挨拶を済ませていたのではないでしょうか?」

魔法使い「でも……死ぬって……」

僧侶「敵討ちの連鎖を……止める為に……では……?」

魔法使い「連鎖って……」

僧侶「魔王を倒したのですから人間は魔物から恨まれます。勇者様はそうさせないために……」

魔法使い「人間代表で生贄に……なったっていうの……」

僧侶「……どうなのですか?」

少女「それが正解だったとして、俺たちに何ができる?」

魔法使い「助けに行けば!!」

少女「助けに?勇者が命を賭けてまで全てのニンゲンを守ろうとしたのに、それを反故にするのか?」

魔法使い「そ、それは……」

少女「この話はこれで終わりだ」

僧侶「そんなのってないです!!」

少女「なら、行け。俺は止めない」

魔法使い「……」

僧侶「ゆうしゃ……さまぁ……」ウルウル

少女「これで終わりなんだ……世界は救われ、ニンゲンが魔物と争う理由も潰えたのだから……」

魔法使い「アイツは……最後まで自分勝手で……他人の気持ちなんて……何も考えなくて……!!」

僧侶「ゆうしゃさまぁぁ……ぁぁぁぁ……!!!!」

少女「見てみたかったな……勇者が統治するところは……」

魔法使い「なんでよ……どうして最後まで……何もかもを滅茶苦茶にしていくのよ……あの馬鹿は……!!」

僧侶「ゆうしゃさまぁ……ゆうしゃ、さまぁ……ぁぁ……!!」

魔法使い「もういいわ……あんな奴……大嫌いよ……世界で一番……」

魔法使い「きら……い……なんだから……」

キャプテン「―――島が見えたぞぉぉぉ!!!てめえら!!上陸の準備しなぁ!!!」

―――海賊の村

キャプテン「色々世話になったね」

エルフ「それはこっちのほうだよ。ありがとう」

僧侶「……」

キャプテン「大丈夫かい?」

魔法使い「ああ、平気よ。楽しかったわ。初めは……海賊なんて嫌な奴らだって思ってたけど……」

キャプテン「まぁ、昔も今も海賊は鼻つまみ者さ。まあ、これからは平和になるだろうし、漁業でもしようかねえ」

船長「手伝います!!キャプテン!!!」

海賊「うっす!!!」

キャプテン「たっりめーだよ!!!アンタたちはあたしに一生を捧げなぁ!!!」

少女「楽しそうだな」

キャプテン「船に乗りたかったらいつでも言って頂戴な。あんたたちなら大歓迎だからね」

キラーマジンガ「海はもうこりごりです」

キャプテン「そういうなって。特にキラキラちゃんの腕っぷしは買ってるんだからね」

キラーマジンガ「買ってもらっても困ります」

キャプテン「あっはっはっは!!じゃあ、またね!!元気でな!!」

魔法使い「ええ!貴女たちもね」

エルフ「さよなら」

キャプテン「絶対に遊びにくるんだよー!!!」

―――港町

魔法使い「え?ここに住むの?」

少女「ああ。悪くない場所だからな」

魔法使い「でも、どうして……」

少女「ここに居ればきっと様々な情報が入ってくるはずだ。それに海賊たちからも情報を仕入れやすい」

エルフ「情報って?」

少女「魔族の動きだ。新たな魔王が誰になるのか分からないが、不穏な動きはかならずあるだろう」

キラーマジンガ「マスターは迅速に対応するため、永住を決めたのですね」

少女「永住はしない。暫くの間だ」

キラーマジンガ「では、私はマスターの下で色々とお世話させていただきます」

少女「結構だ……といいたいが、まあ、頼む」

キラーマジンガ「はい」

魔法使い「ここでお別れね」

エルフ「今までありがとう。ガーちゃんには優しくしてね」

少女「分かっている。ああ、道中危険だろうから、キラーマンジガを連れて行け。それじゃあな」

―――フィールド

魔法使い「貴女はどうするの?」

エルフ「ボクは……どうしよう……」

魔法使い「里に帰るの?」

エルフ「うーん……それが一番いいかなぁ……」

キラーマジンガ「里に戻られると、こちらから会いにいくのは非常に困難ですね」

魔法使い「そうねー、見えないものね」

エルフ「あはは、そうだね」

僧侶「……」

エルフ「……でも、今更帰ったら、根掘り葉掘り色々聞かれそうで面倒かもね」

魔法使い「じゃあ、どうするつもりなの?」

エルフ「もう少し、みんなと一緒にいてもいい?」

魔法使い「勿論よ。ね?」

僧侶「……」

エルフ「ありがとう。嬉しいよ」

―――城下町

キラーマジンガ「では、ここまででよろしいですか」

魔法使い「護衛ありがとう。助かったわ」

キラーマジンガ「いえ、私も補給を兼ねていますから」

エルフ「ドラゴン様によろしく」

キラーマジンガ「はい」

魔法使い「貴女に言うのも変だけど……元気でね」

キラーマジンガ「はい」

僧侶「……」

魔法使い「なんとか言ったら?当分、会えないんだし」

僧侶「……今までありがとう……ございます……」

キラーマジンガ「こちらこそお世話になりました」

エルフ「またね、ガーちゃん」

魔法使い「マーちゃん、またね」

キラーマジンガ「はい。いつか必ず」

―――夜 宿屋

魔法使い「あー!!!もう!!報奨金が出ないってどういうことよぉ!!」

エルフ「世間では海賊艦隊の功績だから仕方ないね」

魔法使い「大金が手に入るはずだったのに」

エルフ「大金なんて手に入れてどうするつもりだったの?」

魔法使い「お店でもやろうかなって。もう、冒険はこりごりだし」

エルフ「商売か……」

僧侶「そうです!!」ガタッ

魔法使い「え?な、なに?」

僧侶「お花屋さんをやりましょう!!」

エルフ「薬草屋じゃなくて?」

僧侶「お花屋さんです!!なんとなく考えていました!!」

魔法使い「アイツのことで悩んでたんじゃないの?」

僧侶「いえ。勇者様が帰ってくるまでどう過ごそうかずっと考えていただけです」

エルフ「あぁ……そうなんだ……」

僧侶「がんばりましょうね」

魔法使い「お店をやるのはいいけど……資金は?」

僧侶「ないんですか?」

魔法使い「無いわよ」

エルフ「じゃあ、まずは資金を集めるところからだね」

魔法使い「どこで集めればいいかしら?」

僧侶「また傭兵として登録しておきますか?」

魔法使い「……そうね。まあ、そっちは片手間でいいけど」

エルフ「傭兵?二人とも傭兵だったの?」

魔法使い「あれ?言ったことなかった?」

僧侶「傭兵登録所で私たちと勇者様は出会ったのです」

エルフ「へえ……」

魔法使い「でも、魔王はいなくなったし……傭兵の需要なんてあるのかしら?」

僧侶「魔物がいなくなったわけじゃないですから、きっとありますよ」

魔法使い「私たちにあればいいわね……需要……」

―――数ヵ月後 傭兵登録所

魔法使い「暇ね……」

僧侶「今日の新聞ですよー」

魔法使い「んー……なになに……大漁船艦隊、密漁発覚か?……艦隊の首領は否認……」

僧侶「キャプテンさん、楽しそうですね」

魔法使い「トラブルも絶えないみたいだけどね」

僧侶「そういえばジーちゃんとゴンちゃんからも近況報告の手紙がきたんですよ」

魔法使い「なんだって?」

僧侶「最近、すごいことが舞い込んだとのことです」

魔法使い「すごいこと?」

僧侶「魔族の中で保守派と革新派が対立を始めたそうで。で、革新派のリーダーにゴンちゃんが選ばれたとか」

魔法使い「あの子、なんだかんだ言って魔族のために動いてるのね」

僧侶「ジーちゃんを秘書にするって書いてありましたよ?」

魔法使い「みんな……色々してるのね……」

僧侶「何も変わっていないの……私たちだけですね……」

エルフ「ただいまー。いやー、疲れた」

魔法使い「おかえりなさい」

エルフ「魔物は目的なくニンゲンを襲うようになったみたい。もう大変だよ」

僧侶「お忙しいようで羨ましいです」

エルフ「お花屋さん開業のためにバリバリ働かないとね」

魔法使い「ありがとう……でも、私たちにも仕事くれぇぇ……」ウルウル

僧侶「お願いしますぅ……」ウルウル

エルフ「ボクに言わないでよ!!」

魔法使い「そもそも私たちが魔王を倒したのに世間の風は厳しいわね」

僧侶「キャプテンさんばかりが記事になってましたからね」

魔法使い「はぁ……美味しい仕事……ないかしらねぇ……」

僧侶「そうですねえ……」

エルフ「なんか最近老け込んでない?」

魔法使い「老け込んでないわよ!!」

僧侶「ちょっとヤル気が起きないだけです!!」

受付「あーちょっといいですか?」

僧侶「はい?」

魔法使い「なぁに?」

エルフ「また仕事?ボクはパスだよ」

受付「ああ、いえ……それが……」

魔法使い「なによ?」

受付「魔法使いと僧侶とエルフ族を出せと言う人が今来ているのですよ」

僧侶「え……」

エルフ「ボクがエルフってことは……」

受付「もちろん公表なんてしてませんよ!!」

魔法使い「……ねえ、他に条件とかつけてこなかった?」

受付「すごく美人で有能なって言ってましたね」

僧侶「もしかして……!!」ガタッ

エルフ「そんな……こと……」

魔法使い「い、行きましょう?」

受付「―――お待たせしました」

「……おぉ!素晴らしい!」

受付「こちらの方々でよろしいですか?」

「ええ。勿論ですよ」

魔法使い「……」

「よろしくお願いします。いやー、実は知り合いが遠く離れた港町にいるらしいのですが、このご時勢一人で出歩くのは危険でして、はい」

僧侶「うっ……うぅ……」

「そこでとっても美人な傭兵を探してここにやってきたわけなんですよ。いやー、ここまで見事な美人だとは思いませんでしたが」

エルフ「……っ」

「短い間……いや、長い間、いやいや、一生涯、僕だけの傭兵になってもらいたいぐらいですね」

魔法使い「馬鹿じゃないの?」

僧侶「うぅぅ……うぇぇん……んっ……ぐすっ……」

エルフ「……話してくれるよね?今まで何があったのかぐらいは。こっちは本当に心配したんだから!!」

「それを語るにはまずはベッドインからしないとダメですね。でも、その前に……ただいま戻りました。みんなが大好きな元・勇者です」

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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:72bcEclW0編集削除
ツマンネ
2 . 名無しさん  ID:Oa.6EeXe0編集削除
ツマンネ
3 . 名無しさん  ID:1d4KV9B90編集削除
冒頭の6行目
『勇者「僕のヤル気が上がりますよね?じゃあ、魔王を倒す可能性もあがります」』
の、『じゃあ』 は 接続詞としてオカシイ。

【なので】【そこで】など
前記を理由とし 後記で結果/効果を示す 接続詞を。

『じゃあ』は 前記に対する 反論などを提示する接続詞。

その他いろいろ 可笑しなとこもあるけど ・・・で、めんどいので。
4 . 名無しさん  ID:0S2Bj0.T0編集削除
「テキスト」で面白かった事が無い
5 . 名無しさん  ID:pljDrROg0編集削除
意地でもやめないサイト主。
6 . 名無しさん  ID:fmgTOrmH0編集削除
だって過去記事をランダムに上げてるだけですし
7 .   ID:i3Zfuf5J0編集削除
まず国語を学び直せ
8 . 名無しさん  ID:1d4KV9B90編集削除
完読した女又は私を含め居いないだろ
文意など 使い方の間違いに、ダメだこりゃ と
20行で読み進めるの辞めた
demoコメしてあげるのに スクロールがタ〜イヘン(笑)
コメした者は努力の偉人。
9 . 名無しさん  ID:8P.s.zDI0編集削除
明日4時起きなのに3時間かかって今(22:48)読み終わった。
俺の貴重な睡眠時間返してくれ。
10 . 名無しさん  ID:r0r.1o9y0編集削除
>>3 セリフなんだから助詞云々関係ないだろ。
 ギャグマンがで頭痛が痛いとかぬかすキャラにいちいち文句言うのか。

あと誰かこのテキスト産業でry
11 . 名無し  ID:.G4Zj4TD0編集削除
長すぎ。なんだよ26って

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