うちの父と母は同い年で、生まれた頃からの付き合いだったというのおさななじみ
20の時に結婚したって話だから、ゴールまで20年というそれこそ大恋愛の末に結婚したそうな
いい年こいたおっさんとおばさんがそのへんのバカップルよろしく茶の間で四六時中
イチャイチャしてるような環境で育ったおかげでちょっとやそっとの下世話な話や
街中で平然と抱き合うようなバカップルでも全く腹が立たないのは、まあ教育のたまものともいえるかもしれないな・・
そんなはた迷惑な中年であったうちの両親だったのだけど、父が42の時に癌で死んでしまうと、いつもはニコニコと笑顔の絶えなかった母が、人が変わったように暗くふさぎこんでしまうようになった。
息子で長男の俺は、父の死も束の間に、どんどんと痩せ細っていく母をなんとか励まそうと
色んな観光旅行に行ってみたり、趣味になるようなものを色々と勧めてみたりしたけれど、やっぱり母は以前のようないやみのない笑い顔を見せることはどんどん少なくなった。
2つ年の離れた妹と一緒に頭を抱えて、眠れない夜を過ごしたある明け方に、急に前のような笑顔を顔に浮かべた母がおきてきた。
「何かいいことでもあったの」
と聞くと、
「お父さんが夢に出てきて、私のお尻をなでて『やわらかいなあ』って言ったの!」
ととても嬉しそうな顔で母は言った。
何がそんなに嬉しいのかと呆然としている俺達兄妹を尻目に、その日から母はまた少しずつ元気を取り戻していった
このことを思い出すたびに、呆れる気持ちと一緒に
「自分もそんな、それこそ一生もんの相手にめぐりあえるといいな」と羨ましい気持ちもこみ上げてくる。
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