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2012年 東京某所の靴屋

のび太「いらっしゃいませ。」

?「すいません。こちらのお店は靴の修理はやっていらっしゃいますか?」

のび太「はい。当店でお買い上げいただいた商品でしたら。」

?「あ、いや。買ったのは別のお店なんでs・・・・・・のび太君?」

のび太「えっ?」

?「のび太君だよね?」

のび太「はぁ、左様ですが・・・・・・」

?「僕だよ。覚えてない?」

のび太「・・・・・・!? 出木杉君!?」

出木杉「思い出してくれたかい?」


のび太「出木杉君!ごめん、一瞬分からなかったよww 久しぶりだねぇ!」

出木杉「ホント久しぶりだねぇ。中学以来かなぁ?」

のび太「そうなるねぇ。僕ら、高校は別々だったから。」

出木杉「懐かしいなぁ。のび太君、靴屋さんに就職したんだ。」

のび太「うん、そうなんだ。」

のび太「あっ、ところでさっき言ってた修理って? ちょっと深刻そうな顔に見えたけど・・・・・・」

出木杉「あぁ、実はね、この革靴の底を張り替えたいんだけど・・・・・・」ガサゴソ

のび太「どれどれ・・・レザーソールか。結構磨り減ってるね。」

出木杉「就職祝いで父に買ってもらった大切な靴なんだ。今までに底は2回張り替えたんだけど、まだ張り替えられるなら張り替えたいと思って。」

のび太「そっかぁ。その2回張り替えてくれたお店ってのは?」

出木杉「会社の近くにあったんだけど、先月に廃業しちゃってね。他に修理してもらえるお店はどこかないかと探してるんだ。」

のび太「なるほどなぁ・・・・・・うん、分かったよ。うちで修理しよう。」

出木杉「えっ? 良いのかい? このお店で買った物じゃないのに。」

のび太「良いよ良いよ。基本、他店の商品は修理中に何かあっても保証ができないから断ってるんだけど、君とは昔のよしみだからね。修理させてもらうよ。」

出木杉「うわぁ、助かるよ。ありがとう、のび太君。」

のび太「どういたしまして。ただ、外底だけの張り替えじゃ済まなさそうだなぁ。」マジマジ

のび太「コルクの交換も必要かも知れない。」

出木杉「コルク? 何なの、それ?」

のび太「見たトコロ、この靴はグッドイヤーウェルトという製法で作られてるんだ。グッドイヤーウェルトは両底にコルクのクッションを挟むんだけど」

出木杉「???」

のび太「あぁ、ごめん、ちょっと分かりにくい説明だったねww」

のび太「まず、出木杉君が張り替えて欲しいって言ってた、この地面と直に接する底。靴裏と言い換えても良いね。これを外底と言うんだ。」

出木杉「うん。」

のび太「そして、靴を履いた時に足の裏と接する、靴の内側の底。これを中底と言うんだ。」

出木杉「あぁ、確かにどちらも底と言えば底だね。」

のび太「そうなんだよ。ややこしいよねww」

のび太「それで、さっき言ったグッドイヤーウェルトっていう製法は、この外底と中底の間にコルクのクッションを挟んで作るやり方なんだ。もちろん他にも特徴はあるけど、ここでは省略するよ。」

のび太「コルクのクッションは、持ち主の足裏の形に合わせて変形するから、すごく足に馴染みやすくて履き心地が良いんだ。」

出木杉「確かに。履き始めの頃より今の方が楽だ。」

のび太「そうでしょ? それがグッドイヤーウェルトの魅力の一つなんだ。ただ、あまりに変形しすぎると、外底の張り替えの時に一緒に交換しなきゃいけなくなる。」

出木杉「えっ? どうして? せっかく足に馴染んできたのに?」

のび太「うん、張り替えに使う新品の外底は真っ平らだからね。凹凸の付きすぎたコルクだと、その真っ平らな外底と上手く着かないんだ。」

出木杉「あっ、なるほど!」

のび太「出木杉君のこの靴は、まさに今言った凹凸が付きすぎてる状態なんだ。だから外底と一緒にコルクも替える必要があるんだよ。」

出木杉「なるほど、そういう事かぁ。」

のび太「だから外底交換とコルク交換を合わせて・・・・・・うん、10000円かな。」

出木杉「!? そんなに安いの!? 前の修理の時は外底交換だけで15000円ぐらいだったよ!?」

のび太「いや、もちろん普通はそれぐらいするよ、レザーソールだしね。でも、今回はちょっとオマケしとくよ。」

出木杉「いやいやいや、良いよそんなの! ただでさえワガママを聞いて修理してもらうんだから。この上、値段まで負けてもらうなんて・・・・・・」アセアセ

のび太「良いよ良いよ。気にしないで。流石に旧友から利益を取る気になんてならないからww」

出木杉「のび太君・・・・・・」

のび太「大丈夫だよ、ホントに。気にしないで。ただ、今、交換用のレザーソールのパーツがないから、入荷待ちと修理工程を含めて、1ヶ月ほど猶予をもらいたいんだけど、良いかな?」

出木杉「うん、それは一向に構わないよ。こんな格安で修理してもらえるなら、いくらでも待つさ。」

のび太「助かるよ。じゃあ、申込書に名前と電話番号を書いてもらえるかな?」サッ

出木杉「分かった。」サラサラッ

のび太「ありがとう。じゃあ、修理が終わったらまたこの番号に電話するから、そしたらいつでも都合の良い時に取りに来て。お代はその時で良いから。」

出木杉「のび太君、何から何までホントにありがとう。」

のび太「やめてよww 普通に仕事をしただけだからww 照れ臭いよww」

出木杉「のび太君、変わったね。」

のび太「えっ? そうかな?」

出木杉「うん、変わったよ。なんて言うか・・・・・・失礼な言い方だけど、すごくしっかりして、頼りになる感じになった。」

のび太「昔は僕、頼りなかったもんねぇww おまけにバカでマヌケでww」

出木杉「その上、ドジでぐうたらだったww」

のび太「おいコラ、言い過ぎだろww」

出木杉「wwwwww」

のび太「wwwwww」

出木杉「でも、ホントにすごいと思うよ。さっきの修理の説明もすごく分かりやすかったし。『プロだなぁ』って感じがしたよ。」

のび太「いやいや、あれは靴屋の基本の“き”だよ。入社1年目で覚える事だから。」

出木杉「そうなんだ。じゃあ8年目の今は、もっとすごい知識を持ってるんだね。」

のび太「僕はまだ5年目だよ。中途入社だからね。」

出木杉「あっ、そうなの? 前は何の仕事を?」

のび太「いや、僕は・・・・・・」

のび太「・・・・・・25歳まで、引きこもりだったんだ。」

2002年。
のび太20歳の誕生日。

この日、ドラえもんは未来に帰って行った。

高校に入った頃から、のび太は少しずつドラえもんの道具には頼らなくなってきた。

部活は弓道部に入った。

幼少の頃よりモデルガンの射撃には定評のあったのび太。

和弓とモデルガンではいささか勝手が違うが、コツを掴めば持ち前の射撃精度を発揮し、メキメキと頭角を表し始めた。

人間とは、何か一つでも夢中になれる物が見付かれば変わるものである。

弓道に打ち込み出した辺りから、のび太は学業の成績も少しずつ向上させ始め、3年生の夏頃には都内の比較的偏差値の高い大学にも手の届くレベルとなっていた。

努力する事の楽しさを知ったのび太にとって、ドラえもんの道具はもはや必要ではなくなった。

悩み事があれば必ずドラえもんに相談する。

だが、道具は借りない。

そして自分の言葉で、体で、意志で解決する。

のび太が大学に入った時、ドラえもんは四次元ポケットを未来のせわしの家に預けた。

のび太からそう申し出たのだ。

『まるでドラえもん自体が道具であるかのように考えていた、当時の自分が許せないんだ。』

こんなにも嬉しい言葉はなかった。

ロボットの人権が認められている22世紀の世界ですら、依然としてロボットをただの道具や機械とみなす人は少なくない。

なのに、100年も前の時代に生きるこの少年の、何と優しい事か。

ドラえもんは泣いた。

僕に涙を流す機能があって良かった。

僕がどれだけ幸せか、彼に伝える事ができる。

そこにはただ、野比のび太とドラえもんという、
2人の親友だけが残った。

20歳の誕生日。

のび太は大学からの帰り道、パパ・ママ・ドラえもんに、それぞれプレゼントを買って帰った。

ママのお気に入りの洋菓子店のプリン、パパが社会人になった頃から贔屓にしているブランドのネクタイ、そしてあんこがたっぷり詰まったどら焼き。

この20年間、実に19回も誕生日を祝ってもらい、プレゼントを貰った。

ならばたまには、20年目の節目ぐらいは、こちらからプレゼントを渡しても良いのではないかと、のび太は考えた。

産んでくれてありがとう、育ててくれてありがとう、と。

ママもパパもドラえもんも、プレゼントを見て非常に驚き、そして目を潤ませて喜んでくれた。

そしてドラえもんはその夜、未来へ帰る事をのび太に告げた。

のび太の成長を目の当たりにし、もう自分の助けは必要ないと確信したと言う。

ドラえもん「君はもう大丈夫だよ、のび太君。」

のび太にはワケが分からなかった。

大丈夫って何が?

僕はもう、ドラえもんに頼ろうなんて思っちゃいない。

ただ、親友とずっと一緒にいたいだけなのに。

なのに帰ってしまう?

なんで?

なんで?

頭の中でいくつもの言葉が飛び交った。

しかし、それは口には出さなかった。

頭は混乱していたが、一方でどこか冷静な自分がいた。

その冷静な自分は分かっていた。

ドラえもんがいつか、未来に帰ってしまう事を。

ふと、高校の卒業式の日を思い出した。

のび太は職員室を訪ね、お世話になった弓道部の顧問の先生に挨拶をした。

あの時、先生は今までに見せた事のない優しい目をしていた。

一人の人間を立派に育てた充足感、その人間の今後の幸せを願う慈愛、そして、愛しているが故の淋しさ。

様々な暖かい感情がない交ぜとなった、とても優しい目。

今のドラえもんは、あの時の先生と同じ目をしている。

ならば、この別れは避けられない。

いや、避けてはいけない。

のび太はありったけの言葉で感謝を伝えた。

伝え続けた。

涙が止まらず、嗚咽で声が裏返っても、ドラえもんの丸い手をしっかりと握り、必死にありがとうと言った。

一緒に冒険をした。

一緒に色んな場所に行った。

ケンカもたくさんした。

それと同じだけ仲直りもした。

ドラえもんと出会えて本当に良かった。

ドラえもんと過ごした日々はとても幸せだった。

ドラえもん、ありがとう。

僕はドラえもんが大好きだ。

ありがとう。

ありがとう。

ありがとう。

ドラえもんがのび太に伝えようと思っていた言葉は、のび太が全て先に言ってしまった。

相手に対する想いは、お互い同じだったから。

なので、ドラえもんはただ黙って、泣きながら笑って、のび太の手を握り返しながら、優しく頷いていた。

二人の頭上を、夜がゆっくり流れていった。

やがて、窓の外に広がる空が白み始めた頃、別れの時がやって来た。

のび太に見送られながら、ドラえもんは机の引き出しを開けた。

のび太は、泣いていなかった。

最後は笑顔で別れると決めたから。

ドラえもんの体が徐々に引き出しへと入ってゆく。

まるで水平線に沈み行く夕陽のようだ。

ドラえもんの丸い頭が少しずつ、引き出しの中へと消えてゆく。

のび太の脳裏を、狂ったように思い出が駆け巡る。

目に写る映像、写らない映像。

スローモーション。

そしてついに、青い夕陽は沈んでしまった。

引き出しが閉じられる。

静寂が訪れた。

ドスンッ!

のび太は膝から崩れ落ちた。

そして、部屋に立ち込める静寂を追い払うかのように、声を上げて泣いた。

涙は無尽蔵だ。

さっきあれだけ泣いたのに。

こんな明け方に大泣きしたら、きっと近所迷惑だろうな。

でも、止められない。

涙と、悲鳴のような嗚咽は、後から後から沸き上がってくる。

ドラえもんは

もう

いない。

それから1週間後。

のび太は部屋から出て来なくなった。

2012年 東京某所の靴屋

のび太「いらっしゃいませ」

?「わぁ! のび太さん! ホントにいたんだぁ!」

のび太「!? じ、ジャイ子ちゃん!?」

ジャイ子「流石のび太さん! アタシの事、覚えててくれたのね!」

のび太「あ、あぁ。まぁね。」

のび太(忘れろって方が無茶でしょ.....)

ジャイ子「出木杉さんから、のび太さんがこの近くの靴屋さんで働いてるって聞いてね。それで見に来たのよ。」

のび太「あぁ、出木杉君が.....って、あれ? 出木杉君とジャイ子ちゃんって、そんなに絡みあったっけ?」

ジャイ子「子供の頃はそんなになかったわね。お兄ちゃんが中1の頃、テスト前になると出木杉さんを家に無理矢理連れてきて、その時に何度かお話ししたぐらいかなぁ?」

のび太(ジャイアンェ・・・・・・・)

のび太「じゃあ、出木杉君からどうやって話を?」

ジャイ子「Facebookよ。出木杉さんがこないだ、のび太さんの事を近況に書いてて。」

のび太「あぁ、なるほど。『相変わらずドジでぐうたらだった』とか書いてたの?ww」

ジャイ子「違うわよww のび太さんの事を絶賛してたの! 『親切・丁寧な接客で、まさにプロって感じでした。同じ社会人として見習わねば!』って。」

のび太「大袈裟だよぉww」

ジャイ子「それでね、アタシもちょうどパンプスが欲しいと思ってたから、のび太さんに会うついでに何か選んでもらおうかと思って。」

のび太「あぁ、それはもう喜んで。」

ジャイ子「だけどねぇ、アタシの足に合うパンプスってなかなかないのよ。歩いてるとすぐ痛くなってきちゃって。」

のび太「ふむふむ」

ジャイ子「大学の頃は多少痛くても無理して履いてたんだけどね。今はもう痛いのが億劫で。最近じゃ、お店で試着した瞬間から痛かったりもするし。」

のび太「分かるよ。歩く度に痛いんじゃ辛いもんね。」

ジャイ子「そうなのよ。だから今はもう夏はクロックス、夏以外はスニーカーって感じでorz」

のび太「ははっ。確かにクロックスもスニーカーも楽だしね。」

ジャイ子「でも、それじゃ男の子みたいじゃない。もっとヒールの高いカワイイ靴も履きたいなぁと思って。」

のび太「なるほど。じゃあさ、そのイスに座って、靴を脱いでもらえるかな? 足を見せて。」

ジャイ子「分かったわ。」ヌギヌギ

のび太「」ジー

のび太(幅広、甲はまぁ普通、それに外反母子か)

のび太「うん、だいたい分かったよ。じゃあさ、こういう甲にストラップがかかってるのはどうかな?」ヒョイ

ジャイ子「あっ、カワイイ! でも、ヒールが......」

のび太「うん、確かにヒールは高い。でもね、この靴なら絶対痛くならないよ。理由があるんだ。」

ジャイ子「理由?」

のび太「まぁ、それは追々説明するから、とりあえず履いてみて。これ、24.5センチだから。」

ジャイ子「えっ? どうしてアタシのサイズを......」

のび太「足を見れば分かるよ。」

ジャイ子「!!」ドキッ

ジャイ子(すごい......ホントにプロだ......)スポッ スポッ

のび太「履けたね。じゃあ立って、歩いてみて。」

ジャイ子「あっ、はい。」スタスタ

のび太「」

ジャイ子「」スタスタ

のび太「」

ジャイ子「」スタスタ

のび太「どう?」

ジャイ子「......痛くない。えっ? なんで? 痛くない!」

のび太「ジャイ子ちゃんは足の幅が広いみたいだからね。少し幅が広めのパンプスを選んだんだ。それと、そのパンプスは中が深くてね。深いから外反母子の骨の出っ張りをスッポリ包んでくれる。そうすれば痛くないんだよ。」

ジャイ子「そうなの? 確かに全然痛くないけど。」

のび太「外反母子ってのは、靴の外にハミ出して履き口の淵に擦れると痛いんだ。スッポリ包んじゃえば擦れないからね。」

ジャイ子「そうなんだ。」

のび太「尚且つ、そのパンプスはアッパーに羊の革を使ってるんだ。」

ジャイ子「羊?」

のび太「うん。羊の革は柔らかいから、多少締め付けられても痛くないんだよ。そして、外反が当たる部分にも飾りの縫い目が入ってない。縫い目が入ってると革が伸びにくくて後々痛くなる事があるんだけど、その靴は縫い目がないからよく伸びるんだ。だから、さっき言ってた『歩いてたら痛くなる』って心配もない。」

ジャイ子「ホントに!? もうね、靴を買ってもそれだけが心配で心配で。」

のび太「ヒールを履く女性は誰でも経験する事だろうね。それともう一つ。そのパンプスは甲にストラップが着いてるでしょ?」

ジャイ子「えぇ。」

のび太「パンプスはカカトと幅で足を締めて固定するんだけど、特に一番負荷のかかる幅、つまり親指と小指の付け根だね。そこは痛くなりやすいよね。ジャイ子ちゃんみたいに幅の広い人は特に。けど、これみたいにストラップが着いてるタイプは、幅にかかる負担を減らしてくれるんだ。要は負担を、幅とストラップに分散するワケだね。」

ジャイ子「そうなんだぁ!」

ジャイ子「すごいわ、のび太さん! ホントに楽! さっきからずっと履いてるけど、全然痛くないもの!」

のび太「このパンプスが、ジャイ子ちゃんの足の形と相性が良いんだよ。相性の良い靴なら絶対に痛くならないからね。」

ジャイ子「決めた。のび太さん、このパンプス買います。もうこれは買うしかないわ。」

のび太「ありがとうございます。」

のび太「じゃあ、14700円で。」

ジャイ子「えっ? さっき、値札には18900円って......」

のび太「マケとくよ。出木杉君の時もこれぐらいマケたからね。」

ジャイ子「ホントに? ホントに良いの? 上の人から怒られない?」

のび太「大丈夫だよww 今月は結構よく売れてるから。ノルマは余裕で達成できそうなんだ。友達の妹から利益を取らなきゃいけないほど切迫はしてないよww」

ジャイ子「助かるわぁ。ありがとう。はい、じゃあこれで。」

のび太「はい、15000円お預かりの300円お返しです。ありがとうね。」

ジャイ子「今日はホントに良いお買い物ができたわ。のび太さん、またちょくちょく来るわね。」

のび太「どうぞどうぞ。来月にレディースの新作をドカッと入荷するから、その時来てくれたら、また何か良いのをご案内させていただくよ。」

ジャイ子「楽しみにしてるわ。ありがとう。それじゃ。」

のび太「どうもありがとう。」

ジャイ子「〜♪」スタスタ

のび太「」

のび太「......ジャイ子ちゃん!」

ジャイ子「なに?」クルッ

のび太「あのさ......」

のび太「......ジャイアン、元気?」

2002年

ドラえもんが未来に帰ってから1週間後、のび太は大学とバイトをサボった。

誕生日のあの日、ドラえもんとの思い出を胸に、前を向いて生きていこうと心に決めた。

だが、最愛の親友を欠いた日常、そこから生まれる孤独は、誰の手にも負えない驚異的な速さでのび太の心を蝕んでいった。

大学に行っても、講義に身が入らない。

学友の声は上の空。

バイト先ではミスを連発。

そして帰宅し、自室のふすまを開けても、もう部屋には誰もいない。

ヒビが入り、軋み続けるのび太の心。

その心が崩落を始めるまでに要した期間が、1週間であった。

以来、のび太は学校にもバイトにも行かず、1日の大半を部屋で過ごす日々を送るようになる。

世に言う引きこもりである。

パパとママも、ドラえもんが帰ってしまった淋しさから来る、一時的な行動だろうと考え、最初は深くは問い詰めなかった。

しかし、1週間、2週間、3週間、そしてついには1ヶ月が経過しても変化が見られない。

大学もこのままでは確実に留年してしまう。

いよいよ両親も業を煮やし、ある夜、のび太をダイニングに呼び出して話を聞こうとした。

一体どうする気なんだ。

のび太は、目を合わせず答えた。

どうする気もない。

と言うか、もう“何かをする気”自体、持ちたくはない。

パシンッ!

ほぼ反射的に、パパの右手はのび太の頬を張っていた。

親が子に施す躾としてのそれではない。

同じ人間として許せない発言をした者に向ける、等身大の武力行使。

つい1ヶ月前までは、世界一の自慢の息子だった。

その息子に対して、まさかこんな苦々しい一打を行使する事になるなんて。

のび太は涙を滲ませた瞳でパパとママを睨み付けると、無言で席を立ち、ダイニングの扉を後ろ手で乱暴に閉じながら、部屋へと戻って行った。

ダイニングにはママのすすり泣く声だけがこだまする。

パパは溜め息をつきながらタバコに火を着けた。

しかし一口吸ってすぐ、灰皿へと投げ込む。

火種を消す気力もない。

息子は、我が家は、どうなってしまうんだろう。

2012年 東京某所の靴屋 スタッフ控え室

のび太「ふぅ〜。ちょっと食べ過ぎたかなぁ。」

のび太「でも、これでチャージ完了だ。さっ、午後からも売るぞぉ〜。」ガチャッ

のび太「休憩あがりまs」

?「おかしいじゃございませんこと!?」

のび太「!?」

バイト「あっ、えっと・・・・・・」

?「お店の方が商品の説明もおできにならないなんて、どうなってるざます!?」

のび太(“ざます”?)

バイト「あっ、あの......すいません僕、バイトでs」

?「じゃあお話のお分かりになる方を呼んで来て下さいまし!!」

サッ

のび太「バイト君、代わるよ。」

バイト「あっ、野比さん。すいません。」スゴスゴ

のび太「申し訳ございませんお客様。いかがなさいましたか?」

?「アタナは責任者ざますか!?」

のび太「はい。副店長の野比と申します。」

?「まったく! 一体こちらのお店は・・・・・・えっ? 野比さん?」

のび太「スネ夫君のお母様・・・・・・ですよね?」

スネママ「!? のび太さんざますか!?」

のび太「はい。ご無沙汰しております。」

スネママ「あらぁ、こんなにご立派になられて! お母様はお元気ざますか?」

のび太「えぇ。お陰さまで。」

のび太「それより骨川さん、先ほどは当方のスタッフが不快な思いをさせてしまったようで。」

スネママ「もう良いざます。スネちゃまのご友人のお顔を見たら、少し落ち着いたざます。もう大きな声は出しませんので、聞いていただけますこと?」

のび太「はい。もちろんです。」

スネママ「今日はスネちゃまの昇格祝いのプレゼントで、お仕事用のお靴を買いに来たざます。」

のび太「それはそれは。おめでとうございます。」

スネママ「スネちゃまはこういったデザインで、ダークブラウンのお靴がお好きざますの。」

のび太「ダークブラウンのストレートチップですか。カッコイイですよねぇ。当店でも大人気ですよ。」

スネママ「オホホホッ。スネちゃまのファッションセンスは一流ざますからね。」

のび太「はははははっ。」

のび太(まぁ、スネ夫の事だ。きっとスーツも良いの着てるんだろうなぁ。)

スネママ「ところがね、のび太さん。こちらの棚の右のお靴と左のお靴。どちらも同じデザインで、お色も同じダークブラウンですのに、10000円もお値段が違うじゃございません事?」

のび太「えぇ。確かに。」

スネママ「そこでワタクシ、先ほどの方に、このお値段の違いは何なのかとお尋ねしたざます。そしたらあの方『こっちの方が履き心地が良いから高いんです』なんて、曖昧なお返事しかして下さらなかったざます。」

のび太「あぁ、左様ですかぁ。それは大変失礼をいたしました。」

スネママ「いえ、もうよろしいざますがね。ただ、履き心地が良いから高いのは当たり前でございましょ? ワタクシとしては、具体的に何が違って、どんな風に履き心地が良いのか、そういったご説明をしていただきたかったんざます。」

のび太「おっしゃる通りです。失礼をいたしました。」

スネママ「ワタクシ、質の良い物を手に入れる為にはお金は惜しみません。ですが、その物の質を把握し、それ相応の対価が見出だせなければ決して買わない。それがワタクシのお買い物のポリシーざます。」

のび太「かしこまりました。では、僕からご説明をさせていただきます。」

スネママ「お願いするざます。」

のび太「確かにこの両者は似ていますが、アッパーに使っている革の素材がまず違うんです。」

スネママ「えぇ、えぇ。」

のび太「右の安い方の靴はキップと言いまして、生後半年から2年以内の若い牛の革を使っています。」

スネママ「キップ。存じているざます。あっ、では、左の高い方のお靴は・・・・・・」

のび太「はい。カーフを使用しております。」

スネママ「生後半年以内の幼牛の革ざますね。」

のび太「流石、よくご存知で。牛革は牛の年齢が若ければ若いほど、伸縮性、通気性、汗の吸収力が良くなります。しかし、若い牛ほど体の面積が小さいので、採れる革の量も少なくなります。それ故、カーフの方が高いんです。」

スネママ「なるほど。」

のび太「それともう一点。こちらのカーフの革は、一旦、ダークブラウンで均一に染めた後、わざと色を落として色ムラを付けているんです。」

スネママ「なぜそのような事を?」

のび太「そうする事によって、渋〜い濃淡が現れるんですよ。どうぞ、手に取ってご覧下さい。」サッ

スネママ「」マジマジ

スネママ「確かに。まるでマホガニーのテーブルのような、気品のある濃淡ざますね。」

のび太「そうなんです。本当に綺麗でしょ? ただ、その濃淡を出すための脱色の工程は、全て手作業で行われていますので、均一に染めているタイプと比べると生産量が下がります。そのため・・・・・・」

スネママ「お高い、と。」

のび太「はい。」

スネママ「なるほど。実によく分かったざます。品質とデザイン、両方の面でこちらが上手なのでございますね。」

のび太「その通りです。」

スネママ「分かったざます。では、のび太さん。こちらのカーフのお靴をいただくざます。」

のび太「ありがとうございます。」

スネママ「スネちゃまのお足は25センチざます。25センチをご用意下さいまし。」

のび太「かしこましました。」

スネママ「10足。」

のび太「10足!?」

のび太「はい。ではカードご一括にて、52万5千円ちょうど、頂戴いたしました。こちらにご署名をお願いいたします。」

スネママ「はいざます。」サラサラッ

のび太「お手数おかけいたしました。こちら、レシートとカードのお控えでございます。」スッ

スネママ「では、のび太さん。残りの8足は入荷次第、送って下さいまし。」

のび太「分かりました。どうもすいません、2足しか在庫がなくて。」

スネママ「いえいえ。それが普通ざます。こちらもそういう状況には慣れてるざますよ。」

のび太「恐れ入ります。」

のび太(骨川家パネェ!)

のび太「あと、もしスネ夫君が足を通されて、幅や甲の高さ等が合わないという事がありましたら、お手数なんですが、すぐご連絡の上、当店までご送付下さい。違うサイズの物と交換させていただきますので。ただ、手前勝手を申しますが、その際はできるだけ新品の状態で交換させていただきたく存じますので、できれば購入後すぐに一度、玄関で足を通していただいt」

スネママ「オホホホホッ。ご心配無用ざますわよ、のび太さん。スネちゃまのお靴は、幼少の頃よりワタクシが選んでまいりましたざます。今では、お靴を見ただけで、それがスネちゃまのお足の幅や甲の高さに合うかどうか、すぐに分かってしまうざます。」

のび太「そうなんですかw」

スネママ「このお靴は間違いなくスネちゃまのお足に合うざます。そうでなくては、ワタクシも購入などいたしませんことよ。」

のび太「なるほどw さすがですねw」

のび太(まぁ、僕が靴のプロなら、この人はスネ夫のプロだからなぁ。ここはプロの言う事を信じよう。)

のび太「スネ夫君は骨川グループに就職されたんですか?」

スネママ「はいざます。今は大阪支社で課長をしているざます。」

のび太「大阪ですか。」

スネママ「大阪支社長さんは夫の同期のお方でございましてね、それはそれは厳しい事で有名でございますの。スネちゃまは将来の社長さんざますからね。その方の下で、同い年の社員さん共々、ビシバシ鍛えていただいてるざます。」

のび太「そうなんですか。スネ夫君、頑張ってるんですねぇ。」

のび太(意外だなぁ。てっきり、親の七光りで幹部にでもなってるのかと思ったのに。骨川家も仕事にはシビアなんだなぁ。)

スネママ「・・・・・・ところで、のび太さん。」

のび太「はい?」

スネママ「気を悪くなさらないで下さいましね。確かのび太さんは、大学をおやめになって、その・・・・・・おニートをなさっていたとか?」

のび太「うっ!」ギクッ

のび太(恨めしや狭いご町内)

のび太「えっと、お恥ずかしながら、その通りですw」

スネママ「色々あったんざますね。でも、そこから立ち上がって、こんな立派な販売をなさっているんですから、その経験も決して無駄ではなかったんざますね。」

のび太「いやいや。あれは黒歴史ですよ。ホントに、人生を無駄使いしてしまいました。」

スネママ「いえ、のび太さん。人生に無駄なんてございませんことよ。」

のび太「えっ?」

スネママ「過ちを受け入れ、自分を許す。そうやって人は一回り大きくなるざます。だから、人生には過ちも必要ざます。その過ちとて、決して無駄ではないのざます。」

のび太「骨川さん・・・・・・」

スネママ「オホホホッ。年寄りのお節介ざます。どうぞお聞き流し下さいまし。まったく、年は取りたくないものざますね。」

スネママ「では、のび太さん。ごきげんよう。」

のび太「あっ、はい! ありがとうございました!」

スネママ「〜♪」スタスタ

のび太「・・・・・・“過ちとて、決して無駄ではない”、か。」

2007年 のび太の自室

のび太「Zzz。Zzz。」

のび太「Zzz。Zzz。」

のび太「Zzz・・・・・・んっ」パチッ

のび太「・・・・・・ふあ〜」ノビー

のび太「・・・・・・何時だ?」ガサゴソ

のび太「午後3時か・・・・・・」

のび太「・・・・・・いつもより早く起きちゃったな。」

のび太、現在25歳。

平手打ちを喰らったあの日以降も、何度となく両親とは衝突した。

でも、その度に互いの意見は平行線で、一向に交わることはなかった。

そして、ついに両親は何も言ってこなくなった。

大学は留年、退学。

バイトも無断欠勤が続きクビ。

もう最近では、引きこもっている事に対して何かを感じる事も、あまりなくなってきた。

それと比例して、徐々に昼と夜の活動時間も逆転し始めた。

5年目の現在では、180度反転。

朝刊が届くと同時に寝て、夕刊が届いた頃に起きる。

そんな生活を送っていた。

のび太「何か良い腹筋スレは、っと。」カチカチ

のび太「なになに?『彼氏がチ〇ポにファンタかけてる(´;ω;`)』『ファンタスティック』」

のび太「ぶはっはははは!」

のび太「おっさん絶好調だな。」

チクリ

のび太「・・・・・・絶好調、だな・・・・・・」

引きこもっている事に対して何かを感じる事も、あまりなくなってきた。

そう、あくまで“あまり”。

“まったく”ではない。

小さな焦りの気持ちは、常に心の片隅でのび太を監視していた。

ソイツは小さい癖に、1日に何度か、のび太の心の最深部へ土足で上がり込んでくる。

しかし、一度知ってしまったこの生活には、如何ともし難い魅力があった。

1日はあっとゆう間に過ぎていった。

カチャッ ブロロロロ

のび太「あれ? もう朝刊の時間か。1日早いなぁ。じゃあ、ネットニュース見てそろそろ寝ようかな。」カチカチ

寝る前にネットでニュースをチェックするのが、のび太の日課だった。

のび太「『京都府亀岡市で小学生に車が突っ込む。容疑者は無免許の未成年(18)』だって?」

のび太「うわぁ、ひどい事件だなぁ。DQN死ねよ。」

のび太「あぁ、胸糞が悪い。ちょっと芸能ニュースでも見て気を紛らせよう。」カチカチ

のび太「なになに?『あのカリスマラッパーがメジャーデビュー』?」

普段は芸能ニュースと言っても、もっぱらアイドル関連の記事しか読まない。

ネットでアイドルヲタを煽る時に役立つからだ。

全く興味のないヒップホップの記事をクリックしたのは、単なる気まぐれだった。

だが後年、のび太はこの記事を読んだのは、何かの導きだったのではないかと考えるようになる。

のび太「どれどれ。」

PC(アンダーグラウンドヒップホップシーンでカリスマ的な人気を誇るラッパー・ZAKK Da GGG(ザック ダ スリージー)さんのメジャーデビューシングル『My name is G』が本日発売となる。そのPR活動として本日の午後2時頃、渋谷のタワーレコードでZAKKさんの無料ミニライブが開かれる。)

のび太「はんっ。カリスマって。」

胡散臭い言葉だと思った。

どうせまた、リア充やスイーツ()御用達の、ラブソングラッパーだろう、と。

のび太「一体どんな奴だろ? 写真は・・・・・・」スクロール

のび太「!!!?」

スクロールした画面の下からせりあがって来たカリスマラッパーの写真。

そこには、のび太のよく知る人物が写し出されていた。

のび太「・・・・・・ジャイアン。」

2012年 東京某所の靴屋 スタッフ控え室

コンコン

のび太「失礼します。」

店長「おう、野比副店長。座ってくれ。」

のび太「はい。それで、お話とは?」

店長「あ〜、なんだなぁ。単刀直入に言うぞ?」

のび太「?」

店長「野比君よぉ、ここで店長やってみない?」

のび太「えっ? 僕がですか?」

店長「あぁ。つまり俺の後釜だな。知っての通り、俺は来月から横浜の新店に異動だからな。」

のび太「でも確か、店長の後任は・・・・・・」

店長「あぁ。本部としちゃぁ、銀座店の広田副店長をうちに移して、店長に昇格させたいみたいだがな。」

のび太「ですよね。」

店長「だがなぁ、俺はそれには反対なんだよ。うちにとっても、銀座店にとっても、あまりよろしくはない。それは銀座店の中条店長も同じ考えだ。」

のび太「どういう事ですか?」

店長「広田君を店長にするのは、時期尚早だと思うんだわ。別に広田君が仕事できないって意味じゃないぜ? けど、広田君もまだ若いからさ。もう少し中条さんの下で修行した方が良いと思うんだわ。中条さんも広田君をもう少し育てたいって言ってるし。」

のび太「そうなんですか。」

店長「うちはここ2、3年で売上が伸びてきてるだろ? 本部としちゃぁ、期待の新店で俺に手腕を発揮してもらいたい。けど、一方でうちの快進撃も止めたくない。そこで、繁盛店の副店長である広田君をうちに投入したいワケさ。」

のび太「えぇ。真っ当な判断かと。」

店長「違うんだなぁ。」

のび太「えっ?」

店長「俺はね、うちがこの2、3年で伸びてきてるのが俺のお陰だとする、本部のその読みが間違ってると思うワケ。」

のび太「はぁ。」

店長「もちろん俺だって努力はしてきたけどね。でも、一番の理由は野比君だと思ってる。」

のび太「えっ!?」

店長「気付いてないかも知んないけど、うちのお客さんの中には野比君のファンが多いんだ。」

のび太「いやいや、そんな事はn」

店長「ある。ホントなんだ。野比君が休みの日に、お客さんで『あのメガネの人は?』って聞いてくる人がすごく多い。」

のび太「そう・・・ですか。」

店長「『あのメガネの人に勧めてもらった靴、すごい履き心地が良いんだ。今度お礼言っといてくれ。』とかね。」

のび太「」

店長「極めつけはこないだの10足買い52万円の大量得点!」

のび太「あっ、あれはその、一種のチートみたいなモンで・・・・・・」

店長「チート? 何それ? まぁ、良いや。とりあえずさ、野比君の親切丁寧で笑顔の接客と膨大な商品知識は、確実にこの店に常連を生み出してるワケよ。」

のび太「はぁ。」

店長「まぁ、その膨大な知識を教えたのは俺だけどな!」キリッ

のび太「あはは。分かってますよ。もちろん感謝してます。」

店長「でもな、それも野比君に熱意があったからだ。俺はこういう性格だからな。新人にベッタリ張り付いて『大丈夫?分からない事はない?』なんて性に合わないのよ。分からない事があったら自分から訊きに来い、と。『見て盗め』とは言うが、盗むだけじゃ足りるワケがない。訊きに来た奴には何だって教えるが、訊きに来ない奴には一切教えない。成長ってのは会社の為じゃなく、自分の為にするモンなんだから。そうだろ?」

のび太「そうですね。」

店長「その点、野比君ときたら、入社初日から質問攻めじゃん? メモとペン持ってず〜〜〜〜〜っと俺の後ろついてきてよぉ。」

のび太「ふふ。今思うと、お恥ずかしい限りですね。」

店長「他店の店長連中が野比君の事、何て呼んでるか知ってるか?」

のび太「いえ、知りません。」

店長「ゴルゴと一緒にいたら確実に殺される男。」

のび太「いやいや、バカにしてるでしょ!」

店長「ガハハハッ。まぁ、それだけ真面目で有名って事だよ。上から良く思われたいってゆう、新人にありがちな三日坊主のファイティングポーズかと思ったら、1年経っても2年経っても、相変わらず質問攻めだ。しかも、質問の内容も回を負うごとに高度になっていってる。明らかに“分かってる奴じゃないと気付かない疑問”だ。今使ってるメモ帳、何冊目?」

のび太「多分、11冊目ですね。」

店長「すげぇ量じゃん。KOKUYOから感謝状もらえるレベルだよ。それだけの努力をしてきたワケじゃん。だからあれだけの知識を披露できる。そして顧客さんを掴めるってワケだ。」

のび太「店長の教え方はすごく分かりやすいから、質問するのが楽しくて。」

店長「へへへっ。さすが俺だな。だからよぉ、そんな野比君なら、俺はこの店を安心して任せられると思ってるワケさ。正直、本部の連中は野比君の事を、中途採用だからって過小評価しすぎなんだよ。」

のび太「光栄ですけど・・・・・・自分が果たしてそこまでの人間なのか、自信が。」

店長「何言ってんだよ。自信なんざな、やり遂げた後についてくるモンなんだよ。経験を伴わない自信なんてのはただの付け上がりよ。俺はそんな奴にこの店を任せたりはしない。確かな実力があるのに傲らない野比君だから言ってんだ。」

のび太「店長・・・・・・」

店長「まぁ、最終的な人事の決定まで、まだ1週間ある。それまでに考えて、答えを聞かせてくれ。」

のび太「分かりました。でも、店長。もし僕がそのお話を受ける気になったとしても、本部の意向を変える事はできるんですか?」

店長「そこは中条さんにかかればイチコロよ。あの人は現場が大好きな人間だから、エリアマネージャーへの昇格も蹴って、かれこれ30年近く銀座店を仕切ってるんだ。その甲斐あって、銀座店は今や全店舗中1位、2位を争う、まさに金の卵を産むガチョウだよ。本部の中でも、中条さんに楯突ける人間なんざそうそういないからな。」

のび太「そうなんですか。分かりました。1週間以内に必ずお返事させていただきます。」

店長「頼むよ。おっと。そうこうしてる間にもう昼か。よし、野比君。飯行ってこい。俺は売り場にもどるわ。」スタスタ

のび太「分かりました。」

のび太「僕が店長か・・・・・・」

2007年 のび太の自室

のび太「・・・・・・ジャイアン」

ジャイアンは中学の時、交通事故に遭い、右足に軽度の後遺症を負う。

それにより、幼少時代からの夢だったプロ野球選手への道は閉ざされてしまった。

失意のドン底にいた彼を救ったのは、音楽であった。

野球と対を成す、彼のもう一つの生き甲斐。

お世辞にも上手いとは言い難い歌唱力であるが、全くその自覚のないジャイアンは小学生の頃、プロ野球選手と歌手のどちらを目指すか、本気で悩んでいた。

中学に入り、野球部に入部した事で、その悩みは解消される。

自分から捨てた、もう一つの夢。

しかしその夢は、不貞腐れる事なく自分を待ち続けていてくれた。

そして、迎えに来てくれた。

ならばもう、これしかない。

小学生の頃のジャイアンは、発声法や衣装、ステージパフォーマンス等、全てにおいて大きくロックに傾注していた。

だが、中学で彼を救った音楽はロックではなく、意外な事にヒップホップだった。

メロディを排除し、リズムを究極まで突き詰め、己のメッセージを放つ音楽。

特にジャイアンが影響を受けたのは、90年代後半の日本におけるインディーズヒップホップだった。

サンプリングによる単調なトラックに、一切飾り気のない剥き出しの言葉で紡いだリリック、そして、叩き付けるように踏むライム。

全てが未知の領域だった。

没頭した。

ルーズリーフにペンを走らせ、オリジナルのリリックを書き始めるまでに、そう長い時間はかからなかった。

中学3年生の時、文化祭でラッパーとして初舞台を踏む。

披露した3曲は全てオリジナル。

と言っても、機材を買うお金はなかったので、トラックはBUDDHA BRANDのベストアルバムに入っているインスト曲を拝借した。

学ランのボタンを全開にし、野球部の帽子を被り、祭りの夜店で買ったメッキのドッグタグを首から下げた。

思い出しても恥ずかしくなるような、手作り感満開のB―BOY。

だがそれでも、まずまずの手応えだった。

空き地で開いていたリサイタルの時とは、明らかに違う反応だった。

元々、低音の利いたハスキー声であり、肺活量も豊かなジャイアンの声質は、ラップという手法とは極めて相性が良かった。

中学卒業後は進学せず、実家の家業である雑貨屋と夜間のバイトを掛け持ちし、お金を貯めてクラブへ通った。

様々なイベントに積極的に参加し、場数を踏んだ。

当時のステージネームはMC Ωkiller(エムシー オメガキラー)。

特に意味はない。

ただ、何となく強そうな言葉と悪そうな言葉を繋げればカッコイイだろうと思っただけ。

そして17歳の春。

単身渡米。

ニューヨークで本場のヒップホップを学ぶ。

現地での初ステージにおいて、MC Ωkillerというステージネームがオーディエンスに大爆笑された事は言うまでもない。

現在のZAKK Da GGG(ザック ダ スリージー)というステージネームは、この大爆笑の直後に泣きながら決めた。

実家の家業である雑貨(ZAKKA)を文字ってZAKK、剛田・ジャイアン・ガキ大将の頭文字をそれぞれ取ってGGG。

念のため、現地のクラブで知り合ったDJに、このステージネームで大丈夫かどうか確認をとった。

そこでOKが下りたため、現在までこれを名乗っている。

それから3年後、帰国したジャイアンはアメリカから持ち帰った経験を武器に、東京のクラブというクラブを渡り歩き、その名を轟かせた。

インディーズからリリースした唯一のアルバムも上々の売れ行きだった。

そしてついに5年後、メジャーからオファーが舞い込む。

のび太「ジャイアン、ホントに歌手になったんだ。」

のび太「夢・・・・・・叶えたんだ。」

気が付くとのび太はmoraを開き、ジャイアンのデビューシングルを探していた。

のび太「ざっく、ざっく・・・・・・あったZAKK Da GGGの『My name is G』。へぇ、インディーズ時代の楽曲も配信されてるのか。まぁ、それは今度にしよう。とりあえず今日はこのメジャーデビュー曲を、っと。」カチカチ

のび太「よし、ダウンロード完了。再生。」

PC「『Check me now! Fucker! 俺はgian da ガキ大将。マジ最高なshow caseの始まりを告げるゴング鳴る。dope rap song書く。G・G・Gと連なりthree G。green leaf着火で目玉が真っ赤なmother fuckerに聴かすlike a gas burner。』」

リア充・スイーツ()御用達のラブソングラッパーだろうという、のび太の当初の予想は盛大に覆された。

低音の利いたマッチョイズムに溢れたトラックの上を、スラングを交えたハードなリリックが暴れまわる。

かつてのリサイタルのように、乱暴に声を荒げる歌唱法ではない。

緩急をつけ、変幻自在のリズムを生み出す、本場のフロー。

ヒップホップに興味のないのび太の耳すら惹き付ける、本物の威厳がそこにはあった。

鳥肌が立った。

のび太「・・・・・・すごい!」

次々に飛び出してくるリリックの中でも、のび太の心に特に深く刺さったフレーズがある。

『いずれは巨匠。だがまだ序章。今は帰れんぜ、あの故郷。』

挫折から這い上がり、修行を積み、ついにメジャーと契約を結んだジャイアン。

しかしそれは始まりに過ぎない。

俺の人生はここからだ。

ヒップホップへのリスペクトと、生きる喜びがそのフレーズには詰まっていた。

気が付くと、3分半の楽曲は終了していた。

PCの前に呆然と座るのび太を、再び静寂が包む。

窓の外は明るくなり始め、朝を告げる雀達の声が響く。

いつもののび太なら、とっくに布団の中だ。

だが、今日は寝ない。

いや、今日からは寝ない。

のび太「たまにはハロワに行こうかな・・・・・・」

2012年 東京某所 のび太行きつけのダイニングバー

カランカラン

?「いらっしゃいませ。あっ、のび太さん!」

のび太「やぁ。」

?「いらっしゃい。お仕事の帰り?」

のび太「うん。」

?「お疲れさま。さっ、カウンターにどうぞ。」

のび太「ありがとう。」ゴトッ

?「今日は見ての通り、閑古鳥だわ。」

のび太「貸し切りだね。」

?「ふふふ。そうね。ご注文は?」

のび太「ジャックダニエルをロックで。」

?「あら? 珍しいわね。いつもはハイボールなのに。」

のび太「『男には飲みたい夜がある』ってね。」

?「何かの歌?」

のび太「いや、今思い付いた。」

?「ふふふ。でも、良い言葉ね。」

のび太「えへへ。」

?「はい。ジャックダニエルおまちどおさま。」コトッ

のび太「ありがとう。」カラン

?「恋の悩み?」

のび太「いや、仕事の悩み。」

?「そう。私で良ければ、いくらでも聞くわよ?」

のび太「ありがとう。」

のび太「・・・・・・ねぇ、しずかちゃん。」

しずか「なぁに?」

のび太「しずかちゃんは、このお店を先代のマスターから引き継いだんだよね?」

しずか「えぇ、そうよ。」

のび太「マスターからは何て言われたの? 『俺の後を頼む』とか?」

しずか「やぁね、のび太さん。そんな遺言みたいな言い方じゃないわよ。『誰も継ぐ人間がいないなら、このまま廃業しても良いけど、もし源さんがやってみたいなら、譲るよ?』って。」

のび太「そっかぁ。」

しずか「それが、どうしたの?」

のび太「来月、うちの店長が横浜の新店に異動になるんだ。で、代わりに僕が今の店で店長やらないかって言われた。」

しずか「すごいじゃない! 昇格するのね!」

のび太「そうなんだけど・・・・・・何か、自信なくてさ。」

しずか「そうなの?」

のび太「うん。そりゃね、僕だって昇格はしたいよ。ってゆうか、もう30だし、そろそろ店長ぐらいなってなきゃいけない頃合いだってのも分かってるんだ。だけど・・・・・・」

しずか「その店長さんに追い付ける気がしないんだ?」

のび太「・・・・・・うん。」

のび太「店長の仕事を見れば見るほど、自分が情けなくなるよ。膨大な知識に機転の利いた接客。怒鳴り込んできたクレーマーでさえ、最後には笑顔にしてしまうんだ。敵わないよ。」

しずか「分かるなぁ。私も、マスターから打診された時、のび太さんと同じ事を思ったもの。」

のび太「しずかちゃんでもそう思う事、あるんだ?」

しずか「それはあるわよぉ。ましてや当時、私はまだアルバイトの大学生だもの。お店が混んだ時、マスターみたいに手際良く調理できるかとか、酔っ払ったお客さんが暴れたらどうしようとか、色々考えたわ。」

のび太「それでも、引き継ぐ事を決めたんだ。」

しずか「えぇ。元々、いつかは自分のお店を持ちたいって思ってたから。ここでアルバイトをしようと決めたのも、ここが私の理想とするカワイイお店のイメージにピッタリだったからなの。」

のび太「確かに、何かファンタジー映画に出てくる魔法使いの家みたいな内装だもんね。」

しずか「ふふふ。マスターは大のRPG好きだったから。それとね、マスターはこのお店が大好きだったの。それは一緒に働いてた私が一番知ってるわ。だから、マスターの愛したこのお店を、私は守りたかった。」

のび太「・・・・・・マスター、癌だっけ?」

しずか「すい臓癌よ。私がこのお店を引き継いだ半年後に亡くなったわ。」

のび太「そっか・・・・・・ねぇ、もし良ければ、その話、もう少し聞かせてもらえないかな?」

しずか「・・・・・・良いわよ。でも、その前に私もちょっと飲もうかなぁ。のび太さん、おかわりはいるかしら?」

のび太「あっ、お願いします。ジャックダニエルを・・・ハイボールで。てへへ。ロックはやっぱりキツいや。」

しずか「ふふふ。じゃあ私もハイボールにしよっ。」カチャカチャ

のび太「」

のび太(しずかちゃんと二人でお酒を飲むなんて、小学生の頃の僕には到底想像がつかなかったなぁ。)

しずか「おまちどおさま。」コトッ

のび太「ありがとう。乾杯。」スッ

しずか「乾杯。」チンッ

しずか「」グビッ

しずか「ふぅ。えっとね、マスターの癌が見つかった時、私は大学4回生で、卒業まであと3ヶ月って時期だったの。」

のび太「うん。」

しずか「その時点でもう癌は結構進行していて、マスターは余命半年と宣告されたわ。」

のび太「半年・・・」

しずか「私は就活で内定がもらえていなくて、就活浪人が確定していたの。マスターは『内定が取れるまで、ずっといて良いよ。』って言ってくれてた。その矢先に、癌が見付かって。」

のび太「」

しずか「マスターは『もし源さんが店を継いでくれるんなら、卒業までの3ヶ月で全てを教え込む。継がないんなら今すぐ廃業する。そのどっちかだね。』って笑いながら言ってたわ。私がこのお店に憧れてる事も、全てお見通しだったみたい。」

のび太「そこでしずかちゃんは、前者を選んだ。」

しずか「えぇ。」

理由は3つあるわ。2つはさっき言った通り、元々お店を持ちたいと思ってた事と、マスターの宝物を守りたかった事。後の1つは・・・・・・」

のび太「」

しずか「」

のび太「」

しずか「」

のび太「・・・・・・マスターの事が、好きだったんだね。」

しずか「・・・・・・うん。」

のび太「そっか・・・・・・」

しずか「叶わぬ恋だったわ。マスターには、奥さんも息子さんもいたから。」

のび太「」

のび太「実際、引き継いでみて、どうだった?」

しずか「そりゃあ大変だったわよ。想像以上に。でも、それと同じぐらい、やり甲斐があったわ。」

のび太「夢が叶ったんだもんね。」

しずか「ところがね、やればやる程、私はまだまだ夢を叶えてないなって気付かされるの。」

のび太「どうして?」

しずか「アイデアが次々に湧いてくるのよ。『こんなソファを置いてみたい』『あんなメニューはどうかしら』『ホームページにこんな機能をつけてようかな』ってね。」

のび太「うん。」

しずか「そうゆうアイデアの1つ1つも、私は夢だと思うの。小さな夢。『お店を持つ』ってゆう大きな夢は、この小さな夢がたくさん集まってできてるんだと思うわ。」

のび太「なるほど。」

しずか「だから私はまだ、夢の途中。私の夢は、まだ終わってないの。」

のび太(それって・・・・・・)

(いつかは巨匠。だがまだ序章。今は帰れんぜ、あの故郷。)

しずか「だからね、のび太さん。店長昇格の話は、受けてみるべきだと思うわ。失敗だってするけれど、失敗せずに人生を送る方が、よほど損だもの。」

(過ちとて、決して無駄ではないのざます。)

しずか「失敗を乗り越えた時、その経験は必ず自信に繋がるから。」

(自信なんざな、やり遂げた後についてくるモンなんだよ。)

しずか「のび太さんなら、絶対大丈夫よ。」

のび太「・・・・・・うん。ありがとう。」

(君はもう大丈夫だよ、のび太君。)

2022年 東京某所の靴屋

のび太「いらっしゃいませ。」

男性客「こんにちは。」

のび太「あっ、こんにちは。先日はどうも。」

男性客「こないだアナタに選んでもらった革靴、すっごい履き心地が良いんですよ。」

のび太「ありがとうございます。」

男性客「もうね、今まで履いてきた靴は何だったんだって感じで。」

のび太「はははっ。光栄です。」

男性客「また何か良いのを選んでいただきたいんですけど。」

のび太「分かりました。先日はストレートチップでしたよね? じゃあ、今回はモンクストラップなんてどうですか?」

男性客「あ〜、カッコイイですねぇ。サイズ、出していただけますか?」

のび太「〜というワケで、この靴はお客様のお足と相性が良いんです。」

男性客「なるほどなぁ。分かりました。こちら、いただきます。」

のび太「ありがとうございます。」

男性客「しっかし、前回もそうですけど、アナタの説明は分かりやすくて、ホントにすごいですね。」

のび太「いえいえ、まだまだ勉強中の身ですよ。」

男性客「アナタは、ここの店長さんですか?」

のび太「はい。店長の野比のび太と申します」

Fin

1997年 剛田雑貨店

母ちゃん「はぁい、お待たせ。200円お返しだよ。奥さん、いつもありがとうね。」

ズズッ ズズッ

母ちゃん「! あっ、たけし・・・・・・」

ジャイアン「」

母ちゃん「・・・・・・おかえり。」

ジャイアン「・・・・・・ただいま。」ボソッ

ズズッ ズズッ

母ちゃん「あっ、た、たけし! 戸棚にみたらし団g」

ジャイアン「いらねぇ。」ボソッ

ズズッ ズズッ

母ちゃん「たけし・・・・・・」

間もなく中学2年生を迎えようとしていた1996年2月、ジャイアンは交通事故に遭う。

一旦停止を無視して飛び出してきたオートバイとの接触事故。

数百キロの鉄の塊は自転車に乗っていたジャイアンの右足に直撃。

命に別状はなかったが、右足を複雑骨折するに至った。

医者はリハビリをすれば、元通り歩けるようになる“可能性もある”と言った。

ジャイアンはその可能性を信じた。

もう一度あの場所に帰りたい。

野球がしたい。

1年に及ぶ必死のリハビリにより、日常生活に支障がないレベルにまで回復する事ができた。

しかし、軽度ではあるが、後遺症が残った。

右足をほんの少し、引きずってしまう。

日常生活においては軽度であっても、プロのスポーツ選手を目指す者にとっては致命的だった。

その上、他の部員より1年のブランクがある。

プロへの夢はおろか、部活のレギュラー復帰も絶望的だった。

夢は、完全に指の間をこぼれ落ちてしまった。

当時のジャイアンの落胆ぶりは、目も当てられないほどに痛ましかった。

家族、部活仲間、顧問、担任、のび太をはじめとする旧友達。

誰一人として、かける言葉を見付ける事ができなかった。

のび太はドラえもんに頼み、ジャイアンを励ませる道具を借りようとした。

しかし、

ドラえもん「道具を使えば、そりゃ、一時的には元気にする事もできるよ? けどね、それは応急処置でしかない。ジャイアン自身が希望を見出だして立ち上がらない限り、根本的な解決にはならないんだよ。」

ゴロン

ジャイアン「はぁ・・・・・・。」

学校から帰ると、自室の畳に寝転がって天井ばかり眺めていた。

机と本棚だけの殺風景な部屋。

かつて壁を埋め尽くしていたプロ野球選手のポスターやカレンダーは、全て捨てた。

『週刊 ベースボール』も捨てた。

もう野球中継も甲子園も見ない。

日常から野球を排除したかった。

ジャイアン「」

ジャイアン「・・・・・・お〜れ〜はジャイア〜ン。ガ〜キだいしょ〜う。」

ジワァ

ジャイアン「うぐっ。て、て〜んか・・・む〜てき、の・・・ヒック。お〜どごだ、ぜ・・・・・・」

ジャイアン「うっ・・・うっ・・・・・・」

ジャイアン「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ジャイアン「Zzz・・・・・・」

ジャイアン「Zzz・・・・・・」

ジャイアン「んっ。」

ジャイアン「・・・・・・寝ちまった。」

ムクッ

ジャイアン「あっ、あ〜。」

ジャイアン(もう夜か。ってゆうか何時だ?)チラッ

ジャイアン(午前1時か。随分寝たもんだなぁ。)

ジャイアン(飯食わなきゃ。それに風呂と歯磨き・・・・・・)

ジャイアン「」

ゴロン

ジャイアン「もう良いや、面倒くせぇ。」

ジャイアン「・・・もう全部、面倒くせぇ。」

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

カッチ コッチ

ジャイアン「・・・完全に目ぇ覚めちまった。」

ジャイアン(帰って来たのが4時だろ? そんで、市役所の5時の鐘を聞いたのは覚えてるから・・・・・・うわぁ、下手すりゃ8時間も寝てるじゃねぇかorz もう朝まで寝られそうにねぇなぁ。)

ジャイアン(漫画はもう何回も読んだのばっかだしなぁ。かと言って、こんな時間に居間に降りてテレビ見るワケにもいかないし。)

ジャイアン「ん〜。」

ジャイアン(そうだ、ラジオでも聞くか。)ゴソゴソ

ジャイアン(夜中だしヘッドホンを挿して、っと)グサッ

ラジオ「〜さんからのリクエスト、お送りしました。さて、続いてのリクエストは、ラジオネーム・ブタゴリラさん。
 昨年リリースされ、既に『ジャパニーズヒップホップのクラシック確定』と話題の超問題作。」

ジャイアン(んだよ。ヒップホップかよ、つまんねぇ。『だよね〜♪ だよね〜♪』とか下らねぇんだよ。ロック流せよ、ロックをよぉ。ヒップホップなんて邪道だっつうの。)

ラジオ「LAMP EYEで、『証言』。」

RINO「要件1。投げんなサジ。ことの重要性理解してない腑抜け恥じな。マリアッチ。
 一番手は俺RINO。バンデラスよりもド派手に登場。」

ジャイアン(!?)

RINO「飲み込んでやるぜ大東京。行く先々で巻き起こす大騒動。大膨張し止まらない勢い。
 衝突は避けられない。平成8年。形勢は逆転。準備万端はっちゃけて行くぜ。」

ジャイアン(何だよ、これ・・・・・・)

YOU THE ROCK★「邪魔させん。割り込みはいけません。俺たちの文化着火MAKE A FIRE。
 電光石火かっ飛んできた。仲間と常に魂燃やし、焦がし、笑い、力となってく俺の肥やし。
 言葉の力俺の言霊がみなぎるパワー。うわー。真っ赤な目をしたフクロウ。
 俺登場。証言2放つ。」

ジャイアン(ヒップホップなんて邪道なのに・・・・・・)

G.K.MARYAN「敵は我なり。届けKAMINARI。狙いすました第三の証言。心にしまわず吐いたあの暴言。
 裏を返せばシネマのような名言。雑念ぶっ飛ぶ一直線。
 進むリズムに乗るこの光線の中、何小節かの旅。バッチリ、ガッチリ行きますか?」

ジャイアン(カッコイイ・・・・・・)

Zeebra「ハァ! 証言4番。大判小判に目眩み悪魔に魂売る奴のたくらみ。Mc DADDY気取りのボケ。
HIP HOP使っていっちょ金儲け。ハン! 不純な動機。シーンに対すRESPECTなど放棄。
俺のタケボウキで大掃除。暴走しかけたその張本人。よく聞いとけ。
俺らコケにした奴。今時計が処刑の時刻を指す。」

ジャイアン(カッコイイじゃねぇか・・・・・・)

TWIGY「ハイ! 証言5。テンコ盛りの話要らねぇぜ。弁護連動無理ならば戦闘開始か。仕掛けるか。
   願えるか意思。お主、弱ぇし早ぇしコエーくらいドケチ。セージでも焚いてココロ開いてないね。
   大抵、喜んで御来店。ったくもう本音は冴えない改善。」

ジャイアン(すげぇ・・・・・・)

GAMA「時間がねぇよ。証言6。ウダダダ寝てられねぇぞ。動いてる。
   ジタバタしたってムム。ブルブル。レッドゾーン振り切る加熱。」

ジャイアン(これが、ヒップホップ・・・・・・)

DEV LARGE「煮えくり返る熱湯のごとく、氷のごとく冷たく落とす。HA! Bring damage Hit'ya 直撃。
ポンコツ頭にゃチト難しい話。Fuckコケおどし。Fuck子供騙し。Real見えない遠視近視乱視達。
Never立ち往生。Fuck for the love of money。怯まねぇ。怯むワケにゃいかねぇ。証言Seven。」

ジャイアン(ヤベェ・・・・・・)

ラジオ「深夜にふさわしい、Do〜peなナンバーですね。僕も昨年、この曲を聴いた時は衝撃を受けました。
 ラジオネーム・ブタゴリラさん、どうもありがとうございました。
 お送りしましたナンバーは、LAMP EYEで『証言』でした。CMの後も、リクエストまだまだ続きます。」

ジャイアン「LAMP EYE・・・『証言』・・・・・・」

ジャイアン「すげぇ・・・・・・」

ジャイアン「俺も、こんなカッコイイ音楽、やってみてぇ・・・・・・」

Fin

 


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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:INb3h1Pe0編集削除
なっげぇ!
2 . 名無しさん  ID:Y0.cnpO50編集削除
面白ければ気にならないんだから
長いと感じるのはつまらないってことさ
つまらん
3 . 名無しさん  ID:c4XBXlzC0編集削除
代休中、やることなくて全文読んだ。
のび太と自分がシンクロした。
店長の道は歩めてないけど、俺もまだ頑張らないとな、と思った。
今は下請けの下請け。
今仕事で作成中の全国規模のアプリに、どういう意味があるのか、
視野を広げて考えることができた。
もっとまじめに作ろう。
4 . 名無しさん  ID:ZYpbLikj0編集削除
これが「おもしろ」カテゴリはどう考えてもおかしいだろ!
「感動」カテゴリ以外無いだろうがよ!
5 . 名無しさん  ID:72QvlA.b0編集削除
『のび太「はい。店長の野比のび太と申します」
Fin』
 で ホントに 終わり に しとけば良かったのに・・・
そのあとは 蛇足だったね。
6 . 名無しさん  ID:72QvlA.b0編集削除
のび太の性格が大っ嫌いで
ほとんど この漫画/アニメ観ていないのだけど
登場人物達の意外な進路(真逆ともいいえている)での お話しですね。(笑)
頼らず 寄生せず、 自身の力で頑張る人 好きです。
7 . 名無しさん  ID:ntMDBKYl0編集削除
ジャイアンは『声』が悪いんであって『歌い方』はよかったはずだが・・・・

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