それはよくある光景であった
のび太がどこでもドアでしずかの入浴中にバスルームに飛び込んだのだ
今までにも同じ事が何度かあった
その度にしずかが悲鳴をあげ、のび太にお湯をかけ・・・
それで終わりのはずだった

しずか「キャー!!のび太さんのエッチー!!!」

そう叫んで浴槽のお湯をのび太にかぶせる
だがのび太は微動だにしなかった



しずか「・・・の・・・のび太・・・さん・・・?」

しずか「まさか・・・ねぇ・・・嘘でしょ・・・」

しずかの脳裏に真っ先に浮かんだのは恐怖であった
普段はおとなしいのび太がじっと裸の自分を見つめている

犯される

しずかがそう思ったのも当然と言えば当然と言えた

のび太「・・・・・・」

しずか「の・・・のび・・・太・・・さん?」

だがそこでしずかの想像を上回る事が起こった
ドシャリ!と音を立ててのび太がその場に崩れ落ちたのだ

しずか「!?のび太さん!!」

しずかは自分の格好や今の状況に構わず倒れたのび太に駆け寄った

のび太「に・・・げ・・・」

それだけ言うとのび太は絶命した

しずか「の・・・のび太さん!!!」

しずかは混乱しきっていた
目の前には同じクラスの友達であるのび太の死体があるのだ

しずか「き・・・!!」

叫び出しそうになった瞬間しずかは気づいた
どこでもドアの隙間からドラえもんの姿が見えたのだ

しずか「ど・・・ドラちゃん・・・」

どこでもドアのノブを掴み・・・回す

そこはのび太の部屋だった
何度も遊びに来たからよく分かる
そこに確かにドラえもんはいた

しずか「よかった・・・ドラちゃん・・・た・・・大変なの!!」

しかしドラえもんはじっとうなだれたまま反応しない

しずか「ドラちゃん・・・?」

しずかの動悸が早まる
今までにないほど嫌な予感が広がる

しずか「どうしちゃったの?ドラちゃん!もう!驚かさないで・・・」

そこまで言ってしずかは気づいた
ドラえもんの腹部に見慣れたはずのポケットはついていなかった

しずか「!!??」

恐る恐るドラえもんの肩に手をかける
力を加えるまでもなくドラえもんの頭部はコロリと外れた

しずか「・・・・・・・・!!!!」

しずかは混乱していた
呼吸は乱れ冷や汗で全身が濡れていた

しずか「どういう事・・・誰が・・・こんなこと」

冷静になろうと深呼吸を繰り返す

しずか「ドラえもんの道具目当て・・・?それにしても・・・こんな」

落ちたドラえもんの頭部はベコベコに変形していた

そこに他人の気配はなかった

しずか「ひとまず・・・こんな格好じゃ・・・」

少し冷静さを取り戻したしずかは置かれている状況を思い出した

しずか「のび太さんの服・・・借りるわね」

のび太の部屋のタンスから普段のび太の着ているシャツとズボンを取り出す

しずか「パンツは・・・はかなくてもいいか」

のび太の服を着たしずかは改めて考える

しずか「そういえばのび太さんが死ぬ前に・・・にげ・・・って」

しずか「それって・・・逃げろって事なのかしら・・・」

しずか「だとしたら・・・犯人は私も狙っているって事なの?」

冷静になればなるほど恐ろしくなる

しずか「誰か・・・誰かに言わないと・・・でも誰に!?」

しずか「誰なら信用できるの!!??誰が犯人じゃないの!!???」

しずか「とりあえず・・・みんななら・・・クラスのみんななら・・・」

しずか「こんな恐ろしい事する犯人なわけないもの!!」

そう結論出したしずかはのび太の部屋を飛び出した
階段を駆け下り・・・ヌルっとした物を踏んで転ぶ

しずか「いたたた・・・」

彼女が起き上がると
廊下は真っ赤な液体があたり一面に飛び散っていた

しずか「まさか・・・まさか」

それは居間から流れているようだった

しずか「・・・」

逃げ出したかった反面、確かめなければと思う自分がいる
恐る恐る襖に手をかける
少しずつ開く襖・・・その隙間から見えた

それはのび太の母である玉子がうつぶせに倒れている姿だった
そして赤い液体はその腹部から流れているようだった

しずか「!!」

しずかはそのまま襖を閉じる
叫び出し、いっそ狂ってしまいたい自分を懸命に抑える

しずか「やっぱり・・・みんなじゃない・・・こんな事・・・できっこない」

玄関をそっと開け、周りに人気がない事を確認し
しずかは駈け出した
向かう先はみんながいつも遊んでいる空地だった

その日はとてもよく晴れていた
外で遊ぶには絶好の天気だ
キャッチボール?いやいや裏山に探検も捨てがたい
おっと!のび太とドラえもんも誘ってやらないとな!

そんな事を考えながら歩いていたのはジャイアンと呼ばれる少年だった

ジャイアン「リサイタルもいいな!!みんな喜ぶだろうし」

明日は休みだ
彼はすっかり休み気分で骨川家に向かっていた

骨川家まであと少しだ
到着したらジュースでも出してもらおう

「ぁぁぁ・・・」

ジャイアン「・・・?」

何か聞こえた気がする
悲鳴?うん、悲鳴と言われればそんな風にも聞こえたな
どこから?まさかスネ夫の家からか!?

ジャイアン「何か・・・あったのかな?」

少し歩調が早まる
自分はいわゆるガキ大将だ、嫌われる事も多々ある
それでもいつも一緒にいてくれる友人の身に何かあったかもしれないと思うと気が焦った

ジャイアン「気のせいだろうけどな」

彼が骨川家に着いた時誰かが向こうの角を曲がるのが見えた
それはクラスの優等生でもある出木杉の後姿にも見えた

ジャイアン「うん?出木杉?見間違いかな?」

インターホンを押す頃には今見たものはスッカリ忘れてしまっていた

ピンポーン

ジャイアン「おーいスネ夫ー!!遊ぼうぜー!!!」

返事はない、おかしい
スネ夫がいなくても大抵この時間には母親がいるはずだ

ジャイアン「買い物かな?おーい!いねーのかー?」

「ぃ・・ぁ・・・ん」

かすかに声がした
それは自分の名前を呼んだように聞こえた

庭を回ってみると応接室に出る
窓ごしに見た光景に彼は自分の目を疑った

ジャイアン「スネ夫!!!!!!!!!!!!!!!」

そこには友人の母親の死体
そして両手足の無い芋虫のような姿をした友人の姿があった

ジャイアン「待ってろ!!!今行くぞ!!!!」

窓にカギはかかっていなかった
そのまま飛び込みスネ夫に駆け寄る

ジャイアン「何があった!!!どうした!!!」

スネ夫「分からない・・・痛いよぉ・・・」

ジャイアン「待ってろよ!すぐ医者を!!それから警察にも・・・」

スネ夫「ジャイアン・・・僕・・・何も・・・」

ジャイアン「大丈夫!大丈夫だ!!ほら!ドラえもんに頼んで治してもらおうぜ!!」

スネ夫「そうだね・・・その手があった・・・」

そう言うとジャイアンは弱々しく微笑んで見せた
酷い目にあってる友人に涙を見せるわけにはいかなかった

ジャイアン「前にテレビで見たんだ・・・腕と足を縛るぞ」

正確には腕と足の付け根ではあったが
素人の、しかも小学生の止血ではあるが放っておくよりはいくぶんがマシだろう

スネ夫「何も・・・わかんないんだ・・・いきなり・・・ママが・・・」

ジャイアン「・・・」

スネ夫「ママの頭が・・・目の前で・・・爆発して・・・次に僕の・・・」

ジャイアン「分かった!もういい!!」

スネ夫「ドラえもんなら・・・なんとか・・・」

ジャイアン「もちろんだ!!すぐ連れてきてやるからな!!待ってろよ!!」

そっとスネ夫をソファに寝かせるとジャイアンは駈け出す
最後に振り向いて声をかける

ジャイアン「死ぬなよ!!!おめーが死んだら誰がシチュー食ってくれんだよ!!!」

スネ夫がほほ笑むのを見て
ジャイアンはもう振り返らず走った

空地に差し掛かり
そこでようやく待ち望んでいた人物が現れた

しずか「たけしさん!!!」

どうも様子がおかしい
とても急いでいるように見える
こんな表情の彼は見たことがなかった

ジャイアン「しずかちゃん・・・ごめん!ちょっと急いで・・・」

しずか「待って!!大事な話なの!!!のび太さんとドラちゃんが!!!」

ジャイアン「・・・ドラえもんが・・・どうかしたのか!!!???」

彼の呼吸が乱れたのが分かった

説明は困難を極めた
なぜなら何も分かっていないから

しずか「それで・・・ドラちゃんも・・・のび太さんも・・・」

ジャイアン「それでそんな恰好してるのか!のび太かと思ったぜ!はは・・・」

どう見ても強がっているジャイアンを見てしずかは不安になった

しずか「・・・・・・何か・・・あったの?」

ジャイアン「・・・・・・スネ夫が・・・」

ジャイアンの語る内容は戦慄すべき内容だった

しずか「・・・・・・」

言葉が出なかった
昨日までいつも通りの平穏な日常だったのに
たった一日で何かが狂ってしまった

ジャイアン「く・・・うぅ・・・」

話し終えたジャイアンは嗚咽を漏らしていた

ジャイアン「・・・・・・・・・・・・!!」

そのジャイアンが唐突に顔を上げる
その顔は何かを思いついたかのような顔だった
とはいえ涙でグショグショだったが

ジャイアン「出木杉だ!」

しずか「出木杉君・・・?」

ジャイアン「見たんだ!!スネ夫ん家に行った時に確かに!!!」

しずか「・・・犯人・・・って事?」

ジャイアン「わからねぇ!でも何か知ってるかもしれねぇ!!」

手がかりはなかった
少しでも可能性があるならそれに賭けるしかなかった

ジャイアン「行こう!じゃないと何も分からないままだ!!」

しずか「ええ・・・そうね」

二人は揃って歩き出した

しずか「確かに出木杉君だったの?」

ジャイアン「・・・後姿だったけど・・・多分・・・」

しずか「似てる人って可能性は?のび太さんとよく似てるじゃない・・・出木杉君」

ジャイアン「可能性はあるだろうけど・・・のび太はもう」

しずか「・・・ごめんなさい」

人間とは嫌な事は忘れたがる生き物らしい
ついさっきの出来事なのにもうのび太の死を認めていない自分がいた

ジャイアン「そろそろだ・・・」

もうすぐという所で唐突に、本当に唐突に悲鳴が聞こえた

「助けてくれぇー!!!!!!!!!」

しずか「たけしさん!!」

ジャイアン「ああ!!あっちだ!!」

「ぅぅぅぅぅうううううああああああ!!!!」

ジャイアン「いや・・・!!近づいて・・・!!!」

叫びながら現れたのはあろうことか出木杉本人であった
そしてその姿を見たジャイアンは口を開く

ジャイアン「違う・・・服が・・・さっき見た奴じゃない」

しずか「そ・・・そんな事より!何があったのか聞かないと!!」

言い終わらないうちに出木杉は二人の目の前で四散した

辺りに臓物が散る
二人は唖然としたままその光景を見ていた
叫びながら走って来た出木杉の上半身が爆発した、それだけ

しずか「何・・・何なの・・・」

ジャイアン「こんなもん・・・人間にできる事じゃねぇ」

しずか「ポケットよ・・・ドラちゃんのポケットを悪用してるんだわ」

ジャイアン「ドラえもんを知ってる・・・近しい奴が犯人って事か!!ちくしょう!!!」

しずか「手がかり・・・無くなっちゃった・・・ね」

ジャイアン「まだだ!!のび太の部屋に行くぞ!!!」

しずか「・・・?」

ジャイアン「スペアポケットだよ!!!!」

ジャイアン「ドラえもんの道具をこちらも使えたら犯人だって特定できるし、スネ夫も治せる!」

しずか「そうだわ!スペアポケット!!忘れてた!!!」

二人は野比家に向かい走り出した

しずか「でも・・・犯人がスペアポケットの事を知ってたら・・・」

ジャイアン「・・・・・・・」

しずか「・・・」

ジャイアン「そんな事今考えてもしょうがねぇ!やれる事をやるだけだ!!」

だが不安は全く拭えなかった
なにしろ二人はまだ何も分かっていないのだ

野比家に着いた二人はそっと玄関をくぐる

しずか「・・・ぅ」

居間から流れていた赤い液体はどす黒く変色していた

ジャイアン「なんてこった・・・」

二人は目を背けながら二階に上がる
襖を開けると何も変わっていない光景がそこにあった

ジャイアン「なんでこんな・・・」

しずか「・・・探しましょう!」

結果から言うと目的の物は見つからなかった
ここまでドラえもんの周辺に詳しい人間が知らないわけが無かったのだ

しずか「もう・・・おしまい・・・?」

ジャイアン「くそ!!!他に・・・他に何か・・・」

一拍置き、二人は声を揃えて叫んだ

しずか、ジャイアン『タイムマシン!!!!!!』

しずか「これで過去に戻れば!!」

ジャイアン「ああ!犯人が分かるどころか全部阻止できるかも!!!」

そう言うとジャイアンは迷わず机の引き出しを開けた

ドォン・・・ッッ

遠くの方で煙が上がる
ああ、タイムマシンの机を開けたな
あそこを開けると爆発するように仕掛けておいて正解だったようだ

モクモクと立ち上る煙
響くサイレンの音

それを裏山から見下ろしながら僕は笑う
このポケットがあれば大丈夫
これだけの事をしても大丈夫だ

僕はただ自由が欲しかった
でもただの自由じゃダメだ

まだ僕は若い
一人じゃ何もできない
それが分からないくらい馬鹿じゃない

だからこのポケットが必要だった
このポケットさえあればたった一人でも自由を手にできる

うるさい小言を言われる事もなければ
学校でいじめられる事もない
将来の事をロボットに指図される事もないんだ

のび太は高らかに笑った

「もしも僕に素直なもう一人の僕がいたら」

上手く行くなんて思ってなかった
いつものように何か失敗してドラえもんに怒られておしまい
そう思ってた

もう一人の僕はアッサリ生まれた
色々話し合った
これが嫌だ、あれが嫌だ

もう一人の僕はこんな提案をした

「ポケットを盗もうよ」

「そんなのダメだよ」

「なんで?」

「なんで・・・?なんでって・・・」

あれ?どっちの僕が僕なんだ?

気がつけば自分の思うままに行動していた
ポケットを奪えば追われる
なら追われないようにすればいい

のび太が死んでいるのに誰がのび太を探すだろうか

だけど気をつけろ
近しい人間は気付くぞ

なら近しい人間も消せばいい

どうも僕は頭を使うのが苦手らしい

自嘲ぎみに笑う

瞬間

後ろの茂みがガサガサと音を立てたと思うと
何かが飛び出してきて僕に当たった
それが人間・・・女の子・・・しずかちゃんだと気付くのに数秒かかる

のび太「なんで・・・」

僕のお腹から包丁の柄が生えているように見えた

しずか「なんで・・・」

彼女は泣いていた

彼は泣いていた
最後までのび太を心配し、そして泣いていた

ドラえもん「のび太くんを・・・救ってやって・・・」

表情の無い彼の首から漏れた音声はそう聞こえた
動かないはずの彼が爆発から庇ってくれた
だから私はここにいる

しずか「ドラえもんは・・・完全に停止したわけじゃなかったの・・・」

のび太「そうか・・・さすが・・・ドラえもんだ」

サイレンの音が近づく

のび太「ごほ・・・敵わない・・・なぁ」

そう言うとのび太の目から光が消えた

しずか「・・・」

のび太の手からポケットを取ると中を探る
のび太の運命を変えた道具を取り出し、しずかは言う

しずか「もしも・・・何事もない平穏な時間に戻れるなら」

サイレンの音が遠ざかっていった

おしまい

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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:CqPk0P7F0編集削除
おいっ !  ドラえもん !!

しずかちゃんのノーパンはどうなったぁ!!!
(# ゚Д゚)
2 . 名無しさん  ID:DLdmKCzC0編集削除
しずかちゃんのお風呂シーンでヌいた
3 . 名無しさん  ID:RhF4CuZ00編集削除
体験談
4 . 名無しさん  ID:ZnzZGnDb0編集削除
投稿者はしずか
5 . 名無しさん  ID:R3TD4nu.0編集削除
パンツの伏線拾えよ

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