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─ 城下町 ─


ザワザワ…… ガヤガヤ……


町民A「聞いたかよ!ついに勇者様たちが魔王討伐の旅に出るらしいぜ!」


町民B「ああ、聞いた聞いた!今、王様に謁見してるんだってな!」


町民A「勇者様なら、絶対魔王を倒してくれるぜ!」


町民B「なんたって、かつて魔王を封じた“勇者”の血をひく人だもんな!」


偽勇者「…………」




偽勇者(……ようやくか)


偽勇者(この時を待ってたんだ!)


偽勇者「ククク……勇者どもの手柄をかっさらってやるぜ」


まもなく、勇者たちの出発式が盛大に行われた。


ワアァァァァァ……!


「頼むぞぉっ!」 「しっかりなっ!」 「頑張ってえっ!」


勇者「皆さん、行ってきます!」


戦士「俺の剣技で、必ず魔王を倒してくるぜ!」


魔法使い「ボクの魔法なら、魔王なんてチョチョイのチョイさ」


僧侶「私がこの三人を死なせはしません!」


偽勇者(この四人が、勇者パーティーか)


偽勇者(悪いが、お前たちには俺の踏み台になってもらうぜぇ……)


─ 村 ─


偽勇者(まずは、近くの村に立ち寄った、か……)


村人「お願いします、たびたび村を襲う魔獣をやっつけて下さい!」


勇者「分かりました!」


戦士「俺たちに任せとけ!」


魔法使い「この程度のことなら、ボクだけでも十分だよ」


僧侶「村のために頑張りましょう!」


偽勇者(よし……こいつらが弱らせた魔獣を、俺がブッ倒して手柄にするとするか)


偽勇者(こういうコツコツとした積み重ねが大事だからな)


─ 村の近く ─


魔獣「ガルルル……!」ザッ…


勇者「お前が村を襲う魔獣か!いざ勝負!」チャキッ


戦士「十秒で片付けてやるぜ!」スラッ…


魔法使い「やれやれ、つまらなそうな相手だ」


僧侶「回復はお任せを!」


偽勇者(なんだ、大したモンスターじゃねえな)


偽勇者(これじゃ弱らせる前に終わっちまうだろうな……)


偽勇者(ま、お手並み拝見といくか)


魔獣「ガルァ!」バッ


バシィッ!


勇者「ぐはぁっ!」ドサッ


偽勇者(え?)


化け物「ガルルァ!」


ドゴォッ!


戦士「ぐええっ!」ドサッ…


偽勇者(お前が十秒でやられてるじゃねえか!)


魔法使い「──いたっ!」ガリッ…


魔法使い「呪文唱えようとしたら、舌噛んじゃった……回復して!」


僧侶「あわわ、どうしましょ、どうしましょ〜!」


偽勇者(魔法使いも、紅一点の僧侶も役立たずかよ!)


偽勇者(なんなんだ、こいつら!?)


勇者「くそ〜っ!」ブンブン


戦士「まだまだァ!」ブンブン


キンッ!ギンッ!


魔獣「ガルルァ!」


偽勇者(あのモンスターの胴体は頑丈だ!あんな剣さばきじゃとても斬れねえ!)


偽勇者(頭を狙えよ、頭を!)


魔法使い「痛いよ……舌が痛いよ……!」シクシク…


僧侶「わ、私、どうしたらいいんでしょ……!」オロオロ…


偽勇者(後方支援のこいつらはこいつらで、パニックになっちまってるし……)


偽勇者(前線はどうしても頭に血が上るんだから、お前らは冷静じゃなきゃダメだろ!)


偽勇者(ああもう、しょうがねえなぁ!)


「勇者と戦士、頭だけを集中して狙え!あと剣を握る時はあまり力むな!」


勇者&戦士「!」ビクッ


勇者「はいっ!」チャキッ


戦士「お、おうっ!」ギュッ…


「魔法使い!舌噛んだって死にはしねえ!我慢して、小声で魔法を唱えろ!」


魔法使い「う、うん!」グスッ…


「僧侶!まずは落ちついて深呼吸しろ!お前が落ちつかなきゃ全滅するぞ!」


僧侶「分かりました!」スゥ…ハァ…


勇者「でりゃあああっ!」ブンッ


戦士「どりゃあああっ!」ブンッ


魔法使い「赤き火よ、敵を燃やせ!」ボッ…


ザシュッ!ズバァッ!ボワァッ!


魔獣「グギャアァァ……!」ドサッ


偽勇者(ふう、どうにか倒したようだな……)


勇者「さっきの声……いったいだれだったんだろう?」


戦士「なんにせよ、あの声がなければヤバかったぜ」


魔法使い「ボクも舌噛んだら、血がいっぱい出て死んじゃうと思ってたから……」


僧侶「あの声のおかげで、私も冷静になれましたわ……」ホッ…


偽勇者(オイオイ、マジかよ……)


偽勇者(こいつらについていって、こいつらが魔王を倒すところまできたら)


偽勇者(こいつら四人と魔王の両方を始末して、俺が丸ごと手柄をいただく計画……)


偽勇者(なんだか不安になってきたぞ)


偽勇者(いや、今日はたまたまこいつらの調子が悪かっただけだ、うん)


─ 村 ─


村人「ありがとうございました……!」


村人「おかげで村が救われました!この包帯と薬草を持っていって下さい!」


勇者「助かります!」


勇者「ですが、また村に魔物や魔獣が現れるかもしれないので」


勇者「村の警備を怠らないようにして下さい」


村人「はい!」


偽勇者(ったく、俺だったらもっといいもんよこせって文句つけるがな)


偽勇者(人のいいヤツだ……)


─ 迷いの森 ─


勇者「険しい道だな……。みんな足元に注意して──」


戦士「おう」


魔法使い「いたっ!」ドデッ


魔法使い「っつぅ〜……足をすりむいちゃった」


僧侶「今、回復を……」スッ…


偽勇者(バカか!?)


偽勇者(あんなケガでいちいち回復してたら、すぐ魔力切れを起こすだろうが!)


偽勇者(ったく……まるでなっちゃいねえな)イライラ…


「僧侶!」


僧侶「へっ!?」ビクッ


「回復魔法なんか使うな!」


「さっきの村でもらった包帯や薬草を使えばいいだろ!」


「そんなケガで魔法を使ってたら、肝心なところで息切れしちまうぞ!」


勇者「この声は、村で俺たちを助けてくれた……!」


戦士「魔法を使うなっていってるぜ?」


僧侶「どうしましょう?」オロオロ…


勇者「ここは……声のいうとおり、魔力を温存しよう」


勇者「僧侶の回復魔法は切り札のようなものだからね」


僧侶「分かりました……では、私が包帯を巻きますわ!」


魔法使い「魔法でも包帯でもいいから早くしてぇ……」ズキズキ…


僧侶「傷口に薬草を塗り込みましたが……」


僧侶「包帯の巻き方はこんな感じでいいのでしょうか?」グルグル…


勇者「いいんじゃないか?」


戦士「そんなもんだろ」


魔法使い「なんだか、すごく足が締めつけられてるんだけど……」


偽勇者(なんだ、あのメチャクチャな巻き方は!?ふざけてんのか!?)


偽勇者(あんな巻き方じゃ、傷はおかしくなるし、血管は傷めるし、ろくなことねえぞ!)


偽勇者(あぁ〜もう!)ダッ


偽勇者「貸せ!」バッ


僧侶「きゃっ!?」


戦士「だれだてめえ!?」チャキッ


勇者「待った!あなたの声は──」


偽勇者「いいか、包帯の巻き方はな……こうしてこうしてこうするんだ」グルグル…


僧侶「なるほど……!」


戦士「すげえ、さっきと全然ちがうぜ!」


魔法使い「わっ、すごく足を動かしやすい!」クイクイッ


勇者「あ、あの……ぜひお名前を!」


偽勇者「名乗るほどのもんじゃねえよ、じゃあな!」ダッ


勇者「行ってしまった……」


勇者「あの後すぐ、巨大植物のモンスターが出てきたけど……」


勇者「僧侶の魔力を温存してたおかげで、どうにか乗り越えられた……」


戦士「あのアドバイスがなかったら、回復が間に合わず全滅してたかもな」


魔法使い「ボクの足も、あの人のおかげですっかりよくなったしね」


僧侶「名前さえ教えてくれませんでしたが、あの人はいったい……」


偽勇者(あの程度の食人植物に手こずりやがって……情けねえ)


偽勇者(俺がかげながら援護してなきゃ、全員食われてたぜ)


偽勇者(しかも、植物モンスターは根を壊さないと復活するっての……)


偽勇者(ま、根は俺が壊してやったけどな)


偽勇者(これも全て、俺が最後に手柄を奪うためだ!)


─ 洞窟 ─


暗闇の中を進む勇者パーティー。


フッ……


勇者「しまった!たいまつの炎が消えてしまった!」


戦士「げえっ!暗くてなにも見えねえよ!」


魔法使い「ボクも火を出そうにも、もう魔力が……!」ボシュッ…


僧侶「ど、ど、ど、どうしましょう!く、暗いのは怖いです、苦手です!」


ドタバタ……


偽勇者(暗闇で一番やっちゃいけないのは、パニックになることだ!)


偽勇者(ただでさえ目が利かないんだからな!)


偽勇者(なんでこいつら、そんなことも知らないんだよ!)イライラ…


偽勇者「こっちだ!俺についてこい!」ボッ…


勇者「あっ、あなたは!?村や森で俺たちを助けてくれた……」


戦士「アンタ、たいまつ持ってたのか……おかげで洞窟を楽に歩けるぜ!」


偽勇者「いや、これは消す」ジュッ…


魔法使い「な、なんでさ!?」


僧侶「そうですよ!この暗闇じゃ、たいまつは必須です!」


偽勇者「お前らが暗闇に慣れるためだ!」


偽勇者「いいか、暗闇では絶対パニックになるな!」


偽勇者「落ちついて、空気の流れや気配を肌で感じ取るんだ!」


偽勇者「そうすりゃ、そのうち外と同じように動けるようになる!分かったか!」


勇者「は……はいっ!」


ようやく洞窟を抜けた勇者たち。


魔法使い「やったぁ〜!やっと洞窟を抜けられたぁ〜!」


僧侶「これで暗闇とはお別れですね……だいぶ慣れましたけど」


戦士「太陽がまぶしいぜ……」


偽勇者「少しずつ慣らしていけよ。目がやられちまうぞ」


勇者「あ、あの……ありがとうございました」


偽勇者「あ?気にすんな。じゃあな」ダッ


勇者「あっ……」


勇者(何者なんだろう……。彼も冒険者だろうけど、俺とは大違いだ……)


勇者「さて、もう少し歩けば“東の王国”だ」


勇者「城に着いたら事情を説明して、魔王討伐に力を貸してもらおう!」


─ 東の王国 城 ─


東国王「ふ〜む……おぬしらの魔王討伐に協力、か……」


東国王「どう思うかね、大臣」


東大臣「我が国はまだ魔王軍に侵略されておりません」


東大臣「また、侵略されても問題ありません」


東大臣「彼らが勝手にやっていることです。手助けの必要はないでしょう」


東国王「うむ、余もそう思っていた。我が国は魔王など恐れぬ」


勇者「しかし……!魔王軍は神出鬼没です!現に他の国では──」


東国王「もう下がりたまえ。余は忙しいのだ」


東大臣「…………」ニヤッ


偽勇者(こっそりついてきたが……あの大臣、犬歯が妙に長くねえか……?)


偽勇者(……揺さぶってみるか)


「ヘイ、勇者たち!まだ斬らねえのかい!?」


勇者「へ?」


「城内で人間に化けてる魔物を、謁見中に斬り殺すって手はずだったろ!?」


「モタモタしてんなよ!」


戦士(この声はあの人だが……なんの話だ!?)


東大臣「ちいっ……」シュウウ…


勇者「!?」


魔物「まさかバレていたとはなァ……!」シュウウ…


正体を明かす大臣。


東国王「大臣っ!?」


魔物「スキを突いて勇者たちを暗殺し、その後ゆっくり国を乗っ取る予定だったが……」


魔物「さすがは勇者といったところか!」


勇者(ま、まさか大臣が魔物だったなんて……!)


魔物「まぁいい……。まずは勇者、お前から死ねいっ!」シュバッ


キンッ!


魔物「むっ!?」


勇者(俺だって、あの人のようになりたくて特訓してるんだ!)


勇者(力をほどよく抜いて、剣を振るうっ!)


ズバァッ!ザクッ!ザンッ!


魔物「ぐ、はァ……!」ドサッ…


勇者「ふう……なんとか倒せた……」


勇者(あの人がいなかったら……俺たちはみんな殺されてただろう……)


勇者「王様、これでも魔王は恐ろしくない、といえますか?」


東国王「い、いや……余が甘かった。まさか大臣が魔物だったとは……」


東国王「我が国も、全力を挙げて君たちをバックアップさせてもらうよ」


勇者「ありがとうございます!」


─ 宿屋 ─


戦士「いやぁ〜、こんな豪華な宿まで用意してもらえて」フカフカ…


戦士「きわどい場面も多いが、旅は絶好調だな!」


勇者「ああ……」


魔法使い「大臣が魔物だったと知って、王様もとたんに態度を変えたからね」


僧侶「でも、本当に危ないところでした」


勇者「うん……」


勇者「ところで、いつも危ないところで俺たちにアドバイスしてくれるあの人は」


勇者「いったい何者なんだろう?」


戦士「俺は最初、勇者の血筋が流れる人間だと思ってたけどよ」


戦士「お前の親戚ってわけでもないんだろ?」


勇者「うん、ちがう。あんな人、見たこともないよ」


僧侶「じゃあ、いったい……」


魔法使い「もしかして、ずっと昔からやってきたかつての勇者、だったりして」


戦士「ああ〜……たしかに。あの落ちつき具合は、ベテランって感じだもんな」


僧侶「ロマンがある話ですね」


勇者「勇者……か」


勇者(あの人が何者であれ、実力でいえばあの人こそが勇者に相応しい)


勇者(でもどうして、表舞台に出てこようとしないんだろうか)


勇者(なにか、表舞台に出られない理由があるんだろうか……)


東の王国でも、勇者たちは大人気となった。


ワアァァァァァ……!


東国王「たった数日間滞在しただけで、今や余をもしのぐ人気だ」


東国王「これが勇者殿の持つ人徳というものであろうな」


勇者「いえ、そんなことは……」


東国王「いや……余もおぬしをすっかり気に入ってしまっておる」


東国王「大臣に化けていた魔物を倒してくれたこととは関係なく、な」


東国王「おぬしほど誠実な若者はそうはおらぬ」


勇者「そこまでおっしゃっていただけて、光栄です」


東国王「この国を出れば、すぐ“剣の王国”だ」


東国王「世界でもっとも剣術の栄えた国……きっと魔王討伐の役に立つ情報もあろう」


東国王「ぜひ立ち寄ってみるといい」


勇者「はいっ!」


─ 剣の王国 ─


魔法使い「この国は剣術がとても盛んなんだってね」


僧侶「首都にある闘技場では、今度剣術大会が開かれるそうですよ」


戦士「へぇ……。なあ勇者、俺たちも出てみないか?」


勇者「えぇっ!?俺たちは魔王退治の旅の途中だぞ!」


戦士「だからこそ、だよ」


戦士「もしここで苦戦するようなら、魔王なんかとても倒せねえぞ?」


勇者「たしかに……」


勇者(おそらくあの人でも、そうするだろうな)


勇者「分かった!挑戦してみよう!」


偽勇者「…………」


─ 闘技場 ─


キィンッ!ギンッ!キンッ!


闘技者A「ま、参った!──完敗だ!」


勇者「こちらこそ、いい試合ができたよ」


闘技者B「ぐおおっ……力で押し切られたか」ガクッ


戦士「よっしゃあ!」


ワアァァァ……!オオォォォ……!ワアァァァ……!オオォォォ……!


魔法使い「すごいよ、二人とも!他の参加者たちを全く寄せつけない!」


僧侶「当然ですよ、過酷な冒険をくぐり抜けてきたお二人ですもの!」


魔法使い「それに、大会が進むにつれて、二人のファンが増えてるね」


僧侶「二人とも、正々堂々相手の力を引き出しつつ、打ち負かしてますからね」


偽勇者(今のあいつらなら、この程度の大会は余裕だろう)


偽勇者(そして……薄々感じてはいたが、やはり奴らは俺とはちがう……)


決勝戦──


ギィンッ!


戦士「ぐっ……降参だ!」


審判「そこまで!剣の王国闘技大会、優勝者は──勇者!」


ワアァァァァァ……!


戦士「へっ……やられたぜ。さすが勇者」


勇者「こっちこそヒヤッとしたさ。強い仲間を持つことができて、嬉しいよ」


「すごいぞ、勇者!」 「戦士もよく頑張った!」 「二人ともカッコイイぞ!」


魔法使い「勇者も戦士も、もうすっかりヒーローだ……!」


僧侶「お二人の激闘が、剣が盛んな国の人々の心を掴んだんですね」


─ 剣の王国 城 ─


剣国王「君たちが勇者パーティーか。なるほど、みごとなものだ」


勇者「いえ、この国の闘技者たちも、強い人ばかりでした」


勇者「まだまだ修業が足りないことを思い知らされました」


剣国王「いやいや、君たちほど強い剣士を、私は見たことがないよ」


戦士「へへへ、剣の王国のお墨付きだ!」


剣国王「うむ。他に君たちほど強い剣士は──」


剣国王「……いや。一人だけ……いたな」


魔法使い「え?」


僧侶「勇者さんや戦士さん並みに、強い剣士の方がいたんですか?」


剣国王「うむ……強さだけならば、我が国の歴史上でも一番だったかもしれない」


剣国王「だが……剣士としてはあまりにも非道だった」


剣国王「剣を相手を殺すための道具としか見なしておらず」


剣国王「ひとたび戦いとなれば、相手が降参しようと容赦なく命を奪い」


剣国王「名誉欲や支配欲が強く、自分を認めない人間がいると徹底的に攻撃し」


剣国王「喝采を浴びたいがために、人をそそのかして騒動や事件を起こさせ」


剣国王「それを自分で解決するなどといった工作もやっていた」


戦士「とんでもねえヤロウだ……」


魔法使い「力はあるのに、その使い方を間違っちゃったタイプだね」


剣国王「むろん、皆もバカではない」


剣国王「すぐさまそれらの悪事は知れ渡り、奴はこの国に居場所を失った」


剣国王「誰よりも強かったが、誰よりも嫌われていた男だった……」


剣国王「皆に好かれる勇者殿とは正反対──いや、比べることすら失礼かもしれん」


勇者「ところで、その剣士は今どこに……?」


剣国王「……分からん」


剣国王「あの性格を正さぬ限り、どこにいってもやってはいけないだろう」


剣国王「案外今もどこかで、懲りずに悪巧みをしているのかもしれない」


剣国王「いや、これは余計な話をした。どうか忘れて欲しい」


剣国王「今日は我が国を挙げて、優勝者であり英雄である君たちを歓迎しよう!」


戦士「やったぜ!」


魔法使い「ありがとうございます!」


僧侶「剣の王国の王様だけあって、さっぱりした気風の方ですね」


勇者「…………」


─ 剣の王国 城外 ─


偽勇者「懐かしい景色だぜ……」


偽勇者「この国に帰ってくるのも、何年ぶりかな……」


偽勇者「さすがにこの国では顔を知られすぎてて」


偽勇者「ずっとあいつらについてるワケにゃいかねえな」


偽勇者(勇者たちが優勝した闘技大会……)


偽勇者(俺もずっと昔、対戦相手を全員ブッ殺して優勝したが、拍手や喝采はなかった)


偽勇者(あれから俺はどうしても皆に認められたくて、あれこれ策を練ったが)


偽勇者(どれも裏目に出て……この国を追い出されるはめになった)


偽勇者(おっと……イヤなこと思い出しちまった)


剣の王国を出発し、勇者たちの旅はいよいよ佳境を迎えた。


─ 魔王軍基地 ─


勇者「──よし!魔王軍幹部を討ち取ったぞ!」


戦士「こいつの指揮がなきゃ、俺ら人間界の軍隊がだいぶ有利になるぜ!」


魔法使い「ボクらの旅も……ついに終わりが見えてきたね」


僧侶「もうひと踏ん張りです。頑張りましょう、皆さん!」


偽勇者(まだまだ俺から見りゃ、スキだらけだが──)


偽勇者(こいつら、だいぶやるようになったじゃねえか)


偽勇者(──ん?)


少年魔族「た、助けて……」ガタガタ…


戦士「生き残りがいたのか。気は進まねえが、復讐に来られたら面倒だしな」チャキッ


勇者「待ってくれ、戦士!」


戦士「!なんだよ……?なんで止めるんだよ?」


勇者「俺たちは魔族を滅ぼすために戦ってるんじゃない」


勇者「人間を守るために戦っているんだ……これ以上、血を流す必要はない」


戦士「へっ……分かったよ」スッ…


勇者「おい、君」


少年魔族「は、はい!」


勇者「これは戦いだ……俺たちがやったことを、君に謝るつもりはない」


勇者「だけど、もし恨みを忘れられなかったら、直接俺に挑みにきてくれ」


勇者「俺はいつでも受けて立つ」


勇者「みんな、行こう。魔王城はもう目の前だ!」クルッ


偽勇者「…………」


─ 魔王城付近 ─


勇者「いよいよ明日……魔王城に乗り込む」


勇者「今さら夜襲もないだろう。今夜はぐっすり休んでくれ」


戦士「おうよ!」


魔法使い「念のため、周囲には結界を張っておくけどね」


勇者「ありがとう。それじゃ俺は、少し夜風に当たってくるよ」


僧侶「勇者さんも、早めに眠るようにして下さいね」


一人きりになった勇者。


勇者「…………」ザッ…


勇者「そこにいらっしゃるんでしょう?」


偽勇者「!」ピクッ


偽勇者「俺の気配に気づくとは……ずいぶん成長したな」


偽勇者「なにもかもがド素人だったあの頃が、まるでウソのようだぜ」


勇者「俺が……いや、俺たちが強くなれたのはあなたのおかげです」


勇者「元々俺たちは血筋や学校の成績だけで、魔王討伐を任された四人だったんです」


勇者「素質こそあったんでしょうが、実戦経験はゼロでした」


勇者「あなたがいたから俺たちは強くなることができ、増長することもなかった」


勇者「本当に……感謝しています」


偽勇者「……で、話はそれだけじゃなさそうだな?」


勇者「あなたが何者なのか、俺にはもう分かっています」


偽勇者「……剣の王国で聞いたのか」


勇者「はい」


勇者「あなたがなぜ、俺たちを助けてくれてたのかも、分かったつもりです」


偽勇者「それで……どうするつもりだ?」


偽勇者「邪心を抱く悪党を……この場で倒そうってか?」


偽勇者「俺はかまわんぜぇ?」ニィッ


勇者「いえ……逆です」


偽勇者「?」


勇者「どうか……俺たちの仲間になってくれませんか」


勇者「いや、俺の代わりに勇者になってくれませんか!?」


偽勇者「な……!」


勇者「過去の経歴はどうあれ、あなたの性格がどうであれ」


勇者「俺たちがここまでこれたのは、全てあなたのおかげです」


勇者「それに実力でいえば、まだまだあなたの方が上でしょう」


勇者「現に俺は、魔王には勝てる自信があるが、あなたに勝てる自信はまるでない」


勇者「たとえ他の三人と一緒に戦ったとしても、です」


勇者「世界を救ったという名誉、魔王を倒したという快挙──」


勇者「俺よりも、あなたにこそ相応しい」


勇者「戦士たちも、まちがいなく納得してくれるはずです」


偽勇者「…………」


偽勇者「ありがたい話だが、俺にそんなつもりはねえよ」


勇者「なぜです?……あなたは、勇者になることを望んでたはずだ!」


偽勇者「そう……そのとおりだ」


偽勇者「俺は誰よりも強くなりたかった。目立つことや褒められることが大好きだった」


偽勇者「だから、体がイカれるほど修業して、あれこれ策を練った」


偽勇者「だが……やり方をミスっちまって、慕われるどころか皆から嫌われて」


偽勇者「残ったのは……放浪生活で得た経験と、剣の腕だけだった」


偽勇者「やがて俺は、勇者の血を引く人間が住むという国に流れ着いた」


偽勇者「俺はこれが最後の大逆転チャンスだと悟った」


偽勇者「魔王とお前らを始末して、魔王を倒した勇者になっちまえば──」


偽勇者「みんなから慕われることができると!」


勇者「そうだ……あなたには資格がある。少なくとも、俺よりずっと!」


偽勇者「そう、俺もそう思ってた」


偽勇者「戦いのイロハも知らねえお前より、俺こそが勇者に相応しいと思っていた」


偽勇者「だが……そうじゃなかった」


偽勇者「お前らは冒険の途中で、大勢の人間に勇気を与えた」


偽勇者「たとえ、活躍に見合わない報酬でも文句一ついわず」


偽勇者「闘技大会では、負かした相手を決して貶めず、称えさえした」


偽勇者「時には、敵である魔族にすら情けをかけた」


偽勇者「これは……とても俺じゃできねえことだ」


偽勇者「剣は殺すもの、弱い奴が死ぬのは当然、ってのが心の根っこにある俺じゃあな」


偽勇者「“勇者”は強いだけじゃダメだ。それがようやく分かったんだよ」


偽勇者「そして──これを俺に教えてくれたのも、お前だ」


偽勇者「もう俺に、お前に取って代わろうなんて気はねえのさ」


勇者「だけどッ!」


偽勇者「もういいッ!これ以上頼まれたら、また野心が戻ってきちまいそうだ……」


偽勇者「行け、勇者!」


偽勇者「明日……魔王をブッ倒してこい!」


勇者「……はい!」


そして、翌日──


─ 魔王城 ─


魔王「ククク……ついに来たか、勇者よ」


魔王「しかし、しょせん人間ではこのワシには勝てぬ!」


魔王「魔族の王たるワシの力と恐ろしさをその身に焼きつけて、地獄にゆけいッ!」


勇者「みんな、行くぞ!」チャキッ


戦士「正真正銘ラストバトルだ!思う存分暴れさせてもらうぜ!」スラッ…


魔法使い「ボクの魔法には、冒険の途中で出会った人の想いも詰まってるんだ!」ボッ


僧侶「回復はお任せを!安心して戦って下さい!」


勇者「うおおおおっ!」ブオンッ


魔王「ぬううううっ!」シュバァッ


ガキンッ!


戦士「でやあっ!」シュバァッ


ザシュッ!


魔王「ぐぬうっ……!こしゃくな……!」


魔法使い「さあ、みんなの防御力を上げるよ!」ボァァ…


僧侶「大回復魔法です!これで皆さんの傷は癒えます!」パァァ…


魔王(完璧なコンビネーションだ……よもやここまでやるとは!)


魔王「ぐっ……おのれ、人間どもがぁっ!」


魔王「カァッ!!!」


ズガガガガッ!


勇者「ぐわっ……!まだまだァ!」


勇者「うおおおおっ!」シュバッ


魔王「ぐ……ぬうっ!」シャッ


ギィンッ!


勇者(こうして俺たちが魔王相手に互角以上に戦えているのは──)


勇者(あの人のおかげだ……!)ザッ


戦士「ハァ、ハァ……トドメはくれてやるぜ、勇者!」


魔法使い「いっけえ!」


僧侶「勇者さん、お願いします!」


勇者「うおりゃあああああッ!!!」


魔王「ぐうっ……!」ヨロッ…


偽勇者(……終わらせろ、勇者!)


ザンッ……!


魔王「ぐはっ……!バ、バカな……!」


魔王「このワシが……人間如き、にィ……!──ごふっ!」


魔王「も、もうし、わけ……」グラッ…


ドサァッ……


勇者「か、勝ったぁ……!」


戦士「よっしゃあああああっ!さすが勇者だぜ!」


魔法使い「やった……やったんだね!」


僧侶「ええ、ついに魔王を倒したんです、私たち!」


偽勇者(どうやら、最終決戦は……俺の出る幕はなかったようだな)


戦士「ところで……いつものあの人はどこにいるんだ?」


戦士「せっかく魔王を倒したんだ。あの人にも来て欲しいぜ」


魔法使い「なんならボクの魔法で探してみるかい?」


僧侶「そうですね、もしかしたら近くにいるかもしれませんし!」


戦士「もし見つけたら、一緒に王国に帰って──」


勇者「いや……やめておこう」


魔法使い「えっ、どうして?」


勇者「あの人は……そういうことは望んでないと思うんだ」


勇者「だから俺たちは、このまま四人で帰るのが一番いいんだ」


僧侶「たしかに……表に出たがるような人ではありませんでしたね」


魔法使い「うん、勇者がそういうのなら……やめとこっか」


戦士「んじゃあ、とっととこんな辛気臭いところからはおさらばしようぜ!」


偽勇者(……あいつらは帰ったか)


偽勇者(魔王を倒したのはまちがいなくお前たちの力だ。胸を張って帰れよ)


偽勇者(これで、俺の偽勇者としての生活も終わりだな……)


偽勇者(またあてもなく旅でもするか……)


偽勇者(──ん?)


魔王「うっ、ぐぐぅ……」ズル…


偽勇者(まだ息があるじゃねえか……)


偽勇者(あいつらの詰めが甘いのか、こいつの生命力がとんでもないのか……)


偽勇者(ま……あれなら放っておいても、すぐくたばるだろうが……)


魔王「ク、クク……」ゲフッ


魔王「憎き勇者どもめ……いまいましい勇者どもめ……」


魔王「奴らは知らぬ……」


魔王「北の大地にて復活を遂げるであろう……大魔王様の存在、を……」


魔王「せいぜい、ワシを倒して浮かれておれ……クククッ……」


魔王「──ガハァッ!」ゲボッ


魔王「…………」ガクッ…


偽勇者「どうやら……まだ終わっちゃいないみたいだな」


一ヶ月後──


─ 城 ─


ワイワイ…… ガヤガヤ……


魔法使い「ふう……。国中、まだどこもかしこもお祭りムードだ。落ちつかないよ」


戦士「いいじゃねえか。もう俺たちが戦う相手はいねえんだしよ!」


僧侶「そうですよ!とことんパーっと楽しみましょう!」


魔法使い「とことん、ねえ……」


勇者「…………」


姫「どうしたのですか?勇者様?」


勇者「いや、なんでもないよ……姫」


勇者(なんだろう……。なにかとんでもないことが起こるような、胸騒ぎがする)


勇者(いや……もう、すでに起こっているような……)


すると──


兵士「大変です、陛下!」ザッ


国王「どうした?」


兵士「遥か北の大地にて、大量の魔族が現れ、南下を始めたという報告が──」


国王「なにい!?」ガタッ


勇者(やはり……!)


兵士「あったのですが──」


国王「ん?」


兵士「発見者である極北観測人が、もう一度状況を確認しにいったところ」


兵士「南下していたはずの魔族たちが全員死体になっていた、と……」


国王「なんだと……!?」


国王「それはいったい、どういうことだ……!?」


兵士「観測人によると、仲間同士で争ったとしか考えられない、と……」


国王「ふうむ……いずれにせよ助かった」


国王「もし同士討ちが起こらねば、今から勇者たちや兵士らを派遣しても」


国王「大勢の犠牲者が出ることは避けられなかっただろう……」


戦士「なんだよ、ビックリさせやがって……」


魔法使い「でも、ビックリで済んでよかったよ」


僧侶「まだ魔王軍が残っていたなんて……同士討ちしてくれたのは幸運でしたね……」


勇者「…………」


姫「どうしたの?勇者様?」


勇者「いや、なんでもないよ」


勇者(これはまさか……あの人が……)


その頃──


─ 北の大地 ─


大魔王「ぐぬぬぅ……ありえぬ!勇者の血を引くわけでもない者が」


大魔王「たった一人で、我が直属の軍団をこうもたやすく壊滅させるとは……」


偽勇者「勇者の冒険は、魔王を倒した時点でもう終わってんだよ」


偽勇者「ようするに、お前は“蛇足”なんだ。ここで人知れず退場してもらうぜ」チャキッ


大魔王「キ、キサマ……何者だァッ!」


偽勇者「あ?俺か?んなもん、勇者様に決まってんだろ」


偽勇者「ただし──」


偽勇者(勇者……こいつは俺に任せて、お前は仲間と平和になった世界を楽しみな)


偽勇者(こんな北の果てにも、ちゃんと勇者様はいるから安心しろい!)


偽勇者「──ニセモノだけどなあッ!!!」


─ 完 ─ 

 


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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:b6vP9DBk0編集削除
長くて無理
2 . 名無しさん  ID:RQhdUrq80編集削除
ラスト、ダイの大冒険の台詞www
3 . 名無しさん  ID:8sEXZg6j0編集削除
ええやん
4 . 名無しさん  ID:hdAjpjeQ0編集削除
まぶしい そらを かがやく うみを わたせるもんか あくまのてには
みんなの ねがい からだに うけて さあ よみがえれ 
ライディーン ライディーン
5 . 名無しさん  ID:Wc3iJ.DK0編集削除
包丁投げたら9999のダメでるはずだから
魔王なんて楽勝・・・
6 . 名無しさん  ID:h1Fz.jCr0編集削除
オチwwwお前かwww

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