親父が病死したんで、2つ違いの姉ちゃんが大学やめて就職、俺が高校通ってた頃。
たまたまTVでやってた秋の旅行番組見て、姉ちゃんが台湾に行きたいなと言い出した。
きちっとパンプス履いて立ってなきゃいけないので、姉ちゃんの仕事は足が疲れる。
それであの足裏マッサージやってみたい、となったようだ。
姉ちゃんと母のパートの稼ぎだけでちょっと貧乏だったから旅行なんかできないんで、○○(俺の名前)あれちょっとやってみてよ、と来た。
恥ずかしかったが、喰わせてもらってる俺としては断れませんよ。
まず出がらしのお茶を洗面器に大量に作った。
それに素足を浸させて洗うわけだが、足があったまるとそれだけで気持ちいいらしく、顔がほああーと赤くなってきた。
この時点ですでに姉ちゃんは極楽顔だ。
バスタオルで拭いて、横に雑誌を積んで作った台に足を乗せさせて、あったまってるうちにと、見よう見まねでゴリゴリマッサージしてみた。
多分ツボとか全然はずれてたと思うんだが、疲れ足にはそれなりに効いたようで、「はぁ〜」とか声出して(俺少し興奮してました姉ちゃんごめんw)気持ちよさそうだった。
○○上手じゃん、台湾気分満喫だよね、とか言って姉ちゃんは晩飯の支度を始めた。
その日の晩飯はちょっと豪華で、姉ちゃんはいつもより少し朗らかだった。
こんなちっぽけなことで喜んでくれる姉ちゃんが可愛いというか可哀想というか、複雑な気分だったのを覚えている。
俺は姉ちゃんの給料で大学まで行かせてもらい、なんとか就職もできた。
姉ちゃんはそれを見届けるようにして、結婚して家を出た。
俺は最初のボーナスから、姉夫婦に台湾旅行をプレゼントした。
「本場の足裏マッサージ体験してきたけど、
いつだったか○○にやってもらったのが気持ちよかったな〜」
と姉ちゃんが言ったので、
姉ちゃんも、俺ら家族のつらい時期のあの一コマを覚えていてくれたのがわかった。
ちょっと泣きそうになった。
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