いつもの空き地で、その二人は対峙していた。

のびた「ドラえもんを放せよスネオ」

スネオ「嫌だね、ほら、喋れよ狸」

スネオは足で踏み潰すようにドラえもんの頭部を踏みつけた

ドラえもん「のびた君・・・逃げて・・・」

そこには顔だけになったドラえもんが居た。



スネオ「アハハッ笑えるだろ?

こいつ顔だけでも喋ることが出来るんだぜ?」

のびた「スネオ、君はきっと悪い病気か何かにかかっているんだ
もうやめるんだ」

スネオ「嫌だね、こいつをぶっ壊したら次はノビタ、お前の番だ」

のびた「スネオ…」

のびたは何でこんなことになってしまったのか

今でもよく分からない

ここに、あまりにも過激な内容の為封印された幻のストーリーがある

タイトルは
劇場版ドラえもん「ドラえもん、ノビタの宇宙創世記」

その日、野比家に忍び込む一人の少年が居た。

少年はしっていた。今はのびたの部屋には誰もいないということを

スネオ「良し、今の内だ。ヘヘヘ、僕は賢いなあ本当に」

スネオは笑って、タイムマシンにその体を滑り込ませた。

そこで少年スネオは未来を見た。

中学、何の取り得もない僕は、お金を使って新しく出来た友達の気を引く。

高校、あまり可愛くはない彼女が出来る。

それでも僕は執心の様子、大好きだったみたいだ。

でも、金を有るだけ注ぎ込んだ挙句、振られる。

大学、金を使ってそこそこの大学に入る。

また彼女が出来る。外車を乗り回せばモテるんだ男って。

知らなかった。

卒業後、父の世話を受けて就職。

それなりに幸せな家庭を築き、
息子が産まれ、孫が誕生し、
そして、それなりに人を集めた葬儀で、僕は死ぬ。

スネオは悩んだ。

僕は何で、アイツに生まれなかったのかな。

僕には何でドラえもんがいない。

僕には。。。お金しかない。

それも与えられたもので、他には何も無い。何もないんだ。

金を除いてあいつは全てが揃っている。人望、将来、嫁。

憎たらしい、僕は憎くてたまらない・・・。

奪ってやる、あいつの全てをこの僕が・・・。

スネオは未来から帰ると、そのまま押入れへと向かい、
中からスペアポケットを取り出すと、
もしもボックスを取り出し、こう言った。

スネオ「もしも、僕が……僕の思い通りの世界になったらっっ」

ジリリリリ。ベルが鳴る。

「これで・・・・僕は神様だ」

ドラ「スネオ君は何処に行ったんだろうね?」

のびた「さあ、家にも居なかったから、

そんなことよりジャイアン何かイライラしてない?」

しずか「おばさんと喧嘩して飛び出してきたみたいなのよ」

ドラ「あらら、後が怖いぞ」

のびた「とばっちりを受ける前に退散しようか」

ジャイアン「おい、のびた・・・・」

のびた「ほら来た。な……なあにジャイア――」

その声を遮って、

突然出来た空間からタイムパトロールが現れた

一同「た・タイムパトロールっっ」

タイムパトロールの男A「見つけたぞ・・・・

おいガキども、時間が無いから良く聞けよ」

ジャイアン「なんだなんだよ、突然やってきて――ええっ」

Aはジャイアンに突然光線銃をつきつけた。

A「黙れ・・・クソガキ・・・」

A「一度しか言わないから良く聞け貴様らっっ
今、我がタイムパトロールは未来に発生した
凶悪な事件によってその機能を停止させている。
よって未来の道具を過去で悪用されたとしても
何の措置も取ることが出来ない。タイムマシンもその機能を停止している」

ドラ「ええっそれは大変だ・・・未来は・・・未来はどうなって・・」

A「お前に心配されることはない。未来は未来で片付ける。
だが、問題はお前らのいるこの時代のことだ」

ドラ「ど、どういうことですか?」

A「お前らの現在はこれから一種のパラレルワールドとなった。
平行世界、今我々のいる世界にはもう戻れない。
修正はきかない・・・この時代の不始末はお前らが責任を取れ」

ドラ「あの・・・言っていることの意味が・・・」

A「お前らのお友達がやらかしたんだよ・・・・
骨皮スネオ・・・よく知っているだろう?
今現在から彼が犯すその犯罪は国家反逆罪等
十四もの凶悪犯罪のデパートさ。」

しずか「そ、そんな・・・」

のびた「スネオが??嘘だ?」

A「これは最期通告である。
最悪の結末を防ぐ為に自ら犯した罪は自ら償え」

のびた「ぐ、具体的に、どうなるのこれから?」

A「それは身をもって知れ、
とにかくお前らがやるべきことは骨皮スネオを殺し、
奴の持っているもしもボックスを奪うこと、
そして世界を良い方向へと導くことだ」

のびた「言っている意味が分からないよ、もっと詳しく」

A「そんなことより、未来では既にセワシがその罪を問われようとしている
…そっちのポンコツと一緒にな」

ジャイアン「何だって?」

A「道具使用のキチンとした管理監督を怠るとは…
それでも貴様生活改善型だと言えるのかっ」

ドラ「す・・・すいません」

のびた「ドラ・・・えもん?」

しずか「ドラちゃん?」

A「まったく稀に見るポンコツだ。
他のロボットと違って貴様は青いしな」

のびた「うるさいっっ ドラえもんの悪口を言うな」

A「黙れっっ」

Aはのびたの頬に平手を一発見舞った。

のびた「イタっ」

ジャイアン「おい何すんだよおっさん」

A「ここまできてまだ理解出来ないのか?

ガキのおままごとはもう終わったんだよ・・・」

A「自立二足歩行型ロボR-TT102222023番」

ドラ「は、はい」

ドラえもんは不細工な起立をした。

A「遵法精神、二番。唱和しろ」

ドラ「は、はい。遵法精神五番、僕達・・・
いえ私達、生活改善を目的とする自律二足歩行型ロボットは
強力な道具を使うに際し、常に最善の注意を払うことっっ」

A「キチンと覚えているじゃないか・・・ポンコツ・・・」

ジャイアン「さっきから何なんだよ」

A「うるさいぞ。どうせお前らの世界はお仕舞いだ。
此処で貴様らガキどもを腹立ち紛れに殺したとしても
誰も分かりやしないんだからな・・・言葉使いに注意しろ・・・」

Aは光線銃で狙いをつけるようにして言った。

A「このポンコツとお前の友人の手によって世界が狂うんだぞ・・・
その重みを友人を殺すことで贖え。健闘は祈らない。
俺は責務は果たしたからな。精々あがくんだな」

Aはそう言い残し、去っていった。

のびた「ド・・・ドラえもん」

ドラ「ハハハ、情けないところを見せちゃったね、
多分タイムパトロールの人達も
今大変なことになっていて余裕が無いんだろうね・・・」

しずか「ドラちゃん・・・」

ドラえもん「君に職業的な側面を知られることだけは
僕は避けたかったんだけど・・・」

ドラえもんはそう言うと、寂しそうに笑った。

のびた「な、何を言ってるのさ。
ドラえもんはドラえもんだよ。変わらないよ。
それに単に仕事だから……僕と付き合って――」

ドラえもん「そんなわけない、
僕はそんな感情を抱いたことは一度だってない」

のびた「分かってるよドラえもん、僕ら友達、いや親友だろ」

ドラ「ノビタ君・・・ううう・・・・」

ドラえもんは目に涙を溜めた。

ジャイアン「それにしてもよ・・・・

スネオが・・・犯罪者って本当かよ・・・」

しずか「殺せって・・・そんなこと出来るはずないわ」

ドラえもん「タイムパトロールはこの世界の全てを管轄する
警察機構なんだ。恐らく過去に戻ってやり直しが出来ない今、
未来を回避する手段が無いから・・・そんな過激なことを・・」

のびた「僕は絶対に認めないぞ。
スネオはきっと誰かに騙されているんだ。
だってドラえもん、あのスネオだよ。僕らの親友のあのスネオなんだよ」

ドラ「ノビタ君」

のびた「まだ、大丈夫だよ。
スネオから道具を取り戻せば。
その後で、話し合おうよ。皆で怒って、それで謝ったら・・・
許してあげようよ」

ドラ「そうだね…その通りだ・・・分かった」

しかし、ドラえもんはコトがそう単純でないことに気がついていた
あのタイムパトロールが匙を投げ、観測された未来が酷いものならば、
まず間違いなく、大惨事が待っている・・・

でも彼はそれをこの時、のびたに伝えることはしなかった――

とりあえず、道具の入手経路と思われる野比家へと戻る道中。

一同は不思議なことに気がついた。

しずか「静かね・・・」

ジャイアン「人がいなくなったみたいだ・・・」

ドラ「まさか・・・もう何かしらの事態が起きているのかもしれない」

のびた「急ごう・・・」

野比家――
家中に放り出された道具が散乱し、のびたは押入れで一通の手紙を見つけた。

少し時を前に戻し、タイムパトロールと一同が会っている間、
スネオは一人スペアポケットのなかから
ドラえもんに気づかれぬようにそっと道具類を運び出していた。

スネオ「ったく何だいこれ?ガラクタばっかいれやがって」

スネオは沢山ある道具を取り出し、放り投げていった

スネオ「ええと・・・あったあったこれも危ないや」

それはウソ800だった。
喋ったことがウソになるという、
あのドラえもんを未来から呼び戻した。
ある意味伝説の道具の一つである。

スネオ「ったくつくづく馬鹿が多いよなあ、
こんな宇宙の理から外れたもん普通に持ち歩きやがって
それでいて何とも思わないんだから」

続いて漁っていく中でスネオが手を止めたもの・・・

スネオ「これは…これも最強の道具の一つだけど、
面白い、これは置いておこう」

スネオは地球破壊爆弾をそっとその場に置いた。

スネオからの手紙の内容は以下のものだった。

ようのびた。

気づいたか知らないけれど、
ある人達を除いてはもうすでに皆この世にはいないよ。

もし、世界を元に戻したかったら
僕と勝負してよ。勝ったらもしもボックスで元に戻せば良い
まあいまから少し寄り道をしたあとに
空き地へと向かうつもりだから、
そこで君達に会えたら僕は面白くないから色々と提案をするだろうね
道具は好きなのを持ってきて使いなよ。多分意味無いと思うけどね
勘違いしてもらったら困るけれど、
僕はもう以前の僕じゃあないからね。

精々頑張って僕を倒して見せてよ

                   スネオ

ジャイアン「あの野郎・・・ふざけやがってっっ」

ジャイアンは怒り狂い、見慣れた道具をいくつか掴むと、

ジャイアン「お仕置きしてくる」

とだけ言い残し、とめるのも聞かずに
野比家を飛び出して行ってしまった。

のびた「ジャイアン・・・一人で行っちゃった・・・
早く追いかけないと・・・」

ドラ「でも・・・攻撃系は全部持って行ったみたいだね」

のびた「攻撃系?」

ドラ「ああ、道具には一応分類があるんだ
攻撃系、防御系、移動系って具合にね」

しずか「止められるかしら・・・?

ドラえもん「ちょっと待って・・・今から道具の整理をするから
二人とも手伝ってくれ・・・」

のびた「でも・・・早く追いかけないと・・・・」

ドラ「今は道具を整理することの方が大事だ・・・
最悪・・・ジャイアンはもしもボックスが戻れば・・・」

しずか「ドラちゃん・・・」

ドラ「あの人の言ったとおり、未来が確定しているなら、
それは滅多なことじゃあ覆らないってことだ・・・
僕らが生きていく未来は・・・僕たちで守らなきゃならない・・・」

空き地で、二人は睨み合っていた。

ジャイアン「スネオ、そのもしもボックス。俺に渡せ・・・」

スネオ「嫌だね・・・アハハ」

ジャイアン「痛い目みないとわからないらしいな・・・」

スネオ「残念だけど、こうなってしまった今。

ジャイアンはお呼びじゃないんだよ・・・」

ジャイアン「何だと・・・この野郎っっ」

ジャイアンは取り出した空気砲でスネオを撃った
砲弾は確かにスネオを捉え、命中した。

ジャイアン「へっ少しは反省したか?」

しかし、スネオは傷一つない姿で姿を現した。

スネオ「どうかしたの?」

ジャイアン「ど・・・どうなってる・・・?当たらなかったのか?」

スネオ「さあて・・・ね・・・道具の効果かな?」

ジャイアン「クソっ・・・」

スネオ「アハハハ、果たして僕に勝てるかな?」

スネオは楽しそうに笑った。

ジャイアン「ふざけんなよスネオ、俺が簡単にやられると思うか?」

スネオ「腕力だけのカスが……僕に勝てると思うなよ」

ジャイアン「クソッドカンッドカンッ」

空気の塊はスネオに命中しているはずだが、
ジャイアンにはまるで避けられているように見えた。

実際彼は無傷でゆらゆらと近付いてくる

スネオ「ふぅ・・・もういいよ・・・死ね」

スネオがポケットから取り出した

熱線銃を発射したその時、
ジャイアンはポケットから道具を取り出し、
その力をそのままスネオに跳ね返した
激しい光の後、スネオはジャイアンの目前から掻き消えた。

ジャイアン「はは…やった……やったぜーーーーーーーー
吹き飛びやがったざまあみろっっ
俺がジャイアーーーーーーーーーーーーーーンんんっっっ

ガキ大将だっっ」

スネオ「中々驚いたよジャイアン…
単細胞の君が、まさか攻撃系だけじゃないとはね?」

ジャイアン「なっっ」

ジャイアンは驚きに手にしていた道具を落とした。

スネオ「それ、見たことある形をしているね、
改良型山彦山か、一応防御系も持っていたか、中々危なかったよ」

ジャイアン「なんだその防御なんとかってのは」

スネオ「僕は未来へ行き、それなりに研究したんだよジャイアン
ドラえもんの道具を能力別に分類して呼称しているのさ
最も帰ってきたらタイムマシンは壊れたみたいだけれどね、
僕が君達に道具を残したのはね、
君達がヤル気を見せてくれないと困るからなんだよ
必要な道具は全てこちらが握っているのさ」

ジャイアン「な、何だって・・・?」

スネオ「さて・・・・・・・・・今度は僕の番だね・・・・」

ジャイアン「ま、待て・・・お前なんで怪我ひとつしてないんだ?」

スネオ「ああ、もしもボックスだよ。僕は不老不死で、
傷もつかない体になったのさ」

ジャイアン「な・・・ちょっと待てよ・・・なあ・・・」

ジャイアンは目の前にいる男から発せられる 禍々しい殺気にたじろいだ。

スネオ「命乞いかい?もう遅いよ。
じゃあ行くよ、瞬間的な破壊力はそうでもないものの、
この世の苦しみを全て集めた最強の拷問道具だっ
ジャカジャカジャカジャカ・・・・・・・・・・

ジャじゃーン出ました、百苦タイマーっっ」

ジャイアン「な、なんだよそれ」

スネオ「百分間に百の苦しみを与える道具だよ、素敵だろ、さっセットしなよ」

ジャイアン「だ、誰がそんなこと」

スネオ「するんだ。さあ・・・・・・」

ジャイアン「な・・・体が・・・・」

スネオが強く言うと、ジャイアンはその言葉の通りにタイマーをセットした。

スネオ「言い忘れていたよ、僕がキチンと思いを込めた
命令には誰も逆らえないんだ」

ジャイアン「なっっ」

スネオ「そう、初めから勝ち目なんて無かったんだよ・・・」

ジャイアン「スネオ・・・この野郎」

ジャイアンがスネオに飛び掛ろうとしたその時・・・・

ジャイアンは何も無いところで転ぶと、足を擦り剥いた。

スネオ「ふぅん・・・一分目は、こんなものか。」

ジャイアン「いてて、おいこの野郎」

ジャイアンはスネオの顔を殴るが、やはり、スネオには傷一つつかない。

スネオ「あーあ・・・いいのかな大事な一分を
そんな無駄なことに費やして・・・」

ジャイアン「ハァ・・・ハァ・・・黙れこの・・」

スネオ「二分目・・・」

ジャイアンは土管に顔を打ちつけた・・・
鼻からおびただしい量の血が流れる。

ジャイアン「イデェッ」

スネオ「因みに補足しておくとね、
この道具は元々修行僧が行という修行を行う為のものなんだ。
一般人なら十分も経てば死んでしまうだろうね」

ジャイアン「な・・・なんだって・・・」

スネオ「それでね、とても残念なお知らせがあってね・・・・
君、もう助からないんだよ。タイムマシーン壊れてるでしょ?

だから君・・・・・・もう絶対に死ぬんだよ」

ジャイアン「なっ嘘をつけこの野郎・・・」

スネオ「残念嘘じゃない。そうだ。お別れをしに行ったらどうだい?
実は最初僕、空き地へ行く前に
君としずかちゃんの家へ行ったんだよ」

ジャイアン「な・・・・」

スネオ「手紙置いて来たんだけれど呼んだ?
関係者だけは僕、生き残らせたんだ。優しいだろう」

ジャイアン「当たり前だ・・・何かしたら承知しねえぞてめえ」

スネオ「どの口が言っているのかな・・・三分目が経つよ・・・・」

ジャイアン「クソッ」

ジャイアンは空き地を飛び出した。

彼は母にどうしても伝えなくてはならないことがあった。

彼はその日、留守番を言いつけられ母と喧嘩し、家を飛び出してきていたのだ。

ジャイアン(謝らなきゃ・・・母ちゃんに謝らなきゃ俺・・・)

電柱が横から倒れ、ジャイアンの体を打った。

それは骨が軋むような痛みだった。

ジャイアン「か・・・かあちゃん・・・」

走り抜けるからだに襲い来る苦難はとても酷いものだった。

体中傷だらけになりながらも、彼は大急ぎで剛田商店へと向かった。

ジャイアンが建物を視界に捉えた時、

百苦タイマーが・・・十分目を刻んだ。

それは一瞬だった。

走り続け強張った筋肉、乳酸のたまった体に

それはジャイアンの腹部に突き刺さっていた。

どこから飛んできたのかも分からない尖った木材だった。

ジャイアン「あ・・・ああ・・・」

滴り落ちる血の量が、裂けた腹から飛び出た腸壁が、
もう彼の人生が長くないことを告げていた。

しかし、彼は歩みを止めなかった。

その木材を引き抜くと、吹き出る血も構わず、腹を抑えて、
ただ目前の商店の戸を開いた。

その懐かしい光景に不釣合いな光景があった。

飛びそうになる意識が再び燃え上がった。

ジャイアン「か・・・母ちゃん・・・ジャイ子・・・」

二人はそこで死んでいた。

ともにバラバラに解体され、店の至る所に手、足、胴体と散り、
首だけがレジに並べて置いてあった。

ともに頭が割られ、脳漿が噴出し、
中からぬめぬめとした赤黒い血が顔を染めている。

ジャイアン「スネオ・・・・・・

スネオーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ」

十一分目を数えた時、店は倒壊し、彼の体に降り注いだ。

野比家ーーー。

道具の整理を終え、ドラえもんが家を出て行ってから一時間経っただろうか?

いやそれほど経っていない。

とても時間が長く感じられた。

二人は落ち着き無く時間を気にしていた。

しずか「・・・のびたさん」

のびた「えっなあに?」

しずか「行きましょう。やっぱり」

のびた「駄目だよ、僕はしずかちゃんを守らなきゃ・・・
ドラえもんとも約束したんだ」

しずか「心配でしょうがないんでしょ二人が。
のびたさんは優しいから、でも大丈夫。行きましょうよ二人で・・・」

のびた「しずかちゃん・・・ありがとう・・・
でも、やっぱり君は待っていて危険だから・・・」

しずか「のびたさん・・・」

のびた「しずかちゃん、さっきドラえもんから受けた
説明覚えているよね?」

しずか「ええ」

のびた「なら、道具・・・使えるね、
君を守ってくれる道具をここに、置いていくよ」

しずか「ええ、分かったわ・・・」

しずか「のびたさんは道具はいらないの?」

のびた「僕はただ、友達のスネオと少し話をしに行くだけだよ」

しずか「のびたさん・・・」

のびたは空き地へと向かった。

のびた「ドラえもんを放せよスネオ」

スネオ「嫌だね、ほら、喋れよ狸」

ドラえもん「のびた君・・・逃げて・・・」

スネオ「アハハッ笑えるだろ?
こいつ顔だけでも喋ることが出来るんだぜ?」

のびた「スネオ・・・・」

スネオのお腹にはドラえもんのポケットが着けられていた。

スネオ「ちょっと順序が狂っちゃってさあ
君達仲良く固まってるから、上手いこといかなかったよ」

のびた「何を言っているんだ・・・スネオ?」

スネオ「まあちょっと待てよ、今から源しずかの解体ショーを始めるから
どっちが早く着くかな?競争だよ」

スネオはどこでもドアを使い、空き地から消えた。

のびた「待て、スネオッッおいっ」

ドラえもん「はやく追いかけるんだしずかちゃんが危ないっっ」

のびた「で、でも君をこのままにしておくなんて・・・」

ドラ「いいから、今すぐに・・・のびた君・・・
スネオ君は・・・スネオはもう以前の彼じゃない。
ジャイアンも・・・・・彼に殺された。。。」

のびたは驚き、息を呑んだ。ジャイアンが・・・死んだ・・・?

のびた「ハハハ・・・馬鹿なことを言うなっ嘘だっ」

ドラ「本当だよ、彼は恐ろしい人間になってしまった。
もうあの・・・いつものスネオ君じゃ・・・遊び友達じゃあないんだ。
それだけは肝に命じておいてくれ、」

ドラえもんは泣いていた。嗚咽を漏らして、
きっと、責任を感じているのだろう。のびたは唇を噛んだ。

のびた「・・・ドラえもん・・・分かったよ・・・分かったから・・・」

のびたはそれ以上は告げず、
ドラえもんに泣き顔を見せまいと、身を翻し、実家へと走った。

(どうしてこんなことになったのだろう。

何故スネオはこんなに酷いことをするのだろう。

そして・・・・

何故僕はしずかちゃんを一人置いてきてしまったのだろう・・・。

スネオは野比家の軒先に座り込んでいた。

彼はのびたの姿を見止めると、ニコヤカに言う。

スネオ「おう、遅かったな。舞台は整ったな。
場所は何処にする?空き地はもう飽きたよ」

のびた「何を言っているんだ・・・スネオ・・・?」

スネオ「もうさ、いい加減知ってるだろう?
良い人顔するな。もっと怒れよ。つまらない。
初めからこうしとけば良かったんだよな今思えば」

のびたが意図を図りかねていると、

スネオは奇妙に顔を引きつらせていった。

スネオ「初めからお前以外に興味なんて無かったんだ。
他の奴らはいらない。強いて言うなら前菜だ。
お前が本当に怒るところが僕は見たいんだ。
決めた。場所は学校の裏山。すぐ来いよ、まあすぐ来たくなるだろうけどさ
あれ?ポンコツ狸の顔、持ってきてないの?
まああれは重いからなあ」

のびた「スネオ・・・しずかちゃんは・・・」

スネオ「おいおい、聞かなくても分かっている癖に、
僕は一度――全てぶち壊すつもりなんだよ・・・」

スネオは頭に竹コプターをつけると、飛んで行ってしまった。

のびたはその姿を追わず・・・

異様な雰囲気を纏った玄関を見つめていた。

玄関の戸をあけ、廊下に出ると、
べったりと引き摺ったような血の跡が二階から・・・・
風呂場の方へと続いている・・・。

のびたはもう、気が気でなかった。

異世界に紛れ込んだような気分で、一歩一歩、進んでいく。

シャワーの音がする。

のびたはガラス戸の向こうの赤が・・・
本来水色である筈の壁の赤を見て、
目を覆いたくなった。

呼吸を忘れて、のびたはそのドアを開ける。

血で満たされた浴槽でしずかは縁にもたれ、
その身を投げ出していた。
流れるシャワーが彼女の凸凹に変形した顔を打つ。

拳で殴られたような跡だった。

のびた「あ・・・ああ・・・・う・・・」

のびたは我慢できずに、ドアを閉め、その場で吐いてしまった。

(何で・・・・?何でここまでする必要がある?
なんでこんなことを・・・何でこんなことをするんだよ・・・
しずかちゃん・・しずかちゃん・・・)

のびたは壁に拳を叩きつけ、怒りと悲しみの混ざった
複雑な感情を抑えきれず、咽び泣いた。

のびたは二階の自室に転がっている道具を眺めていた。

「スネオが・・・捨てていったのか…」

どれもが懐かしい道具ばかりだった。のびたは一つ一つを手に取り眺める。

その中に、一本の棒のようなものがあった。
随分使っていなかったから、薄汚れている。

「ふふふ・・・懐かしいなあ・・・」

ノビタは黙ってその棒と転がっている缶を手に取り、
スネオの待つ、裏山へ向かった。

裏山――

スネオ「よう、手間取らせたな。さっ仕上げが始まるよ」

のびたは何も答えなかった。

ドラえもん「の・・・のびた君。しずかちゃんは・・・」

のびた「死んだよ・・・」

ドラ「そ・・・そんな・・・・」

スネオ「次はお前だぞ、他人様の心配している場合じゃないぞ」

のびた「スネオ・・・やめろもう・・・
もう一度言う。もしもボックスで世界を元に戻せ」

スネオ「もしもボックスって・・・あれかい?」

スネオが指差した方を見ると、木陰に隠すようにしてそれはおいてあった。

のびた「あった、あれで元に・・・」

スネオ「何言ってるの?ジャーン・・・ウルトラクラッシャー」

のびたが静止の声をあげるより早く、
その道具が放つ光線はもしもボックスを吹き飛ばした。

のびた「あ…ああ…」

スネオ「そろそろ処分しようと思っていたんだよ、
逆転の芽は摘まなきゃならないからね、
僕はもう神になったんだ。こんなもの、
実は初めからいらなかったんだ。
大事なのは如何にして期待を持たせるのか?
だからねぇ・・・・ハハハハ・・・アーッハーッハッハッ」

ドラ「あ・・・・あああああああああ」

ドラえもんの顔はこれまでに見せたことが無いほど、
落胆し、目の色は失せ、暗く沈み込んでいった。

のびた「な・・・なんてことを・・・
なんてことをしてくれたんだっっ」

スネオ「そうだよ、その顔だっ。目を腫らして、
歯を食いしばり、拳を握る。
憎くて憎くてたまらないだろう僕が、なあのびた?
ハハ、僕には叶わないだろう?絶望しろよのびた。
お前なんかに僕が負けるはず無いんだ、これから先もずっと・・」

のびた「何を訳の分からないことを言ってるんだスネオ」

スネオ「うるさい・・・黙れ・・・次はこのポンコツだ」

スネオの持つウルトラクラッシャーが、
ドラえもんの頭頂部に突きつけられた。

のびた「や・・・やめろ・・・・やめろ・・・
頼むから・・・やめてくれ・・・・」

スネオ「いいや、駄目だね」

噴煙を巻き上げ、スネオは木々もろとも
ドラえもんを吹き飛ばした・・・・・

スネオ「ハハハ、これで本当にゲームオーバーだね
いや、待てよ地球破壊爆弾を使われたら流石の僕も・・・・」

のびた「そんなものは使わないよ、
テキオー灯をかけておけば良いだけの話じゃないか」

スネオ「流石にバレているか。でもどうする?僕は・・・」

のびた「不老不死で、あらゆる傷を受け付けない。
強く思って言ったことが叶う・・・・」

スネオ「そうだ・・・良く知っていたな・・・」

のびた「しずかちゃんが・・・教えてくれたんだ・・・
あの子・・・最期に・・・気をつけて・・・って・・・
死ぬ間際に僕の心配をしてくれたんだ・・・」

スネオ「ふぅん・・・そいつは・・・泣ける話だね」

スネオはおどけて口笛を吹いた。

のびた「許さないぞ…僕は、僕はほんとうに怒っているんだよスネオっっ」

スネオ「だからどうした?
ポンコツがいないと何にも出来ない癖に、
僕が少し願うだけで、
お前の首と胴体を切り離すことなんて造作もないことなんだよ
道具なんていらないんだ僕は自分の手で――」

のびた「道具はそんな使い方をする為にあるんじゃない・・・」

スネオ「虐めの報復に使っていた奴が良くいうよ」

のびた「そうさ、僕は間違っていた。でも君よりマシさ」

スネオ「なんだと?」

のびた「僕は自分が間違っていたということに気づくことが出来た。
道具は、ドラえもんの道具は公明正大に、
正しく世のため人のために英知を振り絞って使うべき、
とても、とても扱うのが難しい代物なんだ」

スネオ「言うじゃないか、でも、今更説教はいらないよ。
お前は最も残酷な方法で殺してやる。
まず爪を剥いで・・・それから・・・」

のびた「スネオ、初めに言っておくよ
僕は、今まで使った全ての道具の特性と、利点を知っている。
ドラえもんと誰よりも濃い時間を過ごした僕は
君よりも
ずっと・・・・
ずっと・・・ずっとずっとドラえもんの道具を上手く使えるんだよっっ!」

スネオ「ハハハ、やってみろよ。
ガラクタだらけの糞道具で、不老不死、
傷一つつかない僕を倒せるのならなっっ」

のびたは持ち出してきたスペアポケットをまさぐり、
一本の棒を取り出した。

スネオ「ハハハ、なんだその棒は…みすぼらしい」

のびた「スネオオオオオオオーーーーーーーーーーーッッ」

スネオ「ま、一応取り上げておくか、ちょっとそれ見せてみろ」

スネオが一言そういうと、ノビタの持つ棒は取り上げられ、
スネオの手へと渡った。

のびた「な…・クソッッ返せ」

スネオはのびたを拳で殴りつけた。

スネオ「別に道具の力なんて借りなくても
僕は喧嘩で君に負けたりしないよ。アハハ」

のびた「クソッックソーーーーーッ」

のびたは何度も・・・何度も地面を叩いた。

スネオ「何だい?
これが君が最も懸ける価値のある物?
何処かで見たことあったかなあ?」

スネオの顔が、例の・・・狂気じみた笑みをたたえた。

スネオ「まあお前で試してみるのも面白そうだ、
どうやって使うんだこれ? 殴りつけるのか? ん?」

スネオがそう言ってのびたにその棒を振り上げた瞬間、
のびたの手にその棒は飛んでいき、彼の手へと戻る。

スネオ「えっ……なん――」

のびたは一瞬の内にその棒でスネオの腹を突いた。

スネオ「ど、どういうことだ」

のびた「落し物カムバックスプレーの効果さ、予めかけておいたんだ」

スネオ「クソッのびた。ぼ、僕に何をした?
な・・・何とも無いじゃないか。
そ、そのスティッキは何だよのびた?
お前がこの期に及んでわざわざ持ってきたソイツはっっ」

のびた「これは……この道具は……
僕が今まで使った中でも最も使えなくて、
とても下らなくて、でも今、最も可能性を懸ける価値のある道具さ」

スネオ「な……」

スネオ「一体なんだよそれはっっ」

のびた「アベコンベだよ……
でも僕にも何が逆さまになるのかは分からない。
君はパンツを頭にかぶるかもしれないし、
悪人となった君はもしかしたら改心をするのかもしれない、
顔のパーツが逆さまになるのかもしれない…
それを懸けるのさ、僕はある事に・・・今、この命を懸けるっっ」

スネオ「アベコンベって…ハハハっ
そんなアホな道具を持ち出してどういうつもりだ?
なんだい、最期の最期に命がけのギャグをやるなんて
何処までお人よしなんだお前は」

のびた「普通の人なら・・・・・・確かにそうだろうね・・・・・」

スネオ「ぐ…な、なんだこれは…・・」

スネオは異変を感じて胸部を強く掻き毟った。

のびた「アベコンベは・・・・・・

君の何かを逆にするッッッ」

スネオ「ま、まさか・・・」

のびた「君は死なずの体から急逝の道を今、歩き出したんだよスネオ」

スネオ「ノビタ、お前…・・糞っのびたの癖に、生意気な・・・ムグッッ」

のびたはスネオに駆け寄り、口を塞いだ、が、すぐに放した。

最早、スネオに抵抗する気は無い。のびたはそう判断した。

彼の、以前と同じ、皺を刻みながらも残る、
あどけないその表情から感じられた。

急速に老化を始めた細胞が、彼をみるみるうちに、
頼りない老人へと変えていく。

スネオ「のび・・たの・・・癖に・・・・

のびた「そう、僕は何をやっても駄目な野比ノビタさ……
君と比べると頭の出来が悪い。
でも。。。だったらっなんで君程の男がこんなことを……」

スネオは自嘲気味に笑うと、しわがれた声で言う。

スネオ「僕も夢が欲しかったんだ。
僕だけ、僕だけ何も無かった。あるのは広い家とおもちゃとお金だけ。
皆僕にたかりやがって、
僕が貧乏になったら皆掌返していなくあっちまうんだよ」

のびた「そんな訳ないっっそんなことある訳無いじゃないか。
君は……君は間違っているよ」

スネオ「間違っちゃいない・・・僕は見てきたんだ未来を・・・」

のびた「僕達が…僕がいたじゃないかっ」

スネオ「そう、だな……
考えてもみれば、
例え誰がいなくなってもお前は居てくれたかもしれない。
・・・・・・でもな・・・・ハハハ・・・

これはそういう類の問題じゃないのさ、
根源的な、人間として健やかに生きる為の導を失ってしまったのさ」

のびた「スネオ……」

スネオ「何で、僕がいつも君を連れて行くのを嫌がったか分かるか?」

のびた「僕のことを虐めるのが・・・」

スネオ「違う、そんな馬鹿らしい理由なら良いさ。
お前に嫉妬していたんだよ。
たかが屋久島や八丈島、軽井沢なんて小さい小さい。
お前の旅行のスケールに比べたらカスみたいなもんだ。
それでもお前は僕を連れて行ってくれた。。。
それが尚更ムカついたのさ」

のびた「そんな…」

スネオ「ハハハ、でも良い気分だ。
最期に勝てたんだ。お前はこれからたった一人だ。
僕は勝てたんだよお前に。
ハハハ……アーーーッハーーーーーーッハッハッ……」

のびた「スネオ・・・スネオーーーッ」

スネオは腰から砕け崩れ落ち、灰となり風に舞った。

のびたは地球にたった一人になった。夕闇が街を襲い、やがて夜になった。
それでも、のびたはずっと裏山に留まったままだった。

のびた「スネオ、僕はまだ君に負けてはいないよ…」

それは二度目の・・・・あまりにも危険な賭けだった。
下手すれば地表がひっくりかえってしまうかもしれない。
しかし、他に選択肢は無かった。

のびた「アベコンベよ……もう一度だけ奇跡を起こしてくれ
この世界を……僕一人のこの世界を変えてくれ」

ノビタはアベコンベを深く・・・深く・・・裏山に突き刺した。

――太陽が昇る頃、街が動き出した。

のびたは居なくなっていた。
代わりに、のびた以外の居なくなった人々が地球に帰って来ていた。

のびたはその身を犠牲にして、彼の生きる世界を救った。

――その後――

その世界はノビタを取り巻く人々にとって、
とても矛盾した世界となってしまった。
のびただけが存在を許されていない世界。
両親、友人の誰もが、心の底に報われぬ想いを抱え、それに気づかず、
それぞれの日々を変わりなく過ごしていた。

のびたの母「ドラちゃん、ご飯よ」

ドラ「はぁい」

たまこ「今日の晩御飯はコロッケよ」

のびたの父「おっ今日はコロッケか・・・んっ?またかいママ?」

母「あっ・・・」

父「家に息子はいないだろ?」

母「あらやだ私ったら・・・」

箸が器を突く音だけが、食卓に響く。

ドラ「ご馳走さま」

母「もう良いの、ドラちゃん」

ドラ「うん、何だか食欲がないんだ」

母「そう・・・・」

ドラえもんは一人、いそいそと台所をあとにした。

父「どうしたんだろうね?何だか元気がないみたいだけど」

母「さあ・・・・どうしたのかしらねえ・・・」

たまこは首を傾げると、大きな溜め息をついた。

父「おいおい、君もそんな調子じゃあこっちもさらに気が滅入るよ」

母「あなたもなの?」

父「ああ、何だかポッカリと心に穴が開いたようなんだ」

母「そう・・・ねえ・・・」

ドラ「……明日は晴れそうだな・・・・・」

ドラえもんは二階の自室の窓際に腰掛け、ただ、月を見ていた。

翌朝、学校通学路

しずか「お早う」

ジャイアン・スネオ「お早うしずかちゃん」

しずか「どうしたの二人とも?何だか疲れたような顔して?」

ジャイアン「いや、何だか力が湧いて来なくて、
なあスネ…おい、お前どうしたんだよ」

スネオ「えっ何が?」

しずか「スネオさん、あなた何で……

泣いているの?」

スネオ「えっうわっ何だこれっ気持ち悪いっ」

ジャイ「泣き虫な奴だな…ハハハ」

スネオ「そういうジャイアンだって」

ジャイ「あれっ、おっかしいなあ。」

一筋の涙がジャイアンの頬を伝っている。

しずか「何だか、正直に言うと、
凄く悲しくて、寂しい気がするの、
何でそう思うのかは分からないけれど・・・・」

スネオ「……分かるよ」

ジャイ「俺も……」

ドラえもんは自室でドラ焼きを食べ、
漫画を読んでひとしきり笑うと、横になって寝始めた。

僕は、僕は何なのだろう。

いったい、僕は何でこの場所に今居るんだろう。

答えは出なかった。

ドラえもんのアイデンティティーは失われていた。

矛盾した世界は、彼の存在を許す代償として、
答えの出ない哲学的な問いと毎日対峙することを
強要していた。

「こんにちはーすいませーん」

玄関から声がする。ママが応対しているようだ

「ドラちゃーん、ドラちゃんちょっと来て」

「はーい」

いったい何だろうか?

玄関に向かうと、知らない子供が立っていた。

「はじめまして、こんにちは」

「どちらさまですか?」

ドラえもんはその子供に名を聞いた。

ママ「剛田武くん、剛田商店のところの息子さんよ」

ママが代わりに答えた。

ドラ「その武君が何の用ですか?」

武「あの、実は噂で聞いて、ちょっと困ったことがあって、」

ドラ「道具を借りたいの?」

武「そうなんです、お願いします」

ドラ「・・・・・・嫌だよ」

武「えっ?」

ドラ「何で僕が君の為に道具を貸さなきゃいけないんだよ
自分のことは、自分で何とかしなよ」

武「そっそれは、そうだけど・・・・」

ドラ「じゃあ、さよなら」

ママ「ちょっとドラちゃん、ドラちゃん?ごめんなさいね剛司君」

武「いえ……」

ジャイアンは力無くうなだれた。
店番の代わりをしてくれる道具が欲しかったのだが、
その願いは叶わなかった。

ドラえもんは一人、部屋に寝転んだ。

僕は、僕は…何だか分からないけれど、気が晴れない。

何かが足りない気がする・・・・

確信も何もないけれど、試してみようっっ。

ドラえもんは道具を取り出し、何も無い空間に向け、こう言った。

ドラ「僕が生きるこの世界に、
この僕の過ごす時間に、
欠けているものは・・・・・・・

何一つとしてないっっ」

何も起こらない。

こういう言い方をすれば、もし欠けているものがあれば、
その何かは出てくる筈だったのだが。

ドラえもんはクスリと笑った。

何を言っているのだろうか僕は。

その手にはウソ800が握られていた。

その日の晩、ドラえもんは中々寝付けなかった。

少し散歩でもしよう。

ドラえもんは夜の街に出た。

何の感情も湧かなかった。

ただ、夜風が気持ちよかった。

ふと見ると、空き地の三つ束ねられた土管の上に、一人の子供が座っている。

こんな時間に何をしているんだろう?

ドラえもんは興味が湧いた。

ドラ「ねえ君、こんな所で何をしているのさ?」

?「ん?さあ、君こそ何をしているの?」

眼鏡をかけた少年は答えた。

ドラ「僕は散歩だよ」

?「そう、暇なんだね」

何ともカチンとくる言い回しだった。

ドラえもんは言い返す。

ドラ「君の方が暇そうだよ、こんな所でお月様をじとっと眺めているんだから」

?「うるさいな狸、僕は今考え事をしているんだ、放っておいてくれないか?」

ドラ「なんだとう、 こんなところに一人でいるから
人が心配してやったら良い気になってっ」

?「人じゃないだろ青狸っ。やるのか?
今僕は少しムカムカしているんだ。ぎっちょんぎっちょんにしてやるぞ」

決着はいつまで経ってもつかなかった。

ドラ「ハヒ、ハヒ、もう疲れたよやめにしよう」

?「そ・・・そうだね、おあいこってことにしよう」

ドラ「じゃ、君も早く帰りな、ね」

?「僕は、無いんだよ・・・・・・帰る所が」

ドラ「家出したの?」

?「違うんだ、きづいたら、ずっとここにいたんだよ、
自分がどうしてここにいるのか分からないんだ」

ドラ「そうなんだ…」

?「気を使わなくて良いよ、君はもうお家へ帰りな」

ドラ「そんな・・・・君を一人にしておくなんて出来ないよ」

?「そんなこと言ったって・・・・」

ドラ「まっかせなさい、僕は少し不思議な道具を持っているからね」

?「どうするの?」

ドラ「なあに、簡単さ、もしもボックスーーーーー」

?「なあにこれ?」

ドラ「魔法の電話、君さ、名前くらいあるだろう。教えてよ」

「野比・・・・・・野比のびただよ」

ドラ「そうなんだ、僕ん家も野比って言うんだけど、
それにしても変な名前だね」

のびた「うるさいやい」

どら「ええと、どうしようか」

道具を出してはみたものの、ドラえもんは困リ果てた。

のびた「どうかしたの?」

どら「いや、これはもしもボックスっていって、
もしもの世界にすることが出来るんだけれど、
どう言おうか迷っていてね、上手く言うには――」

のび「なんだ、そんなことか、僕に使わせてみなよ」

ドラ「コラコラ、やりかた分からないだろ?駄目だよ変なこと言っちゃ」

のびた「大丈夫・・・分かるよ・・・・任せとけって」

のびた「もしも、僕、のびのびたを含め、
全ての人々が・・・・真に幸福を享受出来る世界だったらっっ」

ドラ「な・・・なんてことを言うんだ君はっっ」

のびた「何かいけないこと言ったかい?」

ドラ「言ってないけど……それじゃあ世界を変えることになるじゃないか」

のびた「いけないの?」

ドラ「いけなく…ないか、僕は何を言っているんだろう?」

のびた「おかしな狸だな」

のびたは声をあげて笑った。

世界が変わったことによって、ドラえもんを縛っていた
「未来の常識」は無くなっていた。

――タイムパトロール本部――
男B「おい、例の連中やっと捕まったってよ」

男A「おおそうか、」

B「ん、何見てんだ?分岐したパラレルワールドのひとつじゃないか?」

A「ああ、ちょっと興味がわいてな。どうなるのか楽しみな世界の一つだ。
もうここから先は俺達の管轄外だけどな」

B「何だこれ?俺もこんな世界に住みたいもんだ」

A「ハハハ、無いものねだりしていたって仕方ないだろ?
休憩終わりっさっ仕事戻るぞ」

B「・・・へいへい」

Aは誰も居なくなった部屋の明かりを消すと、
振り返り、パソコンのディスプレイを見つめた。

A「……やるじゃねえかクソガキども……」

そののびたの願いは、ノビタの母たまこがもしもボックスを
粗大ゴミの日に捨てたことにより、
永遠に元にもどすことが出来なくなった。

貧困、飢餓、国家間の戦争、
個人間でのいさかいすら無くなったその完全な世界は
如何に目指そうそしても不可能な
パラレルワールドの最も良いモデルとして、
今もタイムパトロール本部コンピューターに
その歴史を刻んでいる。
                            〜完〜 

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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:JF9p8wLL0編集削除
更新がテキストだったときのがっかり感
大半が長いし
2 . 通りすがりさん  ID:prBgahZ.0編集削除
※1
超わかる。スクロールバーが小さくなったのを見て
読まないことを決意する。
3 . 名無しさん  ID:8.ady.950編集削除
※1、※2
禿同
ここの管理人はコメントを見ていないことがよく判った
4 . 名無しさん  ID:8GhgmFz30編集削除
で、どこが「おもしろ」なの?
5 . 名無しさん  ID:Y.GjGvat0編集削除
だから
あきたわ

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