『冬が来た』 高村光太郎
きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹の木も箒になった
きりきりともみ込むやうな冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た
『脂肪がついた』 高村プウ太郎
でっぷりと脂肪がついた
腹の田の字の筋も消え
ベルトの穴も三つ増えた
プリプリともみ込むやうな脂肪が付いた
人にいやがられる脂肪
婦女子に背かれ、健康に逃げられる脂肪が付いた
脂肪よ
僕に来い、僕に来い
僕は脂肪の力、脂肪は僕の餌食だ
しみ込め、突き出せ
糖を出せ、肉で埋めろ
荒尾のような脂肪が付いた
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