雨の時期になると決まって思い出すことがある。

あれは7年前、私がまだ東京で大学生だった頃の話だ。
大学へ向かう道すがら、私の前を3人の小学生が歩いていた。
ちょうど雨がやんだときで、小学生は傘を振り回して何か漫画の真似をして遊んでいる様子だった。
危ないなと思いながらも、私は大学に急ぐべく小学生の脇を通り抜けようとした。

気づくと私は右目を押さえ道端に昏倒していた。
小学生が振り回した傘の先端が私の右目に突き刺さったのである。
右目からあふれ出る血を左目で眺めながら、私は犯人を探した。
すると小学生のひとりがげらげらと笑いながら

「たいきゃくー」

と叫んで走り出したのである。

 


その瞬間、私の体の中で赤く熱いものが駆け巡り、一気に沸点に達した。怒りである。

一見して深刻な事態と分かる私をよそに、当事者が「たいきゃくー」などと嘯いていることに私の感情は沸き立ったのである。
私は後にも先にもあのときほど怒りを覚えたことは無い。

私は右目を押さえながら小学生を追った。
それに気づいた小学生も私を振り切ろうとしたが、鬼と化した私から逃れるはずも無かった。
私はその小学生の首根っこを掴むと、思い切り引き回し地面に押さえつけた。
私は血だらけの顔を小学生の鼻先に近づける。
そして地の底から響くような声でささやいた。

「おい小学生、今から社会常識を教えてやるよ」

小学生の顔は涙と鼻水と私の血液でぐちゃぐちゃになっていた。

「まずは…」

と言いかけると私の体が急に宙に浮いた。

「あんた子どもに何してんだ!」

私が小学生に暴行していると思った通行人たちが、私と小学生を引き離したのだ。
しかし彼らは私の顔を見ると

「おい血が出てるぞ、どうしたんだ」

と心配し始めたので、とりあえず私は血だらけのまま一部始終の説明を始めることにした。

「この小学生の振り回した傘が私の目に突き刺さったのですが、
この小学生は笑いながら逃げようとしたので、それを取り押さえていたのです」

しかし周りは私の話もそこそこに

「そんなことより救急車を」
「いや警察だろ」

とてんやわんやで119と110を呼び始めた。
救急車が来るまでの間、私は一言も喋らずに小学生の肩をずっと掴んでいた。
その肩は小刻みに震え続けていた。

都内の病院に救急搬送された私はすぐに診察と手術を行った。
実のところその間の記憶はあまり無い。
気づいたときにはベッドに寝かされ、医師が私の状態について説明してくれた。
簡単に言えば眼球の損傷が激しいため、従前の視力は戻らないということだった。
傍らでは小学生とその親、そして小学生の担任と教頭が沈痛な面持ちで聞いていた。
私は抑揚ない口調で彼らに言った。

「今先生が仰ったように私はほとんど失明してしまったようです。何か言うことはありますか」

すると小学校の担任と教頭が深々と頭を下げて謝罪の意を表し、つられて母親も頭を下げて、償いはいくらでもしますと侘びの言葉を並べ立てながら、嗚咽にむせぶのだった。

「私が聞きたいのはそういうことじゃないんですよ」

自分でも驚くほど冷静な声だった。
怒りは私の中で極限に達し、氷の刃へと姿を変えたようだった。
私の言わんとすることに気づいた母親は、即座に息子の頭を掴むと

「ほらあんたも謝りなさい」

と促した。
そこでようやく小学生は、帽子も取らずに

「ごめんなさい」

と小さく呟いたのだった。

「その言葉は6時間前に言って欲しかった。もう遅過ぎます」

私はため息を吐くようにそれだけ言うと、枕に頭をしずめて、浅い眠りについた。

しばらくして警察が事情聴取に訪れた。
こういう場合は、大抵示談となり不起訴処分になるのが通例のようだった。
小学生の両親はまた責任だとか償いだとかそういう言葉を並べたてていたので、私はそれを遮りひとつの提案をした。

「もちろん治療費は頂きます。でもそれ以外の金銭は頂かなくて結構です。
ただひとつだけお願いがあります」

両親が固唾を飲むのが分かる。

「毎週1度でいいから、息子さんを私の住んでいるところに通わせて下さい」

初めは拒んだ両親も、私が危害を加えるわけではないことを説明すると、渋々であるが了承したのである。

そして初日。私は小学生に告げた。

「人から何かを奪ったら、それと同等の何かを失うことを覚悟しなければならない」

小学生の体が強張るのが見えた。

「でも怖がらなくていい。私は君の視力を奪おうとは思っていない。むしろ私はこう考えている。図らずも人から何かを奪ってしまったときは、別の何かを与えてやればいい。
私は君から与えられることを望んでいる」

「何を与えればいいの」

怯えたまなざしの小学生に私はこう言った。

「君の成長する姿だ」

それから7年。
小学生だった彼は青年へと成長した。
高校に入学して彼女もできたらしい。
まさに彼は青春の真っ只中にいる。
この7年の間、私は彼の親と同じように、彼の成長を見守ってきた。
外見的な成長はもちろんのこと、精神的にも随分と大人になったと思う。
人との出会い、様々な経験、幾つかの成功と挫折。それらがすべて糧となり今の彼を形作ってきたのだ。
そして今宵、私は彼が成長によって得た果実を与えられることになっている。

指定された部屋に向かうと、果たして彼がいた。
傍らでは制服姿の女子高生が椅子に縛り付けられている。

「〇〇さん、待ってましたよ」

そう言って彼はまだあどけなさの残る笑顔を見せる。

「誰なのこの人、ねえ答えてよ、何する気なの」

すかさず彼は女子高生の腹に一撃を見舞う。「ぐぶっ」と呻き声が俺る。

「少し静かにしてろ。すいません〇〇さん、騒がしくて」

「構わないよ」

「俺〇〇さんの言葉忘れてないですよ。
人から何かを奪ってしまったときは別の何かを与えてやればいい。
俺成長したんですよ。勉強も運動も頑張ってこんな可愛い彼女も手に入れて」

私はうなずく。

「全部〇〇さんのためなんです」

ここまで立派に成長した彼に私も感無量だった。

「じゃあ俺、外で待ってますんで」

「ねえどこいくの、帰らないで、ねえあたしどうなるの」

泣き喚く女子高生に私は徐々に顔を近づけていった。

「私は右目が見えないんだ。君の彼につぶされたんだよ。
だから左目を見つめてくれないか。ほらもっと近づいて、ほらもっと!」

 


コメントの数(49)
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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:XXYfoJ6n0編集削除
とりま1?
2 . 光彦  ID:zHkdt1d70[評価:5 ]編集削除
最後の意味がわからない
3 . 名無しさん  ID:c3mN.pd90編集削除
上げて落とすのかよ
4 . 名無しさん  ID:NcCUvblb0編集削除
果たして彼がいた
5 . は?  ID:EPcDo.g7O編集削除
なにコレきもいな
6 . 名無し  ID:b.QLxd2G0編集削除
泣いた
7 . 名無しさん  ID:ezzlJ9NA0編集削除
彼女の目が取られたんじゃね
8 . 名無しさん  ID:CjgwzhHr0編集削除
うんたらかんたらは犠牲になったのだ…
これ思い出した
9 . 名無しさん  ID:7oo6sJdA0編集削除
※4 ちゃんと勉強しような
10 . 名無しさん  ID:jrqqt.gJ0編集削除
小学生を社会的に追い詰めるって方が面白かったのに
11 . 名無しさん  ID:DWpa2XUU0編集削除
結局、彼女が「男を見る目」がありませんでしたってことか。
実に長い前フリだったな。

まあ愛は盲目とも言うからな。いたしかたない。
12 . 名無しさん  ID:SjqgWtpw0編集削除
最近の世にも奇妙な物語と比べても微妙っす
13 . 名無しさん  ID:hQrGAE0l0編集削除
見つめただけで終わったのかな。
14 . な  ID:Vu4f5hGrO編集削除
痛い怖い(´・ω・`)
15 . 名無しさん  ID:yKedg5.C0編集削除
米11
それを言うなら恋は盲目だ。
16 . 名無しさん  ID:JJVHy09F0編集削除
糞餓鬼の人生がどうなろうとも、そいつが発狂して首を吊って糞を洩らしながら無様に喚きながら
死ぬほど追いつめ続けるべきだな

どうせ糞餓鬼どもは「人を殺しても少年法で俺たちは無罪だからなwwwwwwwwwwww」って思ってるだろうからな

思いあがってる糞餓鬼どもが発狂して「こんな目に遭うんなら自殺したほうがましだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」って
糞洩らしながら発狂するくらいの要求をした方がいい
それが糞餓鬼どものためにもなる
17 . 名無しさん  ID:Xd.XjcnI0編集削除
怪我を負わせた本人じゃなくて何故彼女?
改変とか?
18 . 名無しさん  ID:8kM8.9xx0編集削除
何と言うか、はぁ…って感じしかないな
価値がまるで感じられない
19 . 名無しさん  ID:zfAvtYZ50編集削除
途中まで面白かったのに、彼女ができた という辺りから凡作街道まっしぐら
20 . 名無しさん  ID:AZsrCZib0編集削除
なんか、びみょー
21 . 名無しさん  ID:Q.P57fO90編集削除
ハッピーエンドのほうがよかったんじゃないか?
22 . 名無しさん  ID:x9ul3y270編集削除
つまんね
23 . 名無しさん  ID:V6SzeLim0編集削除
右目を失った分、左目に「与えられることを望んでいる」んだろ。
「彼」の彼女も「成長」の象徴。
24 .    ID:g8Pv5PQlO編集削除
何これ管理人の創作?

つまんな
25 . 名無しさん  ID:dnumS6Js0編集削除
つまんねぇ上に「てにおは」がおかしい
26 . 穴  ID:br6wJXL8O編集削除
最後の一文理解出来ん。
27 . 名無しさん  ID:A4Qxe4u80編集削除
で、何?
28 . あ  ID:agONplxaO編集削除
意味がわからん
29 . 名無しさん  ID:by11m5jx0編集削除
読み手が混乱する書き方は書き手の問題
やりなおし
30 . 名無しさん  ID:ZDyttYov0編集削除
長い割にはこれっぽっちも面白くなかった。厨二病こじらせた妄想か。
31 . あ  ID:0pYCKrvtO編集削除
え? オチは? 全くオチてないぞコレ。
32 . 名無しさん  ID:mo0HxKs20編集削除
中二の妄想だな
33 . 名無しさん  ID:lleAJrL90編集削除
私ってバカなんだろうな、最後のオチが理解できないよ。
何で彼女を縛り付けて、左目を見つめさせたんだろう。
その先になにがあるんだろ、何を得たんだろう。
34 . 名無しさん  ID:XpA2D1.B0編集削除
小説が好きで物書きたがりの素人が、ラストにどうとでもとれるような含みを持たせて実は何の意味も無い文章の典型じゃね?
35 . 名無しさん  ID:ZDyttYov0編集削除
※34 ナポリタン的なアレか。
36 . 名無しさん  ID:Kpc53s760編集削除
>人から何かを奪ってしまったときは別の何かを与えてやればいい。

俺から駄文を読ませ貴重な時間を奪ってしまった罪は重い。
.....つまりわかるよな、記事主よ。
37 . 名無しさん  ID:zWnjnG3Y0編集削除
勘違いして書いたくさい文章
38 . 名無しさん  ID:RQKE2.WN0編集削除
>「ぐぶっ」と呻き声が俺る。
ここにヒントが隠されているような気がする
39 . 名無しさん  ID:urSSbcgI0[評価:1 ]編集削除
どうしてそこまでするんだろう本当怖い
40 . 名無しさん  ID:QmA1iePb0[評価:1 ]編集削除
もう俺の失った時間は戻らないんだ・・・がっくり。 これから注意しないとな。
41 . 名無しさん  ID:PcSXbq1R0編集削除
そして今宵、私は彼が成長によって得た果実を与えられることになっている。

この文から下はつまらん
この文までハッピーエンドかと思ってた
鳥肌が立つほど
42 . 名無しさん  ID:Qb9n3WQP0編集削除
えーさいてー
43 . 名無しさん  ID:0UORBdke0編集削除
タイトルからおかしいな

これに違和感がないなら小学校からやり直し
44 . 名無しさん  ID:Cuw7fHPu0編集削除
フィクション?真剣に読んだのに;;
45 . 名無しさん  ID:A8xMtsox0編集削除
コレの意味は
彼女を代わりに探してきたってことだろ。
つまり主人公は男だ。
この女と寝てくださいって意味。
目を見つめてってのはキスするってことだ。
46 . 名無しさん  ID:UnyzTm7I0編集削除
はあ、そうですか、って感じ。失明したことに対しての同情の念が消えうせた感じ。
47 . 七氏  ID:PjZ.4dXzO編集削除
いいなぁ…JKか…
48 . 名無しさん  ID:5.VUx.wu0編集削除
途中までてっきりJKの彼女ができたらやらせろってことにしてたのかと思ったけど
最後の一文で意味がわからんくなった
何か仕返しをしたんだとしたら彼女に対して行う意味がわからないしやっぱりやらせてもらっただけ?
49 . 名無しさん  ID:0K4FcU.E0編集削除
コメントでの誰かの解説を期待したが…だめだったようだ

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